人形がスケボーに乗る⁉ 三谷文楽『人形ぎらい』上演中!

13年ぶりとなる三谷文楽の待望の新作『人形ぎらい』が8月16日に開幕した。
2012年に誕生した三谷文楽『其礼成心中』。文楽の伝統と技芸に敬意を表しながら、三谷幸喜の新しい視点と演出で創作した古典エンタテインメントは、文楽ファンはもとより、文楽ビギナーズへも文楽の魅力を伝え、2012年以降も各地で上演を重ね好評を博した。今回、13年ぶりの三谷文楽新作となる『人形ぎらい』。時は現代、文楽の劇場を舞台に、主人公は人形たち、役を演じている人形自身の話となる。
再び文楽へ挑む三谷の元に三谷文楽には欠かせない豪華メンバーが集まった。
監修・出演(人形遣い)に、13年前の『其礼成心中』公演の仕掛け人で、その活動を賞して2023年関西元気文化圏賞 ニューパワー賞を受賞した吉田一輔。作曲・出演(三味線)に、『其礼成心中』でも音楽を担当した鶴澤清介。出演(太夫)に、『其礼成心中』にも出演、2022年には太夫に与えられる最高の資格である「切語り」に昇格した竹本千歳太夫。

近松門左衛門作『鑓の権三重帷子』(槍の名人で色男の権三&人妻おさゐが、不義密通の濡れ衣を着せられる物語)。それを演じる権三役の源太&おさゐ役の姐さん&万年引き立て役の陀羅助の3人。陀羅助は憎まれ役ばかりを演じさせられることに不満が爆発します。ついには人形たちが劇場を飛び出し…。
「文楽人形に不可能はない。人間にできることで、私らに出来ないことはないんや!」と息巻く人形たちの新たな挑戦となっている。

【開幕前会見コメント】
三谷幸喜
前回の三谷文楽(2012年の『其礼成心中』)から13年ぶりになりますが、新作を作りたい気持ちはずっとあり、ようやく皆さんに観ていただけることになりました。そして今回、稽古をしていく中で「こんなに面白いものが世の中にあるのか」と改めて文楽の面白さを感じました。普段僕が向き合っている演劇の世界とはまた次元の違う、“ドリーミー”な世界が広がっています。
文楽を観慣れていない人は、舞台上に人形が出てきた時になんて小さい役者たちなんだろう、そしてその後ろにいる人(人形遣い)はなんだろうと違和感を抱くかと思います。ですがその違和感は最初の30秒でなくなり、一気に人間の縮図のように凝縮された世界観に引き込まれると思います。文楽で人形が織りなす恋愛模様や悲劇はとても素敵だし、人形が死ぬシーンなどは人形遣いさんが手を離した途端、本当に魂が抜けたようになるんです。そういう世界は僕がいつも作っている演劇ではできない表現なので、文楽の世界の奥深さに驚かされます。
前回、一輔さんが仰っていた「人間にできて、人形にできないことはない」という言葉が印象的で、今作の台詞にも取り入れさせていただきました。稽古中は僕の思いや指示を技芸員さんたちが的確に、即座に表現してくれて、探り探りだった前回に比べるととてもスムーズでした。
文楽は本当に面白いので、文楽を知らないまま生きるのは損です(笑)。まだ文楽を観た事がない方にとっての入門編としてはベストな作品だと思いますし、文楽を知っている方にも「こんな表現があったんだ」とさらに文楽を好きになっていただけると思うので、是非たくさんの方に観ていただきたいです。
吉田一輔
三谷さんが文楽をとても面白いと何度も仰ってくださるので、嬉しく、誇らしいと同時にプレッシャーも感じており、期待に応えられるよう今回も頑張って努めたいと、身が引き締まる思いです。
普段僕らは一演目に一回しか稽古をしないですし、作者と演出家が稽古場にいることもないので、こうして三谷さんと一緒にやらせていただくことはとても良い勉強になっています。新作を作る場合でも演出家がいないことが多く、役を演じる人がそれぞれ役になりきって作ってくる。そしてそれらをぶつけ合って1つの作品にするので、三谷文楽では三谷さんから色々教えていただきながら作っていけるのがとても楽しいです。
文楽には喜劇がないのですが、13年前「三谷文楽」を冠した全編笑いに包まれる、新たな爆笑文楽というジャンルを切り開いてくださいました。人形浄瑠璃文楽には300年以上の歴史があり、それを今私たちが受け継いできて、この先に繋げていく責任があります。
文楽を目にする機会が少ない方も多いと思いますが、この三谷文楽をきっかけに興味をもって、文楽の他の作品もご覧いただくきっかけになれば非常に嬉しいです。今回も精一杯、皆さんに楽しんでいただけるようにお芝居をしたいと思います。



【公演情報】
PARCO PRODUCE 2025
三谷文楽『人形ぎらい』
作・演出:三谷幸喜
監修・出演:吉田一輔
作曲・出演:鶴澤清介
出演:竹本千歳太夫 他
●8/16〜28◎東京公演 PARCO劇場
〈チケットに関する問い合わせ〉サンライズプロモーション東京0570-00-3337(平日12:00〜15:00)
【撮影:尾嶝太】