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情報☆キック
株式会社えんぶ が隔月で発行している演劇専門誌「えんぶ」から飛び出した新鮮な情報をお届け。
公演情報、宝塚レビュー、人気作優のコラム・エッセイ、インタビューなど、楽しくコアな情報記事が満載!
ミュージカルなどの大きな公演から小劇場の旬の公演までジャンルにとらわれない内容で、随時更新中です。

(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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Web版シバイのミカタ(2026年8月)

【シバイのミカタ】コーナーでは、クリエーター&読者の皆さんが観た「面白かった!」芝居をご紹介しています。

雑誌「えんぶ」2026年8月号(7/9発売)の「シバイのミカタ」!

かまどキッチン
『不安の街、横切る。』

作・演出◇児玉健吾 出演◇立蔵葉子 長井健一 中村亮太 波多野伶奈 丙次 藤家矢麻刀 宝保里実 山田遥野 イラスト・音楽◇坂田機械

5/1〜5◎雑遊

撮影◇⼩池舞

世にも珍しいTCG演劇、転売屋の悲喜交交


今年、発売30周年を迎えるポケモンカードは、さながら投機商品のように数百万円で転売され、社会問題にもなっているが…今作は、そんなトレカの売買をテーマにした、世にも珍しいTCG(トレーディングカードゲーム)演劇だ。本来子供の玩具だった物が、マネーゲームの手段として飛び交い「価値とは何か?」が徐々にわからなくなっていく様を、実際に秋葉原のショップで働く作演出の児玉健吾が、本人役で登場するセルフモキュメンタリーとして巧みに描いた。作中、冷笑されながらもただ一人、TCGへの純粋な愛着を早口で語るオタク・立野(長井健一)の情熱が、虚構に意味を与え人間の創作物に「価値」をもたらす源泉として、匂い立っていた。

writer/イトウシンタロウ http://nice-stalker.com (イトウシンタロウ主宰団体)

ドナルカ・パッカーン
座・高円寺 日本演出者協会セレクション

『女の一生』―戦時下の初稿版完全上演―

作◇森本薫 演出◇川口典成 音楽◇河崎純 出演◇原田理央(柿喰う客) 浜名実貴(劇団前進座) 他 演奏◇河崎純 松本ちはや

4/8~12◎座・高円寺1

検閲下で書かれた初稿版を面白いと感じた

『女の一生』は1945年4月に初演され、1946年に改稿された森本薫の絶筆で、改稿版の上演は杉村春子の代表作としても知られている。初稿版は、現在よく知られ上演されている改稿版と内容が異なっている。カンパニーが初稿版を上演する意図は、私には分からない。検閲のもとで書かれ、大東亜共栄圏を賛美し「間違いと知ったら自分で間違いでないようにしなくちゃ」というメッセージの台本を、私は面白いと感じた。それは恐ろしいことだ。演劇は、その場にある価値観を操作する役割を担える。意識的にせよ、無意識的にせよ、観客のある価値観を強化または弱化できる。しかしそれよりも、その過去を忘れてしまう我々の忘れっぽさが恐ろしい。

writer/黒澤世莉 https://serikurosawa.com/

東宝 ミュージカル
『レベッカ』

脚本・歌詞◇ミヒャエル・クンツェ 音楽・編曲◇シルヴェスター・リーヴァイ 原作◇ダフネ・デュ・モーリア 演出◇山田和也 出演◇海宝直人 豊原江理佳/朝月希和(Wキャスト) 明日海りお/霧矢大夢(Wキャスト)石井一彰 俵和也 吉田広大 彩乃かなみ 生田智子ほか

5/6〜6/30◎シアタークリエ ほか全国ツアーあり

愛の物語へと生まれ変わった「令和のレベッカ」

2008年の日本初演以来主演を務めてきた山口祐一郎卒業後、キャスト・演出を一新して上演されたミュージカル『レベッカ』。天涯孤独の身から上流紳士マキシムに見初められた「わたし」が、彼の所有する広大な屋敷と土地マンダレイに到着するも、そこには先妻のレベッカの影が至るところに残っていて、という発端からはじまるミステリー要素の濃い作品が、新キャストを得て愛の物語へと変貌した様が鮮やか。海宝の頭抜けた歌唱力と演技力、豊原・朝月の全く異なるヒロイン像、家政婦頭ダンヴァース夫人の明日海りおがレベッカが憑依したような突き付け方で、霧矢が理性を残した謎めく造形でそれぞれ作品を染め上げ、再見欲が高まる「令和のレベッカ」誕生となった。

writer/橘涼香

レプロエンタテインメント
『赤坂檜町テキサスハウス』

原作◇永六輔(大竹省二・写真/朝日新聞出版「赤坂檜町テキサスハウス」) 企画◇崔洋一 脚本・演出◇鄭義信 出演◇伊藤健太郎 大鶴佐助 福井晶一 酒井大成 小川菜摘 みのすけ

