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竹生企画第四弾『マイクロバスと安定』いよいよ開幕! 竹中直人・生瀬勝久インタビュー

生瀬勝久・竹中直人

理屈を超えて体に入り込んでくる倉持作品

竹中直人と生瀬勝久が倉持裕を作・演出に迎えて送る演劇ユニット、竹生企画の第四弾『マイクロバスと安定』が、11月8日より本多劇場で上演される。

小惑星の衝突によって世界が滅亡するまで約3年という「終わり」が近づくある日、旧知の仲であった2人の男がある事情から30年ぶりに再会する。世界の滅亡を前にしても、これまでと変わらず生きようともがく人々を描く物語──。

屈指の個性派俳優でありクリエイターでもある竹中・生瀬を中心に、飯豊まりえ、戸塚純貴、サリngROCK、松浦りょう、浜野謙太と、クセ者揃いのキャストで送るこの作品について、竹中と生瀬に話してもらった。(このインタビューは「えんぶ10月号」より転載)

よくこんな独特なキャスティングが出来たなと
 
──今回の上演のきっかけは?

生瀬 竹生企画は大体4年おきぐらいに上演していたのですが、3作目のあとコロナ禍があって、今回は7年ぶりです。最初は僕が竹中さんと二人芝居をやりたかったので相談したら、いやだと断られて(笑)。

竹中 生瀬さんとの二人芝居は多分、圧倒的に生瀬さんに喰われてしまうのでいやだったんです(笑)。

生瀬 ほかにもいろんな俳優さんが出るんだったらいいよと。それから作・演出は倉持裕さんに頼みたいねという話になって。

竹中 そのときはまだ倉持さんとご一緒したことはなかったんです。ぼくが初めて倉持さんの舞台を観たのは【まどろみ】という作品でした。その作品に深く感動してしまったんです。もしまだぼくが舞台を続けて行けるなら倉持さんが描く世界を一緒に作っていけたら…と思ったのです。そして生瀬くんに倉持裕さんとやりたいと伝えました。

生瀬 2人で倉持さんに会ってお願いしたら引き受けてくれて。当時は1回だけで終わるかなと思っていたら意外と続いて、もう4回目ですからね。

竹中 今回もまた新鮮なゲストの方たちが出てくれるのでとっても嬉しいです。よくこんな、独特なキャスティングが出来たなって思っています。役者一人一人の《顔》がすべて見どころですね。

生瀬 竹生企画に出てくれた俳優さんたちは、その後、みんなブレイクしてるんです。こう見えて僕らはお芝居に真摯ですからね。ゲストの方たちも一緒にやっているうちに、お芝居の楽しさをより感じてくれるからじゃないかと思っています。

──これまでの3作で感じた倉持作品の魅力はどんなところですか? 

生瀬 シチュエーションと人間関係というのが掛け離れすぎているところですね。よくそれをここに持ってくるよねという。例えば今回なら旧知の仲の男2人のわだかまりの話が出てくるけど、それだけでものすごく緻密な作品を書くこともできるのに、そこにとんでもないシチュエーションを持ち込んでくる。それが倉持さん独特の感性で、とくに竹生企画ではそれが顕著なんです。それから倉持さんの脚本には説明ゼリフがないんです。それはとても大事なことで、説明しなくてはいけないことはセリフの中に巧みに入れていく。そこは本当に見事です。

竹中 倉持さんの描く言葉には、理屈なんてものを超えて体に入り込んでくるなんとも言えないリズムがある。それがたまらなく好きだから続けてこられたと思います。結局、演じることなんて出来ないんです。無様なままです。だからこそ稽古場が楽しい。倉持さんと稽古場で繰り返し繰り返し作っていくうちに、何かが心の中でうごめいてくる。そのうごめきを自分の中でバランスを測りながらやっていく感覚はなんとも辛く苦しい。普段生きている事と一緒です。答えはどこにもない。どういう方向に向かっているかもわからない。役者が役を理解するなんてあり得ないでしょう? 自分の事すら分からないのに。だからこそ稽古場の日々が毎日ドキドキするほど息苦しくなるほど辛くて楽しいんです。演劇なんて決して楽しいものではないですからね。

毎日変わる芝居にビビッドに応えてくれる 

──テーマ的なものも、観る側が掴めそうで掴めない面白さがあるのですが、演じる方たちは、ご自分たちの中にどう落とし込んでいるのでしょうか?

