宝塚歌劇OGがジャズのスウィングに挑む『ALL THAT ZZJA/ALL THAT ZZKA』開幕!

世界的ジャズ・ヴァイオリニスト寺井尚子と宝塚歌劇OGによる夢のコラボレーションコサートSONG & DANCE with NAOKO TERAI Quartet『ALL THAT ZZJA/ALL THAT ZZKA』が東京・日本青年館ホールで上演中だ(24日まで。のち9月29日~10 月1日まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演)。

『ALL THAT ZZJA/ALL THAT ZZKA』世界で活躍するジャズ・ヴァイオリニスト寺井尚子が、宝塚少女歌劇オーケストラ出身の井田一郎率いる、日本で初めてのジャズバンドが結成されて100年という記念の年に当たる本年、宝塚歌劇OGとジャズの融合で新たな舞台を創ろうとの企画・原案からスタートした作品。構成・演出に数々の話題作を手掛け続ける菅野こうめい、キャストに宝塚歌劇団元トップスターの真琴つばさ、姿月あさと、湖月わたる、元トップ娘役の風花舞と彩乃かなみが集結。更にコーラス&ダンサーとして、昨年宝塚を退団したばかりの実力派OG天寿光希と晴音アキ、更に、男性ダンサー加賀谷真聡と高橋伊久磨が揃い、宝塚歌劇OGがジャズの名曲で「スウィングしなけりゃ意味がない!」とジャズのリズムとグルーヴに、それぞれの個性を乗せて弾ける舞台が展開されている。

企画・原案の寺井尚子が率いる、音楽監督兼アレンジャーのピアニストの北島直樹、アレンジャーでドラム担当の荒山諒、バンドのグルーヴを支えるベースの仲石裕介が揃ったステージは、幕開きから自由で力強いジャズのメロディーとリズムが横溢する。そこに飛び込んでくる宝塚歌劇OGたちもまた、音楽を楽しむことを全身で体現すべく、それぞれの持ち味を発揮していく。何より構成・演出の菅井こうめいが、やはり宝塚OGたちが得意とするところ、歌をドラマで語り、ダンスの楽しさで魅了するミュージカルシーンに通じる楽曲を多用してきたことが、両者の融合を進める力になっていた。それは、タイトルを前面に押し出した煌びやかな舞台面が、一気にシャンデリアとテーブル席のゴージャスなジャズクラブへと展開する美術の転換にも表れていて、宝塚歌劇OGたちがジントニックやシャンパンといった銘々好みの飲み物をオーダーし、グラスを手にして歌うという洒落た構成が、舞台の物語性を高めてくれる。一人ひとりのソロナンバーはもちろんだが、元月組トップコンビの真琴つばさと風花舞。宙組発足メンバーであり、宝塚OGによる忘れ難い意欲的な公演『CHICAGO』でも共演している姿月あさとと湖月わたるといった、縁深い組み合わせでのナンバーや、月組つながりの真琴、姿月、風花、彩乃など、それぞれの関係性を語るトークなども、過不足なく挟まれて全体のバランスが心地よい。

そこには宝塚OGが集ったならではの「最上級生」として全体をまとめる真琴つばさのトークスキルの高さや、きちんとスターなのに、非常にフレンドリーで、オープンな親しみやすさも醸し出せる独特の持ち味が大きく作用している。特にシャンソンで特段の魅力を発揮している真琴のハスキーボイスは、ジャズナンバーにも多大な効果をあげていて、味わい深い歌唱を聞かせてくれた。

宙組初代トップスターの姿月あさとは、宝塚退団後「ソロ・ボーカリスト」としての活動に主軸を置いている人だけに、こうしたコンサートでの居住まいが非常に自然。ふんわりしたトークのなかから爆笑を誘う様も堂に入っていて、「Route66」をはじめとした、全員のコーラスではリードを取っていることがよく伝わり、OGたちが生み出すハーモニーに貢献していた。

