『歌舞伎町大歌舞伎』記者懇親会レポート

中村鶴松 中村七之助 中村勘九郎 中村虎之介 

中村勘九郎と中村七之助が出演する『歌舞伎町大歌舞伎』が、この春開業1周年を迎える、新宿・東急歌舞伎町タワーのTHEATER MILANO-Zaにて、2024年5月3日~26日に上演される。

出演者は、勘九郎、七之助を中心に、中村虎之介、中村勘太郎、中村長三郎、中村鶴松ら。演目は舞踊『正札附根元草摺』『流星』と、落語の「貧乏神」を題材にした新作歌舞伎『福叶神恋噺』となっている。

本作について記者懇親会が開かれ、中村勘九郎、中村七之助、中村虎之介、中村鶴松が出席した。

【挨拶と質疑応答】

中村勘九郎
以前、赤堀雅秋さんの演出で(中村)獅童さんが歌舞伎町で歌舞伎を上演したことがあり(※2019年5月にオフシアター歌舞伎『女殺油地獄』を新宿FACEで上演)、歌舞伎町という猥雑というか人間の欲と野望が渦巻く場所が歌舞伎に合っているなと思って、いつかこの地区のどこかでやりたいな、とは思っていました。今回、THEATER MILANO-Zaという新しい劇場で歌舞伎が上演されることを本当に嬉しく思います。内容は、歌舞伎味あふれる『正札附根元草摺』というおめでたい踊り、『流星』という洒脱な踊り、と歌舞伎舞踊の中でも両極端な舞踊を2つご覧いただいて、その後に七之助が主演の新作歌舞伎、落語の「貧乏神」をモチーフにした世話狂言をご覧いただくということで、「歌舞伎を観たな」という感じになると思います。初めて歌舞伎をご覧になるお客様も肩の力を抜いて、歌舞伎ってこんなに身近なものなんだ、こんなにわかりやすくて理解できるものなんだ、と思えるような作品をラインナップしていますので、お客様の反応が今からとても楽しみです。

──歌舞伎町大歌舞伎のコンセプトは。
コクーン歌舞伎は古典の作品を新しい解釈でどう今のお客様に発信するかというものですが、そうではなく、歌舞伎の本来持つ魅力を“歌舞伎町”という特殊な場所で演じるにあたって、歌舞伎座等での上演と演出を変えずに、歌舞伎の持っている底力というものをぶつけてみようじゃないか、ということで上演します。

──演じる場所によって違うことなど、なにかエピソードがあれば。
僕らは父の教えで、例えば巡業に行っても雰囲気に乗っちゃいけない、どこであっても同じことをしなくちゃだめ、と言われてやっています。でもお客様から、演出も変えていないしアドリブもないのに「今回はわかりやすくセリフを変えてくれたんですか?」と言われることがあって、同じことをしているのに不思議ですね。

──歌舞伎町の思い出、もしくはイメージ。
友達でホストクラブのオーナーをやっていた人がいたので、男たちで遊びに行きました。僕たちにもちゃんと命がけでコールをしてくれたので、「ああ、これ楽しいな」と思いました。今回歌舞伎町で歌舞伎をやるにあたって中村亀鶴さんから連絡をいただいて、ホストとかの宣伝をしているアドトラックを使ったら、と広告の提案をしてくれました。

中村七之助
私はTHEATER MILANO-Zaに行ったことがないのでどういう劇場なのかも全くわからず、新作歌舞伎は台本ができていないので、どういったものになるのか全然わかっていないので、どうしてこのタイミングで記者懇親会をやるのかな、とちょっと疑問ではありますが(笑)、今日は和気あいあいと行きましょう。

──演じる場所によって違うことなど、なにかエピソードがあれば。
場所からパワーをもらうということはあります。「芝居」は「芝に居る」と書くように、私達はどんな場所でもできるわけです。(場所特有の)面白い出来事はあって、古くからある芝居小屋で『藤娘』を踊ったとき、暗転からパッと明かりがついたらこうもりが飛んだことがありました。今回はあまり歌舞伎をやらない土地でやることで、劇場についているお客様と歌舞伎を普段からご覧になるお客様との面白い化学反応が起こることを期待しています。

