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舞台『振り子』9/14まで上演中!五関晃一インタビュー

戻れない、引き返せないからこそ「時」を大事に

〝時間〟と〝愛〟をテーマにした切なくも温かな物語『振り子』が舞台化される。原作は、イラストレーターとしても活躍するお笑い芸人・鉄拳による同名のパラパラ漫画。脚本を23が手掛け、演出は吉田武寛が担当する。
主人公は、不良でバイク好きな永井等時。彼が天真らんまんな片瀬円香と出会う時、振り子は静かに動き出す──。ふたりの3つの時間を行き来しながら、振り子時計は残酷にも時を刻む──。
そんな1組の男女の半生を通して、時間と愛を巡る物語が展開するこの物語で、永井等時の青年期を演じる五関晃一に、作品世界や俳優としての自身について話を聞いた。

永井等時の人間としてのリアルさを

──五関さんはこの「振り子」という原作漫画については、どんな印象がありましたか?

 発表された当時、パラパラ漫画ということで話題になったのは記憶にあるので、目にはしていたと思います。作者の鉄拳さんのことは、もちろん芸人さんとして存じ上げていましたが、その人とパラパラ漫画という表現、そして感動的な物語というギャップが面白いなと思っていました。

──その作品が今回舞台化されて、主人公を演じることになったわけですが。

 僕はもともと「時間」というものに執着がなくて、海外旅行へ行ってもホテルでずっと寝ていたりする人間で(笑)、時間がもったいないという観念がないんです。ですから初めて読んだときはすごく刺さりましたね。時間は戻ってこないとか、後悔しても遅いとか、そういうことをすごく考えさせられました。これまでは「あの時こうしていれば」みたいなことはなかったのですが、これからはもうちょっと、「時間は戻ってこない」ということに敏感に過ごしてみようかなと思っています。

──この舞台では、永井等時という1人の人物を、少年期、青年期、壮年期という形で3人で演じ分けますが、それについてはどう感じていますか。

 1つの役を何人かで演じ分けるのは初めての経験です。ただ、もともと自分が座長の公演とかグループでの舞台などでは、出ているみんなが主役という感覚でやっていたのですが、今回はまさにそういう作品だなと思いました。僕が演じるのはちょうど人生の真ん中あたりの時代なので、10代を演じる宮里ソルさんの芝居をちゃんと受け取って、この先を演じる内海光司さんにちゃんと渡したいですね。

──演じる永井等時という役については、どんなふうに捉えていますか?

 僕がこれまで経験したことのない役で、すごくリアルだなと思いました。10代のときの青春のキラキラ感とか、バイクの店を持って希望に燃えていたときの熱とか、逆にうまくいかなくなったときの崩れ方とか腐り方とか、どれも人間としてめちゃくちゃリアルで。そのリアルさをしっかり届けたいと思っています。

──この作品の構造は3つの時代が錯綜して、しかも過去や未来の自分と会話する場面も出てきます。

 そこはとても面白いなと思いました。でも演じる側としてはけっこう難しいですよね。少年の時代を見ながら僕と内海さんが会話したり、同じ人物なのに考え方が変わった自分との会話があったり。そういう場面だけでなく、宮里さんと内海さんとは、永井等時という人間を一緒に演じる者同士として、コミュニケーションを大事にしたいと思っています。

──宮里さんと内海さんの印象はいかがですか?

 おふたりとも今回が初共演なんです。内海さんは同じ事務所の大先輩ですが、一度も共演したことがなかったんです。この公演のビジュアル撮影のときに初めてお話しさせていただいたのですが、とても優しくて気さくな方でしたので、稽古場では甘えさせていただこうと思っています。宮里さんは本当に初めましてになるのですが、同じ人物を演じるためにも早く仲良くなりたいですね。

自分のペースやスタンスを大事にしながら

──永井等時の妻になる片瀬円香も物語のもう一方の主役ですが、この女性についてはどんな感想を持っていますか。

 なんか切ないですよね。等時は自分にいっぱいいっぱいで気づけなかったけれど、振り返ればいつも支えてくれていたし、そばにいてくれた。でも何もしてあげられなかったし、気づいたときにはもう遅かったという、等時にとっての大きな後悔なわけで。そこはこの物語の一番大事なところなので、円香との関係も大切に演じたいです。

──永井等時が青春を懸けて夢中になるものはバイクですが、五関さんの場合はそれがアイドルや歌やダンスだったということでしょうか?