その姿月と多くの時間を共にしている湖月わたるは、こうした宝塚歌劇OG公演では先頭に立つ機会の多い人だからこそ、今回の座組では下級生の顔をしている姿がむしろ新鮮。一転、自身にとっても大きな財産となっていると語る『CHICAGO』のヴェルマ・ケリーのナンバー「ALL THAT JAZZ」で示す存在感は絶大で、多面的な魅力を見せてくれた。

ダンサートップ娘役として一時代を画した風花舞は、退団後の様々な活動によって更に押し出しの良さを高めていて、元トップコンビである真琴が「私がついていっている」とジョークを飛ばしても、笑い合える関係性が観ている側にも微笑ましさを届けてくれる。もちろん「SPAIN」で示した得意のダンスの魅力にも磨きがかかっていて、全体の大きなアクセントになっていた。

その風花と同じ月組でトップ娘役として活躍した彩乃かなみは、音域が極めて広く自在に声を操れる歌唱力が、ジャズに特化したこの公演でも際立っていて、柔らかに語るような歌声から、パッショネイトでソウルフルな歌声までと、曲によって表現を変えられる彩乃の強みが前面に出た格好。それでいて娘役らしい愛らしさも醸し出せる得難い個性が、ステージを和ませる効果にもなっていた。

更に、登場した瞬間、おそらく何秒か「この美女は誰?」と凝視したほど、たおやかな美しさを見せた、星組で演技派男役として大活躍した天寿光希の鮮やかな変身ぶりには驚かされるばかり。一方、月組で歌える娘役として数々の大役を担ってきた晴音アキは、ショーシーンでもセンターを取った経験を活かし、小気味よい歌とダンスを披露。欲を言えば天寿と晴音にもソロか、せめてデュエットでの歌唱があったら…との思いが募った二人の存在が頼もしかった。

また、『キングアーサー』や『ボディガード』で示したパフォーマーとしての力量の高さが印象的な加賀谷真聡と、『ムーランルージュ・ザ・ミュージカル!』の記憶も新しい高橋伊久磨の、コーラス&ダンスを担った男性陣がそれぞれの高いスキルで舞台を盛り上げていたのも見逃せず、宝塚OGたちに自然に溶け込んでいる様も舞台をより美しくしていた。

何より、この舞台のそもそもの企画を立ち上げた寺井尚子カルテットの、ジャズの魅力とはすなわち、音に魂を乗せて、自由に戯れるがごとくに音楽を紡いでいくことなのだと知らしめてくれるLIVE感溢れる演奏が素晴らしく、『ベルサイユのばら』の「愛あればこそ」のジャズアレンジナンバーは、必聴そのもの。是非この演奏をCDや配信で売り出してくれないかと思うほどの見事さで、良い意味で平易で主張の強いメロディーが、決してどこにいったのかわからなくならず、けれども巧みにジャズとして新たな命を得ていたのは、この企画を象徴する幸福な出会いだった。

思えばトップスターを頂点として、全員の気を合わせる美しさを持つ宝塚歌劇で活躍したスターたちが自由なジャズに没入できるのは、いまOGとして様々な活動を続けている蓄積の賜物だろう。そうした意味でもこの舞台は、宝塚歌劇OGだからなし得るコラボレーションで、回を重ね更に深化する舞台に期待している。

東京公演初日に際し、企画・原案の寺井尚子、構成・演出の菅野こうめい、キャストを代表して真琴つばさからのコメントが届いた。

寺井尚子 
皆様こんにちは。2023 年は、宝塚少女歌劇オーケストラ出身の井田一郎氏率いる日本で初めてのジャズバンドが結成されて 100 年目の記念の年。元トップスターの方々と共に、宝塚歌劇のヒット曲を”今の時代の香りを乗せたアレンジ”で何か新しい世界が創れるのではないか?こうして『ALL THAT ZZJA/ALL THAT ZZKA』がスタートしました。「私の描く音楽」それはやがて、音楽監督兼アレンジャーの北島直樹(ピアノ)、アレンジャー荒山諒(ドラム)、バンドのグルーヴを支える仲石裕介(ベース)、この 3 人の音楽家と演出家菅野こうめい氏との出会いにより「私たちの描く音楽」へと変化していきました。存在感あふれる元トップスター達とのリハーサルでは、いい意味での緊張感とエネルギーが増していくのを感じ、本日こうして皆様にご覧いただけます事を大変嬉しく思っております。どうぞごゆっくりお楽しみください。本日はお越しくださり誠にありがとうございました。

