大和悠河のパリから贈るエトワール紀行 ~ロマンチックに紡ぐ魔法~⑥

パリの空の下、自宅近くのコンコルド広場からバスに乗ると、オベリスクの黄金の光と噴水のきらめきを背に、シャンゼリゼ大通りをトロトロと通り抜けます。正面の凱旋門を眺めながら、左手に巨大なルイ・ヴィトン本店の前を通り過ぎます。毎日歩いているシャンゼリゼも、バスの窓から眺めるとまるで違う顔を見せてくれます。


凱旋門を過ぎるとき、シャトルバスに乗り換えるもよし。街の華やかさは幕を引くように消え、ブローニュの森の静けさへ。10分ほど──降り立った瞬間、光のヴェールを纏った「Fondation Louis Vuitton」が姿を現します。

緞帳が静かに上がり、そのまま進めば森の入口へ。小さな小さなプロローグの旅が始まるのです。
それは、まるで未来的な舞台装置が、観客を新たな物語へ導くように。──この時、私は今夏のNHK『ビットワールド』25周年特別公演で演じているビットラン役の台本読みや、日生劇場から全国を巡演する『NHKみんなのうた』ミュージカルで私が演じるリリィの瑞々しい感覚を、同時に味わっているのです。心の中の舞台の熱気がパリの光と空気に溶け込むような──そんな特別なひととき。

1階のブローニュの森に隣接しているルイ・ヴィトンカフェに腰を下ろすと、そこはまるで『リトルゾンビガール』で私が演じるリリィの秘密の森の一席。木漏れ日が差し込むガラス窓の葉の隙間から、淡い光と紫の魔法が舞い降り、小瓶に封じられた秘密の香りがそっと空気を満たしていく気配。手元の雪組公演のプログラムを開くと、私の卒業公演の時に初舞台のラインダンスを踊っていた朝美絢ちゃんが新たなトップスターとして歩み始めた煌めき、夢白あやさんの清らかな輝き、そして瀬央ゆりあさんの存在感、フレッシュな縣千さん──ページをめくるたびに、彼女たちの姿がまるで森の精たちのように一枚の舞台絵の中で生き生きと立ち上がります。

111年という歴史を刻む宝塚。その歩みを支え続けてくださる観客の皆さまの想いを重ねると、ここパリの芸術の森にいても、まるで日本の東京宝塚劇場の客席にいるかのように心が躍ります。
──映画『パリのアメリカ人』。
雪組の御園座公演は、ちょうど私の日生劇場公演と重なっていて直接観ることは叶いませんでした。けれども、この映画に描かれたパリの街並みを目の前にすると、その光景から雪組の舞台を想い描き、心の中で鮮やかに重ね合わせることができるのです。
そして、リリィの森の紫の魔法と小瓶の秘密が、静かに心の奥深くまで響き渡ってゆきます。
私はただ、森の空気に身を委ね、ページをめくるたびに──フォンダシオン ルイ・ヴィトンの光と影の中で、これからの宝塚への夢や、私自身の舞台、そしてリリィの魔法がどんな姿で現れるのか。
その予感に、胸をときめかせていました。

つづく
文◇大和悠河 写真提供:(株)GOOGA

▶NHKみんなのうたミュージカル『リトル・ゾンビガール』~ノノとショウと秘密の森~
■会場■ 日生劇場
■日程■ 8月23日(土)11:00 15:00/8月24日(日)11:00 15:00
■チケット料金■
S席 5,000円/A席 4,000円
■全国ツアー日程■
8月29日(金)北上市文化交流センターさくらホールfeat.ツガワ(岩手)
9月4日 (木)太田市民会館(群馬)
9月10日(水)千葉県文化会館(千葉)
9月11日(木)千葉県文化会館(千葉)
9月18日(木)NHK大阪ホール(大阪)
9月19日(金)NHK大阪ホール(大阪)
9月26日(金)ホクト文化ホール(長野)
9月30日(火)岡山芸術創造劇場 ハレノワ(岡山)
10月9日(木)愛媛県県民文化会館(愛媛)
上記公演にご来場いただけます場合のチケットのお申込み・お問い合わせは、
(株)GOOGA 代表取締役社長 田中優子
■メール■googa@googa.co.jp まで直接ご連絡ください。