生瀬 そこは倉持さんにまかせているというか、倉持さんの中にはその作品で見せたいものやどう見せるかという答えはちゃんとあるわけです。だから僕らはキャラクターとして、そこにちゃんといるだけでいいんです。それがちゃんとできていれば、コマがうまく配置されて観ている方に届く。僕らは余計なことは考えないほうがいい。結末までわかっていなくていいし、わかってちゃいけない。それが僕らの仕事だと思っています。

竹中 うん、その感じだと思いますね。ある状態でそこにいる。役者ってと言うか役者だけではなく全ての人間は不安を抱えて生きていますよね? だから、「こういう話ね」と答えを出したいから何かを理解しようするけれど、それをしてしまった時点で終わりだとぼくは思ってしまいます。人間はつねに自分が生きていることについて理解なんて出来ないはずです。ある状態の中で不安のまま時だけがすぎていく、そのピーンと張り詰めた時間。それは気持ちいいものではなく、苦しいものなのですが、それが倉持さんの描く世界ではとても必要な時間なんだって思うのです。

──お互いについて感じていることも話していただけますか。 

生瀬 竹中さんがすごいなと思うのは、僕は毎日変わるんです。同じことができない。そのときの気持ちで芝居をやってしまう。竹中さんはそれにビビッドに応えるんです。役者さんの中には自分が決めた芝居をまったく変えない人もいて、それも1つの正解ではあるのですが、竹中さんは毎回不安定な僕の芝居に、必ずそれに対しての返しがあるんです。そこで今起きていることに必ず反応する。そこをとても尊敬していますし、そういう意味で僕の目指す俳優さんなんです。

──竹中さんのそういう受け方は、自然に出てくるものなのですか?

竹中 どうなのかな…。それは決して技術的なことではないと思っています。演劇は絶対に特別なものではなく、普段生きているときに相手を感じるのと一緒で、相手を感じて自分が動く。相手を感じて自分がどの距離で相手と会話してゆくのか…その相手を感じる熱量が大事だと思うし、それを捉えてゆくのが苦しくて楽しいと思うのです。

生瀬 だから本当に数少ない俳優さんなんです。絶対そういうことってしんどいはずなので。映像だったら1回ですけど、舞台は毎日ですからね。

──そんな竹中さんだから、一緒に竹生企画をやろうと。

生瀬 いや、始めるまではそこまでの方だとは思ってなかったんです。一緒にお芝居をするまでは、自分のお芝居で周りをぶん回すフリークスかなと(笑)。こんなに繊細ですごい俳優さんだとは思っていなかったです。

──竹中さんは生瀬さんについてはどう感じていますか。

竹中 生瀬さんのお芝居には揺るぎないものを感じます。しっかりとそこに存在する強さというか圧がある。ドーンと存在している。僕にはそれがない。つねに揺らいでしまうので…。そういう僕たちを、倉持さんはいいバランスで描いていてくださっているような気がします。

──だから竹生企画は、毎回いい意味でスリリングな面白さがあるのですね。

竹中 たぶん自分が想像している以上の、なにか不思議な空気が出ているんじゃないかな…。1回観てみたいけど、自分では一生観れないんですよね。自分の事を客観的に観てしまったらぼくは後悔しかないです。

生瀬 だからやりっぱなしでいいんですよ(笑)。

生瀬勝久・竹中直人

【プロフィール】
たけなかなおと○神奈川県出身。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。その後、劇団青年座入団。83年に「ザ・テレビ演芸」(EX)でデビュー。96 年にNHK大河ドラマ「秀吉」で主演。初監督・主演作「無能の人」(91年)がヴェネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞、第34 回ブルーリボン賞主演男優賞を受賞、ほかに監督作・出演作で受賞多数。最近の出演舞台は、ミュージカル『のだめカンタービレ』、NODA・MAP『正三角関係』など。

なませかつひさ○兵庫県出身。1983年関西の人気劇団に入団、俳優・劇作家・演出家として活躍。01年退団後はドラマ、映画、舞台で活躍中。最近の出演作は【ドラマ】「波うららかに、めおと日和」(フジテレビ)「19番目のカルテ」(TBS)、「いつか、無重量の宙で」(NHK)、【舞台】劇団☆新感線『薔薇とサムライ』(22年)、『パートタイマー秋子』(24年)など。映画「ブラック・ショーマン」と「ベートーヴェン捏造」が9/12公開予定。

【公演情報】
竹生企画第四弾
『マイクロバスと安定』
作・演出◇倉持 裕 
出演◇竹中直人 生瀬勝久 飯豊まりえ 戸塚純貴 サリngROCK 松浦りょう 浜野謙太 
●11/8〜30◎東京 下北沢 本多劇場
●12/5〜7◎兵庫 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
●12/10◎広島 JMSアステールプラザ 大ホール
●12/13◎熊本 市民会館シアーズホーム夢ホール、12/19◎盛岡 トーサイクラシックホール岩手 大ホール
●12/21◎久慈 久慈市文化会館アンバーホール 大ホール
●12/23◎青森 リンクステーションホール青森 大ホール
●12/27◎長岡 長岡市立劇場 大ホール 
〈公式サイト〉https://www.cubeinc.co.jp/archives/theater/takenama-4

【インタビュー◇宮田華子 撮影◇中田智章 ヘアメイク◇田中智子(アートメイク・トキ) スタイリスト(生瀬)◇中谷東一】

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