
【特集】企画・制作・私
#劇場へ行こう/橘花梨・小口ふみか

俳優の橘花梨が自ら企画・プロデュース・出演を行う「カリンカ」。次回公演は小口ふみかとの二人芝居『エアスイミング』を下北沢の小劇場楽園にて上演します。近年は俳優によるセルフプロデュース公演が増えており、カリンカもその一例と言えるでしょう。今回は『エアスイミング』に出演するお二人に「観劇とセットで楽しみたい下北沢散策ロケ」をオファーしました。
そこへ行くと、
何かが、起こり、変わり、感じとれる。
劇場はそういう場所です。
橘花梨×小口ふみか×下北沢。
さあ、劇場へ行こう!!





青いレンガ


橘 わ〜、美味しい〜!
小口 美味しい! 焼いている様子も楽しい!
橘 「ポンポンポン!」って(※鉄板からベビーカステラを取り出す様子)。
小口 焼きたてで、香りもすごくいい。
橘 差し入れで頂いたことはあるけれど、焼きたてを食べたのは初めて。一層美味しいです。
狛犬珈琲



小口 お店がめちゃくちゃ可愛い。
橘 すごく素敵。今日はテイクアウトだけど、次はイートインしたい。ご飯も美味しそうでした。
小口 隠れ家的な空間がすごく可愛かった〜。私はチャイを頂きました。
橘 私はカフェラテを。
ダパイダン105





二人 カンパーイ!!
橘 お芝居を観に行く前も、一杯なら飲んでいいよね。
小口 いける。
二人 あははは。
橘 観劇後にがっつり立ち寄ってもいいし。
小口 お店の前を通る度に気になっていて、今日初めて寄れて良かった。
橘 ほんとほんと。小籠包は八角が効いていて美味しい。
小口 そして、よだれ鶏のサイズが大きい!
アンドレア


小口 私はシナモンチョコクリーム。
橘 私はチョコバナナクリーム。
小口 生地がモチモチで香ばしい。生地が焼きたて、クリームが後のせだから、クリームがひんやりしていて美味しい!
橘 ほんと美味しかった〜。一瞬で完食しました。
下北線路街 空き地



小口 レモネード、すごく美味しかったー。果物の粒感があって甘すぎない。本物のレモンを飲んでいる感覚。
橘 クラフトコーラはスパイシーでジンジャーの香りがしました。甘味も丁度良いし、美味しい!


橘 私、楽園さんでお芝居をするのは初めて。
小口 私は一度だけ出させて頂きました。あの特徴的な柱があることによって生まれる空間が面白くて好きです。お客さんとして観に来ることもよくあって、どこに座っても臨場感たっぷりで観られる劇場ですよね。
橘 今回は二人芝居ですし、それにマッチする劇場を…と考えました。楽園さんは遊び心のある不思議な空間ですし、演出の堀越(涼)さんが面白く使ってくださるはず。初めての劇場にチャレンジしてみたい! という気持ちもありました。角度によって見え方が変わる舞台セットなので、リピート観劇もオススメです。
小口 ぜひぜひ!!


橘 (企画・制作をする上での)私の強みは、なんだろう……。あ、分からない事があればはっきり質問する、知ったかぶりをしない、メールの返信を早くする、などを大切にしています。あと根性! 根性あります!
小口 花梨ちゃんのことは元々尊敬していたけれど、この公演で更にその気持ちが増しました。
橘 (笑)。
小口 人柄の良さに加えて、すごくエネルギッシュなんです。だから、ついて行きたいと思うし、助けになりたいとも思う。私では考えも及ばないような痒い所へ手が届く人。
橘 そんなことない(照)。
小口 二人芝居だから台詞の分量もほぼ同じなのに、花梨ちゃんは稽古をしながら、制作関連の連絡をしたり、企画を進行させたり…。
橘 カリンカはソロプロジェクトですが、沢山の人の力を借りていますし、自分に出来ないことは「出来ません」と正直に伝えて、人に頼るようにしています。それが「強み」かどうか分からないけれど。


