OSK日本歌劇団新トップスターお披露目公演「レビュー 夏のおどり」いよいよ新橋演舞場で開幕! 翼和希インタビュー

シャープさと底抜けの明るさを兼ね備えたOSK日本歌劇団の新トップスター、翼和希のお披露目公演が、6月の大阪松竹座公演を経て、いよいよ8月22日〜26日に新橋演舞場で上演される。
その舞台「レビュー 夏のおどり」は豪華2本立て。第一部が『翔~Fly High~』で花柳寿楽の構成・演出・振付による和物ショー、第二部は中村一徳(宝塚歌劇団)が作・演出をつとめる洋物ショー『The Legendary!』となっている。
エネルギッシュな翼和希を中心に、特別専科より桐生麻耶と朝香櫻子も出演、さらに今年4月入団の101期生も登場するなど、新トップお披露目にふさわしい華やかなステージが展開される。
その公演を間近に控えた翼和希に、作品の見どころや新トップとしての抱負などを語ってもらった。
寿楽先生が「自分が観たいものを作った」と
──いよいよ8月の新橋演舞場「レビュー 夏のおどり」の開幕が近づいてきました。今どんなお気持ちですか?
6月の大阪松竹座公演に続いて、新橋演舞場という伝統ある劇場でお披露目公演をさせていただけることを、とてもありがたく思っています。また今年は松竹さまの創業百三十周年というおめでたい年で、その年にこうして華やかにお披露目をさせていただけることに、感謝の思いでいっぱいです。その思いを胸にみんなとともに精一杯公演をつとめさせていただこうと思っています。
──6月の大阪松竹座公演では「レビュー 春のおどり」というタイトルで上演された作品ですが、手応えはいかがでした?
大阪松竹座では6月14~24日に18公演させていただいたのですが、毎公演で得るものがあって、とても充実した毎日でした。そしてそこで得たものや課題をもとに、新橋演舞場公演に向けてお稽古できることがとてもありがたいです。この場面をもっと深めたいとか、ここはさらにおもしろくなるとか、具体的にブラッシュアップできるので、「春のおどり」をご覧になったお客さまにも、より楽しんでいただける公演になると思っています。
──二部仕立てのショーですが、和物、洋物それぞれの見どころを教えてください。
第一部の和物ショーについては、演出の花柳寿楽先生が「自分が観たいものを作った」とおっしゃってくださって、それが嬉しかったです。私はあまり寿楽先生とご縁がなくて、かなり下級生の頃に出演させていただいたことはあるのですが、先生が手掛けられた大阪松竹座の公演のときは、私は別の公演に出ていたりと、ご一緒する機会が少なかったんです。先生も「翼さんのイメージってあまりないんだよね」とおっしゃっていて、でもこれが翼和希だという出来上がったイメージで作っていただくより、先生が観たいものを提示してくださって、私がそれに挑戦していく、そのほうが新しい何かが作れるのではないかと思ったんです。実際に稽古中もいろいろお話ししながら作らせていただいて、とても楽しかったです。

