新たな翼を得て更なる飛翔を! OSK日本歌劇団「レビュー 夏のおどり」上演中!

OSK日本歌劇団新トップスター翼和希のお披露目公演であり、松竹創業130周年 新橋演舞場100周年を寿ぐOSK日本歌劇団「レビュー 夏のおどり」が、8月22日東京・新橋演舞場で開幕した(26日まで)。
「レビュー 夏のおどり」は、NHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」の好演で一躍時の人となり、昨年9月OSK日本歌劇団のトップスターに就任した翼和希の各地で行われてきたお披露目公演の掉尾を飾る東京公演。去る6月にOSKの故郷、大阪松竹座で上演された「レビュー 春のおどり」を更にパワーアップ。酷暑の東京の夏に負けない、パッショネイトで熱い舞台が展開されている。
第一部は、歌舞伎、宝塚歌劇、NHK大河ドラマなどの振付指導や、自身が主宰する舞踊公演など多岐に渡る活躍を続けている花柳寿楽の構成・演出・振付によるを和物レビューショー『翔~Fly High~』。全体を「花、鳥、風、月」と花鳥風月の四景に分け、最後にタイトルの「翔~Fly High~」を持ってくる構成がとられていて、メリハリも大きい。

真っ暗な舞台に拍子木が入り一斉に灯りがつくとキャストがいならぶ、という王道の「チョンパ」ではじまる第一景「花」は江戸の人々による「祭り」の賑わいで幕開き。これは…と思っていると、翼和希が粋でいなせな鳶頭姿で花道から登場。「兄ぃ、待ってました!」の声が飛び「待っていたとはありがたい、祭りだ、祭りだ、翼祭りだ!」と、歌舞伎舞踊劇の一場面としてお馴染みの「お祭り」を想起させる盛り上がりを見せる。恋仲の芸者に扮する娘役トップスターの千咲えみとの拗ねたり、甘えたりのやりとりも艶やかで、獅子舞も登場する賑やかな開幕になった。
第二景「花」は湖のほとりで戯れている鳥たちの一羽(翼)が、美しい姫(千咲)に恋し、魔女に魔法で人間の姿に変えてもらうが、そこには大きな代償が待っていて……という物語性のある一場面で、壱弥ゆうと京我りくが鳥の羽根を拾いここから起こるストーリーを解説して物語世界に誘う形が丁寧だし、鳥と姫のファンタジックの恋を演じる翼と千咲が、同期生同士であり、若手時代から多くの作品で組んできた当時を思い起こさせる清新さを放って魅了する。魔女に扮した特別専科の朝香櫻子も大迫力だった。

第三景「風」は春のおどりで大評判をとった翼が下駄で華麗なタップを踏む「下駄ップ」を中心に、鳴子、四つ竹、鉦、太鼓、銭太鼓など和の鳴り物を手にしたキャストたちが賑やかに踊る、リズム、リズム、リズムの洪水。客席に翼が手拍子を促し、キャストたちも通路に降りて盛り上げ劇場全体を巻き込む、第一部のハイライト的な場面になった。
続く第四景「月」はヴァイオリニストで作曲家の川井郁子の幻想的なメロディーにのせて、華月奏と白藤麗華、登堂結斗と唯城ありす、天輝レオと紫咲心那が源氏物語の世界を優美に舞う。ほとんどがポスターメンバーという翼率いるOSK日本歌劇団の中核をなす面々が集っているだけに、前景から一転、しっとりとどこか切なさもある世界観が広がった。
そして、いよいよラストはタイトルの「翔~Fly High~」。翼が自身原案歌詞による、OSK日本歌劇団入団時から、トップスターとなったいま、そしてさらなる高みへと飛翔する決意が込められた楽曲を歌い、やがて全員の総踊りとなる展開が圧巻。衣裳が和ものレビューの幕切れとしては、非常にスッキリとした着流しなのも新鮮でありつつ、両手に持った扇の要返しなど振付は精緻と、OSKらしさがにじみでる幕切れになった。
35分の休憩を挟んでの第二部は、宝塚歌劇団のレビュー作家である中村一徳が作・演出を担う洋物レビューショー『The Legendary!』。これまでにもOSK日本歌劇団で作品を創っている中村だが、常に総力戦で個々の顔が見えるOSKの良さを作品に迸らせようとの意欲が強く感じられ、「新しいヒーローの誕生」と題された第一章では、翼のソロによるスパニッシュダンスからはじまる冒頭から、「二人の伝説」という、前述した通りトップ同士という立場に立つ前から共演の多かった翼と千咲の関係性を感じさせる場面になるなど、トップコンビ、更にはOSK日本歌劇団の大きな特徴のひとつである、娘役も自立したスターとして場面の芯をとる千咲中心の場面も潤沢に展開。まずこれを確実に押さえながら、とにかく多くのスターの顔を見せていくシーンが満載なのにワクワクさせられる。

