
ロボットに懸ける情熱を描く青春群像劇
〝高専生の甲子園〟とも呼ばれるコンテストとして1988年から毎年開催されている「高専ロボコン」。全国の高専生が自ら設計・製作したロボットで発想力・技術力を競い合う大会だ。そんな「ロボコン」を題材に、舞台ならではの表現で新たなストーリーを描き出す『ロボコォォォン! -ROBOT COOONTEST!-』が12月4日にヒューリックホール東京で開幕する。主演を務めるのは笹森裕貴。デビュー10周年を迎えた笹森が、本作への思い、そして俳優業への思いを語る。
冗駆郎が生きた道を辿って役作りしたい
──「ロボコン」を題材にした初の舞台化作品です。
僕は今回、実在している高専で学ぶ高専生という役どころです。リアルな高専生を演じるのは初めての経験なので、すごく楽しみです。
——出演が発表された際に「野球に青春をかけてきた自分としても重なる部分が多い」というコメントを出されていましたが、具体的にどんなところに共感しましたか。
学生時代の僕は野球をしながら、アホなことばっかりやっていました(笑)。学生ならではのアホなところは似ているところがあるなと思いますし、野球という存在は今でも色濃く残っているので、そうした意味でも共感できるところがあります。
——やはり学生時代に野球を通して知った苦労やチームプレイの楽しさなどが今のお仕事につながっているのでしょうか?
負けん気の強さや根性は野球をやっていたからこそなのかなと思います。ですが、当時はスパルタな指導が多かったので、毎日、辞めたいと思っていたほど大変でした。なので、辛かったという思い出ばかりなのですが(笑)、小学校でも中学校でもキャプテンを務めていたので、みんなをまとめたり、要領よく学ぶことは身についたのかなと思います。
——今回、笹森さんが演じる正岡冗駆郎はどのような人物だと捉えていますか?
明るくて、アホっぽい子という印象です。ただ、無理に明るく振る舞っているところもあって、時々、それが痛々しく感じます。きっと彼が明るく振る舞う理由があると思うので、しっかりと彼が生きた道を辿って役作りしたいなと思っています。
——脚本に書かれていない背景や行間にある出来事も考えながら役を作っていくということですね。
そうするべきだと思います。表面だけのお芝居をしていると浅いものになってしまいます。セリフを並べるだけなら誰でもできますから、僕がこの役に選ばれた意味を表すためにも、僕なりの解釈で役を深く掘り下げて演じていきたいと思います。
好きなことに没頭するのは素晴らしいこと
——この作品に限らず、役を作るときや演じる上でどんなことを大切にされていますか?
余白を埋めることです。先ほども話しましたが、台本に書いてあることが全てではないので、何でこの場所でこのセリフを言うのか、相手に対してどういう思いがあるのかといった、その裏にある背景を考えて演じるように意識しています。そうして、いかにお客さんの期待以上のお芝居をするのかが役者をやっている楽しみのひとつでもあると思うんです。常に新鮮な気持ちで、その言葉の裏にある思いを汲み取り、さまざまなパターンで作っていけるのかが大事だと思います。今回は、高専生の役柄なので、表と裏の感情が全く違ったり、裏に隠れている感情が歪んでいたら、より深いキャラクターになって面白いのかなと今は考えています。
——舞台化するにあたって、「ロボコン」というこの題材をどのように伝えていきたいと考えていますか?
何かを必死に頑張っている人って、めちゃくちゃすてきですよね。自分が興味を持てたものに全力を注いで、好きなことに没頭するというのは素晴らしいことだと思いますし、努力できることは才能だと思います。そんな人たちがこの作品では描かれています。僕自身もお芝居を始めてからこの仕事をずっと続けているので、もしかしたら「続ける」という才能はあるのかもしれませんが、まだまだ至らないところがたくさんあって、試行錯誤してスキルを身に付けている最中です。好きなことに没頭して、それを続けている彼らと自分が重なるところもあるので、演じるのが楽しみですし、観に来てくださった方にもきっと共感していただけるところがあるのではないかと思います。
——ちなみに笹森さんはロボットを作ったり、工作をすることに馴染みはありますか?
工作をすることはあまりないですが、細かい作業は好きです。学生時代は体育と美術だけずっと「5」だったんですよ(笑)。父親が美術関係の仕事をしていて、僕もこの世界に入っていなかったらそういうお仕事をするつもりだったので、細かい作業は好きです。ロボットも作りだしたらきっと楽しいのだろうと思います。
——今年は笹森さんにとってデビュー10周年の年ですが、この10年を振り返って、今、どのように感じていますか?
思い描いていた役者になれているのかどうかは自分では分かりませんが、人に恵まれた10年だったと思います。きっと東京都で20番には入るくらい、人に恵まれています(笑)。それに運もいいんですよ! 自分でも運を呼び寄せる力には自信があります。人にも運にも恵まれて、周りの方々からたくさんの刺激をいただいて僕は成り立っていると思います。まだまだ表現者として欠けている部分がたくさんあると思うので、もっともっとたくさんの人やもの、作品と触れ合い、自分の感覚を養っていけたらいいなと思います。
——今後、どのような役や作品に挑戦したいですか?
汗だくになって、鼻水を流し、よだれを垂らしながら、落ちていく役をやってみたいです。それから、30歳の年に一人芝居をやりたいという夢があります。仲の良い先輩たちが一人芝居をやられていたのを観て、本当にすごいことだなと思って。それで、「いつか一人芝居を」と目標にしています。自分が生きてきた道ってなんだろうと振り返ったときに、僕が誇れるものは負けん気の強さだと思ったんです。そういう気持ちを常に持って、一人芝居で全部をさらけ出した表現をしたいなと思います。
——最後に改めて公演に向けての意気込みをお願いします。
ロボットに懸ける情熱を舞台上で役者が表現するためには、高い熱量を持って、いかに真摯にトライしていけるかが鍵になると思うので、しっかりと向き合って演じたいと思います。笑えて泣ける青春物語になると思いますので、ぜひ楽しみにしてください!
(このインタビューは「えんぶ12月号」より転載)
プロフィール
ささもりひろき○1997年、東京都生まれ。主な出演作は、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』、桜花浪漫堂 朗読劇『人間失格』、『特殊ミステリー歌劇 心霊探偵八雲』シリーズ、舞台『賭ケグルイ』など多数。
構成◇宮田華子 文◇嶋田真己 撮影◇松山仁 ヘアメイク◇工藤有莉
公演情報

『ロボコォォォン!-ROBOT COOONTEST!-』
脚本・演出◇井上テテ
出演◇笹森裕貴/佐藤璃果(乃木坂46) 雷太 志田こはく 佐藤友祐 仲田博喜/原西孝(FUJIWARA)
12/4〜7◎ヒューリックホール東京
https://robocooon.com/



