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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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渡辺大・大鶴義丹インタビュー

大鶴義丹・渡辺大

パンクでロックな『醉いどれ天使』!

黒澤明監督、三船敏郎主演により1948年に公開された名作映画の舞台版『醉いどれ天使』が上演される。映画にとどまらず演劇、オペラ、テレビドラマ、コンサートなど、ジャンルを越えて活躍の場を広げている深作健太の演出で、三船が演じた若いやくざ・松永役を6年ぶりの主演舞台となる北山宏光が演じる本作について、松永と対峙する貧乏医師の真田を演じる渡辺大と、松永の兄貴分の岡田を演じる大鶴義丹に話を聞いた。

エッジを効かせる深作演出

──まず、映画「醉いどれ天使」に抱いていた印象を教えてください。

渡辺 これが戦後2年で作られていたというのはちょっとびっくりしました。手痛い敗戦の後、2年後にこれだけのエネルギーがある作品を作る、しかも、当時これは最先端のエッジが効いた作品だったわけですよね。深作さんはこれを令和に持ってきて、令和最先端のエッジを効かせた『醉いどれ天使』をやろうとしていて、そこがとてもいいな、と思っています。

大鶴 一番強く印象に残ったのは……三船さんがあまりにもイケメンでびっくりしました! 最初、誰だこの美青年?と思って。28歳くらいの三船さんを見られるというのは、なかなか無いですから。

──この作品は2021年に明治座で舞台化されていますが、今回は演出家も出演者も一新されます。

渡辺 前回は松永と真田の関係性が親子に近い感じで、そこは映画でもそうだったのですが、今回北山くんと僕は年齢が1つしか変わらないんですよ。元々映画で真田はどちらかというと50歳に近い老成した医師みたいな感じで描かれていたと思うのですが、そのイメージだと僕がうまくハマらないので、そこは深作さんのパンクでロックな『醉いどれ天使』に乗っかってやろうと思って、色々なパターンを考えて稽古に臨んだのですが、今一番エネルギッシュな真田でぶつかっていけてるんじゃないかと思っています。

大鶴 前回の舞台とは、同じ戯曲なんだけど演出も世界観もだいぶ違うよね。

渡辺 そう、全然違いますよね。前回は前回の1つのマスターピースで、僕らは僕らのマスターピースを探さなければいけないから、そこはおそらく全然違う方に舵を切っていて、前回とは別の宝島にたどり着くのではないかと思っています。

──大鶴さんが演じる岡田と松永の関係性はどのようになりそうでしょうか。

大鶴 結果的にすごく憎しみ合うんですけど、どこかで愛情があるんですよね。憎しみ合うところは結構作りやすいんだけど、裏にはかつて親子関係のようなものがあったということを忘れないようにしてやっています。単なる憎しみ合いじゃなくて、どこかで裏返ってしまったような状態なんだ、というところを大事にしたいですね。

──お二人は今回が舞台初共演だそうですね。

大鶴 映像では共演していますし、お互いよく知っている間柄ではあるんですが、舞台は初ですね。舞台は一緒にやっていく中で信頼感が増していくのがいいですね。その人がどれだけ責任感を持ってやっているかとか、そういうのがすごく伝わってくるんですよ。舞台は1ヶ月とか2ヶ月かけて丸裸になるから、色々なことがお互いバレてしまうというか(笑)。映像だと2、3日で終わるから、カッコつけたままだったり。

渡辺 化けの皮が剝がれる前に帰る、みたいな感じですよね(笑)。

──お稽古場の雰囲気はいかがですか。

渡辺 各々武器を持ってきた中で、深作さんが陣頭指揮を執り、座長がそれに付いていく背中を見せてくれて、それに僕らが後から続いていく、というような陣形が取れて来た感じがしています。みんなで悩みながら作っていく中で、ある一定の道筋が立って光が見えてきたことは、希望になっていると思いますね。

大鶴 僕も色々な演出家と仕事をしてきましたが、深作さんはなかなか現代的で素晴らしい論法というかメソッドを持っていて、役者を安心させてくれる演出家だな、という印象です。落ち着いて作品と向き合える現場ですね。

