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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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初舞台はシェイクスピアの『リア王』 いよいよ開幕! 鈴鹿央士ロングインタビュー

ゴールにある光を見失わずに!

気鋭・鈴鹿央士が初舞台を踏む。その舞台が10月9日に新宿のTHEATER MILANO-Zaで幕を開ける。
これまで映画『蜜蜂と遠雷』の天才ピアニスト、ドラマ『silent』(フジテレビ)の実直な青年、『嘘解きレトリック』の推理力とハッタリ力のある探偵など、様々な役を演じて注目されてきた鈴鹿にとってはじめての舞台がシェイクスピアの『リア王』。
それも大竹しのぶ、宮沢りえ、成田凌、生田絵梨花、西尾まり、横田栄司、安藤玉恵、勝村政信、山崎一などの豪華布陣で、シェイクスピアの本場イギリスのフィリップ・ブリーンの演出。
このうえもなく恵まれた環境に置かれた鈴鹿は何を思うのか。(このインタビューは「えんぶ10月号」より転載。)

シェイクスピアってこんなカジュアルなんだと

──舞台に興味はありましたか。

舞台は以前からやりたいと思っていました。事務所の先輩に鈴木杏さんや勝地涼さん、劇作家で演出家の加藤拓也さんなど舞台に精通している方々が多く、舞台を観る機会に恵まれていたので、いつか自分もやってみたいとふんわり思っていました。でもいざ決まるととても緊張しています。まず、毎日が本番であることがどういうものなのかと。ドラマや映画も毎日本番ですが、舞台は1回はじまったら巻き戻せない。そのソリッド感や、お客さんが目の前にいる空気感はどんな感じなのか、あとはセリフを覚えられるかなと心配もあります。でもそれにも増して楽しみなことが多いです。

──初舞台がシェイクスピア。これまでシェイクスピアについてどんな印象を持っていましたか。

難しいイメージはありました。独特な言葉の表現や翻訳されたセリフが歌のような感じがして、それが面白さであることはわかるのですが、実際にやるとなると壁が高そうだなと思っていました。その印象が少し変わったのが、去年、ロンドンで、シェイクスピアの時代からある劇場、グローブ座に行って、『リチャード三世』を観たときです。これがシェイクスピアかと思って。その公演で王様が出てくるシーンだったかな、観客が一斉に掛け声をかけたんです。それが本場ならではのシェイクスピア劇の特性なのかわかりませんが、シェイクスピアってこんなカジュアルな感じなんだと驚いて。難しいだけでなく面白いところがたくさんあるということを知りました。

──『リア王』の台本を読んでみてどう思いましたか。

悲劇ですよね。人が権力を手に入れたとき、家族であっても容赦なく陥れるというような人間の闇がにじみ出ていると思いました。ただ、僕が演じるエドガーとして読んでいくと、人間の闇がこれでもかと描かれるなかで、ふとした希望みたいなものも描かれているのを感じました。闇、そしてたまに光というような人間の本質が描かれているので時代が違っても共感できる。時代を超えてシェイクスピアが上演されている意味がうっすらわかったような気がしました。また、舞台もシェイクスピアも初めての僕が台本を一読しただけでも、言葉に力強さがあって、メッセージがひしひしと届いてくるような気がしました。演出家のフィリップ・ブリーンさんと稽古場でたくさんお話しをして理解を深めていきたいと思うような表現がたくさんあり、たぶん、ハマっていきそうな気がしています。ロンドンでフィリップさんにお目にかかったのですが、新しい『リア王』を作りたいとおっしゃっていました。もともと僕がシェイクスピアにも『リア王』にも詳しくないから、どこがどう変わるのか、変わったときの効果がどういうものなのか明確にはわからないですが、舞台が好きな方にとって興味深い変化でしょうし、初めての方も楽しめると思います。

エドガーは光を与えられる役でありたい 

──今回演じるエドガーをどんな人物と捉えていますか。

グロスター伯爵家の長男ですが弟エドマンドに陥れられて追放になります。最初に台本を読んだ印象では、エドガーが陥れられてしまうのは、もしかしたら周囲の人たちに比べて危機感がやや不足していたのかもしれないと。この世界の人たちはみんな陰謀を巡らせているのに警戒心がなかったのかなと思いました。優しい人なんでしょうね。家族への信頼や忠義心みたいなものが強い。そういった善の部分をずっと見失わず、追放されてからも正義感を捨てません。他者の闇を見ながら、エドガー自身が成長していきます。追放後、哀れなトムという貧しく精神が不安定な人物に身をやつして登場しますが、内面は以前のままでまったくの別人にように演じるのは難しそうです。物語のなかで最後まで光を担う人だから、舞台を観てくださる方々にも悲劇を観て沈んでしまうだけでなく、光を与えられる役でありたいと思っています。

──エドガーに共感するところはありますか。

いまの時代だと、人間関係の些細なことで気持ちが揺れ動きがちですよね。噂話とか気になって苦しいじゃないですか。でもエドガーは、どんなときでも自分が信じるものを信じて、自分の道を、自分の正義を貫く。そういうところはかっこいいし、こういう人でありたいと思いますが、なかなか難しいですよね。

