一人芝居で11人の登場人物に挑む!『ザ・ポルターガイスト』まもなく開幕! 村井良大インタビュー

初舞台から19年。ミュージカルからストレートプレイまでジャンルレスな活躍を続ける村井良大が、初の一人芝居に挑戦する。演目は、『マーキュリー・ファー』などで知られる鬼才、フィリップ・リドリーの『ザ・ポルターガイスト』で、9月14日に本多劇場で幕を開ける。(21日まで)
──10代の頃、その輝かしい才能で世間の注目を集めたサーシャ。
だが時は過ぎ、今やすっかり世間から忘れ去られ、文具店で働きながら細々と絵を描く生活を続けていた。
そんなサーシャのもとに、姪っ子のバースデパーティーの誘いが届く。絵に描いたような家族の団欒。
それを目の当たりにするたびに軋むサーシャの心──。
着火寸前の爆弾を抱えたようなサーシャの内面を、村井はどのように演じるのだろうか。
(このインタビューは「えんぶ8月号より転載)
演じ分けより音やテンポを楽しんで
──今回は自身初となる一人芝居です。
ずっとやってみたいという興味はありました。ただ、どの演目でということまではまったく想像していなかったんですね。観客として一人芝居を観に行くこともほとんどなかったので、本番に向けて今は勉強の毎日です。落語を聞いたり、演出の村井雄さんが先日まで一人芝居を上演されていたので(KPR/開幕ペナントレース『ずるずると、Y鶴(仮名)』)、それを観に行ったり、自分なりにインプットをしている最中です。
──現時点での所感で結構です。一人芝居と、相手のいるお芝居の違いって何だと思いますか。
相手のいるお芝居の場合、相手の台詞を受けて、そこから導き出される答えとして自分の台詞がある。僕はそうやっていつも台詞を覚えているんですけど、今回はそれが通用しないので大変です。本番はまだ先ですが、今からコツコツと台詞を入れていっています。
──随分早いですね(取材は5月中旬に実施)。
これだけの台詞量を覚えるのは初めての体験なので、今からやらないと間に合わないんですよ。理想としては、稽古初日に通せる状態にしたい。そのくらいの感覚で臨まないとダメだろうなと。今回に関しては、雄さんに見てもらいながら、「じゃあ、ここはこうしましょう」というふうに動きをつけてもらっていたら、たぶん頭がパンクする。まずは自分でつくって、そこから雄さんと一緒に微調整をしていくというやり方のほうが、僕自身が対応しやすい気がします。
──本作は一人芝居にもかかわらず、登場人物が多く、主人公のサーシャを含め11人。今のところどれくらい明確に演じ分けていこうと考えていますか。
明確に演じ分けはしますが、それを明確に映し出しはしない、というのが今の僕の考えです。とはいえ、まったく違いをつけないと、今誰が喋っているのかお客さんもわからなくなる。なので、重心だったり体の使い方で色をつけていこうと思っています。特にそれぞれの登場人物が最初に出てくる場面では、その人の特徴をちょっと強めに立ててみて。そこでこの人物はこういうキャラクターですという前提をお客さんと共有できたら、あとはそこまでわかりやすく演じ分けを意識しなくても伝わるのではないかと思っているんですね。どちらかというとお客さんには演じ分けよりも、音やテンポを楽しんでほしい。特にパーティーのシーンではいろんな人物があれこれ口を挟むので、その会話のスピード感や面白さをきちんと表現できたらと考えています。
──本作に限らず、村井さんは与えられた役を立ち上げるにあたって、いつもどんなことをされるんでしょうか。
そのキャラクターのビジュアルを、まず頭の中で考えますね。たとえば、この役はあの俳優さんっぽいなとか、きっとこの役はいつも眉が下がっているなとか、ちょっと太っているんだろうなとか。ビジュアルをイメージするだけで、声の響きも体の使い方も変わってくる。特に今回は役ごとに衣装が変わったりするわけではないので、余計に自分の中で役のビジュアルをクリアにしておかないと、たぶんお客さんもよくわからなくなってしまう。僕自身は視覚的には何も変わっていないけれど、よく見たらちゃんと役ごとに体つきや仕草が違って見えるようなお芝居ができたらと思っています。

絵を描くことはサーシャの誇りだった
──絵の才能を持ち、若くして「神童」と持てはやされたサーシャ。サーシャにとって「絵を描くこと」はどういうことだったと捉えていますか。
誇りでしょうね。サーシャ自身、絵を描くことが好きだったと思いますが、それ以上に母親が自分の絵を好きだと認めてくれたことが大きかった。どんな才能も、人から褒められたことがスタートライン。自分が絵を描くことで、みんなが喜んでくれた。だから、サーシャは絵を描くことを捨てられなかった。サーシャにとって誇りであり、自分を表現できる唯一の場所だったんだと思います。
──サーシャは兄夫婦に複雑な感情を抱いています。サーシャの屈折に、村井さん自身は寄り添えるところはありますか。
あまりないと思います。というのも、僕はサーシャほど起伏の激しい人間ではないので(笑)。サーシャの入り乱れた感情を表現するには、サーシャ自身をどう演じるかはもちろん、それ以上に周りの人間をどう演じるかが大事になってくる。サーシャ以外の人物がサーシャのことをどう思っているのかが、台本ではどうとでも読み取れるようになっているんですね。サーシャ本人ははっきりとわだかまりを抱えているのがわかるし、恋人のチェットに対する態度と、兄夫婦に対する態度が違うのも明らかです。そこはすごくわかりやすいけど、ではそれに対してみんなはどれくらいの温度感なのか。この人はすごく気にかけているように見えるけれど、別のこの人は全然察していないなとか。そのあたりの違いをつけることで、さっきの演じ分けではないけれど、キャラクターの違いも明確になるし、サーシャの息苦しさもより鮮明になると思います。
──そうなんですよね。サーシャに対して悪意がない人も普通にいて。でも、悪意の有無は関係なく、サーシャには目に入るすべてが自分を苛立たせる何かに映っているような。
たぶんそういうふうに見えるのが、一人芝居の面白さなんですよね。このお話って、普通の演劇にしてしまうと、苦しんでいる主人公がいて、その周りにキャラの濃い人たちがいるだけのお話になってしまうと思っていて。でも彼/彼女らのやりとりをすべて一人の役者が演じることによって、相手の台詞が相手の台詞に聞こえないというか、すべてが「僕にはこう聞こえた」というサーシャのフィルターを通しての言葉に聞こえてくる。きっとお客さんは僕を通じて、サーシャが目にしたこと耳にしたことを追体験しているような感覚になれるのではないかと思っています。
【プロフィール】
むらいりょうた○東京都出身。2007年ドラマ「風魔の小次郎」で初主演。以来、映像や舞台で活躍中。最近の主な出演作品は、【ドラマ】「教場」、「インビジブル」、「邪神の天秤 公安分析班」、「あなたは私におとされたい」、「御社の乱れ正します」【舞台】ミュージカル『RENT』『蜘蛛女のキス』『FIRST DATE』『生きる』『この世界の片隅に』『手紙2025』、こまつ座『きらめく星座』、日本テレビ開局70周年記念舞台『西遊記』、新国立劇場『白衛軍』など。

【公演情報】
『ザ・ポルターガイスト』THE POLTERGEIST
作:フィリップ・リドリー
翻訳:小原真里
上演台本・演出:村井 雄
出演:村井良大
●9/14~21◎本多劇場
〈公式サイト〉https://ishii-mitsuzo.com/
【文/横川良明 撮影/中村嘉昭】