菅野こうめい 
本日は、『ALL THAT ZZJA/ALL THAT ZZKA』にようこそお越し下さいました。これまで僕は多くの宝塚 OG の方々とお仕事をさせていただいて来ましたが、今回ほど「宝塚の伝統と結束力」を感じたことはありませんでした。100 年を超えて創られたであろう「絆」の威力に圧倒されながらのリハーサルの日々でした。それほど今回の出演者ベテランOG(笑)5人、プラスほやほや OG2人は素晴らしい。ホンモノの(笑)男性ダンサー2人も、SHOW に最高のアクセントを加えてくれています。JAZZ と言う音楽は規律と自由が共存して成り立つ音楽です。それは宝塚歌劇ととても似ていると僕は思います。こじつけではなく、JAZZ と言う音楽によって、懐かしくて新しい宝塚をクリエイト出来たと自負しています。これも寺井尚子さん、バンドメンバーの皆さんのおかげです。最高の宝塚 JAZZ コラボ・エンターテインメントをどうぞ、お楽しみください。そして、思い切り SWING してください。

真琴つばさ 
本日は、『ALL THAT ZZJA/ALL THAT ZZKA』にお越しくださり、ありがとうございます!タカラヅカ時代から身近にあった JAZZ に焦点を当てた公演は、数ある OG 公演の中でも今回が初めてです。「It Don’t Mean A Thing」「Fly Me To The Moon」などの JAZZ の名曲や、ミュージカル『CHICAGO』からは「ALL THAT JAZZ」などみなさまご存じの楽曲が勢ぞろい!退団後、それぞれの道を歩んできた私たち 5 人が、ソロでは個性を競い合いながら、「Route66」では世界で一つだけのハーモニーをお届けしたいと思います。
演奏は、世界的ヴァイオリニストの寺井尚子さんを中心としたカルテットの皆さま。その演奏力の素晴らしさに日々刺激されています。中でも『ベルサイユのばら』の「愛あればこそ」は、必聴です!若手 OG や男性ダンサーのエネルギッシュなパフォーマンスとともに”JAZZ の楽しさ”をお客様に!私たちショーアップの天才(!?)とジャズ演奏のスペシャリストたちとの夢のコラボ、どうぞお楽しみください!!最後になりましたが…今年は、宝塚少女歌劇オーケストラの一員でいらした井田一郎さんが、日本初の JAZZ バンドを結成されて 100 年。そして宝塚歌劇の創設者、小林一三先生の生誕 150 周年でもあります。この記念すべき年に、OG として JAZZ の世界に携われることに、心から感謝しています。

【公演情報】
ZUKA IN JAZZ/SONG & DANCE with NAOKO TERAI Quartet
『ALL THAT ZZJA/ALL THAT ZZKA』
企画・原案:寺井尚子
構成・演出:菅野こうめい
出 演:真琴つばさ、姿月あさと、湖月わたる、風花舞、彩乃かなみ
天寿光希、晴音アキ、加賀谷真聡、高橋伊久磨
●9/22~9/24◎東京・日本青年館ホール
〈料金〉S 席 11,500 円、A 席 7,000 円
●9 /29~10/1日◎大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
〈料金〉全席 11,500 円
公式 HP https://www.takarazuka-live-next.co.jp/stage/2023/zzjazzka/
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場(東京)0570-077-039、(大阪)06-6377-3888

【取材・文/橘涼香 写真提供/タカラヅカ・ライブ・ネクスト】〉

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