2025年11月より、えんぶ本誌に「シバイのミカタ」が復活!
本誌に載せきれなかった公演のご紹介もこちらに掲載いたします。
現在発売中の、えんぶ2月号本誌に掲載している舞台レビューコーナー「シバイのミカタ」を公開!
次回のえんぶ4月号の原稿も募集しています(締切は1月31日)。
JACROW
『THIS HOUSE』
原作◇ジェームズ・グレアム 翻訳◇野月敦 演出◇中村ノブアキ
イギリスを代表する若手劇作家の『This House(原題)』日本初上演
2025/11/19〜25◎シアタートップス

BANG A GONG!本邦初演政争劇
マーク・ボラン「BANG A GONG」の歌声と共にゴングが鳴り開幕する、サッチャー政権前夜のイギリス下院を舞台とした、保守党と労働党の政争劇。劇作家ジェームズ・グレアムはサウスゲート監督時代のサッカーイングランド代表を描いた『Dear England』の印象が深いが、本作も同様に、時間、場所、エピソード、重要な節目(本作で言えば法案)を縦横無尽に駆け巡る、ユーモアとシャープさを併せ持った痛快な筆致である。生硬な翻訳と真面目な演出、直線的な演技で、3時間あるドラマを立ち上げてくれた翻訳者、カンパニーには感謝の念しか無い。ありがとうございます。継続的に翻訳劇をとりあげてほしい。
writer/黒澤世莉 https://serikurosawa.com
EPOCH MAN
『我ら宇宙の塵』(再演)
作・演出・美術◇小沢道成 映像◇新保瑛加 音楽◇オレノグラフィティ
出演◇池谷のぶえ 渡邊りょう 異儀田夏葉 ぎたろー 小沢道成 谷恭輔(スウィング)
2025/10/19〜11/3◎新宿シアタートップス他

どこまでも広がる宇宙と優しい世界
第31回読売演劇大賞「優秀作品賞」「優秀演出家賞」「最優秀女優賞」3部門を受賞した作品の再演。人は死んだらどうなるの? どこへいくの? 父親を亡くした星太郎が、大人でも明確に答えられない答えを探しに家を出る。それを探す母。目の前に広がる満点の星は、劇場を飛び越えた宇宙空間。ステージ3面を囲む映像技術と、パペットの融合は演劇の原点と技術のコラボ。そして、小劇場だからこそ外へと広がる世界と想像力。星太郎がたどり着いた答えに涙が止まらなかった。脚本、演出、映像、キャスト…その全てが一体となった素晴らしい作品でした。
writer/辻林 遙
げんこつ団
『800~1200度のカタルシス』
脚本・演出◇一十口 裏 演出・振付・出演◇植木早苗
出演◇春原久子 河野美菜 丹野薫 三明真実 白宮綺桜 生江美香穂 清水さと
2025/10/29〜11/2◎小劇場 楽園

たとえ高熱で地球の底が抜けても俳優達は元気だ!
800〜1200度というのは火葬場で遺体を焼く温度のことで。カタルシスの語源はアリストテレスが悲劇論で「悲劇が観客の心に怖れと憐れみの感情を呼び起こすことで精神を浄化する効果」とか低いレベルで知ったかぶったところで。いつものげんこつ団ならあまり役にも立たない情報のだが。今回の公演では案外それらしくもあり。日本中の焼き場が大忙しで遺体を焼くのもままならず困惑する人が続出したり。その中の一人がたまたま「何も書いたことのないベテラン作家」だったり。その同級生達が過去のいじめ?の話をしたり。あげくには火葬場の熱で地球の底が抜けてたりしても。やっぱり後に残るのは俳優達の存在だった! それにしてもげんこつ団のダンスはあまりに素敵だ!
writer/のび太
システム個人 第4回本公演
『今すぐ素敵な座標へ進んで』
作・演出◇林泰製 出演◇榎並夕起 奥山樹生 小林桃香 佐々木タケシ 中村亮太 藤本悠希 宝保里実 水口昂之 村上弦 中西柚貴 杏奈 さとなかほがらか 帯金ゆかり
2025/11/6〜9◎下北沢シアター711

