【粟根まことの「未確認ヒコー舞台：UFB」】第157回「情宣」

2024-07-03

　いよいよ7月7日から劇団☆新感線の「バサラオ」が始まります。なにしろ劇団史上最多の97ステージですから先が思いやられますが、まずは博多座から幕が上がります。暑い夏の盛りですので、最後まで気をつけて行きたいと思います。

　さて、それほどまでにステージ数がありますので、当然ながら合計客席数も凄いコトになっております。もちろんできるだけ多くの方々に劇場にお越し頂きたいので、宣伝にも力が入ります。チラシやポスターだけでなく、街頭ディスプレイで動画を流したりもしてね。
　そして、お気づきでしょうか。最近、テレビやラジオ、雑誌やWebのインタビューなどで「バサラオ」出演者たちの露出が増えていることに。そうなんです。例えばテレビのバラエティ番組などにゲストとして出演し、ついでに「バサラオ」の告知などをさせて頂いたりしているケースが目立ったんじゃないでしょうか。
　こういった活動を「情宣（じょうせん）」といいまして、こちらが今回ご紹介したい専門用語なのです。ちなみに「情宣」のイントネーションは「↑じょ↓うせん」でして、「じょ」が上がって「うせん」が下がります。伝わりにくいとは思いますが。

　情宣というのは情報宣伝の略でして、要するに公演の宣伝・告知ですね。広くはチラシ・ポスター撮影やその配布、主催からのプレスリリースなども含めますが、主には作・演出家や出演者による雑誌などのインタビューやテレビ出演のコトを指します。
　稽古途中や稽古休みの日に「ちょっと情宣に行ってきます」とか「情宣がんばって」とか声を掛け合いながらメインキャストが出掛けていったりするのです。それが情宣です。ご面倒をお掛け致します。

　先ほども書きましたとおり、情宣で一番目立つのはテレビ出演でしょう。バラエティ番組に出て街ブラロケの動画を見たり、ちょっとしたクイズやチャレンジ企画に挑戦したりして番組を盛り上げた後、「ゲストの○○さんから大切なお知らせがあります」とか促されて公演情報を読み上げたり宣伝動画が流れたりするワケです。
　中には一本まるごとがまるで宣伝番組のようになっている場合もあります。昨秋の「天號星」では、フジテレビさんの「ボクらの時代」で早乙女太一さん、早乙女友貴さん、古田新太くんの鼎談がオンエアされました。IHIステージアラウンド東京で「髑髏城の七人」連続公演を行った時にもフジテレビさんの「VS嵐」では出演者たちがチームを組んで嵐チームと競ったりして、私も出演させて頂いたりしてね。ゲームの内容もちょっと舞台を意識したモノだったりしましてね、大変有り難かった記憶があります。フジテレビさんありがとうございます。
　今回の「バサラオ」では主にゲストの皆さん（と古田新太くん）に情宣は任せっきりです。その内のいくつかは拝見させて頂きましたが、稽古に忙しい中でご苦労をお掛けしまして劇団員としては頭が上がりません。ありがとうございます。

　さて、ここまで書いておいて何なのですが、実を言いますとこういったテレビでの情宣によって爆発的に動員が伸びるというコトはあまりありません。ないのかよ！　いや、もちろん宣伝効果は莫大にあるのですが、それによってビックリするくらいチケットが売れて売れて困るという程ではないという意味です。
　なぜならば早めにチケットをお買い上げ頂く皆様には、このような情宣がなくても情報が既にリーチしているからです。つまり、この公演のことを全く知らなかった視聴者の方が「お、こんな公演があるなんて知らなかったな。じゃあ、ちょっとチケット取ってみようかな」と動いて頂くというワケにはなかなか行かないモノなのです。
　では、なぜこのようなテレビ番組での情宣をしているのかと言いますと「劇団☆新感線という団体が、こんな出演者で、こんな作品を、こんな規模で、しょっちゅう公演を行っている」という実績を積み上げていくことが大事なのだと思います。いや、もちろん宣伝効果もあるのですよ。あるのですけれども、それに加えて《元気に活動を続けていますよ》というアピールというか意思表示も重要なことなのです。

　公演が大事、稽古も大事。でも情宣も大事なんだよという話なのです。様々な努力が縒りあう糸のように収束して公演を成功へと導いていくモノなのです。
　さあ、新感線が久しぶりにお送りする、強烈な人たちばかりが登場するダーク時代劇「バサラオ」。裏切りと寝返りが錯綜しながらも、派手な歌と踊りで煌びやかに彩られた今作は成功するのでしょうか。ぜひ劇場でお確かめ下さい。という情宣と共にしめやかに終わりたいと思います。