──イギリスでフィリップさんと会ったときの印象や、まだあまり話していないそうですが、ほかに何か話したことはありますか。

去年、ロンドンのカフェでお会いして、とても優しい方だなと思いました。僕が初めての舞台だと聞いて、以前、フィリップさんが日本で初舞台の俳優さんと仕事をして、その後、その人の舞台を観に行ったら、背中が大きくなったように見えたそうで。舞台を一回経験すると変わるから、そんなに怖がらなくていいよと励ましてくれました。とても優しかったのですが、会って5分後くらいに「ボイトレに行ってね」と言われました。

──行きましたか。

行っています。ボイトレの先生は歌手の方から舞台に出る俳優さんまで幅広く教えている方です。僕はこれまで本格的にボイトレをやった経験がなかったのですが、今回、とりあえず歌ってみたところ、僕は喉の使い方を知らないと指摘されました。喉で音程を調整できることを知りませんでした(笑)。それはそれで、ゼロからレッスンがはじめられると、変に色がついていないほうがいいと励まされました。僕は河島英五さんの『時代遅れ』という歌が好きで、それを練習曲にしています。河島さんは野太く力強い声なので、喉の筋肉を動かす練習にちょうどいいようです。逆に、高音を出す方の曲も練習しています。

──『時代遅れ』とはずいぶん渋い歌が好きなんですね。どういうところに惹かれますか。

歌詞が好きです。刺さるというか、本当にそういう男になりたいと思って。

──「目立たぬように」……。

「はしゃがぬように」、ほかの部分も本当にそうだよなということを言っていて、バイブルみたいな感じなんです。その歌の域に到達するにはまだまだですが。

──デビューからずっととても順調に活躍されていますが、そういうとき、調子に乗らないように自分を律する意識があるということですよね。

僕は岡山の田舎の出身ですし、優しい家族に育てられたので、社会に出て見知らぬたくさんの大人に囲まれて、それも華やかな芸能界で、驚くことばかりなんです。東京という場所の魔力みたいなものも感じますし。そんななかで、自分の本質とか、本来こうでありたかったこととか、多分こういう人になりたかっただろうということを改めて考えるきっかけにもなる歌なんです。聴いて自分を律するというほどではないですが、自分の行きたい方向が分かる気がして。自分の軸になっています。

成田凌さんと兄弟役で戦うシーンもあります 

──ボイトレのほかに舞台に向けて準備していることはありますか。

詩の朗読をやっています。日本語の詩を読むことで、独特な言葉遊びなどの表現に慣れて、読み解く力をつけるためです。

──イギリスに行かれたのもシェイクスピア劇に出るに当たって何か勉強するためでしょうか。

いえ、特にそのためではありませんでした。お仕事がお休みのとき、じゃあ、イギリスに行こうと思い、そこでのんびりしました。

──ついでに『リア王』のイメージが湧くような場所も見ましたか。

ほとんどロンドンの街中だったので、それほど歴史的な場所には行きませんでしたが、街を歩いているだけで歴史を感じますよね。古い感じのする建物は好きだなと思いました。歴史的な場所だと、ロンドン塔を見ました。

──英語は得意ですか?

いえ、ほんの少しくらいです。

──フィリップさんとは英語でも会話を交わしましたか。

そのときは、通訳さんが来てくださったのでお任せでした。せっかくだから英語で話せた方が楽しそうな気がするので、稽古がはじまったら頑張って英語で話しかけてみます(笑)。

──今回、大竹しのぶさんがリア王を演じます。男性の役を女性がやることをどう思いますか。

成人男性の役を演じることは今回が初めてだそうですね。大竹さんほどのキャリアがあって、これまでいろいろ積み上げて来た中で、まだまだチャレンジしようとするお気持ちが素敵だなと尊敬を感じます。僕も初めての舞台で初めてのシェイクスピアという初挑戦尽くしなので、チャレンジする大竹さんの背中を見られることはすごく幸せなことだなと思います。

──演劇では女性が男性をやっても男性が女性をやっても、高齢者が若者を、若者が高齢者を演じることも可能です。鈴鹿さんがこれまで主にやってきた映像の世界では割とナチュラルなお芝居が求められたと思いますが、演劇の可能性みたいなものをどう感じますか。

映像の仕事では、自分の年齢に近い役が多いです。たまに高校生役もまだありますが(笑)。今回、成田凌さんが弟で、僕が兄役なんです。成田さんより僕は全然年下なのに。映像でもそういうことはありますが、カメラの前だと相当工夫が必要かなと思います。でも今回はまさに舞台だからできるキャスティングですよね。成田さんは『MENʼS NONーNO』のモデルの先輩で、僕がオーディションを受けて最終審査で合格したときにトロフィーを渡してくださったのが成田さんでした。その成田さんとガッツリ兄弟役をやれるのが楽しみです。しかも最後に戦うシーンもあるんです。