大きな戦いの後の、傷ついた人々の物語

──渡辺さんは近年は舞台に精力的にご出演されています。

渡辺 明治座さんで2021年に『魔界転生』という作品で初舞台を踏んで、映像には映像の、舞台には舞台の楽しさがあるなと。舞台は特に「あの舞台を一緒に乗り越えた人たちとだったら、これからも大丈夫だろう」という、気心知れた人たちを作っていけるというのはすごく貴重な財産だな、と思っています。あの人たちとなら今後もっと遠慮なくできるだろうな、という楽しさがあるんです。昨年も深作さん演出で『罠』という舞台を完走したということが1つ自分の中でレガシーになりました。今回『醉いどれ天使』の真田をやり遂げるということもまた自分にとってのレガシーになってくると思いますし、そうやって積み上げていく作業が今は自分にとって大事なことなのかなと思っています。

──大鶴さんもここ最近、舞台へのご出演が一気に増えた印象です。

大鶴 コロナ前だと、年2本くらいでしたかね。昨年は8本くらいかな? まあ、時代も変わってきて〝実演〟というものがすごく力を持ち出してきていると思いますし、テレビのあり方も変わってきたという感じはありますね。来年もいくつか舞台が決まっているんですが、何かの思いがあって僕を呼んでくれていると思うから、基本的に舞台の依頼は断らないんですよ。

──作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

渡辺 深作さんは、本作は見ている人の心にナイフを突きつけるような作品だと言っていました。もしかしたら、肌触りが良いものではないのかもしれませんが、それも含めて人間だと思うので、現状への疑念であったりとか、非常に色々なものを感じながら、投影して持ち帰れるような作品になっていると思います。お届けする私たちも、お客さんとの正面からのぶつかり合いだと思っているので、体当たりで頑張ります。

大鶴 今回深作さんは何の戦争の〝戦後〟であるかを限定せずに描いているんですね。それはもしかしたら、今もなお世界のどこかで続いている戦いのことかもしれませんし、あるいはもっと他の戦いかもしれません。それがいわゆる〝戦後80年〟を手触りとして知らない若い世代にとっても「戦後」というものを受け取りやすくして、楽しんでもらえる作品になるんじゃないかな、と思っています。広い意味での「ある戦いに傷ついた人たちの中に起きたドラマ」として見てもらえればと思います。

(このインタビューは「えんぶ12月号」より転載)

プロフィール

わたなべだい○東京都出身。2002年、俳優デビュー。18年、主演映画「ウスケボーイズ」で、マドリード国際映画祭・アムステルダム国際フィルムメーカー映画祭にて最優秀主演男優賞を受賞。近年の出演作は、【舞台】『Take Me Out』『TARKIE~伝説の女たち~』(25)、【映画】「長崎-閃光の影で-」(25)、「シンペイ 歌こそすべて」(25)、【ドラマ】「看守の流儀」(25・EX)、「いきなり婚」(25・NTV)など。

おおつるぎたん○東京都出身。NHK『安寿子の靴』でドラマデビュー後、1990年大学在籍中『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞。95年には映画『となりのボブ・マーリー』を監督脚本、現在まで6本の監督作品がある。14年からは父・唐十郎の戯曲作品にも新宿梁山泊を通して参加している。ドラマ、映画、バラエティー、執筆活動とマルチに活動中。近年の主な出演作は、【映画】「ウスケボーイズ」「日本独立」「宮松と山下」、【舞台】『少女都市からの呼び声』(23)、『特攻隊80周年帰って来た蛍~永遠の言葉~』(24)など。

インタビュー◇久田絢子 撮影◇中田智章
ヘアメイク◇大塚貴之(Rouxda) スタイリング◇久保コウヘイ(QUILT)
(渡辺)衣装協力/スーツ(ボブ/タキヒヨー 03-5829-5671)その他スタイリスト私物
(大鶴) 衣装協力/ジャケット(イザイア/イザイア ナポリ 東京ミッドタウン 03-6447-0624) その他スタイリスト私物 

公演情報

酔いどれ天使

原作◇黒澤明 植草圭之助 脚本◇蓬莱竜太 演出◇深作健太
出演◇北山宏光/渡辺 大 横山由依・岡田結実(Wキャスト)
阪口珠美/佐藤仁美 大鶴義丹 ほか
11/7〜23◎東京公演 明治座 〈チケットお問合せ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666(10:00~17:00)
11/28〜30◎名古屋公演 御園座 〈チケットお問合せ〉御園座営業部 052-222-8222(平日10:00~18:00)
12/5〜14◎大阪公演 新歌舞伎座 〈チケットお問合せ〉 新歌舞伎座テレホン予約センター 06-7730-2222(10:00~16:00)

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