
互いに敬意を持って生きるという大切なテーマを届けたい
肉食獣と草食獣が、友情、愛情を育み共存する社会を営むことは可能なのか? という深淵なテーマを青春群像劇として描いた板垣巴留の「BEASTARS」を原作に、読み手・歌い手とパフォーマーが、生演奏でひとつの役を共に表現していくという斬新な手法で紡がれるReading Musical『BEASTARS』。
2024年9月に上演され高い評価を得たこの作品が新たなキャストと共にepisode 1として再び上演される。東京は9月28日〜10月2日までシアター1010にて、大阪は10月11日~13日はCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演。
主人公のハイイロオオカミの少年レゴシ役に三浦涼介を迎えるのをはじめ、魅力的なキャストが集結するなか、ハイイロオオカミのジュノ役を務める美弥るりかが、新たに臨む舞台への思いを語ってくれた。(このインタビューはえんぶ10月号から転載。)
原作のオリジナリティに融合する新しい舞台
──非常に新しいジャンルの演劇形態ですが、出演しようと思われた決め手はなんだったのですか?
実は前回の上演ビジュアルを拝見した時に、板垣巴留さんが書かれた「BEASTARS」という原作漫画をまだ読んでいなかったので「どんな作品なんだろう」とすごく興味を引かれたんです。スケジュールの都合で観劇は叶いませんでしたが、ものすごく心に残って。
──美弥さんのアンテナに刺さるものがあった?
そうなんです。その印象がとても強かったので、今回オファーをいただいて「あ、あの作品!」と、とても嬉しかったです。朗読劇はいま非常に盛んで、歌を唄うものもかなりあると思いますが、このリーディング・ミュージカルではひとつの役柄を歌い手・読み手とパフォーマーとの二人一役で表現をするところが、すごく新しくて面白いなと感じました。その上で、改めて原作を読み進めていったら見事にハマって。特別なオリジナリティのある世界観に、この舞台の新しさが融合しているのが魅力的だなと感じています。
──具体的に作品のどんなところに惹きつけられたのですか?
深く心に刺さる、学ぶことが多い作品です。動物社会の中で肉食動物と草食動物が、自分の本能を抑えながら共存していくことが可能なのか? というテーマが、繊細かつダイナミックに描かれていて。特に主人公のレゴシが肉食動物でありながらも、その本能に従って生きていきたくないという、自分の欲望と対峙していくなかで、色々な感情を味わいながらどんどん成長していく姿を自然と応援したくなるんです。信念を持って生きていれば、どうしてもぶつかりあうことも出てきますが、そうした時にレゴシは誰が強いとか、どちらが悪いではなくて、みんなを傷つけない形で解決していこうとする心を持っている。それはとても美しいことだし、私たち人間の社会のなかにもそのまま通じることなんですよね。今日もこうして取材をしていただくにあたっても、たくさんのお仕事の方々が力を合わせてくださっていますが、そうした様々な道を極めている方たちとの出会いを大事にする。周りの方々に敬意を持って生きていくってとても大切なことだし、例えば誰かの言動に対して傷ついたと感じてしまうことがあったとしても、相手の方はご自身の正義のなかで動き、話しているんだと、自分の視野だけではなくて、相手側からの目線を想像するだけで、全く受取り方を変えることもできます。そういう大きな学びのある、魅力の詰まった作品なので、携われることを光栄に思っています。

インプットする為に手放す勇気を持つ
──そのなかで演じるジュノ役についてはどんな印象を?
