東京宝塚劇場月組公演初日前月城かなと&海乃美月囲み取材レポート
月城かなとと海乃美月トップコンビが牽引する宝塚月組公演、ミュージカル『フリューゲル-君がくれた翼-』東京詞華集(トウキョウアンソロジー)『万華鏡百景色(ばんかきょうひゃくげしき)』が、東京宝塚劇場で上演中だ(11月19日まで)。
この公演は、冷戦下の東西対立により国が分断されていた1988年のドイツを舞台に、社会主義国となった東ドイツの国家人民軍で広報を担当するヨナス・ハインリッヒ(月城かなと)が、西ドイツのポップスター、ナディア・シュナイダー(海乃美月)を招聘したコンサートの責任者に任命されたことから巻き起こる様々な問題をコミカルに描くという、作・演出の齋藤吉正らしい着眼点が興趣を生むミュージカル『フリューゲル-君がくれた翼-』と、江戸時代に引き裂かれた花火師(月城)と花魁(海乃)の魂が、時代を越えて輪廻転生していくドラマをショー作品に落とし込んだ、宝塚期待のホープ栗田優香の東京詞華集『万華鏡百景色』の、充実の二本立てだ。いま、例年より遥かに早く猛威を奮っているインフルエンザの大流行などの影響で、休演者を多く抱えながら、おそらく初めて観る人には誰が代役なのかは全くわからないだろう、月組の底力を感じさせる熱演が日々舞台を彩っている。
そんな公演の初日を前に、月組トップコンビ月城かなとと海乃美月の囲み取材が行なわれ、東京公演への抱負を語った。
【囲み取材】
月城 今日はお忙しいなか来てくださいまして、本当にありがとうございます。心を込めて毎日演じたいと思いますので、どうぞ千秋楽までよろしくお願いいたします。
海乃 皆様本日はお集りいただきありがとうございます。1日1日を大切に、一瞬一瞬心を大切に動かしながら精一杯公演を務めたいと思っております。どうぞ千秋楽までよろしくお願いいたします。
──意欲作が二本並びましたが、作品の見どころを教えてください。
月城 月組にとりましては久しぶりのオリジナル作品なので、原作があるものとはまた違った、台本からそれぞれが、一から人物像を立ち上げて自由に幅が広げられる分、日々の公演を重ねるごとに深まっていく作品だと思います。宝塚大劇場で1ヶ月間やってきたので、それを更に、更に東京の1ヶ月で深めていけるように皆で頑張っていきたいと思います。
──東京詞華集『万華鏡百景色』を東京で上演することについてはいかがですか?
月城 そうですね、いよいよ『万華鏡百景色』が東京にくるということで、東京のお客様には(舞台に登場する)場所などがすごくわかりやすいのではないかと思いますし、劇場を出れば銀座が広がっていたりと、ここでやる意味も皆で感じながらできたらといいなと思います。
海乃 『フリューゲル』はたくさんのお役が登場しますし、ドイツを舞台にした少しシリアスな題材ではあるのですけれども、齋藤(吉正)先生の演出でコミカルな要素もたくさん入って、お客さまに楽しんでいただける作品になっているのではないかと思います。『万華鏡百景色』の方は、ストーリー仕立てでありながら各場面色が全然違っているので、そこが皆さまに楽しんでいただけるポイントではないかと思っております。
──両作品を演じる上で、それぞれ大切にしているところは?
月城 お芝居は齋藤先生の作品なので、少しショーアップされた場面もあるのですが、やっぱりお芝居をやっているということを忘れずに、いつもとは少し背景の異なるショーのようなお芝居だけれども、そこはやはりきっちりとお芝居として観せたいという思いがあります。ショーの方はいつものショーとは違った、こちらから発散するだけではなくて、お客さまをこちらに引き込んでいけるような演じ方ができたらと思っています。二作品とも挑戦ではあるのですが、また新しい表現の出し方が自分にとっても勉強になるのではないかなと、意欲的に挑戦したいと思います。
海乃 『フリューゲル─君がくれた翼』の方は「フリューゲル」という歌がこの物語のキーポイントになっているなと思っていまして(月城が演じる)、ヨナスさんにとっても私が演じるナディアにとっても、歌を通して色々な思いが生まれたり、繋がっていったりしていると思います。何度もお芝居のなかで「フリューゲル」の曲は出てくるのですが、1回、1回、同じ歌なのですが感情が変化していけたらいいなと思いながら演じております。ショーの方は、花火師と花魁が輪廻転生していくという筋書きがあるので、各場面全く時代も違って、その時に生まれた人物も全然違うのですけれども、その中でも魂みたいなものがずっとリンクし続けているところは大切に演じたいと思っております。
──大劇場公演を終えて、退団発表をされてから東京公演が始まりますが、変わった部分はありますか?
月城 大劇場公演と東京公演の間に退団会見をさせていただきました。その時は私も初めて退団するので(笑)、あぁこんな気持ちになるんだ、ということは感じましたけれども、その自分の個人的な感情が公演に影響することは無いようにしたいと、いま思っています。私個人としては色々な思いを日々感じながら、でも舞台を作る上では組の皆にとっても大事な公演なので、そういう思いを忘れずに大切に過ごしたいです。
海乃 私も自分の中で退団することを決めた状態でこの公演をさせていただきますが、月城さんと同じように作品にどう取り組むかということを日々考えながら過ごしておりましたので、何かが大きく変化したということはないのです。でも東京公演が始まって、お客様が退団をするということをわかってくださった状態で観ていただくと、また違うものを感じられるのかもしれないので、そういう皆さまからの温かいお気持ちも受け止めながら公演ができたらいいなと思っております。
月城&海乃コンビにとってこの囲み取材は、ミュージカル『グレート・ギャッビー』上演時、演出家・小池修一郎と作品初演のオリジナルキャスト杜けあき、鮎ゆうきと共に舞台上で開かれた会見以来の、月城&海乃コンビ二人での初めての機会となったが、終始落ち着きのある雰囲気を醸し出しながら、時折和やかな笑いも起きる場の空気が、実力派の大人のコンビとしての二人の持ち味を存分に発揮。中でも囲み取材を終えて退場する際、海乃が出口方向に近い立ち位置になるところで、ごく自然に月城に道を開けた瞬間の立ち居振る舞いの美しさが目に残り、微笑みながら歩む月城のゆったりとした大きさを倍加させていて、このコンビでしか出せない魅力の一端を見る思いだった。
※なお、この公演の公演レビューも舞台写真と共に後日掲載予定です。ご期待下さい。
【公演情報】
宝塚歌劇 月組公演
ミュージカル『フリューゲル-君がくれた翼-』
作・演出◇齋藤 吉正
東京詞華集(トウキョウアンソロジー)『万華鏡百景色(ばんかきょうひゃくげしき)』
作・演出◇栗田 優香
出演◇月城かなと 海乃美月 ほか月組
10/14〜11/19◎東京宝塚劇場
公式サイト https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2023/fluegel/
〈お問い合わせ〉宝塚歌劇インフォメーションセンター[東京宝塚劇場]TEL.0570-00-5100(10:00〜18:00/月曜定休)
【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】