大和悠河のパリから贈るエトワール紀行 ~ロマンチックに紡ぐ魔法~①

宝塚トップスター・女優・大和悠河 が紡ぐ、伝説の都からの最新アートのトキメキとカンゲキのクロニクル。
『えんぶ☆TOWN』連載では、大和悠河が石畳のパリで感じた街の鼓動や、心温まる出会いから得た感動、その感動から生まれるインスピレーションで、あなたの日常に新たな光を注ぐことでしょう。
大和悠河の感性と情熱が生み出す独自の美学―既成概念を超える『C調と遊び心』―が、未知なる芸術の航路へとあなたをご招待します。

「なんだ!このファンテーヌ!!すごい!こんなファンテーヌ、初めて観た!」
これが、私が2024-2025年パリ初演出の『レ・ミゼラブル』をシャトレ劇場で観たときの、最初の驚きでした。

昨年10月、アートとエンターテインメントの街「えんぶ☆TOWN」にコメントを掲載する機会をいただきました。宝塚歌劇団に入団したばかりの下級生時代からお世話になってきた「えんぶ」に、こうして関わることができたことに感謝の気持ちでいっぱいです。そして今回、パリを拠点に連載をさせていただくことになり、運命的な巡り合わせに胸を踊らせています。
私にとってこれまでの経験が生かされる瞬間であり、また未知なる舞台への扉が開かれる前触れのような気がします。

2024年夏、7月上旬。オリンピックで賑わうパリに、私は突然足を踏み入れパリに引越ししました。理由や経緯を語るよりも、ただ「導かれるようにして、このパリの街に来た」とだけお伝えしたいと思います。
新たな地での生活が始まるその瞬間、心のどこかで既に大きな変化の予感がしています。

やがてオリンピックが終わり、パリの重厚な劇場の扉が開き、音楽と物語の躍動が街全体を包みはじめました。私は舞台を愛しアートに生きる者として、日々、この街の舞台のリズムに身を委ねていました。パリは私に無限のインスピレーションを与えてくれました。

短期の旅でパリに出入りしていた時やオリンピックの時の刺激的な日々の発見とは全く違う新しい発見!
アートが日常の中に当たり前にあるパリでの新鮮な出会いが、『レ・ミゼラブル』でした。

🇫🇷「パリでの『レ・ミゼラブル』フランス語での初演出!ジャン・バルジャンの苦悩、ファンテーヌの絶望、革命に立ち上がる若者たちの叫び——それらすべてがフランス語の響きとともに、力強く心に飛び込んできました。

なんだろう?この芯のある強さは?これは私たちの物語!私たちの国!まるで『レ・ミゼラブル』が長い年月を経て、ついに“フランスのもの”になったような感覚。フランス国旗が掲げられた瞬間、劇場全体が一つの大きな息吹に包まれ、歓喜の声が響き渡りました。

そしてその瞬間、観客と舞台が一体となる不思議な空気が生まれ、すべての心がひとつに——。私たちはこの物語を共に創り上げているんだと、ふと思いました。
「この感覚、知っている!この熱狂、私の心が知っている。あの時と同じだ――宝塚で舞台に立っていた、あの瞬間。」
まるで、一つの大きな家族が共に夢を見ているかのようなその瞬間、私の中に深い懐かしさがこみあげてきました。

“そう、これは宝塚だ”  私がトップスターで宝塚で迎えた大千秋楽の瞬間のようでした。全ての想いがひとつになったあの瞬間と重なりました。

宝塚の大千秋楽。舞台に関わったすべての人の感謝、喜び、夢への祝福、想いがひとつになり涙と拍手となって劇場に響き渡る――。

フランスの『レ・ミゼラブル』と宝塚の公演では、表現される想いの種類は違うけど、劇場全体がひとつになる感動、あの熱狂、あの魂の共鳴は、まったく同じでした。

フランスの人々の『レ・ミゼラブル』への想いが、私の心に深く響きました。それは私が宝塚で培った舞台への想い、そして“舞台人”としての『誇り』と重なる瞬間でした。

これから、このパリを拠点に私の心を綴っていきます。どうぞ、この連載を通して、ぜひ一緒に旅を楽しんでいただけたら嬉しいです。

次回、『レ・ミゼラブル』の舞台で出会った、衝撃的なファンテーヌの物語をお届けします。どうぞお楽しみに。

文◇大和悠河 写真提供:(株)GOOGA