演劇部に入ってくる新入生、レゴシやウサギのハルより年下だというところに、ちょっとたじろいでいるんですが(笑)、まずオオカミなので、そもそも見た目がスタイリッシュですし、生まれ持った天性の華やかさがあって、動物界のトップに立ちたいとか、もっと皆をまとめていきたいという正義感や自信にあふれている子なので、第1印象として彼女の華やかさ強さがパンと出なくちゃいけないなと。それと同時にとても魅力的な彼女なのに、想いを寄せる相手との関係はうまく進んでいかなくて、その点ではすごく不器用なんです。そこが可愛らしいなと思いますし、そういう彼女の内面もお客様に歌と台詞でお伝えしていきたいです。パフォーマーの竹井未来望さんと、どちらがどちらに合わせるのではなく、お互いの相乗効果を高めてジュノを表現できたらいいですね。
──レゴシ役の三浦涼介さんとの共演についてはいかがですか?
ご一緒させていただくのは今回が初めてなのですが、舞台は拝見していて、この世の者じゃないような美しさと、彼にしか出せないオリジナルの世界観をお持ちの方だなと常々感じていたので、ご一緒できることがとても楽しみです。
──いま三浦さんに対しておっしゃった言葉は、そのまま美弥さんにも当てはまるなと感じるので共演がとても楽しみですが、ご自身のプロデュース公演など美弥さんが次々に新しい挑戦をされるにあたって、意識していることはありますか?
いやいや、そんなそんな! 三浦さんと並べていただくなんておこがましいですが、新しいものをインプットしていく為には、手放す勇気も持たないといけないんだなとは感じています。最初はそれが怖くて、特に宝塚を卒業した頃は今まで培ってきたものを手放したら、二度と戻ってこないかもしれないと、挑戦に対する怯えもあったんですよね。でも私が新たなフィールドに立つことを待っていて下さる方が一人でもいらっしゃるとしたら、どこかでは手放さないと、新しいものが入ってこないと思い、初めてそうしてみた時に「あ、意外とできるんだな」と感じて。しかも新たに手にしたものを一生懸命磨いていったら、どんどん綺麗に素敵になっていくのを知ることもできたので、いまはむしろ意識的に、持っているものを入れ替えていくようにしています。
──そんな美弥さんが臨む新たな舞台に期待が高まりますが、改めて楽しみにされている方たちにメッセージを。
はじまったらあっという間だろうな、という公演期間ですし、東京と大阪のみでの公演でもありますが、是非見逃さずに劇場にいらしていただきたいです。原作をご存じの方はもちろん、まだ読んでいないという方でも十分に楽しめるストーリーになっていますので、この新しい感覚の朗読ミュージカルを体験しにいらして下さい!
【プロフィール】
みやるりか〇2003年宝塚歌劇団に入団。唯一無二の存在感で男役だけでなく幅広い役柄を好演した。19年退団後は、舞台はもちろんライブ、ファッション、ビューティーなど様々なフィールドに活動の幅を広げている。近年の主な舞台作品に、『ゲゲゲの鬼太郎2025』『屋根の上のヴァイオリン弾き』『メイジ・ザ・キャッツアイ』 舞台『キングダム』などがあり、自身のプロデュース公演『ビューティフル・サンデイ』『M FESTIVAL』も展開している。10月『三島由紀夫レター教室』への出演が控えている。

【公演情報】
Reading Musical『BEASTARS』episode 1
秋田書店「少年チャンピオン・コミックス」刊)
脚本:西森英行
演出:元吉庸泰
作曲・音楽監督:和田俊輔
出演:
[歌い手・読み手] 三浦涼介 崎山つばさ/風間由次郎 梅田彩佳・真山りか(私立恵比寿中学)*Wキャスト 美弥るりか
[パフォーマー] 村田 充/速川大弥/竹井未来望/MITSUKI[ミームトーキョー]
[Story Artist] 高澤礁太/松岡歩武
[演奏] ヤマザキタケル ほか
●9/28~10/2◎東京・シアター1010
●10/11~13◎COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
〈公式サイト〉https://rm-beastars.com
〈お問い合わせ〉rmbeastars@gmail.com
【インタビュー◇橘涼香 撮影◇中村嘉昭 スタイリスト◇小林洋治郎】