橘 小口さんと出会った頃、今ほど親しくなる前に「いつかカリンカで二人芝居をやりませんか?」とお声掛けしていました。で、実際に戯曲選びを手伝ってもらった際、『エアスイミング』を見つけてくれたのが小口さん。「これやりたいね!」と二人で読み合わせをしたところから、この公演は始まっています。戯曲を選ぶ段階で携わってもらい、すごく心強かった。
小口 いや〜、手伝えたのはそれだけなんです。あとのことは全部お任せして、頼りきりで。
橘 いやいや、そんなことない。
小口 だって、やることめちゃめちゃあるじゃん? 本当にすごい。
橘 スタッフさんから「出来ないかも? という判断をしない」と言ってもらえます。それがワクワクすることなら、困難な道のりでも何とかしてやろう! と考えるタイプ。スタッフさんには「…無茶苦茶言ってるなぁ」と思われているかもしれませんが、その気持ちを忘れないようにしています。


橘 プロデューサー目線で言うと、全セクション本当にすごいので、全部楽しんでください! という気持ちです。一俳優目線で言うと、面白い戯曲と出会えたし、かつ日本での上演機会が少ないため、固定概念なく楽しんでもらえると思っています。ぜひこの作品自体を知って下さい。
小口 この戯曲を読んだ時、「絶対花梨ちゃんとやりたい!」と思いました。いざそれを立体化する際、花梨ちゃんが堀越さんに演出のオファーをしてくれて、「これは面白くなりそう」と感じています。そこに色々な方の素晴らしい力が加わり、私の中で観たことのない作品になる予感がしています。手探りで一から育てた作品をお客様と共有できることが楽しみですし、お客様一人一人がこの作品をどう読み取り、どう感じて下さるか? にすごく興味があります。多様な捉え方ができる、余白の多い作品なので、観劇後にお客様同士で感想を語り合うところまで含めて、楽しんで頂きたいです。

橘花梨
たちばなかりん◯1993年生まれ、東京都出身。俳優、「カリンカ」主宰。オーディションを経て2008年にCMデビュー。以降多くの舞台作品に出演する。2018年には自ら企画・プロデュース・出演を行うソロプロジェクト「カリンカ」を立ち上げた。好きな飲み物はハイボール。

小口ふみか
おぐちふみか◯1993年生まれ、東京都出身。俳優。幼少期よりクラシックバレエを習う。舞台芸術学院在学中にザ・スズナリにて初舞台を経験。小劇場から明治座まで、様々な舞台で活躍する。好きな飲み物はビール。

カリンカ vol.4『エアスイミング』
作◇シャーロット・ジョーンズ
翻訳◇小川公代
演出◇堀越涼(あやめ十八番)
出演◇小口ふみか 橘花梨
日程◇2024年2月28日(水)〜3月3日(日)
会場◇小劇場 楽園(下北沢)
構成・文◇園田喬し 撮影◇山崎伸康(人物)
撮影協力◇小劇場 楽園
【特集】企画・制作・私#Focus on !! 下北沢国際人形劇祭

このフェス情報を初めて知った時、心が小躍りしました。世界各国の人形劇が東京・下北沢に集結する。無料公演、音楽ライブ、レクチャー、ワークショップ、朝ご飯(え!?)など各種プログラムも充実。この規模のフェスを企画・制作するには、相当な熱意と知識と愛情が必要不可欠なハズ…。今回は、観客の「人形劇観」を高確率で覆す、第一回下北沢国際人形劇祭に#Focus on !! してみました。



ーー下北沢国際人形劇祭の公式ホームページを拝見して、「世界各国の人形劇が下北で観られる!」とワクワクしました。僕自身が人形劇について不勉強なため、ぜひ色々教えて下さい。
はい、よろしくお願いします。
ーー早速ですが、このフェスで観られる「人形劇」とは、どのようなものでしょう?
日本で「人形劇」というと、人型や動物型の人形を連想しますよね。ところが、ヨーロッパの人形劇は日本の方々が想像するものと異なり、「オブジェクトシアター」と呼ばれる上演が主流です。形象物、オブジェクトを何かに見立て、その固有の動きに注目する演劇。オブジェクトそのものの面白さ、動きの特徴をどう引き出すか? がポイントになります。ヨーロッパでは各国ごとに人形劇文化があり、毎年どこかで人形劇祭を開催しています。そこで上演されるオブジェクトシアターを日本に紹介したい! という思いがありました。