一徳先生が劇団員みんなのお披露目でもあるからと
──その和物ショー『翔~Fly High~』を観たお客さまの反応はいかがでしたか?
皆さん楽しかったとおっしゃってくださって、中でも「下駄ップ」がとくに好評でした(笑)。文字通り下駄でのタップなんですけど、私はタップが好きで、OSKに入団できて嬉しかったのは日本舞踊とタップが習えることもあったんです。「下駄ップ」も、映画の『座頭市』の中の下駄でタップをするラストシーンが好きで、何度も観てしまうぐらい好きだったんです。でもそのことはご存じないはずなのに、「下駄ップ」の場面を作ってくださった寿楽先生には感謝しかないです。それから、二景の「鳥」の場面も大好きで、人外のものになれることが嬉しかったです。言葉を発さずに何かを表現できるというのはとても楽しいことで、しかもファンタジーなので振付が可愛らしくて、踊っていても自分でワクワクします。そのほかにも、ショーの冒頭は江戸で始まるのですが、鳶の頭として10年ぶりの青天で、しかも木遣りまでさせていただくなど、やりたかったことを沢山やらせていただけて幸せです。
──『翔~Fly High~』では作詞もされたそうですね。
タイトル曲の歌詞の原案を提供させていただきました。それも自分にとって新しい挑戦で、ほんとうにありがたいです。
──翼さんが何にでも挑戦する方なので、クリエーターの先生方も作りがいがあると思います。洋物ショーの『The Legendary!』は宝塚歌劇団でショー作家として有名な中村一徳さんの演出ですね。
一徳先生は、この公演は私だけでなく、新体制になったことで劇団員みんなのお披露目でもあるから、ということで、全員それぞれにちゃんと目立つような場面を作ってくださいました。今まで大きな劇場で歌ったことのない人がソロを歌わせてもらったり、初舞台生を紹介する役割をもらったり、少人数で踊る場面があったり、一徳先生の愛がいっぱい詰まった構成で、みんなにとって貴重な機会だと思います。だからこそ与えられた課題を自分のものにするために、ちゃんともがいて、沢山悩んでどんどん成長してほしいと思っています。
──群舞でみせるシーンも多沢山あるそうですね。
そうなんです。できるだけ沢山の人を出してあげたいという先生の思いからで、急いで着替えてみんな出る、みたいな(笑)。でもダンスのOSKという歴史がありますから、そこはみんなで頑張るしかないです。みんなで頑張るからこそエネルギーがお客さまに伝わる。そのためにも一生懸命お稽古するしかないんです。

舞台は一人ではできないということ
──翼さんは、OSKに入団してから何人ものトップの方々の背中を見てきたと思います。そこから学んだのはどんなことですか?
舞台は一人ではできないということです。それは解散を経験されている先輩がいつもおっしゃっていたことで、下級生の頃はその言葉の本当の重みがわかっていなかったのですが、今、この立場になるとよくわかります。周りの方々やお客さまがいなかったら出来ないんです。そのことへの感謝の気持ちがあることで、舞台の1つ1つに、歌詞の1つ1つに、所作の1つ1つに気持ちがこもる。それはトップの方々に限らず先輩のみなさんが体現されてきたことで、そういう目に見えない気持ちとか志のようなものは、言葉だけでなく心で感じて伝えていくものなんだろうなと思っています。今、娯楽の多様化で舞台に足を運ばなくなった方も沢山いらっしゃると思います。でも生の舞台だからこそ伝わる良さがあるし、その魅力を自分たちも忘れてはいけない。そして、OSKの劇団員である私たちだからこそ出来ることがある、そこを忘れてはいけないと思っています。
──この公演は、元トップの桐生麻耶さんが洋物ショーに出演して、翼さんを支えてくださっていますね。その力は大きいのでは?
はい、すごく大きいです。それに桐生さんだけでなく、沢山の上級生の方々がいらっしゃる中で、私がトップという立場に立たせていただいているので、わからないことがあったらすぐに教えを乞うことができるんです。迷ったときに聞きに行ける方々が近くにいてくださるのは、本当にありがたいなと。そして同期生である千咲えみがトップ娘役で一番近くにいてくれて、彼女は私より前にトップになっていたので、私が気づかないことに気づいてくれたり、逆に私がみんなに伝えたい事を間にいて伝えてくれたりするので、とても助けられています。
──翼さんは周りの方に恵まれていますね。それはたぶんご自身の人柄のおかげで、とても明るいし、自分の意見もきちんと伝えようとして誠実だなと。自分ではどんなところが舞台に向いていると思いますか?
たぶん本名の自分とまったく違うところだと思います。翼和希というギアが入っているといろんなことができるんです。もともと演じることは恥ずかしいという人間だったのですが、OSKに入ったことで、演じることに喜びを感じるようになった。それがわかったとき、あ、やっててよかったなと。OSKの翼和希として過ごしているうちに、物事をポジティブに捉えられるようになったし、ちょっとネガティブなことがあってもポジティブに転換できるようになった。そういう意味ではOSKに入ってよかったし、舞台人という仕事を選んでよかったと思っています。