出会いがあるのが楽しいことであり悲しいこと

──エドガーは光を最後まで持ち続け、最後まで闇に飲み込まれない、まっすぐな役柄です。そういう役を託されて、その光みたいなものをちゃんと自分の中から発するためにはどういうことが必要だと思いますか。

普段、映画やドラマに出ていても、この役が何を求めているのか、何のためにこのシーンがあるのか、この台本は何をテーマにしているのか、そのために自分はどう動いたら正解なのか……などを考えるようにしていて。今回のエドガーは、稽古がこれからなので、これだというものをいまはまだひとりでは決められませんが、最後まで光を持ち続けていかないといけないことは確かで。自分が騙されたことを知ってから、長男として父や家や弟に対して、彼なりの正義感で向き合っていく、そのシーンそのシーン、ひとつひとつに真摯に向き合っていくことで、自然に前を向いている人物に見えるかなと思っています。エドガーの視線の先にあるゴールは明るいもののはずなので、僕自身がそれを見失わずにいきたいです。それもフィリップさんとお話ししながらできたらいいですね。

──いま、目の前にあることに集中すれば、自ずとまっすぐな光のある人物に見える。そういうことを常に考えているんですか。

考えるようにしています。

──それは自分でそういうふうなことを身につけたのでしょうか。誰かから教わったことですか。

先輩の俳優さんに現場で「お芝居ってどうするのが正解なんでしょうか」みたいな相談をしたとき、こういう考え方があるよと教えてもらったんです。そのときは演劇の本を紹介してもらいました。

──今回、舞台をやるにあたって先輩や周囲からアドバイスをもらったことなどはありますか。

上京して2年間、同じ事務所の岐洲匠と京典和玖と3人で住んでいたことがあって。彼らはよく舞台に出演しているので、僕が初めて舞台に立つと聞いて、「いよいよ来たかー」と言われました。そのふたりからは、舞台は楽しいのはもちろんのこと、「セリフ入らないって思うじゃん。入るから」と。「舞台の稽古って、毎回、通しでやるのではなく、ひとつのシーンを繰り返しやることも多くて、そうすると次の日、朝起きたら自然にセリフが入っているんだよ」と言われて、本当か?と半信半疑ですが、信じたいと思います(笑)。

──デビュー7年、もっと先に行きたいという気持ちはありますか。

あります。もっと先というかいろいろなことをやりたいし、いろいろな景色を見たい思いがすごくあります。毎現場、全然違う出会いがあるのがこの世界の楽しいことであり、悲しいことでもあるのですが……。

──悲しい?

悲しいというのは、出会いと別れが短期間に訪れるということです。その中でいかにいい出会いをして、誰かの人生を豊かにできる何かを届けられたら幸せだと思っています。誰かの人生に影響を与えることってすごいことですよね。それをお芝居という形で届ける仕事をこれからももっと頑張りたい。今回、こんなにすばらしい先輩方に囲まれて初舞台に立てる僕は幸せ者です。僕、運は人一倍強いと思っていて。それは高をくくっているわけではなく、そう思っていると運が強くなっていくらしいです。

【プロフィール】
すずかおうじ○岡山県出身。2018年、『MEN’S NON-NO』のオーディションでグランプリを獲得し、専属モデルを務める。19年公開の映画「蜜蜂と遠雷」で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な出演作品は、【ドラマ】NHK連続テレビ小説「なつぞら」、「おっさんずラブ -in the sky-」、「ホリミヤ」、「ドラゴン桜」、「クロステイル~探偵教室~」、「六本木クラス」、「silent」、「18/40~ふたりなら夢も恋も~」、「ゆりあ先生の赤い糸」、「闇バイト家族」、「嘘解きレトリック」、【映画】「星空のむこうの国」、「PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~」、「花まんま」、「ChaO」(声の出演)など。

【公演情報】
Bunkamura Production 2025 
DISCOVER WORLD THEATRE vol.15
『リア王』
NINAGAWA MEMORIAL
作:ウィリアム・シェイクスピア
上演台本・演出:フィリップ・ブリーン
出演:大竹しのぶ 宮沢りえ 成田 凌 生田絵梨花 鈴鹿央士
西尾まり 大場泰正 松田慎也 和田琢磨 井上 尚 吉田久美 比嘉崇貴 青山達三
横田栄司 安藤玉恵 勝村政信 山崎 一
ミュージシャン:会田桃子(Vn.) 熊谷太輔(Perc.) 平井麻奈美(Vc.)
●10/9〜11/3◎東京公演 THEATER MILANO-Za
〈問い合わせ〉Bunkamura  03-3477-3244 (10:00~18:00)
●11/8〜16◎大阪公演 SkyシアターMBS
〈問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888 (12:00〜17:00※土日祝は休業)
〈公式サイト〉https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/25_kinglear/

【インタビュー◇木俣冬 ヘアメイク◇阿部孝介(traffic) スタイリング◇朝倉豊
衣装協力◇ジャケット、シャツ、パンツ(NEZU YO-HINTEN、店名:NEZU YO-HINTEN、問い合わせ:@nezu.yohinten〈IG〉)、靴(スタイリスト私物)】

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