馥郁とした大きさのある華月、妖艶さとコケティッシュさを持ち合わせた白藤はもちろんのこと、第二章「Dance・Legendary!(New Yorker)」では登堂がピンスポットをあびてソロで登場し、そのスター性を見せつければ、第三章「Beautiful・Legendary!」では天輝がちょっとワイルドな魅力を炸裂させて唯城と原色カラーが氾濫する場面をエネルギッシュに、などそれぞれの活躍から目が離せない。
ほかに壱弥ゆう、知颯かなで、空良玲澄、琴海沙羅らが要所要所でソロを取るなど、OSK日本歌劇団が人材の宝庫なことが伝わってくる構成がよく考えられている。もちろん特別専科の桐生麻耶の登場しただけで空気感をガラリと変える、いまやOSKの最強ジョーカーと言える存在を、インサートさせる場面効果も絶大で、さすがはベテラン演出家の技。大人のコンビとして充実の舞台をいくつも見せてくれた桐生と城月れいとの「伝説の一夜」は一篇のドラマを観る思いだった。
更に、翼を若手娘役たち六名で囲んで踊ったり、101期生三名一人ひとりの豪華なお目見えからのラインダンスなど、まさに目が足りない状態。OSK日本歌劇団103年の歴史のバトンを受け継いだ翼へのエールと、更なる栄光への旅立ちを思わせる場面へと舞台がさくら色に染まる展開もなんとも美しい。翼と千咲のデュエットダンスも当人同士の信頼感がよく出ている。しかもそこで終わらず更に黒燕尾の男役の総踊り、白のドレスの娘役のダンスと盛りだくさんなことこの上なく、ないものはないと感じさせるほどの充実のレビュー作品が誕生していた。

何より両作品が「翼を得て明日に飛び立つ」という共通したイメージを持っているのが、新トップスター翼和希のお披露目に相応しく、OSK日本歌劇団の新たな飛翔に期待の高まる時間となっていた。
また初日を前に囲み取材も行われ、翼和希と千咲えみが公演への抱負と、トップコンビという立場に立った思いを語った。

【翼和希挨拶】
東京公演いよいよ初日を迎えさせていただきます。松竹座の公演で学んだこと、課題となったものが、出演者それぞれにあったと思いますので、それをクリアにした状態で、ここ新橋演舞場で、皆様にお披露目できること嬉しく思っております。千秋楽まで誰一人欠けることなく、全力疾走で駆け抜けて参りますので、どうぞ皆様よろしくお願いいたします。
【千咲えみ挨拶】
あっという間に今日の初日が来てしまったなというのが、いまの感想ですが、表の看板もすごく華やかにしてくださっていて、新橋演舞場様にこんなに盛り上げていただいているんだなと、劇団員一同感じております。暑い夏ですが、劇場の中も私たちのステージで、皆様に心がぽっと温かくなっていただけるように頑張って参りたいと思います。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
ここから質疑応答となり、トップ就任から1年の思いを問われた翼は「毎公演思うことなのですが、やはり身が引き締まる思いと言いますか、最後に階段を降りさせていただいて、皆が迎え入れてくれる状況を感じると、嬉しい気持ちと共に、責任をどんと感じています。OSKの歴史を紡いでいく一人として、しっかりと責任を持っていかなければならないなという気持ちになりましたし、その気持ちをプラスに持っていって、もっとOSKのことを皆様に知っていただけるように、それを自分の力にしていきたい、という決意がより固まりました」と力を込めた。

