ミュージカル『ラフへスト~残されたもの』間もなく開幕! 山口乃々華インタビュー

役と自分を重ね合わせて、作品のなかで生きていきたい

韓国を代表する実在した二人の天才芸術家の妻であり、自らも表現者である才能とパートナーたちの才能を開花させた女性として知られるキム・ヒャンアンの人生を描き、本年の韓国ミュージカルアワードで作品賞、脚本賞、音楽賞を獲得した傑作ミュージカル『ラフへスト~残されたもの』が、7月18日より東京芸術劇場シアターイーストで上演される。
主演を務めるソニンがスタッフとして訳詞にも参加。2022年の読売演劇大賞で優秀演出家に選出された稲葉賀恵の本格ミュージカル初演出と、大きな話題を振りまく本作。
この注目の作品で、若き日のヒャンアンとなるトンリムを演じる山口乃々華に、新たな作品に向かう思いを聞いた「えんぶ2024年6月号」に掲載のインタビュー記事をご紹介する。

人生のスタートのきらめきや伸びやかさを大切に

──今の時点で、作品について感じている印象や魅力から教えてください。

 四人芝居なので物語全体をみんなで引っ張っていく作品になるんだろうなと感じています。一人ひとりが演じる人物を如何に魅力的に表現できるかによって、作品の印象が大きく変わっていくと思うので、責任重大で緊張もしています。

──その中で演じる役柄についてはいかがですか?

 主人公の若き日であるピョン・トンリムを演じます。まだ学生で。自分の人生がいよいよスタートするんだという時期のきらめきや、まだ何もわかっていないからこその伸びやかさなどを、一つひとつ大切にすることによって、ソニンさんが演じるキム・ヒャンアンにしっかりと繋げていけるようにしたいです。

──ソニンさんとは舞台上で入れ替わる形になるのですか?

 それももちろんありますし、一緒に舞台上にいる時間もあれば、出会うというと違うかもしれませんが、私とソニンさんが相対することで繋がっていく瞬間もあります。

──そう伺っただけで、時空が自在に変化していく様が見えるようですが、そのソニンさんをはじめ、最初の夫となる詩人のイ・サンに相葉裕樹さん、イ・サンの死後出会う画家キム・ファンギに古屋敬多さんと、それぞれミュージカル界で大活躍を続けている方々との共演で楽しみにしていることは?

 ずっと前からソニンさんの表現されるものや、お芝居がとても素敵だなと思っていたので、ビジュアル撮影で初めてお会いした時には、普通にドキドキしていました。でもソニンさんがすごくフランクに接してくださったおかげで、緊張しすぎて喋れなくなることもなかったので、お稽古に向けてひとつ気持ちを落ち着かせることができたように思います。相葉さんともご一緒に撮影させてもらいましたが、背が高くてとても大人の雰囲気のなか、相葉さんの方から私が最近出演させてもらった作品の話などもしてくださって。尊敬する先輩が私の情報もちゃんと知ってくださっているんだ、ということがとても嬉しかったです。古屋さんとはご挨拶をさせていただいたところですが、本当に学ぶことばかりの現場だろうなと思っています。だからこそ私自身も、わからないところは率直にどんどんお伺いして、全力で学びながらみなさんのなかに並んで立っていられるよう頑張りたいです。

理想のマインドを役に反映できる喜び

──稲葉賀恵さんが、本格ミュージカルを初演出されることも大きな話題ですね。

 私には足りないところがまだまだたくさんありますし、現場で悩むことも色々出てくると思いますが、だからこそ稲葉さんに色々と教えていただきたいですし、自分でもそのご指導を待つだけではなくて、きちんと整理して積極的に私からもお尋ねできるようにしていきたいです。

──ミュージカルとしての楽曲の魅力についてはどうですか?

 確かに初めて聞く楽曲なのに、耳に残る、知っていたかのように感じられるメロディーラインなんです。もちろん心情を大きく歌い上げる曲もあるのですが、きっとご覧になったお客様も口ずさみながら帰られるのではないか、と思えるほど耳馴染みの良い音楽がたくさん詰まった作品なので、どなたにも楽しんでいただけると思います。

──山口さんは『SPY×FAMILY』のフィオナ役で、登場した瞬間一気にトップスピードに入る姿がとても印象的でした。

 本当ですか? 嬉しい。頑張って良かったです。

──すごいインパクトでした! 一転、この作品では繊細な人物像になりそうというところで、様々な役を演じる時にどうアプローチしていくのですか?

 役柄のなかに自分との共通点をなるべく見つけたいと思っていて。そこからさらに私自身はまだまだそうなれていないけれども、こんなマインドで生きていけるのが理想だな、という面を役に反映できたときには、とてもワクワクしますし伸び伸びできる気がします。それがなかなか見つからなかったり、自分とは全く違う思考回路を持っていたり、かけ離れた人生を送っている役の場合は、一生懸命役に近づこうとしている自分を、「お芝居をしている」とどこかで意識している気がするんです。もちろんそれはそれで楽しいのですが、いまの私は役が体験していることを、本当に自分が体験していることとして感じながらお芝居を作っていきたいんです。

──役とご自身を重ねるということでしょうか?

 できる限りそうありたくて。役と私が重なれば重なるほど、作品のなかに入っていけるというか、舞台で生きていける気がしますし、その楽しさを強く感じます。

──そんな山口さんが俳優として目指しているものや、夢はどんなものですか?

 野望でもいいですか?

──もちろんです、是非!

 小さな頃からディズニー作品が大好きなので、ディズニー作品で声優を務めて歌いたい、というのが一番大きな夢、野望です。あとはやっぱりずっと踊りをやってきたので、バーレスクもののような、ダンス満載のミュージカルにも挑戦したいです。

──そうした作品も拝見できる日を楽しみにしていますが、では最後に改めて新作ミュージカル『ラフへスト』を楽しみにされている方たちにメッセージをお願いします。

 この作品のなかには春夏秋冬があると感じています。暑い夏の上演になりますが、私も作品世界に入り込みたいですし、ご覧になるお客様にもぐっと入り込んでいただいて、物語を観たというよりは、経験したと感じてもらえるような濃密な時間になればいいなと思っています。四人芝居ということでプレッシャーも大きいですが、楽しんでいただけるように精一杯頑張りますので、是非劇場にいらしてください。

【プロフィール】
やまぐちののか〇埼玉県出身。2011年LDH主催「EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 3 ~For Girls~」に選出され、20年までE-girlsとしての活動を経て、21年より本格的な女優活動を開始し、活躍を続けている。近年の主な舞台作品に『ジェイミー』『あなたの初恋探します』『SERI~ひとつのいのち』『SPY×FAMILY』『ヴァグラント』舞台『呪術廻戦』など。

ミュージカル
『ラフへスト~残されたもの』
Scripts and lyrics by Hansol Kim
Composed by Hyesung Moon, Hyeji Chung
演出◇稲葉賀恵 上演台本◇オノマリコ
訳詞◇オノマリコ ソニン 音楽監督◇落合崇史
出演◇ソニン 古屋敬多(Lead) 相葉裕樹 山口乃々華
7/18~28◎東京芸術劇場シアターイースト
https://bellewaves.jp/lart-reste/

【インタビュー/橘涼香】

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