5/8~24◎下北沢ザ・スズナリ、5/28~31◎近鉄アート館

“テキサスハウス”を巡る、出会いと別れ


戦後間もない頃、まだ焼け跡が残る赤坂・檜町にあった木造二階建てのアメリカ風アパート、 通称“テキサスハウス”。若き日の永六輔をはじめ、創成期のメディア界の人々や様々な背景を持つ持つ者が出入りし、暮らしていた。50年後、永六輔こと永和雄は、死を目前にして、かつての日々の幻覚を見るようになる。伊藤健太郎演じる若き日の永六輔と、みのすけ演じる年老いた永和雄は、それぞれの時代で出会いと別れを繰り返し、人生が交差していく。時に笑い、時に涙し、ぶつかり合う、エネルギッシュな舞台だった。情緒溢れるスズナリに、知る者の記憶の中で生き続けるであろう“テキサスハウス”の姿を重ね合わせた。

writer/ふぁたけ

PANCETTA
『REMAKE Moon』

構成・演出◇一宮周平 出演◇佐藤竜 玉置祐也 一宮周平 加藤亜祐美 (Pf.) 鈴木広志 (Sax.)※14、16、17日出演 江川良子 (Sax.)※15日出演 舞台手話通訳◇田中結夏 (となりのきのこ) 手話監修◇江副悟史 (株式会社エンタメロード)

5/14〜17◎シアタートラム

夜空を見上げると、輝く月。あ、もしかしたら…


今まで様々な舞台を観てきた中で、初めての体験だった。月の裏側に住む“月人(つきびと)”に会いに行くため、我々観客を乗せたロケットが宇宙へと飛び立つ。月人とのコミュニケーション手段は「月人語」。手話を超えた全身を使う方法で50音を表す。地球に寄り添うように回り続ける月。そこからの着想がユニーク。月人は“付き人”へと変化し、役者と付き人の関係性で進む。役者が付き人へ問う「君、本当は何がしたいの」。哲学的な要素も内包しつつ、客席の我々も一緒に体を動かしたり時には質問が飛んでくる巻き込み型。観てない人への説明が困難なほどの独創性と、どこまでも柔軟な発想力。『生きることを、面白がる』をコンセプトに創設されたパンチェッタならではが光る、演劇という垣根を超えた“表現”だった。

writer/辻林遙

『ポルノ』

作◇長塚圭史 演出◇松居大悟 出演◇玉置玲央 前田敦子 鳥越裕貴 藤谷理子 小野寺ずる 岩本晟夢 うぇるとん東

4/2〜12◎下北沢 本多劇場 ほか福岡、大阪公演あり

撮影◇関信行

7人の男女のたしかな愛のかたち

阿佐ヶ谷スパイダーズが2002年に上演したこの作品に「衝撃」を受けたという松居と玉置。その衝撃が24年経った下北沢にもやってきた。
7人の男女が織りなす愛の形は、強くて痛くて弱くて優しくて儚くて、だけどどこかネジが外れていて、それでもそれは彼らにとって間違いなく「愛」だった。ここはファンタジーなのかもしれない。でももしかしたら近くにある世界なのかもしれないと、自分の位置にふらふらしながら、演劇だからこそ表現できる世界観にどっぷりと浸かった。カーテンコールのない終演ははじめての体験だったが、舞台の世界観を自分の背中にずしっと乗せたような感覚と共に劇場を後にした。「衝撃」は確かにそこにあった。

writer/ひろ https://x.com/hiro165

NAPPOS PRODUCE
舞台『oasis』

原作◇イ・チャンドン 翻訳◇みょんふぁ 脚本・出演◇山田佳奈 出演◇丸山隆平 菅原小春 田中俊介 岩本えり 富山えり子 他

3/14~30◎サンシャイン劇場 ほか大阪、愛知公演あり

役者の身体・精神の表現に賛辞を

作中のジョンドゥとコンジュの恋愛は、周囲に理解されない。しかし、“純愛”や“感動”とまとめることも、“幸せなのか不幸なのか”と考えることも、オアシスへとパレードしながら向かう二人の前では全てナンセンスだ。限られたセットでの巧みな場面転換、菅原小春演じる脳性麻痺患者の硬直した不自由な身体表現や言語障害、そのコンジュがイメージする“五体満足で天真爛漫に恋人と戯れる自分”と“現実”が交じる演出、丸山隆平演じるイノセントだが善悪の区別がつけられず他人の気持ちもわからない厄介者の男・ジョンドゥの匂い立つような立ち居振る舞い。「こうだから舞台演劇は面白い」と唸るような芝居と演出であった。

writer/蓮ノ上暁光 https://note.com/ha_writer