日本の人形劇文化は文楽の影響が非常に強く、文楽は世界中から尊敬されています。そして、日本を含めたアジア全般に同じ傾向があるのですが、伝統人形劇の文化が強い国は現代人形劇が発展しづらい。伝統芸能は技術の習得や修練に長い時間を要するため、若い人が気軽に人形劇を習得しづらい現状があります。他方、ヨーロッパで盛んなオブジェクトシアターは、若者や未経験者でも始めやすいのが特徴。お金もかからないし、一人でも始められる。それを背景に、若い人たちによる人形劇シーンが盛り上がっているのです。人形遣いになるためには、高価な人形を買わないといけないし、使いこなせるように練習を重ねないといけない。そのイメージを覆さないと日本の人形劇レベルはなかなか上がらないと考えています。

日本の現代人形劇文化は大正時代に端を発していて、当時の大正教養主義と結びつき、美術家や脚本家が良質のレパートリーを多く残しました。ところが、その成長は80〜90年代にストップしてしまった。ヨーロッパで生まれたオブジェクトシアターも、日本国内で上演される機会はほとんどありません。これはもう、日本の人形劇の現状を力づくで変えていく時期かも…? と考え、下北沢国際人形劇祭を企画しました。
ーーオブジェクトシアターを日本人に馴染みのある表現に置き換えるとすると、どのような具体例が挙げられますか?
そうですねぇ…。実はこれ、私もよく考えるのですが、あまり該当するものがありません。ただ、ピタゴラスイッチは、少し近いのかも。『桃太郎』というシリーズがあり、ボールのようなオブジェクトが鬼のオブジェクトを倒していくのですが、それはちょっと近いかな。

ーー「朝ご飯とトーク」など、プログラムの多様さも下北沢国際人形劇祭の魅力のひとつだと感じます。
海外フェスで誰かと喋る機会って朝ご飯なんですよ。一番の社交場はBARではなく朝食会場。今回、アーティストの皆さんは同じ場所で朝食をとることになっていて、だったらお客さんも一緒に朝ご飯を食べ、作品の見所を聞いたり、交流できたらいいなと。朝ご飯だけ注文してくれれば、入場無料で参加できます。あとは地元の子どもたちや若い学生たちに観て欲しい。25日の午前中は子ども向け無料公演をやります。野外なので暖かい格好で来てもらえたら。もうひとつ画期的なのは、23日夕方のインターナショナル・パペットスラム。これはアメリカ発祥の「パペットスラムネットワーク」からヒントを得ています。ヨーロッパにもあまりない文化で、人形劇の経験不問、短編の一発ネタOK、数分のショート作品をどんどん上演して、実験的な作品がすぐ発表できる。それらを大人たちが夜な夜な楽しむという、大人向けの人形劇。これも無料公演なので、自由に観てもらえたら。もちろん有料公演もありますが、無料企画も各種用意しているので、好きなものを選び、自由に観て頂けたら嬉しいです。

ーー今号の特集に絡めた質問です。山口さんが企画・制作に携わる際、ご自身が「大切にしていること」、そして「強み」を教えて下さい。
そもそも私はプロフェッショナルなプロデューサーではないし、元々はドイツ哲学の研究者で、専門はカントです。博士論文の執筆で疲れ果てた際、子どもと一緒に観た人形劇にハマってしまい…。その時に、歴史の蓄積のようなものが一気にガーッと入ってきて、「人形劇は文化の基礎なのかも!?」と感じました。それ以降ヨーロッパの人形劇を観るようになり、日本の人形劇と全く異なることを知り、更にハマっていきました。で、人形劇に関する活動をしたいと思った時に、演劇や人形劇と無関係の人たちを誘ったんです。だから、スタッフィングが大きなポイントだと思います。しがらみのない、そしてストレスのないチームで始めたので、井戸端会議的というか、「ノンプロ集団が楽しみながらやっているよ」という雰囲気を超えないよう気を付けています。ただ、それを実現するために、助成金の申請をありったけ出しました。日本の研究者は研究費獲得のためにめちゃくちゃ分厚い研究計画書を提出するのですが、長年それを書いているため、申請書を書く筋肉がついてしまいました。悲しいことに。
ーーそれは、山口さんの強みと言えますか?
そうですね、ある種の強みだと思います。研究を進めず計画書ばかり書いて本当に情けないと、絶望的な気持ちになることもありますが、それがこういう形で繋がるのは、ちょっと嬉しいかも。

