【松永玲子の「今夜もネットショッピング」】「聖なる混乱の中の女たち」

10/18は、三人芝居『片づけたい女たち』の初日。
ひゃ~~~、まもなく初日であっという間に千穐楽になるので、チケット買うて下さい。配信無し。DVD化無し。
二兎社の永井愛さんが、20年前にグループる・ばるに書き下ろし、演出も手掛けた代表作。グループる・ばるで200ステージ以上、また様々な団体が各所で上演し続けているこの作品を、未見の俳優三人&未見の演出家で、戯曲からのみ立ち上げます。上演時間約2時間。新宿シアタートップス。

その戯曲単行本がコレ。

稽古場にて。撮影:保坂萌。
後列左から、佐藤真弓(猫のホテル)、松永玲子(ナイロン100°C)、有森也実
前列左から、演出助手の廣川真菜美(maars inc.)、演出の保坂萌(ムシラセ)

永井愛『片づけたい女たち』而立書房、1,650円(税込)。
10/9現在、一時的に在庫切れのところもあるようですが、ブツ自体は有るので、即日配送ではないかもですが、数日待てば入手できるはず。

「松永さん、『片づけたい女たち』やりますよ、ツンコ役です。」
と言われ
「ああそうですかぁ、この作品未見なんですよねぇ」
と単行本を購入し、読んで大興奮。面白い!
2004年初演の戯曲のため、所々に時代性を感じる単語が入ってるので2024年現在では“ザ・今”な話ではないのだけれど、50代あるあるやら、片づけられないあるあるが、てんこ盛りで、いちいち自分事として痛がりながら笑って読んだ。
こんな傑作戯曲は俳優にとってはご馳走でありご褒美。
出たい出たい出たい! やるやるやる!

その後、上演するにあたって改めて読み返して、すぐに後悔した。
いやコレ面白いけど、やるとなったら大ごとやん……。
三人のおばちゃんが喋り倒しながら汚部屋を片づけていく120分。単純計算でも一人40分喋る。
オリジナルのグループる・ばる公演に関わった皆様は勿論、これまでに『片づけたい女たち』を上演した全てのキャスト・スタッフへの尊敬やまず。

稽古では、打ち直されたB5版の台本を使っている。にも関わらず、私はこの単行本をまだ活用している。
なぜかって?
この単行本には、2007年のアメリカのミネアポリスとニューヨークでのリーディング上演用の『片づけたい女たち』の英訳台本『Women in a Holy Mess』が併録されているからだ。
オリジナルキャストのために書かれた戯曲を、知らない人、それも英語圏の人用の台本にしている(この翻訳や上演に関する永井愛さんの体験談も載っていて、これまたとても面白い)。

先月このコラムでご紹介した『ウェイリー版・源氏物語』は、
約1000年前(平安時代)、紫式部の原文

約100年前(大正時代)、アーサー・ウェイリーによる英訳

数年前(平成時代)、毬矢まりえ+森山恵姉妹により英訳版を現代日本語訳(戻し訳・らせん訳)
つまり、『源氏物語』逆輸入版。
間に英訳を挟むことによって、逆に物語が具体性を得る、ということが起こった。
『片づけたい女たち』と『Women in a Holy Mess』には、戻し訳はないけれど、この日英の二つの台本を照らし合わせながら読むと、面白い世界が見えてくる。海外戯曲を上演する時には原文と照らし合わせたりもするけれど、現代日本語で書かれている戯曲を英訳と照らし合わせて読めるのは稀有な体験。よくぞ併録して下さった!
一例を挙げよう。
タイトル『片づけたい女たち』の“片づける”は
tidy up:散らかった物を整理整頓する
clean up:清掃を含む片付け
Put away:使ったものを元の場所へ戻す
などではなく
“Holy Mess”
となっている。
戻し訳するならば
『聖なる混乱の中の女たち』。
“Holy”は、現代スラングなら「クッソ」とか「激」とか「鬼」とかな雰囲気もある。
“Mess”は、物理的な散らかりだけではなく、精神や感情、状況がめちゃくちゃであるという意味でも使うとのこと。
『片づけたい女たち』と『Women in a Holy Mess』
どちらも想像力を掻き立てられる素敵なタイトル。

2004年初演当時、50代前半の作・演出家と三女優で創り上げた作品を、
20年後の2024年、50代の三女優と40代の演出家と30代の演出助手で創る。今回の現場に於いて、最大の力は、要の位置に、“50代あるある”を未体験の40代と30代が居ることである。
だって50代だもん、と挫けそうになると「次の世代をガッカリさせないで」と発破をかけられる。
大先輩方が生み出したこの戯曲は、私たち今の50代の手を経て、頼もしい次の世代に引き継がれて行きます。

配役:
ツンコ:松永玲子(初演=岡本麗)
おチョビ:佐藤真弓(初演=松金よね子)
バツミ:有森也実(初演=田岡美也子)

著者プロフィール

松永玲子(ナイロン100℃)
まつながれいこ〇大阪府出身。94年にナイロン100℃に入団。劇団外での外部出演も多く、ドラマや映画、ナレーションなどで幅広く活躍するほか、コラムニストや落語家としての顔も持つ。
「マツナガ宅」 http://stage-d.com/mr/

出演情報

【OA情報】
●Eテレ『100分de名著』〜ウェイリー版 源氏物語〜
9/2から4週にかけて毎週月曜日22:25〜OA
※毎週金曜日15:05からは再放送
※NHKプラスでは見逃し配信あります

【舞台】
●『片づけたい女たち』
【作:永井愛 演出:保坂萌】
10/18(金)~24(木)
@新宿シアタートップス
HP http://katajo-stage.com/

【DVD】
●ナイロン100℃『Don’t freak out』DVD 絶賛発売中。
キューブHPからご購入できます。
https://store.cubitclub-plus.com/product/detail/?id=CU-CU-0902

●Spotify ポッドキャスト『BATMAN ~葬られた真実~』
(ヴィッキー・ヴェール役)
2022年5月3日より毎週火曜日に世界9ヶ国で配信。全10話。
https://open.spotify.com/show/0biQIoXBj8vdaQKSXIkHQD

●Amazon Audible(オーディブル)
https://www.audible.co.jp/
松永玲子ナレーション担当作品は
森絵都『最後は臼が笑う』
森絵都『無限大ガール』

●リモート読み合わせ版「12人のおかしな大阪人」無料配信中
https://m.youtube.com/channel/UCRIkL8xsLbEuey0_QM6Ow_A?view_as=subscriber

予告編↓
https://youtu.be/sGDx9XjDA_w

更なるいちびり企画↓
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https://youtu.be/FPpMMk5KLwI

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