
今年も浅草に若手歌舞伎の熱い風が吹く!
年の初めの浅草を彩る風物詩、そして若手歌舞伎俳優の登竜門でもある「新春浅草歌舞伎」が、今年も幕を開ける。
昨年に引き続き、中村橋之助、中村莟玉、市川染五郎、尾上左近、中村鶴松に加え、念願の浅草初登場を果たした市川男寅という6人で、「新春浅草歌舞伎」の歴史にまた新たな1ページを開く。
その公演でリーダー的な存在の橋之助と初参加の男寅、同い年ながら良い意味で好対照となる二人に、お互いのことやそれぞれ挑戦する役のこと、公演にかける熱い思いなどを語ってもらった。
今年もリーダーシップの橋之助と初参加で新鮮な男寅
──橋之助さんは昨年の公演でも共演者を引っ張っていました。今回もリーダーシップが期待されます。
橋之助 引っ張るというよりまとめ役ですかね。一人ひとりの熱い思いが1つになり、公演の思いになり、歌舞伎や役、一門への愛が大きな思いになってお客様に届く。これが一番の武器だと僕は考えているので、それを大事にしたいと思っています。
──一方、男寅さんは30歳で初めて「新春浅草歌舞伎」に出演されます。いかがですか?
男寅 正直な話、この年齢になって出していただけるとは思いませんでしたし、自分には縁のない座組だと思っていました。でも「新春浅草歌舞伎」はやはり憧れの舞台で、そこに立たせていただけるのはありがたいですし、七代目市川男寅の名前を刻めるのは大変光栄なことです。
──公演についてはこれまでご覧になっていましたか?
男寅 近年は、1月は新橋演舞場や歌舞伎座などに出させていただくことが多かったですが、その合間にできるだけ拝見していました。今は若手主体の花形歌舞伎が少なく、自分がそういう公演に出させていただくのも初めてで、こういう取材や記者会見なども初体験なので、新鮮な日々を過ごさせていただいています。なかでも「新春浅草歌舞伎」は注目度もトップの興行なので、楽しみ半分、不安半分ですね。
──今回演じる作品や役について、それぞれ話していただけますか。
橋之助 まず第1部の『梶原平三誉石切』ですが、主役の梶原平三も僕が演じる大庭三郎も、基本的には舞台の真ん中に座っているだけです。でもそれが歌舞伎の「らしさ」で、梶原は物語を動かさなくても真ん中にドンと存在して、全てが彼にフォーカスされる。大庭も、梶原と対比される存在感がとても大切で、まずは父に教えてもらいながら、今回ご出演くださる中村又五郎のおじ様にも伺いながらつとめたいと思っています。第2部の『傾城反魂香』の浮世又平は念願の役で、お話をいただいた時はすごく嬉しかったです。この作品については、女房おとくを演じる(中村)鶴松君と「一緒にやろう」と中学生の頃から約束していたので、本興行でその夢が叶うのは感慨深いです。又平は一つ一つの物事に心を動かされていく役で、今まで培った役者としての技量、魅力、芝居勘がとても大事だと思っています。又平は(中村)勘九郎の兄さんに習います。筆や手拭も、兄さんが十代目坂東三津五郎のおじ様から貰ったものを貸していただきます。そして『男女道成寺』の強力は、白拍子の(尾上)左近君と(中村)莟玉君が作る世界観のなか、同じ強力役の(市川)染五郎君と二人で、打出しの演目らしく華やかに存在できたらと思っています。
男寅 今回は第1部と第2部で、わが家に縁がある役とこれまでゆかりのない役という両極端の役をいただいて、大変光栄です。『石切梶原』の俣野五郎は父も祖父も何度もやってきた役で、一方『傾城反魂香』の土佐修理之助は祖父も父も一度もやったことがなく、一門では曾祖父の三代目左團次以来79年ぶりとなります。両役とも(坂東)彦三郎さんに教えていただきます。俣野は太く強く大きく、少し敵役なのでベリベリと嫌味ったらしくやらなければいけませんが、彦三郎さんは「はっきり言って今の男寅のニンではないと思う」と。僕自身も前に出るタイプでなく、俣野のように〝根拠のない自信〟のようなものも全くない人間で、キャラクターとしても正反対なのですが、そこをどう表現できるかが課題です。ただ「新春浅草歌舞伎」という良い機会をいただいたので、どちらの役についても父と祖父とは違う自分のカラーを発信していけたらと思います。
今年も全員で同じゴールを見て走りたい
──お二人は誕生日が1日違いの同級生ですね。これまで共演が少なかったそうですが、お互いの印象は?
