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新橋演舞場公演 舞台『星列車で行こう』松村龍之介・小波津亜廉 インタビュー

坂東玉三郎の繊細で幻想的な世界観が広がる舞台、『星列車で行こう』が、10月4日より新橋演舞場で公演中だ。(26日まで。そののち大阪松竹座公演あり。)

本作は、2024年京都・南座公演の大盛況を受けての待望の再演で、“夢が見つかる”という伝説を持つ「星列車」を舞台に、迷いを抱えた若者たちが再び走り出すまでの心の旅路を描くオリジナルストーリー。脚本は真山仁、坂東玉三郎が演出・補綴を手掛け、音楽、芝居、美術、照明、そのすべてを独自の美学と感性で貫いている。

出演は、主演の影山拓也(IMP.)をはじめ、松田悟志、松村龍之介、石井一孝という初演からのメンバーに、新たに参加する小波津亜廉が舞台に厚みと新鮮さを加える。

この作品で、歌舞伎俳優を志したがかなわず、「星列車」にたどり着く五郎役の松村龍之介と、影山拓也扮する太郎のかつての友人、裕太役を演じる小波津亜廉に、坂東玉三郎の演出や本作の見どころなどを語ってもらった。

全員がお互いの瞬間瞬間を共有している舞台 

──松村さんは初演からの続投ですが、初演のときの印象から話していただけますか。

松村 一番印象に残っているのは、初日の舞台が終わって、緞帳が下がってカーテンコールでまた上がった瞬間に、お客さんから大きな拍手をいただいたときのことで、すごく浄化された気持ちになったんです。信じてやってきてよかったなと。最初に稽古が始まってから、玉三郎さんの頭の中にあるものを、僕らがどれだけ理解して表現できているだろうかという気持ちがずっとあったので。ただ、劇場に入ってセットを見たとき、「あ、これは凄いことになるかも!」と思ったんです。それをお客さんの拍手で確かめられて、すごく嬉しかったです。

──その初演は小波津さんは出ていなかったのですね。

小波津 はい。でも動画を拝見しまして、出演者の皆さんの一体感をすごく感じました。この物語では、みんなが自分の夢を見つけるために「星列車」に乗るわけですが、出演している全員がお互いの瞬間瞬間を共有しているのがわかりました。それは演じているキャラクターだけではなく、そのバックボーンも含めてで、稽古をしている中でみんながどんな笑い方をしていたか、そういうことまで想像できたんです。本当に良いカンパニーは、みんなが同じ方向を向いて作品作りをしていて、それが作品を観ている側にもわかるんです。そういうものがちゃんと伝わってきたし、動画でこれだけ伝わるのだから、実際に劇場で観たお客さんはそれ以上のものを受け取ってくださっただろうなと思いました。

──キャストの方々がそういう状態になれたのは、やはり玉三郎さんの存在が大きいと思うのですが、松村さんから見ていかがでした?

松村 玉三郎さんはすべて見抜いてしまわれるんです。嘘の芝居もセリフに説得力がないことも。よく「想念」という言葉を使われて、いつも「その状態になる想念が準備できていないのにセリフを発するのはやめてくれ」とおっしゃるので、自然とお芝居に嘘がなくなるんです。なおかつ稽古場の風通しがよくて、僕はわからないことがあるとすぐ聞きにいってしまうのですが、それに対してヒントをくださったり、ちゃんと見てくださっているので、おっしゃることへの信頼は大きかったです。そういう意味では役者としてとても健康的に学ばせていただいた稽古の時間だったと思います。

──この作品は幻想的で抽象的な世界ですから、玉三郎さんからの的確なアドバイスがあると安心でしょうね。

松村 玉三郎さんに言われて気づくのはもちろんですが、言ってくださる様子がすでに表現になっているので、ああ、そういうことかと具体的に理解できるんです。

──小波津さんはそんな玉三郎さんと、すでに二度も舞台で共演していますね。

小波津 今年の1月と6月に上演した『長崎十二景』という舞踊劇で、玉三郎さんは遊郭にいる女の人、僕はそこに通っている外国の男という役でした。舞踊劇ですから言葉はないのですが、玉三郎さんは動きや表情1つで様々な気持ちをこちらに伝わるように表現されるんです。人間は目だけでも沢山の情報のやりとりができるのですが、劇場は空間全体に情報を伝えなくてはいけない。でもそれについては「ここだけでやっていると芝居が小さくなるんじゃないかという意識はいらないから」と。そして「考えるのをやめなさい」と言われたんです。とにかくその瞬間瞬間に生まれるものだけに忠実になることだと。それを聞いてハッとさせられたんです。今までは表現を足していたけれど、逆に極限まで無くそうと。その方向にフォーカスした結果、僕は玉三郎さんが演じる女性しか見なくなった。その僕ら2人だけの世界を、ずっとお客さんに観ていただいたのだと思います。