ーー最後に、フェス開催に向けて山口さんから一言コメントを頂けたら。
最近の日本の演劇って、爆笑できるものが少ないですが、今回のメイン会場、スズナリで上演する作品は全て爆笑できます。観客に一生懸命観る姿勢を強要する「重さ」なんてありません。ヨーロッパの人形劇、特にチェコなど東欧の人形劇は、笑わせてなんぼという感覚で創作されています。仮に45分の作品があるとして、そこに150個ほどの笑いを詰め込み、そこから「それなりの笑い」を100個くらい間引いて、残りの50個を45分で上演するスタイル。ですから、様々な笑いどころがふんだんに散りばめられています。難解だけど面白い、みたいな作品ではなく、上演中ずっと笑いながら観ていられる。そして、同時に考えさせられる。その両立を沢山用意しています。笑えることは、私個人にとっても、人形劇にとっても、非常に重要なこと。笑いが前提の、自由でオープンな国際人形劇祭です。ぜひお越しください。


山口遥子
やまぐちようこ◯東京藝術大学 美術学部 日本学術振興会特別研究員、美術博士。研究活動と並行し、人形劇を中心とした舞台芸術の国際的交流を支援するNPO法人「DEKU ART FORUM」を運営する。また、講師として早稲田大学、成城大学などで教壇に立つ。

24/2/21〜27◎ザ・スズナリ、下北沢アレイホール、下北線路街 空き地、下北沢リンク・パーク、BONUS TRACK
構成・文◇園田喬し
【特集】企画・制作・私
舞台写真とアンケートで振り返る
#SP&A_01
果てとチーク『グーグス・ダーダ』


そこにあるのは、内側からふつふつと沸き上がる「怒り」の感情。改善や希望の見えない社会状況に膝まで浸かり、それでも尚、観る者にとって命綱となり得る作品を生み出そうとする、果てとチーク。同時代性を意識した物語は、特に同世代へ届きやすく、令和に生きる現代人へ孤独な共感をもたらします。その近作を、空間を活かした舞台美術が特徴的な舞台写真&演出家コメントと共に振り返ってみましょう。

作・演出◇升味加耀
出演◇上野哲太郎 神山慎太郎(ガガ) 川村瑞樹(果てとチーク) 小嶋直子 中島有紀乃 渚まな美 松森モヘー(中野坂上デーモンズ) 雪深山福子 横手慎太郎(シンクロ少女) 若武佑
23/12/14〜17◎北千住BUoY

About “SP&A”
舞台写真が「物語る」演劇作品のアーカイブ。
#SP&Aは舞台写真(StagePhoto)と演出家へのQ&A(Answer)で、昨今上演された演目を振り返ります。
Q&A回答者は、升味加耀さん(果てとチーク)



掲載した舞台写真や物語のあらすじなど、
今作に関する解説・コメントをお願いします

A.
遠い昔の隕石落下で起きた土壌汚染により、大きく厚い壁と、広大な砂漠に隔てられた、『私たちの国』の“ソト”と“ナカ”。一見平穏な日常の裏にある、諦めと憎しみが充満した世界で、次第に不穏になっていく社会情勢の中、それぞれに加害性を抱えながらも、懸命に生きる人々を描く群像劇です。国内外の“移民・難民への無関心”をテーマに、2017年、果てとチーク第2回本公演として王子小劇場にて上演した作品を、新たなキャスト、スタッフを迎え、さらに同時代性のある作品として再演しました。

上演作品について。ご自身の感想・気づきなど

A.
2017年の初演時から、今何不自由なく日本で暮らしている自分が、消費行動一つとっても他者を搾取せずにはいられない自分が、「移民・難民への差別と暴力」をテーマとして演劇を作ることの加害性をずっと考えていました。そして、今まさに苦しんでいる国内外の人々と自分との距離を、冷静に見つめるべきだと思い、その“加害性”と“距離感”をキーワードに作品作りを行いました。台本では、当事者の娯楽的消費につながるカタルシスはすべて廃し、演出においては、北千住BUoYという機構だからこその俯瞰の視点を大切にしました。俳優にも参考資料を共有し、登場人物と適切な距離を取った上で、自身の加害性と葛藤しながら、セリフを発語してもらえるよう努めました。今回の観客の皆様のご感想を拝見する限り、その目的はある程度達成できたのではないかな、と思います。