たぶん、令和で一番忙しいタイムマシンSF
壊れたルービックキューブ型タイムマシンのせいで、自分の意思と関係なく、時間移動してしまう登場人物たち。会話の途中、人生の一大事、世紀の瞬間もお構いなしにシーンが終了して暗転、物語は次の時代へ。あくまで体感だが、5分に1回位のペースで時空が飛ぶ。こんなに“忙しい”タイムスリップものは、見たことがない。令和・平成・昭和をまたにかけ、繰り返される実にくだらない悲喜こもごも。そのコラージュがやがて、小林桃香の演じるクセ強な魅力のヒロインの一生を描き出し、ラスト、令和のとある1日に結実していく。SF設定と戯曲のメタ構造を噛み合わせながら、物語の盤面を揃えていく巧みな構成に、観ていて脳汁が止まらなかった。
writer/イトウシンタロウ http://nice-stalker.com(イトウシンタロウ主宰団体)
《お詫びと訂正》本誌掲載の際、誤って(再演)と記載がありましたが、再演ではなく新作です。関係者の皆様にはご迷惑をおかけしたことを謹んでお詫び申し上げます。
舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」ハンダ・ゴテ・リサーチ&ディベロップメント
『第三の手』
作◇シュヴァーボヴァー&ドブロディンスカー kosmo_nauty デルネル&ニェメツ プロハースカ
出演◇トマーシュ・プロハースカ ヴェロニカ・シュヴァーボヴァー ヤン・デルネル/ヴァヴジネツ・ニェメツ
2025/10/17〜19◎東京芸術劇場シアターウエスト

「モノ」が役者となる魔法の演劇
日常の「物(オブジェクト)」をそのまま人形に見立て、擬人化せずに操作し、物語や詩的世界を表現する、枠にとらわれない舞台芸術「オブジェクトシアター」。まるでメキシコの「死者の日」の祭壇のように聖画や髑髏そして大量の手作りの刺繍を施した装飾品で飾り立てた間口1m足らずの額縁舞台。3人の操演者の持つボートのオールに装着された模造の手で操作される夥しい物たちは、一言も声を発することなくひたすら額縁舞台を、行き過ぎる、佇む、回るなどするだけ。しかしクラシック、マンボ、ノイズミュージックが鳴り響き、照明の劇的演出により壮大なイタリアオペラを見ているような錯覚にさえ陥る。説明を排し能動的解読を求める美学があった。
writer/百草
タイダン
『オオオ♪オォシゴト!』
脚本•演出◇飲茶ニラ 出演◇酒井まりあ 城野史香 東京ドム子 石俐莎 安東信助 岡本セキユ 葛生大雅 早乙女ゆう 徐永行 安西達紀 古閑 由布子 しみずあかり 水野綾 矢島選手権
2025/10/31〜11/3◎インディペンデントシアターOji

身勝手な芝居のみかた
オワコン雑誌の編集者達が諸事情の積み重ねで負のスパイラル状態に陥り、最後は休刊になってしまうお話しで、俳優達は暗くなりがちな内容をカリカチュアライズされた演技で堅実にフォローしてくれていました。ただフリーターの私は夢中になる仕事があるのが羨ましい、終盤にある主人公の「夢のような?」大恋愛冒険も夢見ることさえできないと暗い気持ちになっていきました。そんな中、合間合間に出てくる音楽隊のみなさんの歌声や、献身的な振る舞い、無理のない演技に強く惹かれていきました。私の中でメインとサブ的な存在が逆転して、お芝居全体が興味深いアンサンブルに替わりました。なんだかホッとしました。
writer/ゆきこ
月刊「根本宗子」
『Marriage Hunting』(KOREAN ver.)
作・演出◇根本宗子 出演◇(JAPANESE)小日向星一 根本宗子 (ENGLISH)東島京 まりあ(KOREAN)キム・ヨンフン キム・ボギョン
2025/10/17〜26◎中野HOPE

