堂本光一『Endless SHOCK』ラストの大阪公演となる梅田芸術劇場公演開幕!

2000年のミレニアムに初演され、2024年5月18日の帝国劇場公演で、国内演劇における代役なし単独主演記録1位を塗り替える2018回を達成した、堂本光一作・構成・演出・主演による唯一無二のエンターティメント『Endless SHOCK』が、大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演中だ(8月18日まで)。

『Endless SHOCK』は堂本光一が実に約四半世紀の時をかけて演じ続けてきたオリジナルミュージカル。初演以来のホームとなっている帝国劇場が有する世界的スケールの舞台機構である広大な舞台面、瞬時にセットを転換する大ぜり、盆などを駆使し、歌、ダンス、アクション、パーカッション、殺陣、階段落ち、マジック、そしてフライングなど、あらゆるエンターティメントを詰め込んで、舞台に人生の全てを懸ける人々の姿が描かれていく。そのスケールの大きさから国内で上演できる劇場は限られ、帝国劇場のほかにはこの大阪・梅田芸術劇場メインホール、福岡・博多座のみだ。

そんな『Endless SHOCK』を2024年でラストにする、という堂本光一本人による衝撃の発表のあと行われた4月~5月の帝国劇場公演で、コロナ禍から生まれた『Endless SHOCK』の後日譚であるスピンオフ作品『Endless SHOCK─Eternal─』の上演が惜しまれつつ最終上演を迎え、5年ぶりとなるこの梅田芸術劇場公演では、『Endless SHOCK』本編のみでの公演が繰り広げられている。

【STORY】

ニューヨーク・ブロードウェイ。繁栄と衰退を繰り返すショービジネスの中心地。

その中で揉まれながらも常に頂点を目指し続ける若きエンターティナー、コウイチ(堂本光一)が率いるカンパニーは、オーナー(島田歌穂)の経営するオフブロードウェイの小劇場で、大盛況の評判を呼ぶショーを創り続けていた。

そんなある日、コウイチのショーを絶賛する新聞記事が掲載され、コウイチの元にオン・ブロードウェイの大劇場からのオファーが届く。

いよいよショービジネスの頂点に立てると喜びを爆発させるカンパニーの面々。コウイチと幼馴染で、ショーのなかではコウイチに次ぐポジションを任されているユウマ(中山優馬)も、新たな舞台へのあふれんばかりの夢を描く。だが、カンパニーの一員でありオーナーの娘でもあるリカ(綺咲愛里)をはじめ、誰もがコウイチと共に舞台を創ることを願い団結してきたカンパニーにとって、オン・ブロードウェイへの進出は、次第に個々の考え方の違いを露わにし、亀裂を生じさせていく。それでも幕を開けた舞台は何があろうと止めてはならない、“Show Must Go On!”というコウイチの強い信念は、オン・ブロードウェイのショーでも貫かれていくが……

『Endless SHOCK』がEndlessでなくなる、という発表以来のショックは未だに続いている。こうして梅田芸術劇場メインホールで5年ぶりとなる本編上演が華麗にスタートしているのを観るにつけ、大阪ラスト上演という言葉を聞くにつけ、その寂しさは募っていく。というのも『Endless SHOCK』がここにしかないエンターティメントの輝きを、四半世紀になんなんとする間日増しに積み上げ続けてきたからだ。『Endless SHOCK』と言えば、殺陣や大太鼓などの和テイストを巧みに入れたショーアップ場面や、フライング、階段落ちなど華やかなケレン味を持ち合わせた部分をまず思い浮かべる方が多いだろう。だが、作品がこれだけの間愛され続けてきたのは、舞台を目指す人々の情熱、葛藤、愛など、揺れ動いく心の機微が、前述した華麗なショー場面のなかに組み込まれ、自然に落とし込まれているStoryの良さがあってこそだ。それもまた2005年からは脚本・演出も担ってきた堂本光一本人が、ひたすらに作品のブラッシュアップを重ねてきた成果に他ならない。最早『Endless SHOCK』というひとつのジャンルだとさえ思える舞台の煌めきには比類のないものがある。

それを梅田芸術劇場の帝国劇場よりも更に天井が高く、三階席も有する劇場空間いっぱいに、翼を持っているとしか思えないほど華麗なフライングで飛翔し続けるコウイチ=堂本光一の姿が証明している。カンパニーを率いてオーナーの元でショーを創るコウイチは、シェイクスピア作品にも取り組みたいと考える演劇に対する真っ直ぐな思いと、オン・ブロードウェイからのオファーで自分たちが劇場を去ってしまえば、この小劇場はどうなるのか?と恩あるオーナーへの気遣いも忘れない誰よりも周りが見えている青年だ。その彼が“Show Must Go On!という信念を貫こうとするあまりに、判断を狂わせていく。謂わば思いの強さ故の掛け違いを、堂本光一が更に胸迫る演技で表現していることで、Storyの良さが倍加して感じられた。俳優としての堂本光一の進化が、コウイチの進化に直結しているのが美しい。

また、この大阪公演ではコウイチの幼馴染で“ライバル役”と称される役どころに大阪出身の中山優馬が登場。『Endless SHOCK』には前回大阪での本編上演以来となる5年ぶりの参加だが、この期間に俳優として中山が培ってきたものが舞台に噴出していて、目を瞠るほどの成長を遂げている。コウイチとずっと共に在って、信頼も友情も持っていつつ、常に越えられない壁である彼に対しての複雑な感情が膨らんでいく、という難しい役柄でもあるが、中山が演じるユウマは、本来の明るい性格が、嫉妬や焦り、自負心によって歪んでいく過程が鮮明で、中でもストーリーと見事にリンクしていくシェイクスピアの演技が素晴らしい。いつかこの人で『リチャード三世』を観たいな、と思わせたほどで、堂本と共に大阪公演を盛り上げる力が絶大だった。