「雑草魂」と「生命力」と「エネルギー」がOSK
──そのOSKの翼和希という名前を一気に有名にした、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』に出た経験はいかがでした?
なによりも自分のいるOSK日本歌劇団の歴史を改めて知ることになったのは大きかったです。知識では知っていたことをドラマの中で体験できました。たとえば映画の幕間にしかできなかったり、狭いところでしかできなかったショーが、単独公演としてできるようになった。そのときの喜びはどれだけだっただろうとか、桃色争議で退団しなくてはいけなかったときの悲しみとか。そういう当時の出来事を役のうえとはいえ実際に喜んだり悲しんだりしたことで、OSKへの思いが一層深くなりました。その当時の人たちや、そのあともOSKを愛して歴史を積み上げてきてくれた方たち、そのおかげで私はこうして今、舞台に立てている。ですからその歴史をこれからも続けていくために、自分も今をがんばらないといけないと思っています。
──そんなトップとしての立場から、改めて伝えたいOSKの魅力、そしてこれからの夢を語っていただけますか。
私が初めてOSKの舞台を観たとき、スポーツ観戦に近い感覚があったんです。清々しくて、こちらは動いていないのに一緒に汗を流したような心地良い疲労感と爽快感があって。それは言葉にすると「雑草魂」であり、前トップの楊琳さんがよくおっしゃっていた「生命力」だと思います。中村一徳先生も「OSKの人たちのエネルギーはストレートに流れてくるんだよな」とおっしゃって、「あ、それだ!」と思ったのですが、よけいなものはつけずに身一つで戦うような清々しさがOSKの魅力だと思いますし、それをこれからも大事にしていきたいです。今年で103年となった劇団の歴史をこれからもさらに紡いでいって、OSKの象徴は桜なので、「千年桜」のように長く続いていくように、私たちも精一杯がんばりたいなと思っています。
──最後に、「レビュー 夏のおどり」を観にこられる方へメッセージをいただけますか。
真夏の暑さに負けない私たちの「夏のおどり」を、新橋演舞場で熱く繰り広げます。観客の皆様にも幸せになっていただける和物と洋物の2本立てで、夏ですが最後には桜パラソルで桜の花を咲かせます。ぜひ劇場へお越しください、お待ちしております。

【プロフィール】
つばさかずき○大阪府出身。2011年、OSK日本歌劇団研修所に入所、2013年初舞台。2022年には40年以上続く福井県越前市での1ヶ月のロングラン公演『たけふレビュー』で初主演。2023年にOSK日本歌劇団出身の笠置シヅ子をモデルにした連続テレビ小説『ブギウギ』でヒロインの先輩・橘アオイ役を好演。2024年9月にトップスターに就任。記念公演『レゼル Les Ailes』を岩国・名古屋・東かがわで上演。さらに5年ぶりのシンガポール公演や京都・南座公演を経て、6月の大阪松竹座と8月の新橋演舞場でお披露目公演を上演。9月には初の英国公演も決定した。

【公演情報】
OSK日本歌劇団「レビュー夏のおどり」
第一部『翔~Fly High~』
構成・演出・振付:花柳寿楽
第二部『The Legendary! 』
作・演出:中村一徳
出演:翼和希 他OSK日本歌劇団
●8/22〜26◎新橋演舞場
〈料金〉S席[1・2階]10,500円 A席[3階]5,500円(全席指定・税込)
〈チケットお問合せ〉チケットホン松竹 0570-000-489
またはチケットWeb松竹 検索
〈松竹公式サイト〉https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202508_osk_enbujo/
〈劇団公式サイト〉https://www.osk-revue.com/2025/06/14/1-209.html
【取材・文◇榊原和子 撮影◇中田智章】