演劇は言葉がわからなくても大丈夫?
なんの情報も無くふらりと寄った中野にある小劇場でとても素敵な出会いがありました。それは韓国の男女の俳優が韓国語で演じる二人芝居で、舞台上には机が1つと椅子が二つ、俳優が向き合ってアップテンポで喋る少しコミカルな会話劇でした。俳優二人がとても魅力的でした。コンビネーションも良く、清潔で、色気があって、味があり、パワーもある。私は韓国語が全くわからないのですが、それを超えての存在感で狐につままれたような幸せな60分でした。後でわかったことですが、場所は結婚相談所でのやりとりで、月刊「根本宗子」が企画した日本語・英語・韓国語バージョンの一つでした。なんと素敵な企画で他の二つを見逃したのが残念でした。
writer/星野光太郎
『時をかけ・る~LOSER~2』
脚本◇赤澤ムック 演出◇平野良 音楽◇オレノグラフィティ
出演◇安西慎太郎 木ノ本嶺浩 松田岳 前川優希 / 内藤大希 平野良
2025/10/30〜11/4◎品川プリンスホテル クラブeX

白衣からの早着替え、戦いの先を照らし出す
歴史上の「LOSER(敗者)」に焦点を当てた研究所シリーズ第2弾。テーマは幕末維新。A〜Fの各演目は、1本約30分なのを忘れる密度で、研究員=俳優6名の魅力を余すことなく届けてくれる。演劇のジャンルだけでなく物語の余韻も異なるため、受け止める脳が嬉しい悲鳴を上げた。特にA(岡田以蔵)とF(坂本龍馬)は、「土佐藩出身の主人公」「話の核となる人物を安西慎太郎と平野良が演じる」という点は共通しつつ、見事なまでの好対照。緊張感に満ちた駆け引き、思わず見惚れる立ち回り、次元を飛び越えるときめき、想いとともに重なる歌声……ステージ上の全てを味わい尽くしたくなる、銘酒の飲み比べのような観劇体験だった。
writer/クロエ https://note.com/kuroe3chi
東宝 ミュージカル
『バクダッド・カフェ』
脚本◇パーシー・アドロン/エレオノーレ・アドロン 音楽◇ボブ・テルソン 歌詞◇リー・ブルーワー/パーシー・アドロン/ボブ・テルソン 演出◇小山ゆうな 出演◇花總まり 森公美子 小西遼生 清水美依紗 松田凌 芋洗坂係長 岸祐二 坂元健児 太田緑ロランス 越永健太郎 ほか
2025/11/2〜23◎シアタークリエ

人と人との絆が生む奇跡の物語
アメリカ西部の砂漠の真ん中にあるカフェに、ひとりのドイツ人旅者が現れたことで、関わる人々の止まっていた時間が動きだす様を描いた名画『バクダッド・カフェ』のミュージカル版日本初演である。演出の小山ゆうなの深い演劇愛を感じさせる真っ直ぐな視点が、見渡す限りの砂漠のなかで煮詰まった人間関係を、乘峯雅寛の絵本のような美術と共に描き出すなか、ドイツ人女性ジャスミンを演じる花總まりの姫役者ぶりと、思いの丈を歌に載せるカフェの女主人ブレンダの森公美子の地に足の着いた演技の掛け合わせが生むファンタジーが鮮烈。登場人物たちそれぞれの胸の内を伝える不朽の名曲「Calling You」も美しく響き、人と人との絆の尊さを伝える舞台に仕上がった。
writer/橘
SP/ACE=project / Casual Meets Shakespeare
『ヴェニスの商人CS』
原作◇W・シェイクスピア 出演◇ウチクリ内倉 田口涼 鯨井康介 北村健人 中村太郎 松井勇歩 茜屋日海夏 中村裕香里 大平峻也 他
2025/11/1〜9◎IMA HALL