 そういう意味ではたしかにそうですね。

──その中に俳優という仕事も入ってくると思いますが、俳優という仕事の楽しさはどんなところだと思いますか。

 今回もそうですが、自分と真逆な役をやれたりする、その新鮮さですね。演じること自体はそんなに楽しいという感覚ではないのですが、演じた結果として、面白かったとか良かったとか、リアクションをもらうことが楽しいんです。それと稽古は好きですね。みんなで作り上げている感じがすごく好きで、それぞれが演出家に言われたことを試行錯誤しながら作っていくところとか、お互いに相手の変化によってまた考えたりする。そうやって一緒に作っていく現場が楽しいし、面白いなと思うんです。

──役柄からの影響とか演じる役からフィードバックはいかがですか?

 僕はないですね。役に引っ張られるということもなくて、憑依型の方もいますけれど、僕は役と自分は完全に切り離すほうなので。

──五関さんは今ちょうど40歳ですね。昨年出演したClassic Movie Reading『風と共に去りぬ』では、レットバトラー役で大人の男の魅力も感じさせました。この年齢になったからこそ感じていることはありますか?

 なんか年齢に対する焦りがなくなりましたね。10代でこの世界に入って、その頃は何歳でデビューして、何歳でこうなってとか思い描くことが沢山あって、そういう意味では、20代から30代になるあたりが一番焦っていた気がします。39歳から40歳になるときは、不思議なくらいまったく焦りとかなくて。たぶん自分のペースとかスタンスでやっていくことが、一番大事だというのがわかったからでしょうね。そういう自分なりのスタンスを見失わずに、これからもいろんなことに向き合っていきたいと思っています。

──最後に改めて伺います。この作品を通して届けたいものは?

 そこはできれば鉄拳さんとちゃんとお話ししたいところですが(笑)。個人的には、「時の流れ」の中で、戻れない、引き返せないからこそ、後悔のないように。日々生きるうえでの気づきを大事にしたいということですね。「時間は有限だよ」と言いたいです。自分がそれとは真逆な人生を歩いてきたので(笑)。でも、結局は自分にとって意味のある時間だったらそれでいいと思いますけどね。

プロフィール

ごせきこういち○東京都出身。アイドルグループ・A.B.C-Zのメンバー。DVD『Za ABC~5stars~』でデビュー。主な出演舞台は、ミュージカル『ファウスト~最後の聖戦~』(15年)、舞台『奇子(あやこ)』(19年)、舞台『行先不明』(22年)、リーディング・コンサート『ベートーヴェン/届かなかった手紙』(23年)、舞台『夜曲~ノクターン~』(23年)、Classic Movie Reading Vol.2『風と共に去りぬ』(24年)、『もしも彼女が関ヶ原を戦ったら』(25年)など。

(このインタビューは「えんぶ10月号」より転載)

公演情報

舞台『振り子』
原作◇鉄拳
脚本◇23
演出・脚色◇吉田武寛
出演◇五関晃一(A.B.C-Z) 福田沙紀 遠山景織子
宮里ソル 水瀬紗彩耶 西村菜那子 小日向美香
田中晃平 早川維織 内海光司
9/6~14◎IMAホール
〈チケット問い合わせ〉
stage.contact55@gmail.com

【インタビュー◇宮田華子 撮影◇松山仁 ヘアメイク◇鈴木りな(B.sun) スタイリング◇嶋岡隆】

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