さとうほなみ主演、山田佳奈の新作『剥愛』開幕!
山田佳奈が主宰するロ字ック、4年ぶりの新作舞台『剥愛』が11月10日にシアタートラムにて開幕した。その公演のオフィシャルレポートと舞台写真が届いた。
片田舎の集落にある剥製師の工房を舞台に現代社会を反映しながら、家族愛のゆがみ、欲望、人の過ちを描いている。
映画、ドラマで躍進が続く、さとうほなみが主演をつとめ、そのほか、瀬戸さおり、山中聡、岩男海史、柿丸美智恵、吉見一豊という個性豊かな実力派俳優陣が集結した
【囲み取材レポート】
初日を前に山田佳奈と出演者への囲み取材が行われた。
冒頭、本公演主宰の山田佳奈は本作について、「ロ字ックの新作公演としては4年ぶりの公演となりました。今回コロナを経て新作公演が上演できることをとても嬉しく思っております。今回6名の本当に強靭な俳優さんたちのお力をお借りできたことがとても嬉しくて、これからゲネプロ、本番を迎えるんですけども、みなさまに楽しんでもらえる出来になったのではないかなと思っております。楽しみにしていただければと思います」と挨拶。
初日を迎えた心境について、主演・さとうは「素敵な作品に出会えたなという気持ちでいっぱいです。楽しんでいただければと思いますので、よろしくお願いします!」と喜びを語った。さとうの妹役を演じる瀬戸さおりは「まずは初日を無事に迎えられそうなので、とても嬉しい気持ちです。稽古場では本当に豊かな時間を過ごせたので本番でも楽しい時間を過ごすと思えるとワクワクします」と声を弾ませた。
「主演さとうほなみさんの『化けの皮』剥いだらこんな人だった、またはこんな一面があった! 」という質問に、山田が「剥製が苦手なんだよね!取材のインタビューで苦手なことを話していて、舞台美術出来上がった時に剥製を見て可愛いって言ってたけど『嘘じゃん!』となりました!」と暴露すると、さとうは「いや、本当にダメだったんですよ。ファーすら触れないくらい苦手で。でも、今回の舞台のために剥製工房に見学にいかせていただけて、そこで「可愛いっ!」と思えるようになったんです。なので、以前取材を受けた時は苦手だったんです!今はオッケーです!」と弁解した。また、岩尾は「僕が捌けていくシーンで、遠くにゆっくり幕に向かって歩く90歳くらいのお婆さんがみえるんです」と話すも、即座に周りから「それさとうほなみだよ」とツッコミが入り、チームワークたっぷりに舞台袖の様子が明かされた。
剥製に関して、「工房で一つ一つ作っていく過程を見せていただけて、彼らの意義や精神性が垣間見れて、安易に「嫌なもの」って言えなくなる感じがしましたね。新しい命を吹き込むことって尊い作業だなと思いましたね」(山田)「剥製師のおじいちゃんが、出来上がったものを見せてくれた時にものすごい笑顔になっていて、いいなって思いましたね」(吉見)とそれぞれ思いを語った。
さらに、さとうについて「すごく本能的に動く人だなとお芝居やってても思うし、ロックなイメージだったんですけど、お芝居をやっていてすっごい繊細な部分が見えてきて。大胆さもあるけどすごく繊細な部分を表現してらっしゃるので、そういうところにも注目をしていただけたらいいなと思います」(瀬戸)「僕も最初のイメージは革パン履いてドラムのバチを振り回しているようなイメージだったのですが、1ヶ月稽古を一緒にやっていて、「ちょっと芝居の話をしよう」と時間を作ってもらった時に、すごく繊細な話をされて、それこそ”乙女”というか、とても印象が変わりましたね」(山中)と明かした。
一方、「さとうさんから見て、この人の「化けの皮」剥いだらこんな人だったも教えてください」の質問に、さとうは「1ヶ月稽古していて、結構重ためなお話ではあるんですけど、すごく面白い役者さんが揃っているので笑える部分もあって。ずーっとさおりちゃんが笑っているので一番のゲラだと思っていたのですが、通し稽古が始まると一番ゲラなのは吉見さんだと発覚しました。何で笑ってるのかを聞いたのですが、自分のセリフで面白くなっちゃったり思い出し笑いしたり、その時に起きたことに対しても笑ってしまってるみたいです!」といい、吉見自身も「共演してくれた方はみんなご存知かと思うのですが、一生笑い続けますね」と認めた。
最後に、主演のさとうは「すごく本当にいい作品に出会えたなという気持ちが大きいです。早く皆さんに観てもらいたいなというのと、どう思っていただけるのかなというのが凄く気になるところです。ぜひ楽しんでいただけましたらと思います。よろしくお願いします!」と呼びかけた。
【ゲネプロレポート】
剥製師の一家の工房を舞台に繰り広げられる、家族の嫉妬、恨み、そして愛情の物語。
舞台となる工房の室内には鳥類、鹿、狐、狸など、30体以上の剥製が置かれ、異様な雰囲気を醸し出す。
主演のさとうほなみは、我が子の親権を巡る裁判中で実家に身を寄せる。その家には父(吉見一豊)、妹(瀬戸さおり)、障害のある甥(岩男海史)、猫保護の愛好家ばばあ(柿丸美智恵)という一癖も二癖もある面々が集う。
そして、物語はある中年男(山中聡)が工房を訪ねてくるところから始まる。
主人公のさとうは複雑な心情を個性的な同居人たちや突如現れた謎の男との関わりの中で徐々に剥ぎ取られた剥製のごとく露わになっていく。
そして終盤に向けては、父(吉見一豊)、妹(瀬戸さおり)らとの迫真の会話の応酬は一家に潜む一人一人の化けの皮が、完全に剥ぎとられていくようで、まさに迫力満点の一言。
登場人物6人の心の化けの皮が剥がれたところで、主人公の女は何を見たのか?
その中心人物として、さとうほなみは堂々たる芝居をみせ、約2時間の家族の物語は終了した。
【公演情報】
□字ック『剥愛』
脚本・演出:山田佳奈
キャスト:さとうほなみ 瀬戸さおり 山中聡 岩男海史 柿丸美智恵 吉見一豊
●11/10〜19◎東京 シアタートラム
●11/22・23◎愛知 穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース
●11/25・26◎大阪 扇町ミュージアムキューブ
〈公式サイト〉http://www.roji649.com/