──その世界でリアルに生きればいいということですね。

小波津 すごく勉強になりました。松村くんが先ほど見抜かれると言っていましたが、本当にそうなんです。雑念が入ったら「今、私を見ていないね」と見抜かれてしまう。そんなつもりではなかったとしても、ちゃんと気持ちが合っていなかったのだなと。毎日、合っていた、合っていなかった、と答えが明確に出るんです。そんなふうにしているうちに、自分はこうしたかった、玉三郎さんはこうして欲しかった、ということがわかるようになった。それが6月の公演でした。そこからこんなに早く、また玉三郎さんの演出される作品に出演できるなんて思いもよらなかったですし、しかも再演で初参加させていただくなんてあまりないことですから、とても有り難いです。玉三郎さんの作品で求められるものは常に高いレベルなので、僕もしっかりこのカンパニーの皆さんに喰らいついていきたいと思っています。

楽譜の流れがそのまま旅を表現している 

──改めてそれぞれの役柄について伺いますが、松村さんは五郎です。

松村 歌舞伎俳優を目指している青年で、施設で育った孤児なのですが、幼少期にたまたま観た歌舞伎で、『暫』の鎌倉権五郎に衝撃を受けて、歌舞伎俳優を志します。でも自分の夢に対しての迷いや葛藤、コンプレックスなどで挫折しそうになる。ただ、五郎はとても優しくて、何も見返りを求めず行動できる人間なんです。この星列車で太郎や次郎と出会って、一緒に導かれていくうちに、自分がやるべき道を見出していきます。

──小波津さんは新しく書き加えられた役で、裕太ですね。

小波津 影山拓也くんが演じる太郎のかつての友人で、影山くんと2人で歌う場面もあります。この作品は歌も大事な要素なので、一緒に歌うことで太郎の心情に何かを持たせられたらと思っています。

──物語の中では様々なジャンルの歌が歌われますが、松村さんはそれについてどう感じていましたか?

松村 歌がもたらす効果の大きさを改めて感じました。音楽はこの物語を彩るうえでも重要で、楽譜の流れがそのまま旅を表現している気がします。1つの音を人とするなら、いろんな音が繋がって1つのメロディを奏でている。それが物語なのか人生なのか、その受け取り方は人それぞれでいいと思いますが、玉三郎さんが選び抜いた良い意味でバラバラな、でも歌う人間を象徴するかのような楽曲が散りばめられている、その散りばめ方も、いろいろな人がいていろいろな人生があって、それがどこか宇宙っぽい。その宇宙でいろいろな駅に停まるこの「星列車」の旅自体が、人が生きることを象徴しているんだろうなと、歌を聴いていて思いました。

小波津 それぞれのキャラクターが歌う曲も、これしかないなと思うようなものが選ばれています。例えば石井一孝さんの車掌が歌う曲はモーツァルトのオペラ『魔笛』のアリアで、松田悟志さんの歌う「MONEY」も、松村くんの「スタンド・バイ・ミー」もそうですが、自分の中の感情をうまく吐露する方向に曲が持っていってくれる。年代とかジャンルはバラバラなんですけど、どこかノスタルジックな感じは共通していて、そういうものが随所に散りばめられています。旅をするといろいろな発見がありますけど、この作品も音楽をはじめ様々な発見でワクワクさせてくれる、とても贅沢な旅をさせてくれる作品だと思います。

期待を超える、より進化した姿を届けたい 

──お互いについても話していただけますか。たしか何回か共演していますね?