執筆時の着想や、今作に関する発想を
「より刺激したもの」について教えて下さい

A.
2017年当時、メキシコとの国境に、長い長い壁がトランプ考案のもと立てられていました。本作は、その国境間の広大な砂漠を、決死の覚悟で移動する移民のために、ポリタンクの水を置いていくボランティアの存在から、着想を得た戯曲です。また同じ頃、ヨーロッパでも難民危機が叫ばれ、連日大きく報道されていました。一方、日本では始まったばかりの外国人技能実習生制度や、入管の非人道的なあり方及び危険性について、メディアで報道されることは、ごくわずかでした。“ソト”と“ナカ”、そして“壁”という言葉から想起されやすいのは、現在ではガザかと思います。けれども、こういった構造的な差別や暴力を生む無関心は、私たちの住んでいるこの国でも、今まさに起こっていることです。そのため、『グーグス・ダーダ』の執筆に影響を与えた、怒りや虚しさを覚えるような出来事は、今ここに生きているだけでそこかしこにあり、それがとても悲しいです。


公演やイベントなどの企画・制作に携わる際、
自身が大切にしていること、
そして、自身の「強み」を、それぞれ教えて下さい

A.
果てとチークでは、「今、なぜこの作品を上演するのか?」をとても大事にしています。もちろん「楽しいからやりたい!」というシンプルな気持ちも大切ですが、それ以上に、「普段の生活において何に怒りを覚え、どのように表現に昇華し、誰に届けるのか」が重要だと考えています。私たちは、目の前でどんなに不快で醜悪なことが起きても、すべてを諦めてニコニコできる人たちを知っています。そんな自分を責め無力感に苦しみ、いつの間にかこの世界から、ふっといなくなってしまう人たちを知っています。だからこそ、怒りや苦痛を感じても、それを声に出すことができない人へ、「同じことに激怒してる人、ここにいます。だからがんばらなくていいし、生きてるだけで十分です。」ということを、規模は小さくても地道に伝えていき、ゆるく連帯できる作品作りをしたいと思っています。そして多分、こういう目標を一貫して掲げている団体は少ないのかなと感じるので、ある種強味かもしれません。

升味加耀
(劇作家・演出家・俳優/果てとチーク主宰)
[information]
果てとチーク『はやくぜんぶおわってしまえ』(再演)
2024年8月◎都内劇場
果てとチーク『害悪』(再々演)
2024年11月◎都内劇場
構成◇園田喬し 撮影◇木村恵美子(舞台)
【特集】企画・制作・私
舞台写真とアンケートで振り返る
#SP&A_02
演劇ユニットタイダン『引っ越し!』


王子小劇場プロデュースによる若手ショーケース公演『見本市2024』で観劇した一作です。生演奏を取り入れたミュージカルテイストの群像劇は、幕の内弁当をひっくり返したような、「いまやりたいことを全部詰め込みました!」というフレッシュな熱量に包まれていました。舞台写真、演出家コメント、劇中曲など、作品の構成要素を散りばめつつ、タイダンの魅力に迫ります。

作・演出◇飲茶ニラ(タイダン)
出演◇城野史香 酒井まりあ イロハス 飲茶ニラ(以上、タイダン) 石田志門
演奏◇吉田菜那子 とっちきとっちき 坂井治樹(以上、ガクダン)
アンサンブル◇柴いぬ子 匿名希望
24/1/5~9◎王子小劇場(『見本市2024 ~しばいぞめ~』Bチーム参加)

About “SP&A”
舞台写真が「物語る」演劇作品のアーカイブ。
#SP&Aは舞台写真(StagePhoto)と演出家へのQ&A(Answer)で、昨今上演された演目を振り返ります。
Q&A回答者は、飲茶ニラさん(演劇ユニットタイダン)



