藤田俊太郎演出で6人の女優が演じるミュージカル『東京ローズ』開幕!
「東京ローズ」と呼ばれた、アイバ・トグリの激動の人生を描いたイギリス発のミュージカル、その日本初演となる『東京ローズ』が12月7日に新国立劇場 小劇場で幕をあけた。(12月24日まで。)
本作は新国立劇場のフルオーディション企画の第6弾で、シリーズ初のミュージカル作品。
2019年にイギリスの演劇集団 BURNT LEMON THEATREが製作。太平洋戦争時、日本軍による連合国軍向けプロパガンダ放送でアナウンサーを務めた”東京ローズ”と呼ばれた女性たち。そのひとりである米国籍、日系二世のアイバ・トグリ(戸栗郁子)が、歴史の波に飲み込まれながらも、決して諦めることなく戦う姿を描く、女性6人によるミュージカル。
藤田俊太郎が演出担当し、主人公アイバを6人がリレー式に演じ、またミュージシャンによる生演奏での上演。これは日本版ならではのオリジナルの演出となっている。
初日の幕を開けた12月7日、応募総数936名の中から選ばれた 飯野めぐみ、シルビア・グラブ、鈴木瑛美子、原田真絢、森 加織、山本咲希の6名の圧倒的な歌唱と、耳に残るパワフルな楽曲に観客は魅了され、客席は大いに沸いた。
《あらすじ》
”Who is Tokyo Rose?”
アイバ・トグリ(戸栗郁子)は1916年にアメリカで生まれアメリカで育った日系二世。日本語の教育を受けることなく1920~30年代のアメリカで青春を過ごした。叔母の見舞いのために25歳で来日し、すぐに帰国するはずが、時代は第二次世界大戦へと突入、アメリカへの帰国も不可能となってしまう。そこでアイバは、母語の英語を生かし、タイピストと短波放送傍受の仕事に就く。戦争によって起こる分断や、離散、別れ。多くの人々を襲った不幸がアイバ自身とその家族の身にも降りかかる。
やがてラジオ・トウキョウ放送「ゼロ・アワー」の女性アナウンサーとして原稿を読むことになったアイバ。その女性たちをアメリカ兵たちは「東京ローズ」と呼んだ。終戦後、アイバが行っていたことは、日本軍がおこなった連合国側向けプロパガンダ放送であったとされ、本国アメリカに強制送還され、国家反逆罪で起訴されてしまう。
本国アメリカから、戦中日本の悪名高きラジオアナウンサー「東京ローズ」であった罪を問われることとなったアイバ。彼女は本当に罪人だったのか……?
開幕に際し、演出・藤田俊太郎よりメッセージが届いた。
《メッセージ》
開幕に寄せて。
稽古の日々はとても充実していました。そして今思い返せば、およそ1年前のフルオーディションから激烈な創作は始まっていたのではないかと思います。舞台の上に美しく、女性の力が漲っています。太平洋戦争の時代を格闘し生き抜いた日系2世アイバ・郁子・トグリ役に、飯野めぐみ、シルビア・グラブ、鈴木瑛美子、原田真絢、森加織、山本咲希、そしてスウィングの柴田実奈が魂を込めました。新国立劇場の皆さん、プランナー、カンパニーの仲間たち、ミュージシャンとの素晴らしい仕事に感謝すると共に、心から誇らしく思っています。
祖国アメリカから国家反逆罪に問われたアイバは生涯をかけ、その生き様で「人を恨まない、恨みからは何も生まれない」ことを伝えました。2023年12月の今、戦いの終わらない世界に生きる私たちに、アイバの言葉が、強く生きる力を与えてくれるのではないかと感じています。板の上で全キャストがアイバ役をリレーします。そのバトンをお客様に受け取っていただけたら幸いです。
この素敵な作品の礎を創り、日本版の上演を許可してくださった英国のクリエイターBURNT LEMON THEATREに愛と敬意を込めて。
『東京ローズ』日本初演、開幕です。
演出 藤田俊太郎
【公演情報】
『東京ローズ』
台本・作詞:メリヒー・ユーン/カーラ・ボルドウィン
作曲:ウィリアム・パトリック・ハリソン
翻訳:小川絵梨子
訳詞:土器屋利行
音楽監督:深沢桂子/村井一帆
演出:藤田俊太郎
出演:飯野めぐみ、シルビア・グラブ、鈴木瑛美子、原田真絢、森 加織、山本咲希
●12/7〜24◎新国立劇場 小劇場
〈公式サイト〉https://www.nntt.jac.go.jp/play/tokyo-rose/
【舞台撮影/宮川舞子】