大和悠河のパリから贈るエトワール紀行 ~ロマンチックに紡ぐ魔法~⑭

ある日どこかで ― SOMEWHERE IN TIME ―

Quelque part dans le temps

岡田敬二先生が、第51回菊田一夫演劇賞 特別賞を受賞されました。

永年の〈ロマンチック・レビュー〉シリーズの功績に対して。

私は、宝塚歌劇団宙組の宝塚大劇場での初めての舞台が、岡田先生のロマンチック・レビュー『テンプテーション!-誘惑-』でした。

開演と同時に、真っ赤な編みタイツ姿で、銀橋の真ん中、指揮者のところから飛び出し、そのまま寝そべっていました。(笑)

まさに『テンプテーション!-誘惑-』。

岡田先生には、なんともロマンあふれる、なんとも大胆な幕開けで、宙組にデビューさせていただきました。

先生のロマンは「危険な誘惑」を通り越して、夢やロマン、美しさへと惹き込まれていく、
『抗いがたいロマンへの誘い』であり、『魅惑の世界への招待状』です。

「さあ、これから“誘惑”の世界へようこそ。」
「ここからロマンと魅惑のレビューが始まりますよ。」

私は宝塚が大好きで、憧れだった世界に、そんな声が聞こえてきたのです。

フランス語で言うなら、

La tentation(ラ・タンタシオン)=誘惑、抗いがたい魅力。
Le charme(ル・シャルム)=魅力、魔法のような引力。
La séduction(ラ・セデュクシオン)=人を惹きつける魅惑、魅了。

岡田先生は、私が宙組にデビューした最初から、私をロマンの世界へどっぷりと引き込んでくださいました。(笑)

ロマンは私の心の中で、しっかりと生き続けているのです。

そして、宝塚歌劇団を卒業する最後のさよなら公演も、
岡田先生のロマンチック・レビュー『Amour それは…』でした。

私の宝塚宙組のはじめも最後も、岡田先生のロマンチック・レビューにどっぷりと包まれていたのです。

宝塚卒業後も、『吉﨑憲治&岡田敬二 ロマンチックコンサート』、宝塚での先生とのトークショー、
阪神競馬場70周年、宝塚歌劇105周年、岡田敬二先生演出家活動55周年の記念トークショーなどなども、
先生とはいろいろご一緒させていただきました。

先生はロマンのない舞台をよく嘆かれます。(笑)
私は、そういうお話を先生とするのが大好きです。

岡田先生は馬がお好きです。

不思議なことに、私は今、Parisで毎日、馬に囲まれています。

窓を開ければ、大きな馬が壁に貼り付いていて。(笑)
見上げれば、旗を翻す馬。

そして右を向けば、コンコルド。

3300年以上の時を生きてきたルクソールのオベリスクが、シャンゼリゼの先の凱旋門と、ルーヴルへと続く庭園の入口に躍動する「Les Chevaux de Marly(マルリーの馬)」に見守られながら、巨大な舞台の中央にそびえ立っています。

今、2026年6月13日、14日。
Parisでは31年ぶりの大相撲パリ公演が行われていました。

1995年10月13日、14日。
Parisでは第1回大相撲パリ公演が行われていました。

私は宝塚歌劇団に入団したばかりの研1で、『ある日どこかで ― SOMEWHERE IN TIME ―』のゲネプロ、そして初日の舞台に立っていました。

同じその日。

Parisでは、第1回大相撲パリ公演が行われていたのです。

宝塚に入ったばかりの初舞台の私は、前代未聞とも言われる大抜擢。

31年後。

ちょうど岡田先生の受賞表彰式のころから、お相撲さんたちがParisへやって来ました。

お相撲さんたちはParisのあちこちを観光なさいました。

私もよく通る道にある、LA MAISON d’Isabelle PARIS(ラ・メゾン・ディザベル・パリ)。

2018年イル・ド・フランス最優秀A.O.P.バタークロワッサン賞を受賞した、ブーランジュリー兼パティスリーです。

そこで、お目当てのクロワッサンを手にして、満面の笑顔を見せる隆の勝関。

31年前、第1回大相撲パリ公演の頃には、まだ1歳にもならない赤ちゃん。

そして、トロカデロでは、エッフェル塔を眺めながらバゲットを頬張る、横綱・豊昇龍関と、横綱・大の里関。

最高!な瞬間を見ることができました。

Bonjour! と言いながらシャルル・ド・ゴール空港へ降り立たれ、

隆の勝関のクロワッサン。

横綱・豊昇龍関と、横綱・大の里関のバゲット。

それを手にした笑顔だけで、世界を繋いでしまっていました。

お相撲さんがそこにいる。

もぉ、それだけで、日本とParisの文化がしっかりと出会い、交流していました。

お相撲さんたちの存在そのものが、Parisをロマンにしてくれました。

そこは、私がいつも歩いているParisです。

私も同じLA MAISON d’Isabelle PARISの、いつものクロワッサンを頬張っていました。

いつもより、さらに美味しかった!

31年ぶりの大相撲パリ公演。

Un jour, quelque part…
Quelque part dans le temps…

──『ある日、どこかで。』
──時のどこかで。

岡田先生のロマンが表彰され、
馬と、
コンコルドと、
オベリスクと、
宙組のはじまりと、宝塚での最後の日、
そして31年ぶりのお相撲さんたち。

お相撲さんたちが歩いているParisも、
私が今歩いているParisも、
全部「今」でした。

なんだか、とてもロマンチック・レビューみたいな物語です。🌹🇯🇵🇫🇷

宝塚歌劇団をロマンにしてくださっている先生。

そして、今も私をロマンへと導いてくださっている岡田敬二先生。

これからも、たくさんのロマンを教えてください。🌹

そして、Parisへ日本のロマンを届けてくださった、第74代横綱・豊昇龍関、第75代横綱・大の里関をはじめとするお相撲さんの皆様。

Merci beaucoup !
本当にありがとうございました。🌹🇯🇵🇫🇷

Bon voyage…
私のロマンの旅は、まだ続いていきます。

大和悠河
YUGA YAMATO

文◇大和悠河 写真提供:(株)GOOGA

大和悠河のパリから贈るエトワール紀行 ~ロマンチックに紡ぐ魔法~

宝塚トップスター・女優・大和悠河 が紡ぐ、伝説の都からの最新アートのトキメキとカンゲキのクロニクル。
『えんぶ☆TOWN』連載では、大和悠河が石畳のパリで感じた街の鼓動や、心温まる出会いから得た感動、その感動から生まれるインスピレーションで、あなたの日常に新たな光を注ぐことでしょう。
大和悠河の感性と情熱が生み出す独自の美学―既成概念を超える『C調と遊び心』―が、未知なる芸術の航路へとあなたをご招待します。