掲載した舞台写真や物語のあらすじなど、
今作に関する解説・コメントをお願いします
A.
『引っ越し!』という演劇は、就職をきっかけに山しかない街に引っ越してきた新卒会社員の主人公が、がんばって働こうと思ったものの瞬く間に堕落して、社員寮の退去を言い渡され、あっという間に街を出ていくことになってまたお引っ越し! というお話です。入居から退居まで(上演時間が)30分! 一体どうしてこんな慌ただしい演劇になってしまったのでしょうか?
『引っ越し!』は、王子小劇場主催のショーケース「見本市」のためにつくりました。タイダンとして初めて参加するショーケース! わたしたちは、タイダンの特徴を知ってもらえるように、そして、新しい年のはじまりをお祝いするようなハッピーな自己紹介演劇をつくることにしました。
自己紹介演劇なので、脚本を書くにあたって、自分たちの演劇の特徴を考えてみました。たくさんの展開に、たくさんのキャラクター、光も音もいっぱいで、楽器演奏もある。舞台上には、役者や楽器隊がひしめいていて、しかも、みんなせわしなく動きまわるからもうキツキツ。でも舞台美術は派手にしたいし、小道具もふんだんに使いたいし、衣装だって何度も着替えたい! どうしよう?
ここまで読んでいただいてわかる通り、わたしたちは情報量が多ければ多いほど面白いと思っている、マキシマリスト集団です。好きなものはぜんぶ舞台上に出したいし、足し算しかできません。ショーケースで特に不安だったのは、他団体との間の転換時間中に、舞台上からこの物量を搬出・撤収できるかどうかということでした。いろいろ考えた結果、じゃあ上演時間中に運び入れて、片付けちゃえばいいじゃん! ということになって、引っ越しというシチュエーションを選択しました。
こうして、不純な動機で決まったシチュエーション。もう開き直って、「ショーケースの制限時間、ちゃんと守れるかしら?」という、わたしたちの気が気じゃなさも舞台上にのせてしまおう! となり、舞台上にタイマーを置きました。そして、「この演劇は時間内に終わるのか!?」というメタ視点と、「ちゃんと引っ越しできるのか!?」という主人公の視点が交錯した、爆速タイムアタック演劇が生まれました。


上演作品について。ご自身の感想・気づきなど

A.
『引っ越し!』は、見本市の募集を見て急遽つくった演劇だったので、客演の方を呼ぶことをあまりしませんでした。だから、タイダンとガクダン(タイダンの演劇の音楽をつかさどる楽器隊)の全員が、役者をすることになりました。舞台上で喋っていた役者全員が、脚本や音楽や美術や衣装や小道具……といった仕事もしていました。その結果、この演劇への各々の解像度が自然と上がってしまい、みんなの創作意欲が高揚せざるを得なかったんだと思います。ペットの金魚が川に逃げてしまうシーンで金魚役の役者が歌うオペラ調の曲の歌詞がイタリア語になっていたり、小道具の金魚が新春にちなんでおせちのチラシでつくられていました。笑っちゃうような、そういった細かい部分への強いこだわりの積み重ねで、この演劇はできていたと思います。
また、ショーケースだったので、王子小劇場の方々や、他の参加団体の方々に、ずいぶん場を整えてもらいました。ショーケースという制約があるからこそ、これまでになかった視点があって、そこに新しいチャレンジの機会が生まれていました。制約は成長の種だなと実感しましたし、演劇は制約があればあるほど面白いとも思いました。


ご自身の「作風」の特徴は?

A.
わたしの「作風」の特徴は、明るくない話を明るくえがくことです。『引っ越し!』もあらすじだけみると新社会人の転落という感じで、あまり明るいものではありませんでした。タイダンは「ずんずんちゃっちゃと軽やかに、ぴりりと辛い」というコンセプトで活動しています。「ずんずんちゃっちゃと」楽器を演奏したり、歌ったり踊ったり、台詞は「軽やかに」。そんなにぎやかさのなかに、実は「ピリリと辛い」テーマが隠されていたりします。観劇中はひたすら楽しいと思っていただいて、でも、帰り道に「もしかしたら、ちょっとスパイスが効いていたかも?」とふと思い返してもらえるような、そんな演劇をつくることが目標です。


公演やイベントなどの企画・制作に携わる際、
自身が大切にしていること、そして、自身の「強み」を、それぞれ教えて下さい

A.
大切にしていることは、脚本演出だからといって、自分ひとりで演劇を完成させようとしないことです。特に、脚本を書くときは、台詞やト書きでシーンの方向性を確定させすぎないように意識しています。余白がある脚本を稽古場に持っていって、台詞の不足を正直に伝えます。こういうことがしたいけれど台詞では説明したくないから他の表現方法を考えてほしいと、周囲に相談したりしています。
わたしの「強み」は、演技、音楽、美術、演出、音響、照明、いろんなスペシャルな才能と技術を持った人に囲まれていることです。信頼できるユニット員や座組の方々がいるので、わたしは、自分のなかに浮かんだアイディアを、できるかできないかは置いておいていったん伝えてみることができます。「そんなこと、金魚の水槽でジンベエザメが飼いたいと言ってるようなものだ!」とか怒られるのですが、みなさんすぐに切り替わり、「どうやったらできるかな?」と楽しそうに考えてくれます。そして、わたし1人ではとても思いつかないような奇想天外なこと(でも同時に実現可能なこと)を言い出してくれます。恵まれた環境にいるなと思います。