また前任トップスター楊琳時代にもW娘役トップを務め、今回翼と共に単独娘役トップスターとなった千咲は「舞台に対しての気持ちは、ここまでと変わりなくこられていると感じるのですが、やはり103年の歴史のあるOSKを担わせていただけているということに対しての誇りと責任は同時に持って行かなければいけないと、すごく思いますし、特に自分が舞台に立って何かを表現する時には常に持っていなければと感じています」と翼の言葉に重ねるように責任を実感している心情を吐露。ただ、稽古中に演出の中村一徳から「プレッシャーを感じることは良いことだよと」言う言葉をかけられたのが印象的だったそうで「プレッシャーを感じてはいけないという思いがあったのですが、先生のそのお言葉を聞いて、プレッシャーや責任は自分の活力にもなっているんだなと感じました。きっと劇団員それぞれ、みんなが新しい立場をいただいているので、それはみんな一緒だと思いますから、みんなでプレッシャーを力に変えて、この歴史あるOSKを大事にしていきたいです」と、心境の変化についても語ってくれた。

また二人で一緒に登場するシーンが大変多いが、それぞれの場面場面を芝居の役柄と同じような気持ちでやっていると翼が説明した上で、終幕近くのデュエットダンスに関しては「普段の私たちがそのまま出ているんじゃないかなと。とても自然に目を見ながら、あ、今日はそういう感じで踊るんだね、というような、その場で生まれた空気を2人で楽しんで踊れているので、とても気持ちが良い」と説明。階段に座って互いに頭をもたせかけながら終わる、デュエットダンスの温かい雰囲気の理由がよくわかり、同期生コンビが率いる、OSK日本歌劇団の魅力の一端を見る思いだった。

【公演情報】

松竹創業130周年 新橋演舞場100周年 OSK日本歌劇団「レビュー 夏のおどり」
8/22~26◎新橋演舞場
第一部『翔~Fly High~』
構成・演出・振付◇花柳寿楽
第二部『The Legendary!』
作・演出◇中村一徳
出演◇
翼和希 / 千咲えみ / 白藤麗華 / 華月奏 / 城月れい / 登堂結斗 / 天輝レオ / 壱弥ゆう / 唯城ありす / 羽那舞 / 京我りく / 紫咲心那 / 琴海沙羅 / 水葉紗衣 / 有絢まこ / 知颯かなで / 空良玲澄 / 舞音ことは / 璃音あかり / 梅名希歩 / 柊湖春 / 南星杜有 / 鼓珀響 / 桜乃ひとみ / 初音くらら / 香幸信帆 / 陽向だいち / 桐生麻耶(第二部のみ) / 朝香櫻子 / OSK日本歌劇団研修所第101期生(初舞台生)
〈お問い合わせ〉OSK日本歌劇団 06-6251-3091
〈松竹公式サイト〉https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202508_osk_enbujo/
〈劇団公式サイト〉https://www.osk-revue.com/2025/06/14/1-209.htm
【ライブ配信情報】
8月23日(土)16時公演
【視聴期間】8月23日(土)16時~8月30日(土)23:59
【視聴料金】4,200円+システム利用料 ※アーカイブ配信中くり返し視聴可
【配信】
ZAIKO
https://osk-revue.zaiko.io
イープラス「Streaming+」
https://eplus.jp/osk_online/
【取材・文・撮影/橘涼香】