松村 7年前に初めて共演して、舞台では2本ですが、そのほかにイベントとか番組でのゲスト出演などで定期的に会っているんです。それに、この作品の初演前に玉三郎さんにお会いしたとき、すごく話が弾んで、そのまま一緒に今やっている舞台を観に行きましょうと誘われて付いて行ったら、その舞台に亜廉くんが出ていたんです。そんな繋がりなので、今回、亜廉くんが参加すると聞いてむちゃくちゃ嬉しかったです。いろんなものを見てきたし、いろんなことを話してきた。そんな気心の知れた人が、『星列車で行こう』という仲間たちと大切に作ってきた作品に一員として加わってくれる。それがすごく嬉しい。他のメンバーにも亜廉くんのことをプレゼンしようと思っています。亜廉くんは見た目はシュッとしていますけど、すごく隙のある人で(笑)、それを知ると一瞬で好きになれるので。

──確かにお話しすると。とても優しくて楽しい方ですね。

松村 外見で誤解されやすいんですけど、カワイイところしかないということを知ってもらわないと(笑)。

小波津 有り難いですね(笑)。“のすけ”(松村の愛称)とはプライベートでも一緒に飲みに行ったことがあるし、彼が自分で作・演出した『これは、舞台なのか、朗読劇なのか、なんなのかvol.1』という舞台を観に行ったときは、この人の頭の中はどうなっているんだろうとびっくりして、お芝居が好きなんだなと感動しました。僕は同じ芝居を二度観に行くことはほとんどないのに、その作品は次の日にまた観に行ってしまったんです。これは1回では終わらせたくないというぐらい好きな作品だったので。

松村 こんなに連続で観に来るなんてアタマ狂ってるって思ったよ。嬉しいけど(笑)。

小波津 (笑)そういう僕が知っているのすけと、『星列車』の仲間と一緒に過ごしてきた僕の知らないのすけがいると思うので、そこは石井さんや松田さんや影山さんにいろいろ聞こうと思っています。

松村 皆さんきっと「真面目で誠実な男」と言うと思います(笑)。

小波津 ははは(笑)。

──そんな楽しいチームで上演するこの舞台が楽しみです。最後に改めて作品のアピールを。

松村 『星列車で行こう』2025年バージョンを、また気心の知れた信頼できるメンバーと一緒に上演できることを心から嬉しく思っています。松田さんも他の取材でおっしゃっていたのですが、再演することの意味とか意義は、初演を愛してくださった方がいるからこそ成り立っていると。今回はそこを踏まえたうえで、その人たちの期待を超える、より進化した姿を必ず届けたい。その夢を叶えるために、またこの作品に没頭していきたいと思っています。楽しみにしていてください。

小波津 再演からの参加ということで、自分の中ではあれをしたい、これをしたいというものもありますが、まずは初演からの皆さんが南座・御園座と行動をともにして作ってきたものが大きいと思いますので、そこに僕が入ったことでさらに良い影響を与えられるように。そして僕も旅は好きですし人も好きなので、玉三郎さんが僕をこの作品に加えた意味を自問自答しながら、攻めの姿勢でがんばりたいと思います。

【プロフィール】
まつむらりゅうのすけ○岩手県出身。主な出演作品は『戦国BASARA』シリーズ、『弱虫ペダル』、『BLOOD-C』シリーズなど。最近の出演舞台は『Belleville』、『文豪とアルケミスト 紡グ者ノ序曲(プレリュード)』、『ノンセクシュアル』、『ワールドトリガー the Stage』ガロプラ迎撃編、『権乱業火〜忠心と反心と〜』など。『これは、舞台なのか、朗読劇なのか、なんなのかvol.1』(2024年)で脚本・演出に初挑戦した。

こはつあれん○沖縄県出身。主な出演作品は『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stageシリーズ、『マッシュル-MASHLE-』THE STAGE 2.5、「SK∞ エスケーエイト The Stage」シリーズ、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』シリーズなど。最近の出演舞台は、坂東玉三郎特別公演『長崎十二景』、「サンリオ My Bestie Voice Collection & Dream Stage」、舞台『十二人の怒れる男たち』、ミュージカル『鉄鼠の檻』など。

【公演情報】
松竹創業130周年
『星列車で行こう』
脚本:真山仁
演出・補綴:坂東玉三郎
出演:影山拓也(IMP.) 松田悟志 松村龍之介 小波津亜廉 石井一孝ほか
●10/4〜26◎新橋演舞場
●10/30〜11/9◎大阪松竹座 
〈チケットお問合せ〉チケットホン松竹 03-6745-0111
またはチケットWeb松竹検索
〈公式サイト〉https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202510_hoshiressha_enbujo/
 
 

【取材・文◇榊原和子 撮影◇松山仁】

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