日本人のクリエイターの力を結集したオリジナルミュージカル『イザボー』開幕!取材会レポート
ワタナベエンターテインメントと劇作家・末満健一がタッグを組み、日本のクリエイターたちの才能を集め、世界レベルの作品を創造・発信していくMOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project-の第一弾、ミュージカル『イザボー』が、15日に東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)で開幕する(30日まで。のち大阪オリックス劇場で2月8日~11日まで上演)
この日本発のオリジナルミュージカルを世に送り出す画期的な企画の船出を担うミュージカル『イザボー』は、フランス百年戦争の時代、陰謀渦巻くフランス王朝で欲望のままに生き、国を破滅へと導いた最悪の王妃と呼ばれるイザボー・ド・バヴィエールの半生をドラマチックに描いた作品だ。
そんな舞台の開幕を前に、主演のイザボーを演じる望海風斗、その息子にしてのちに王となるシャルル七世役の甲斐翔真、イザボーの夫シャルル六世の叔父ブルゴーニュ公フィリップ役の石井一考が公開ゲネプロを前に取材会に登壇。いよいよ開幕する舞台への抱負を語った。
──いよいよ明日開幕となりますが、今の状況、作品への手応えを皆さんからお願いします。
望海 始まるのはちょっとまだ実感がわかないのですが、でも今こうして取材を受けているということは、これは現実なんだなと実感しはじめたところですね。なんだか信じられなかったんです、さっきまで。本当に今日ゲネプロをやるんだ、明日初日なんだということが。やっとおかげさまで実感がわきはじめました。
甲斐 当初はみんなでこの『イザボー』の時代の歴史のお勉強会から始まり、遂にこの日が来たかと胸を高鳴らせていますけれども、ミュージカル界にはフランスの話ってたくさんあって、その中では見たことのない演出方法だったり、表現の仕方を末満さんがたくさんされているので、それがどうお客様に伝わるのかというのが一番楽しみな部分でもあります。
石井 僕はミュージカル界に三十年以上いるんですけれども、だいたいは翻訳ミュージカルが多くて、オリジナルミュージカルというのは数少ないながらも、ポツポツあるのですが、この『イザボー』という作品は、ミュージカルの歴史に新しい風穴をあけるんじゃないか、そういう作品なんじゃないかなという手応えを三十年やってきた身として感じています。やっぱり望海さんの圧倒的な歌唱力とか、甲斐翔真くんの僕より背が高いのに顔が半分しかないとか(爆笑)、色々な長所がこの作品にありますので、ドキドキもしますけれども楽しみでもある。そんな心境です。
──石井さんの方からオリジナルのミュージカルのお話がありましたが、このプロジェクトにご出演される気持ちはいかがですか?
望海 ありがたいことに私はオリジナルの作品というものを宝塚時代に色々させてもらっていて、退団して思ったのがオリジナル作品に出る機会って本当に少ないんだなということだったんです。ですから今回、こういうオリジナル作品を日本で作って、高い山に登っていく、ということを掲げたプロジェクトに参加できるのは本当に嬉しいことだなと感じています。久々にオリジナルミュージカルを創るということで、ここまで来るのにやっぱり本当に色々な山をみんなで乗り越えなければいけなかったり、大変なこともありましたが、そうやって作っていく過程というのは本当に楽しいなと改めて感じております。
──退団後初めてのオリジナルミュージカルのプロジェクトということで、プレッシャーやいつもとちょっと違うなということはありましたか?
望海 いつもと違うと言うと、作品によってそれは毎回違うのですが、お客様が全く知らない状態で初日を迎えるというのが、オリジナルの面白いところであり、私たちのドキドキするところでもあるので、この緊張感は久しぶりだなと思います。
──そして今回は、フランス史上最悪の王妃を演じられるという点はいかがですか?
望海 最悪と言われますけれども、私は別に最悪を狙っているわけではないと言いますか、自分としてはイザボーという人がどう生き抜いたか、ということをとにかく一生懸命やって、周りからは最悪と言われるんですけれども、それをパワーにして今は生きています。
──石井さんからそんな望海さんのイザボーぶりをご覧になっていかがですか?
石井 最悪の王妃なんですけど、本当に最高なんですよ。末満さんが稽古の最初の段階で「最悪とか、ダークなイメージがあるイザボーという人を通して、その中から希望とか、未来とか、真実とか、ぬくもりなどを伝えたい、そういう作品にしたい」とおっしゃっていたのですが、そんな手応えはありますよね。人間誰しも悪い人になりたくて生きてきたわけじゃなくて、色々な背景とかしがらみとか、そうせざるを得なかったことがある。イザボーは一生懸命に生きたが故に、結果的に最悪と言われるところがあるのですが、でもすごく人となりがキュートで。これはやっぱり望海さんの持っているものがこぼれ出ている、どうしようもないことなんですよね。
甲斐 僕はその息子という役柄をやらせてもらっていますけれども、冒頭の方で皆さんが持たれている、歴史上最悪の王妃、最悪の母親というイメージから、今カズさん(石井)がおっしゃった通り、この作品が進むにつれてこのイザボーという人物やイメージが立体的になっていって、どうしてそう呼ばれてしまったのかという、その裏を知っていったからこそ僕はまた新しいシャルル七世として新たな気持ちで生きることができる。その相乗効果と言いますか、いま2024年になってもう一度イザボーという人物を振り返るというのは、すごいタイムスリップだなと、やっていて楽しいです。
──新しいイザボー像が生まれそうですね。
望海 あまりイザボーという人を知っている方が少ないんじゃないかな?と思っていて。私も演じるとなって知ったくらいなので、もちろんご存じの方は「私の知っているイザボーじゃない、新たなイザボー像だ」と思われるかもしれないですし、おそらく多くの方はなんとなくは知っていたけれども、ジャンヌ・ダルクが登場する前にこういうことがあったんだなと、イザボーという人を深く知っていただけたら(天を仰いで)イザボーも嬉しいんじゃないかなと思います。
──石井さんから望海さんはキュートだというお話がありましたが、カンパニーの皆さんはいかがですか?