──歌舞伎町の思い出、もしくはイメージ。
お兄さん(勘九郎)と僕たち後輩で、ロボットレストランに行きました。客席が対面式で、対面に座っている仲間たちが騒いでいる姿がとても滑稽で、他のお客さんの10倍ぐらい盛り上がっていたのを見て、ああ面白い人たちだなと思いました。
あと、ゴールデン街で飲もうと思って、ふと「ここだ」と思ったお店の扉を開けたら、偶然父も行っているお店だったんです。「お父様のボトルありますよ」と言われてびっくりしました。

──新作歌舞伎『福叶神恋噺』について。
今回は、新作があると歌舞伎を初めて見るお客様にも足を運んでいただける機会が多くなるのでは、ということで、上演時間や劇場や出演人数といった制限がある中で小佐田さんが選んでくださったのが「貧乏神」でした。長屋の喜劇なので落語味が溢れた作品だと思いますし、2人の掛け合いの面白さというのは、舞台ではなかなか落語のようなテンポ感が出せないということも考慮して、僕が演じる貧乏神を女性にしました。落語のままだと舞台的には難しいと思うので、ここからは推測の話ですが、ここ(虎之介との間)にちょっと恋愛感情が生まれるんでしょうね。わからないですけど(笑)。(虎之介とは「天守物語」の)富姫と図書之助で2ヶ月ずっと一緒にやっていましたので、キャッチボールは大丈夫だと思います。

中村虎之介
私はあまり新宿には行ったことがないんですが、新宿で歌舞伎をやるということ、また客層も普段とは違った感じだと思うので、楽しみにしています。『福叶神恋噺』については、小佐田さんに先日会ったとき、「セリフがめちゃくちゃ多いのでよろしくお願いします」という一言だけを投げかけられました。とりあえずまず台本をいただいて、面白い作品に仕上げられれば、と思っています。

──新作歌舞伎『福叶神恋噺』について。
落語を聞いたときに、終わり方がすごく難しいなと思っていたら、(タイトルに)“恋”という字が入っていたので、その方向も入るんだ、と思いました。あと、七之助さんが僕に対してすごく献身的に働いてくれる役なので、そこが本当に嬉しいです。辰五郎という人間は、駄目人間でお酒も好き、という普段の僕とはかけ離れているので、そこをどうやって出していくのかなと思っています。

中村鶴松
歌舞伎町での歌舞伎公演にお兄さんたち、そして虎之介さんとご一緒できることを嬉しく思います。まずは歌舞伎舞踊が2本あるので、新作歌舞伎に繋がるように、トップバッターとして虎之介さんと共に若い力で盛り上げていきたいと思います。歌舞伎町という土地にはあまりいい思い出がないので10年ぐらい近寄らないようにしていましたが、久しぶりに歌舞伎町に行っていろいろ楽しめたらと思います。

──歌舞伎町で何があったのか。
大学生のときに親友と2人で、一見普通の居酒屋に飲みに行ったら、お会計で20万ぐらいを要求されて、払えなくてどうしようもなくて逃げるしかなくて。でも店の外まで追いかけてきて、他の店のキャッチの人が助けてくれたけど、服をビリビリに破かれて半分裸の状態のままタクシーに乗って帰りました。そこで初めて「大人の世界って厳しいんだな」と思いました。

──演じる場所によって違うことなど、なにかエピソードがあれば。
巡業などで各地を回ると、土地によってお客様の反応が全く違っていることを感じます。スペインで「連獅子」をお兄さん(勘九郎)と踊らせていただいたときは、もちろん踊りを見てはいるのですが、歌や音とか、見方はそれぞれ国や地域ごとによって違うのだなと思い、勉強になります。

【公演情報】
中村勘九郎×中村七之助『歌舞伎町大歌舞伎』
出演: 中村勘九郎、中村七之助 他
●2024/5/3~26◎THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
〈料金〉1等席 13,500円 2等席8,000円 3等席 4,000円(全席指定・税込)
〈一般発売日〉 2024年3月24日(日)10:00~
〈公式サイト〉
松竹HP https://www.shochiku.co.jp
BunkamuraHP https://www.bunkamura.co.jp

【取材・文/久田絢子 写真提供(C)松竹】

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