令和に普段着で語り直されるシェイクスピア
「普段着でシェイクスピア」をコンセプトに、シェイクスピア作品を現代の日本向けに描く同シリーズ。今作ではイタリアのヴェニスを舞台に金貸しや求婚、キリスト教とユダヤ教の対立が絡み合う喜劇がシリアス版/コメディ版/シャッフル版で上演された。高利貸しをキリスト教に改宗させて大団円とする原作通りの結末は、令和で見るには違和感が大きい。けれど、宗教を超えて結ばれた男女が無意識の差別について語り合う、オリジナルのエピローグが追加されていたことが光に思えた。「幸(こう)を幸たらしめることもまた私たちのすべきこと」。逆転劇の末のセリフが今も胸に沁みている。宗教観にとらわれず観劇できた幸せを噛み締めた。
writer/ぺぺアジこ https://note.com/ajipepepe
Mrs.fictions
『再生ミセスフィクションズ3』
作・演出◇中嶋康太 出演◇岡野康弘 井澤佳奈 亀田梨沙 ヒロシエリ みしゃむーそ 小見美幸 豊田可奈子 永田佑衣 片腹俊彦 大宮二郎 川鍋知記 他
2025/11/13〜17◎武蔵野芸能劇場・小劇場

感情揺さぶる、色とりどりの短編集
Mrs.fictionsの過去作や未発表短編を5本上演。切なくてあたたかな家族愛で1本目から涙を流したと思ったら、田舎のヤンキーたちと宇宙人の出会いと別れ。夏祭りで殺人を企てる同級生2人の過去と現在。麗しき三姉妹のささやかなクリスマス。そして脚本家に起きた悲恋と次回作。どの作品も短編とは思えない濃厚さ。それぞれの色が際立っていて、終演後はこちらの感情をすべて持っていかれたような感覚に襲われた。セリフにもなっていた、劇団の「人と人とは出会わなくてはならない」というスローガンと、新たな芝居との出会いに感謝。次回作にも期待。
writer/ひろ https://x.com/hiro165
体感型朗読劇
『神楽坂怪奇譚「棲」二〇二五』
企画・演出◇朴璐美 原作・脚本◇藤沢文翁 出演◇一路真輝 梶裕貴 鬼頭明里 湖月わたる 咲妃みゆ 櫻井孝宏 島﨑信長 下野紘 関智一 土屋神葉 早見沙織 東啓介 山路和弘(50音順/日替わり)
2025/11/12〜16◎シアターモリエール

朗読なればこその没入型怪奇譚
神楽坂を愛した明治の文豪・泉鏡花が「天守物語」を生み出した裏で体験したのは……。開演前から女童が微かに響かせる鈴の音、客席に取り囲まれた円形舞台、その上には背中合わせの椅子が二脚。「怪奇譚」に相応しい雰囲気の中、現れる鏡花と謎の女。二人の台詞の緩急に合わせ右に左に回転する舞台が酩酊感を高め、今眼の前にあるのは嘘か真か夢か現か? 「帰したくなくなった……」すべては神楽坂に棲むナニカの思惑どおりなのか、それとも鏡花の物書きとしての業がナニカを引き寄せてしまったのか。終演後この物語を聞いてしまった私も、もはやその一部となって逃れられないのかと気づき、改めて背筋が寒くなった。
writer/きら
中間アヤカ
『Hello, I’m Your New Neighbor./こんにちは、今日からお隣さんです。〈翔んで京都編〉』
ダンス・製作◇中間アヤカ 2025/10/4〜12◎京都・出町周辺
「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2025」Showsプログラム
https://kyoto-ex.jp/program/ayaka-nakama/

町の見方を楽しく変容させたパフォーマンス
劇場を公園に設えたり、オリジナルの野外劇場を作るなど、身体を置く場所ごと作品にしたダンスを作る中間アヤカ。彼女が神戸に拠点を移した時に発表した作品を、京都バージョンにして再演した。「自分がこれから暮らす町を、挨拶がてら歩行する」という視点で、中間の後ろを着いて、ごく普通の商店街や路地を散策。ユニークな風景が現れると、突如ダンスやゲームなどのイベントが発生する。日常の中で何気なく見ていた場所が、ふいに「特別な空間」にチェンジ。次第に民家の玄関の日用品や通行人など、町中のあらゆるものが作品の仕掛けに見えてくる。わずか1時間で、町への眼差しがガラリと変わるような散歩。この背中に着いていって良かった。
writer/吉永美和子