望海 カンパニーの皆は本当におかしくって(笑)。
石井 若いからね!
望海 若いですよね!
──どんなところがおかしいのですか?
望海 全キャストそうなのですが、個性の強い人たちが集まってきているのですが、そういう皆さんが集まるとこんなまとまりになるんだというか、みんながすごく面白がって立ち向かってくれるので、それに私も力をもらって進んでいっています。何かあるとみんなでね。
石井 話し合ってね。
望海 そう、意見を出し合ったりとか。
石井 冗談もいっぱい言ってますけどね(笑)。いや、望海さんをみんながガンガンいじるんですが、それに全部乗ってくれて!全部乗らなくていいのに(笑)と思うくらい優しいの。
望海 相手にしてもらっています(笑)。
──稽古場でのエピソードで印象に残っているものはありますか?
甲斐 16時を過ぎると変なスイッチが入り出す(笑)。
望海 あー(笑)、お稽古がだいたい11時、午前中から始まって。
石井 一応18時には終わろうねっていう感じなんですけどね。
甲斐 新作だから皆さんたくさん頭を使ってやられているので、だんだんテンションがあがってきて。
石井 ナチュラルハイになってくるよね。
甲斐 そうそう、休み時間が一番ヤバいというか(望海に)席も近いんで。
望海 そうね、学校みたいな。
甲斐 そうだ、学校だ!学校。でも問題をやる時はピシっと。
望海 本当?(笑)
甲斐 はい(笑)、やります。
望海 みんながきちんとメリハリつけてね。
──お客様にはどんなところに注目していただきたいですか?
望海 もう全てにおいて掛け算みたいなんです。美術もそうですし、照明、音楽…
石井 衣装もね。
望海 そう、衣装も、全部が合わさってこんな掛け算になるんだっていう、もう見どころだらけというか、今私たちも実際どこが本当に見どころなのかが、全部過ぎてね。
甲斐 うん。
望海 これからお客様が入って、どういうところで皆様が心を動かしてくれるんだろう、どういう反応をしてくれるんだろうと、本当に初日を迎えてから完成するんじゃないかなと思うので、とにかくどのシーンも見ていただきたいと思います。
甲斐 協力してほしいなと。
石井 あ、協力もあるね。
甲斐 一番はじめの皆さんの盛り上がりが大事なんです。
石井 お客様に一緒に作っていただく、そういうところも結構あって、特に冒頭は皆さんがいないと僕たちは寂しい。
望海 (甲斐に)出てこれないよね?
甲斐 もう僕出ません(爆笑)、出られないです。
望海 そうだね。
甲斐 やっぱり心を解放して、ミュージカルを観に来た!というか、参加型ミュージカルでもあるので。
石井 そう、その面もあるよね。
望海 皆さんに参加してもらって。
甲斐 はい。
──お客様と出演者の皆さんが一体となるようなミュージカルになりそうということですか?
望海 そうですね、確かに最初のお客様の乗っかりによって、その日の公演の行く先が決まる。
甲斐 出てき方が変わるし。
石井 確かに!
望海 でもそのためには、盛り上げてくれるキャスト達がちゃんと出てくるので、怖がらずに乗っかっていただいて。
甲斐 いい人たちだ!
──では最後に望海さんから意気込みと、楽しみにされている方たちにメッセージをお願いします。
望海 いよいよ始まるということで、とにかくこちらはものすごく皆様に観ていただけるのをずっと楽しみに創ってきたので、明日から東京の千秋楽まで、そして大阪公演もありますから、一つひとつ1回1回お客様と熱い日々を過ごしていきたいと思いますので、どうぞ劇場で『イザボー』を感じていただけたらと思います。どうぞよろしくお願いします。
【公演情報】
MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project-
ミュージカル『イザボー』
作・演出:末満健一
音楽:和田俊輔
出演:望海風斗/甲斐翔真/上原理生 中河内雅貴 上川一哉/那須凜/石井一孝
大森未来衣 伯鞘麗名 石井咲 加賀谷真聡 川崎愛香里 齋藤千夏 佐々木誠
高木裕和 堂雪絵 中嶋紗希 宮河愛一郎 安井聡 ユーリック武蔵
スゥイング:井上望 齋藤信吾 高倉理子
●1/15〜30◎東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
〈料金〉S席12,500円/A席9,000円(全席指定・税込)※S席は1、2階、A席は3階
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12時~15時)
●2/8~11◎大阪・オリックス劇場
〈料金〉S席12,500円/A席9,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888(月~土11時~18時)
〈公式サイト〉https://isabeau.westage.jp/
【取材・文・撮影/橘涼香】