【みょんふぁの気になるわぁ〜】第18回 〜ふるいもの〜

「これ、買い替えたら? もう、くたくたやん」
洗面所に敷いてあるマットを見て、私が母に言った。

母はどちらかと言うと新しくスタイリッシュなものを好むタイプで、
私が襟元の伸びたTシャツなどを着ていると、その場で脱がされるぐらいである。

そんな母が、くたびれはてたマットをまだ使っている。

改めて部屋を見回すと、前に住んでいた大阪の家から使っていた“古いもの”がたくさんある。
もう動かない置き時計、木目が剥がれた裁縫箱……。

「あれ、この時計、動いてないやん。裁縫箱もいつまで使ってるん、もうボロボロやんか。全部捨てて、ネットで新しいの買い替えよう」と私。
「ん?そうやな〜、うん、そうしよか。」
私がパソコンを開くと、母が嬉しそうに隣に座って覗き込む。

「これええなぁ」
「いや、こっちがいいかな」
「あ、これは?」などと一緒にネットサーフィンを楽しでいると、母が突然テレビをつけた。
大好きな『怪傑えみちゃんねる』の時間だ。
マット探しはそっちのけで、テレビの中の上沼恵美子さんに話しかけながらゲラゲラ笑っている。

こらこら、誰のために探してると思ってんの?!
ちょっとイラつきながら、仕方なく一人で探す私。

 「……しゃあけど、あれやな。昔、おばあちゃんの家行ったら、古いものがようさんあったやんか。あれ、早く捨てたらいいのにと思ってたけど、今頃なったらようわかるわ。
若い時って、新しいものを見て楽しむけど、歳とったら、“古いもの”にくっついてる思い出を楽しむんやわ、きっと。……なんか久しぶりに大阪行きたいなぁ」

てっきり上沼恵美子さんに話しかけていると思っていた母の口からこんな言葉が聞こえてきた。

現在、私の両親は、弟家族とともに茅ヶ崎に住んでいる。
人生のほとんどを過ごした大阪を離れ、新しい土地に行くのは嫌がるのではと心配したが、瞬く間に友達をつくり、孫たちに囲まれ、元気いっぱいである。
その、順応力、というよりも生命力に感心していた。

そんな母の口から出た「ふるいもの」への想いに
私は静かにパソコンを閉じた。

最近、年齢と共にできないことが増え、生活に制限が出てくる両親を横で見ながら、
生きることと生かされることについて考えることが多くなった。

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<出演情報>
映画『渇愛の果て、』
8月2日〜 シモキタエキマエシネマK2

<みょんみょんの韓国語教室>
女優みょんふぁと一緒に遊びながら韓国語をマスター
진짜 좋아요!(チンチャ チョアヨ)めっちゃ素敵!

著者プロフィール

みょんふぁ
女優やナレーション・司会業を中心に、日韓の通訳翻訳や戯曲の紹介など公演のプロデュースも行う。
在外研修で韓国国立劇団に留学、韓国デビューし、小田島雄志翻訳戯曲賞受賞。
現在、日韓演劇交流センター副会長。
映画・舞台・ドラマなど多数出演。昨今は日韓合同制作作品にも多数出演。
日韓交流の拡大化のために母体となるSORIFAを設立し、代表を務める。

●Youtubeチャンネル みょんふぁ(SORIFA)チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCI2ITpnZzwAlruYJ6eVCNwA

●HP〜花笑み時間〜
https://myonpappa.amebaownd.com/

●ブログ〜遊びをせんとや生まれけむ〜
https://ameblo.jp/myonpappa

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