飲茶ニラ
(劇作家・演出家/演劇ユニットタイダン)
[information]
演劇ユニットタイダン『ホームシック!?』
24/3/15~17◎荻窪小劇場
構成◇園田喬し 撮影(舞台・映像)◇渡邊結衣(studio hiari) 劇中曲◇Composed by 坂井治樹
【特集】企画・制作・私
#【検証】稽古場見学に言葉はいらない!? /ひげ太夫

Q.企画・制作に携わる際、ご自身が「大切にしていること」、そして「強み」を教えて下さい
企画・制作で大切にしているのは「どんなお客様がご覧になるか」ということです。幼稚園のイベントなのか、小学生か、屋外のイベントで家族連れが自由におしゃべりしながら観るのか、演劇好きが集まるイベントなのか、それによって、制作も作品作りも変わってきます。例えば小学生向けであれば、生徒さんが劇中に参加してくれたり、公演後にワークショップがあったりします。保護者の方にも観て頂きたい、と学校側に掛け合う事もあります。
本公演を企画するときに大切なのは「沢山の人が気持ちよく協力してくれるかどうか」です。金銭的なことはもちろんですが、一番は出演者・スタッフのスケジュールが合うかどうか。ひげ太夫は組み体操を組む劇団なので、その技術に長けたメンバー達がいないと始まりません。みんなのスケジュールを中心に公演日程を組んでいると言っても過言ではありません。
企画・制作をする上での強みは無いです。毎回毎回、問題にぶち当たり、話し合い解決して、また悩んでの繰り返しです。長い事やっているのに要領はとても悪いです。ただメンバー達が、私と違う視点から意見を言ってくれたり助けてくれたりするので、その解決する過程も楽しかったりして、そんな呑気な部分が、まあ強いて言えば自分の強みと言えなくもない、かもです!
吉村やよひ(劇作家・演出家・俳優/ひげ太夫)
ひげ太夫 第44回公演『メコン流れ星』
作・演出◇吉村やよひ
出演◇吉村やよひ 成田みわ子(以上、ひげ太夫)/ 石川リサ 井上莉沙(劇団桟敷童子) けもひろみ 斉藤ゆき ジョニー(劇団天動虫) なしお成(ドルチェスター) 平石祥子 星村美絵子 もりちえ(劇団桟敷童子) やまくろなな(劇団大富豪)
2024年2月20日(火)〜25日(日)
会場◇テアトルBONBON
構成・文◇園田喬し 撮影◇山崎伸康(稽古)
#ココカラリスト

2024年2月中旬から4月中旬の公演リンク
#えんぶスポットライト2024 開催中!
#アンケート企画/『わたしの出番です!』
娯楽溢れる世界の片隅…
わたしを照らすのはわたしです!
自身の活動、趣味、その他なんでもアリ!で、
アーティストが“自ら”魅力を(てんこ盛り)発信!
意欲あふるるアーティスト達に出逢いましょう!










