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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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平野良・オレノグラフィティインタビュー

全員が主役、演劇のテーマパークのようなお楽しみを!

〝歴史を学べる「祭シリーズ」〟を上演してきたる・ひまわりが2024年に新たに誕生させた「時をかけ・る」シリーズ。歴史上に生まれては消えていく〝負け組〟の生き様と真実を、〝歴史研究員〟に扮した俳優たちがストレートプレイ、グランドミュージカル、2.5次元風ミュージカル、コメディといった多ジャンルを駆使して解き明かしていくオムニバス作品である。

演出は出演もしている平野良、そして音楽はオレノグラフィティが担当。前回に引き続いてのタッグとなるふたりが、第2弾『時をかけ・る~LOSER~2』の創作に先駆け、クリエイター視点から本作の魅力を語り合ってくれた。

変幻自在で物語の体内リズムを操る音楽

──まずは前回の創作の過程などお聞きできますか?

平野 それはもうこちらが丸投げし、できたものを使わせていただく、みたいな(笑)。

オレノ ハハハッ。でも僕は良さんの演出は懐が深いと感じていて。何を出しても「使えます!」「これOK」って、全部作品にハメてくれるような印象はあります。

平野 あんまりもらったものを変えたりってことはないですよね。お伝えするのも作品コンセプトくらいですし。

オレノ オーダーを記憶してるのは裁判劇(「被告人 ヒデトシ」)。

平野 ああ、「カチカチカチ…」。

オレノ 時計の秒針の案は良さんから最初の打ち合わせで出たんです。「ベネディクト・カンバーバッチの映画をちょっと観てほしい。あんな感じで」って。あれは面白かった。

平野 イメージね。ま、でも全体的に作業はすごくスムーズです。

オレノ 逆にその速度じゃないと追いつけない。稽古も速いので、本当に。

平野 速いというか…もうそれじゃないと本番に間に合わないし!(笑)。

──5作品を日替わりで上演。音楽もいろんなタイプが求められます。

オレノ そこはやっぱり自分が「面白い」と思え、それを良さんも「面白い」って言ってくれるのが一番最初の目標な気がしますね。特にオムニバスは音楽が似通った時点で自分も飽きてしまうし、それってすぐお客さんにも伝播するイメージがあるので。

平野 確かにね。

──平野さんはオレノさんの生み出す音楽についてはどんな印象を?

平野 変幻自在だから、やっぱりすごい助かりますよね。その曲がかかるとその世界にぱって行けるように全部ジャンルを変えてくれてるし、それで物語の体内リズムみたいなものも操ってくれるんで、たぶん役者もやりやすいと思います。

オレノ めちゃめちゃ嬉しい! やっぱり僕は俳優も演出家もやってらっしゃる方にとてもシンパシーを感じるんです。共通言語が多いし、自分が立っているときに良いか悪いかという判断を普段からされているでしょうし。特に良さんは「俳優はこうすれば楽しいよね」とか、「楽しければ絶対いい作品になるよね」という方向に持っていくのがとても上手。だからめちゃめちゃしんどい過酷な現場のはずなのに、みんながめちゃめちゃ楽しいっていう不思議な状況が生まれていて。

平野 (頷く)。でも俳優と演出、絶対的に使ってる脳みそは違ってきますよね。どう見えるか、どうお客さんに届くかっていうのは、やはり役者をやっているときよりは強く意識していると思う。今作でも視覚的効果だったり音だったり、劇場という非日常の中で時代劇をやる、瞬時にその時間や感覚をお客さんに飛ばさなきゃいけないからそこはしっかりディレクションで補助しておいて、芝居では純粋に人の心だけが届くようなものにしなきゃというのは考えてます。

オレノ 僕も確かに役者と音楽のスイッチはしっかり切り替わる感じがしますね。どちらも好きですし、また、はっきりと違う職業だというイメージなので。でも比率が偏るとなんか自分自身のバランスが悪くなってくるんです。インプットが少なくなってしまうからかなぁ。現場でも俳優でいると音楽家さんと会えるけど、音楽家でいると音楽家さんと会えないですからね。

──創作のルールなどはありますか?