橋之助 男寅君は、お家にゆかりのある演目はもちろん、お父様の男女蔵さんやお祖父様の四代目左團次さんにはなかった女方や綺麗な二枚目の立役もできる。それが彼の、歌舞伎でいうニンでありキャラだと思います。ただ、ゆくゆくは左團次になる方ですので、さらにそちらの色を出せる芸域もあるのだろうなと。あと、かお(化粧)が上手いです。
男寅 国ちゃん(橋之助)は、最近は力強い役が多くて、お父様の芝翫さんの当り役などを今後も極めていくのかなと。ゆくゆくは芝翫を名乗り、歌舞伎座で主役を張られる立場になる方だけに、本当にしっかりしていて、今回も頼りがいのある座頭ですし、〝ザ・長男〟ですね。僕は一人っ子で甘えっ子気質なので、プライベートでも芝居でもすごく頼っています。
橋之助 ザ・長男です(笑)。僕は「こうと決めたらこう!」というタイプで、昨年の「新春浅草歌舞伎」では、LINEグループで、例えば宣伝のことで僕が「これをやろう!」とゴールだけ送ると、莟玉君が「国ちゃんは多分こういうことが言いたくて…」とフォローしてくれて(笑)。
男寅 莟玉君、中間管理職みたい(笑)。
橋之助 そんなふうに僕の思いを全員が感じてくれて、同じゴールを見て走れた1ヶ月だったので、2026年もそうしたいし、そこに同級生の男寅君が一緒に加わってくれて、ますます心強いなと。でも同時に、もう一度気を引き締めなくてはと思っています。
──そんな公演を楽しみにしていらっしゃるお客様にメッセージをお願いします。
男寅 僕は実力や芸のレベルで言うと、全力でフルスイングすることしかできないと思っていますので、とりあえず1日1日、全力投球でつとめたいです。そして1人でも多くの方に市川男寅という存在を、男寅の色を知っていただけたらと思います。
橋之助 僕は「嬉しさを原動力に」です。2年目もさせていただける嬉しさ、念願の『傾城反魂香』を鶴松君と夫婦でさせていただける嬉しさ、他にもあるいろいろな嬉しさを力に、熱くつとめたいと思います。「新春浅草歌舞伎」は若手公演ですが、きちっとした歌舞伎でお客様に良い時間をお届けできるよう、一座揃って同じ方向を向いてやっています。2年目は初年度よりさらに沢山のお客様に来ていただきたいですし、「去年は良かった。でも今年も良かったから、もっといろんな人に紹介しよう」と思っていただける公演にしますので、ぜひ浅草公会堂へお運びください。
(このインタビューは「えんぶ2月号」より転載)
インタビュー◇内河文 撮影◇松山仁
プロフィール
なかむらはしのすけ○東京都出身。八代目中村芝翫の長男。2000年9月歌舞伎座で本名の初代中村国生を名乗り初舞台。16年10・11月歌舞伎座で四代目中村橋之助を襲名。歌舞伎以外の舞台では『オイディプスREXXX』『ポーの一族』『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』、大河ドラマ『毛利元就』などに出演。映画『シンペイ〜歌こそすべて』など。
いちかわおとら○東京都出身。六代目市川男女蔵の長男。祖父は四世市川左團次。2003年5月歌舞伎座で七代目市川男寅を名乗り初舞台。歌舞伎以外では、映画『変身』『伊藤の話』『銀河鉄道の夜』、ドラマ『義経』など。共同通信にて短期連載『男寅の歩き方』が掲載中。
公演情報

『新春浅草歌舞伎』
出演◇中村橋之助 市川男寅 中村莟玉 市川染五郎 尾上左近 中村鶴松
1/2〜26◎東京・浅草公会堂
チケットホン松竹(10:00-17:00) 0570-000-489
チケットWeb松竹(24時間受付)




