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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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舞台『明日を落としても』まもなく開幕! 佐藤隆太 インタビュー

僕自身の背中も押してくれる作品

兵庫県立芸術文化センターの開館20周年を記念し、上演される舞台『明日を落としても』が、10月11日に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて開幕。(10月16日まで。そののち東京公演を10月22日〜27日にEX THEATER ROPPONGIにて上演。)

95年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の記憶を辿り、演出に栗山民也、脚本に気鋭の劇作家・ピンク地底人3号を迎え、「過去に負った癒えない傷」と真摯に向き合う一作となります。

主演を務めるのは、俳優の佐藤隆太。今作への想いや、演劇との向き合い方について話を聞きました。インタビュー中には「本番一週間前に大きな〝波〟がやってくる」と語る場面もあり──。(このインタビューは「えんぶ10月号」より転載。)

本番一週間前に大きな不安が押し寄せる

──佐藤さんの「稽古場での様子」についてお聞きしたいのですが、稽古場でどのように過ごされることが多いですか?

稽古場ではひたすらもがき苦しんでいます。スムーズに過ごせた稽古場は、今まで一度もないですね。本番の丁度一週間前くらいに大きな不安の波が押し寄せてくるんです。

──そうなんですね。

でも面白いもので、その不安のどん底から、稽古場でもがいてもがいて、初日の幕が開いた瞬間から、ものすごく幸せになれる。それが、いつも不思議なんです。初日が無事終わって「良かったな、幸せだな」と感じるなら理解できます。でもあんなに怖かったのに、幕が開いた瞬間から楽しいって、自分でもよく分からない(笑)。自分にとって舞台とはそういうもの。とても怖いけれど、やっぱり好きなんでしょうね。僕の舞台デビューは宮本亞門さん演出の『BOYS TIME』(99年)でした。その時も本番一週間前でしたね。当時電車で稽古場へ通っていたのですが、最寄駅から乗って、怖すぎて次の駅で降りてしまった。足が動かなくて、気持ち悪くなっちゃって……。今はそこまでの拒否反応は出ませんが、似たような不安はあります。舞台は、お客さんと一緒にひとつの作品を創りあげるという意味で、すごく贅沢で豊かな時間だと思っています。けれど、そこに向かうまで、ものすごい恐怖が付きまとうんですよね。

「自分たちが負った傷や痛みとどう向き合っていくか?」

──今作は阪神・淡路大震災が起こった95年と現在が舞台になっています。震災当時について、覚えていらっしゃることはありますか?

はい、僕は14歳でした。東京にいたので、どうしてもテレビの情報が中心でした。家でテレビを見ながら「……すごいことが起きてしまっている」と驚きつつ、実感が持てないことに恐怖を感じました。ただ、この作品は、震災の具体的な様子を描くというより、登場人物たちが「自分たちが負った傷や痛みとどう向き合っていくか?」を描いています。時が流れて、もう何年も経っているのに、消化しきれない後悔や痛み。それは誰しも経験することだと思うんです。ですから、震災を経験しているかどうかに関わらず、誰もが抱える〝痛み〟や〝記憶〟にそっと触れるような物語だと思っていて、そういう意味では、お客さんに受け取ってもらいやすい作品だと感じています。

──ご自身が演じる「桐野雄介」について、現時点でどのような感想をお持ちでしょう?

「自分が背負った痛みとどう向き合っていくべきか?」と悩み、もがく姿に強く共感しています。起きてしまったことをどう消化するのか? 単に忘れてしまったことになるのか? そういう悩みは、自分の中にもあります。どこか吹っ切れず、もやもやし続けて、もがいているあの感じ……。そういうことに共感します。決して派手な物語ではないですが、人と人が心を通わせて、明日へ続く一歩……、それは大きな一歩ではないかもしれませんが、その着実な一歩を踏み出すような作品です。台本を読んだ時、「……自分だけじゃないんだなぁ」としみじみ思いました。読み終わった後に、背中を押すまではいかなかったとしても、肩に温もりのある手をそっと添えられたような、そんな感覚に浸りました。決して説教臭い話ではないし、親しみのある静かな作品だと思っています。台本を読み終えてすぐ、「ぜひやりたい」とマネージャーに伝えました。

しっかりキャッチボールできるように

──いま佐藤さんのお話を伺いながら、「繊細さが活かされる物語」という印象を受けました。

そうだと思います。だからこその難しさもあって。激しい変化や動きで伝えるような作品ではないので、共演者の方々との会話はより丁寧に言葉を紡ぎ、重ねていくことが求められます。これはどの作品でもそうですが、共演者の皆さんと少しでも早く信頼関係を築き、しっかりキャッチボールできるようにしたいですね。

──これから迎える稽古期間で、ご自身が「トライしてみたいこと」は?

栗山(民也)さんとは7年前の『アンナ・クリスティ』(18年)という作品でご一緒しました。その時は稽古で栗山さんから学ぶことばかりでした。なので、今回は栗山さんに「やっぱりコイツは面白いな」と思ってもらえるような芝居をしたいですね。もちろん最終的にはお客さんに楽しんでもらうことが一番の目標です。まずはお芝居を通じてある程度信頼してもらえる所まで行きたいし、そこから無理のないように栗山さんとの距離を縮めたい、という目論見があります。

──最後に。今作のPRも含めて、佐藤さんから一言メッセージを頂戴できれば。

初めて台本を読んだ時に、登場人物たちが抱える痛みや葛藤に、どこか自分自身を重ねてしまうような感覚があって、読んでいてすごく救われた気持ちになりました。きっと心にそっと寄り添ってくれるような作品になっていると思います。静かであたたかくて、観終わったあとにふと深呼吸したくなるような、そんな舞台です。ぜひ劇場で、生の空気を感じていただけたら嬉しいです。

【公演情報】
兵庫県立芸術文化センター開館20周年記念公演
『明日を落としても』
作:ピンク地底人3号 
演出:栗山民也 
出演:佐藤隆太 牧島輝 川島海荷 酒向芳 尾上寛之 春海四方 田畑智子 富田靖子 
●10/11〜16◎兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール 
〈問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255(10:00~17:00 月曜休※祝日の場合翌日)、●10/22〜27◎EX THEATER ROPPONGI
〈問い合わせ〉サンライズプロモーション 0570-00-3337(平日12:00~15:00) 
〈公式サイト〉https://asuoto2025.com/

【インタビュー◇園田喬し 撮影◇渞忠之(人物)】

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