オレノ 僕自身「儚さ」みたいな音楽が好きなんです。坂本龍一とかテリー・ライリーとか、ミニマルミュージックが特に。演劇って悲劇でも喜劇でも〝人間の持つ哀愁〟がどの場面にもあるんですよね。例えば安西(慎太郎)さんなんか、怒ってても悲しかったり、笑ってても悲しかったりするところが顕著だから、音楽もそこに引っ張られてるところがあるかもしれません。あと最近はセリフのキーとその歌のキーっていうのがある程度合っていたほうがいいなと思っていて。本来ならセリフとしてどんな風にしゃべりたかったはずの歌なのかを探るんですけど、前回、その辺はなかなかうまくできたかなと思ってます。

誰が見てもどこかに必ず刺さる舞台を

──キャストも続投しての今回は「幕末維新」がテーマ。演出の構想などは?

平野 今はまだノープランです(笑)。前回の経験を踏まえて今回はもうちょっと自由度高めでとは思っています。テーマ的にはドキュメント性を上げられるなとも思っていて…だから既成概念にとらわれずに「その場で生きてもらう」という見せ方を強みにしていければ。役者もまたいろんなあの手この手を持ち込んでくると思うのでそれも楽しみ。得意技をバンバン出しつつ、一方で得意じゃない…というか、持っているけどあんまり出す機会がない色もここでたくさん出せていけたらとは思ってます。

──イツメンでまた面白いものを作るぞ、と。

オレノ 僕は、やっぱりこの6人じゃないとこの作品はできないとすら思ってます。あの濃ゆい方たちがそれぞれに真ん中にいるとき、どの音楽が鳴れば彼らが一番ノってくれるのか、魂が震えるのかという部分をより強く模索していけたらいいですね。誰が見てもどこかに必ず刺さる舞台を自信を持ってお届けできる…って毎回言っちゃうけど本当にそう。良さんが役者の得意なところは絶対に観せる、という安心感があるのでここでしか観られないものなのは間違いないし、僕はもう、今持てるすべてを注ぎ込みますよ。おそらく今年の僕はこれで終わります(笑)。

平野 横浜のラーメン博物館、入ると空気がらっと変わって全部食べたくなる!っていう、あんな舞台にしたい。1回1公演で3種類、でもできれば複数来ていただいて全部観ていただきたいです。演劇のテーマパークのようなお楽しみ、全員主役を張ってますし、芝居が好きなメンバーのまだ観ぬ可能性も強烈に感じながら、深みと旨味がしっかりある舞台を楽しんでいただきたいです。個人的には「時・る」で生まれた芝居をきっかけにみんなが外でもお話もらえるくらいになったらいいな、と。もはやこれは嬉しい楽しい役者オーディション(笑)。全員でステップアップしていかなきゃですね。

プロフィール

ひらのりょう○神奈川県出身。1999年ドラマ『3年B組金八先生』第5シリーズで映像デビュー。主な舞台出演作はミュージカル『テニスの王子様』、『お気に召すまま』、『さよならソルシエ』、『伝説のリトルバスケットボール団』、舞台『インフェルノ』、『文豪とアルケミスト』シリーズ、『HELI-X』シリーズほか多数。演出作は舞台『BIRTHDAY』、2.5次元ナビ! シアターシリーズ、舞台『羽州の狐』など。『2.5次元ナビ!』(2017年〜)のMCも担当。

おれのぐらふぃてぃ○兵庫県出身。俳優、音楽家。2005年より独学で劇伴の作曲・編曲を手がけ、ストレートプレイ、ミュージカル、翻訳劇、コントほか多ジャンルで活躍。シン る・ひま オリジナ・る ミュージカ・る『明治座で逆風に帆を張る!!』、シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る革命『もえ・る剣』、『羽州の狐』、ハジケ・る ポップコーン一座「テイ・る オブ ナイトメア」〜不思議の国の給仕係〜など、る・ひま作品にも縁が深い。

(このインタビューは「えんぶ10月号」より転載)

公演情報

『時をかけ・る~LOSER~2』
脚本◇赤澤ムック 
演出◇平野良
音楽◇オレノグラフィティ
出演◇安西慎太郎 木ノ本嶺浩 松田岳
前川優希/内藤大希 平野良
10/30~11/4◎Club eX
〈問い合わせ〉る・ひまわり
tokiru_info@le-himawari.co.jp

【インタビュー◇横澤由香 撮影◇中田智章】

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