#オーディション情報/『あなたの出番です!』
巷のちょっと気になったオーディション情報を編集部員がPick Up!
皆様のモチベーション、上がること必定でございます。
※クリックすると詳細がご覧になれます。
脚本:藤本浩多郎、演出:丘野暁で送る
女性キャストでのみ構築する華やかで、
エンターテインメント性溢れる舞台演劇
【概要】
オーディション日:書類審査後、2/16、17面接
公演:2024年4/4(木)〜7(日)@Studio青猫
【詳細】
https://stage.corich.jp/bbs/201668
【〆切】
2024年2/12
生田みゆき(文学座/理性的な変人たち)演出で北村想作『寿歌』を上演。
人間の弱さと強さを共に認めながら、
何とか今の苦しい状況を乗り切れる糧となるような上演を目指す。
【概要】
オーディション日:書類&動画選考の後
・対面1次選考 3/6(水)・7(木)・8(金)・9(土)
(それぞれ①10:30~②12:15~③14:00~いずれか)
・対面2次選考 3/14(木)・15(金)10:00~17:00
公演:2024年9/13(金)~17(火)@北千住BUoY
【詳細】
https://henzinzin.wixsite.com/mysite/vol-4hogiuta-audition
【〆切】
2024年2/15
「演劇に身を捧げるバカ野郎を求めております」
熱いハートを持った出演者を募集。WSのみの参加も可能。
【概要】
オーディション日:2/24(土)または2/25(日)(両日13~17時)
公演:2024年8/7(水)~8/12(月)(予定)@王子小劇場
【詳細】
https://stage.corich.jp/bbs/199531
【〆切】
2024年2/19
情熱と夢を持った未来ある女優たちを応援し、スキルアップを目指す。
チケットノルマ無し、アンサンブル無し。
【概要】
オーディション日:書類審査合格者は2/28(水)に都内にて実技審査
公演:2024年5/24(金)~6/2(日)@中目黒キンケロ・シアター
【詳細】
https://livedog.net/audition/
【〆切】
郵送応募:2024年2/21(水) 必着
ネット応募:2024年2/21(水) 23:00
「上手くなくてもいい!とにかく歌うことが好き!楽しい!舞台に立ちたい!」
どなたでも大歓迎のオーディション。
【概要】
オーディション日:一次書類審査通過者と二次審査の面談日を調整。
公演:2024年6/25(火)~6/30(日)(予定)@山王FOREST 大森theater
【詳細】
https://stage.corich.jp/bbs/202196
【〆切】
2024年2/29
芸能プロダクションCroire Offceが主催となり初めての舞台公演。
人気脚本家ますもとたくやによるオリジナル作品を上演。
【概要】
オーディション日:一次書類審査通過後、二次対面審査@3/9港区某所
公演:2024年6/6(木)~6/10(月)@A-Garage
【詳細】
https://stage.corich.jp/bbs/190778
【〆切】
2024年2/29
「何が起きるかは自分の内面よりも相手がすることによる」
導入部を丁寧に説明しながらやっていく初心者歓迎のマイズナーWS
【概要】
WS日:2024年2月19(月)、20(火)
共に13:00〜17:00@東高円寺駅のスタジオ
参加費:8000円(U25 7000円)
【詳細】
https://sogonishimura.com/blog/1985/
【〆切】
定員12名先着順
テーマは自由。応募資格は「自称35歳以下、プロの脚本家を目指す方」。
受賞作は映像化の可能性あり。
【賞】
●大賞(1編)賞金300万円
●佳作(数編)賞金50万円
【詳細】
https://fuji.young-scenario.com
【〆切】
2024年2/29(木)
オリジナル未発表のエッセイ、テーマ不問。
400字詰め原稿用紙2枚以上5枚以内で提出。
【賞】
●最優秀賞(1編)表彰状、5万円相当の図書カード
●優秀賞(1編)表彰状、3万円相当の図書カード
●佳作(5編)表彰状、1万円相当の図書カード
●奨励賞(若干数/中学生および高校生の作品のみ対象)表彰状、5000円相当の図書カード
【詳細】
http://www.city.wakayama.wakayama.jp/kurashi/bunka_sports/1001119/1055471.html
【〆切】
2024年3/15(金)
上演時間おおむね60分以内の短編戯曲を募集
戯曲と社会の出会いの場として優れた作品を発掘し新たな上演の機会に繋げることで、次代の演劇を担う人材を応援し続ける戯曲賞となることを目指す
【賞】
●大賞:賞金最大50万円
※大賞作品が複数となる場合、結果に応じて賞金額が決まる
※最終候補作品(大賞作品含む)は1冊の戯曲集として出版
【詳細】
https://www.gekito.jp/?pg=1695196742
【〆切】
2024年3/24(日)17:00必着
※作品郵送受付期間は2024年3/31(日)当日消印有効
中篇から長篇の広義のSF小説を募集。受賞作品は、日本国内では単行本及び電子書籍で刊行し
英語、中国語に翻訳し、世界へ向けた電子配信。
【賞】
●賞 正賞/賞牌、副賞/100万円
【詳細】
https://www.hayakawa-online.co.jp/new/2023-09-14-151548.html
【〆切】
2024年3/31(日) 消印有効
◆総合情報サイト◆
STAFF
今号のスタッフ/info
板子マコト
小野寺ずる
Q本かよ
佐久間麻由
園田喬し
高雄一徳
『演劇ターン』

『演劇ターン』VOL.005
2024年2月9日発行
[表紙]橘花梨・小口ふみか
[表紙写真]山崎伸康
[編集]『演劇ターン』編集部
[デザイン]Q本かよ
[編集人]園田喬し
[発行人]坂口真人
[発行]
株式会社えんぶ
〒164-0001 東京都中野区中野3-27-16
TEL:03-3229-2424
令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成