コウイチに想いを寄せ、ユウマに想いを寄せられるオーナーの娘のリカ役には綺咲愛里が扮した。2022年公演以来の登板だが、可憐な容姿のなかに芯の強さを併せ持つ綺咲本来の持ち味が、コウイチへの想いと、だからこそ誰もが言えずにいた真実を告げる強さを必要とするリカ役にベストマッチ。あらゆるダンスだけでなく、日本舞踊の素養も必要になる役どころに、元宝塚トップ娘役として蓄えた力が生きていて、コウイチとユウマのダンスパートナーとしても魅了した。

また『SHOCK』ラストイヤーということで、今年の『Endless SHOCK』は各地の上演で異なるキャストが組まれているが、この大阪公演には林翔太、室龍太、高田翔、原嘉孝が参加。それぞれ舞台で主演も務めている面々だけに、台詞発声が非常に良く、カンパニーの一員としての様々な芝居を全ての公演に出演する松尾龍、尾崎龍星と共に盛り上げていて、見応えがあった。

そして、この大阪公演でオーナー役を務める島田歌穂が、狂言回しも兼ねる役柄を、作品のなかで演じている時、客席に語りかける時のメリハリもくっきりと表出している。2022年公演からの参加だが、自身もかつて舞台に立っていて、いまは劇場主としてコウイチたちカンパニーを後押ししている、という設定に説得力のある華と情を持ち合わせた演技を披露。コウイチに最も大切なことを伝え続ける役柄でもあり、オーナー役の出演はこの梅田芸術劇場がラストとなるスケジュールになっているが、まだまだ観ていたいと思わせる得難い存在だった。

もちろんダンサーや、アクロバット、更にリズム隊も大活躍。最終通し稽古には堂本の出身中学の後輩たちも招待されていたそうで、舞台で輝く大先輩の勇姿は、長く心に残り続けるに違いない。ここから舞台芸術を目指す、また客席に集う舞台を愛する人たちが生まれ出てくれることにも期待を抱かせる、酷暑の2024年夏を越える更に熱い思い出を残すだろうと確信できる舞台だった。

初日を翌日に控えた7月25日、最終通し舞台稽古を終えた堂本光一と中山優馬が初日前会見に臨み、公演への抱負を語ってくれた。

【初日前会見】

その中で、大阪での『Endless SHOCK』本編上演が5年ぶりと聞いた堂本は「うわ~マジか?」と驚いた様子。更にその5年前にライバル役を演じていたのが中山優馬だと聞かされて「その記憶ないんだよね」と意外な発言。「えっ?ないってどういうこと?ないわけないでしょう。僕この地で5年前にやってたんですよ」と答える中山のライバル役の成長について「ちょっとびっくりしましたね。前回やっていた時には優馬との年齢差みたいなものが自分のなかにあって、それにどう寄り添っていこうかな?ということを結構考えながらやっていたのですが、今回そういうことを全く考えなくてもライバルとして存在しているし、一つひとつの台詞にも説得力があって、歌の安定感も素晴らしいのをすごく感じました。年齢的にも一番動ける年齢ですからね、ずるいですね」と笑わせ「本当に違っていて新鮮でした。初めてのライバル役のヤツと一緒にやっている感覚です」と、何故5年前の中山のライバル役の記憶がない、と言ったのかの絶妙なアンサーを届けてくれた。

それに対して中山も「舞台に一緒に立つ相手役として認められたのかなと」喜びを隠さず、この公演の為に「三ヶ月前から身体を作ってきたので。明日の初日のジャパネスクではコウイチに勝とうと思っています(笑)」とウィットに富んだ言葉を継いだ。

また「大阪に来た時の楽しみは?」という問いに堂本は「東京の公演だとどうしても自分の家に一度帰るじゃないですか。そうすると感覚としてリセットされてしまうのですが、大阪や博多の公演だとリセットされない感じが好きなんです。過去には福田辰巳というヤツがね、俺が外で飯食って帰ってきたら「おぉ、コウイチ帰ってきたぞ!」ってもうずっと役のままなんです(笑)。それくらいリセットされないその感じが、ずっとこの舞台上のカンパニーでいられるのが好きですね。もちろんそれが嫌いという役者の方もいらっしゃるんですけど」と話し中山に「どう?」と振ると「僕リセットできてます。ホテル生活大好きなんで!」との答えが飛び出し、堂本も「あぁちょっとワクワクするよね。部屋に帰ったら毎回シーツピシッとなっていて」とホテルならではの良さを話ながら「だからまぁ全てに支えられているよね」と、環境整備にも感謝の言葉を忘れなかった。更に中山が絡んだ稽古場でのエピソードとして「面白かったのは帝劇の時のライバル役が勝利で、勝利がスケジュール的になかなか稽古に参加できなくて、優馬が勝利の代わりをやってくれていたんですね。だから優馬に向かって『ショウリ!』って言ってたんですよ(笑)なんだか訳わからなくなる稽古場で。だけど今回は『ユウマ』ですから、自信を持って『ユウマ』と言えます。ただ優馬がいる分には『ユウマ』になるんだけど、優馬がいない時にあいつがどうのこうのと話す時に『ショウリ』って言っちゃう」と、自身の名前が役名になる『Endless SHOCK 』だからこその苦労話を披露。中山が「昨日それ出ましたよね」と笑うと「すみません、昨日だからいいんです」と返して、和やかな笑いが広がった。

「『SHOCK』通の方に向けての見どころを」との問いには堂本が「俺よりそういう方が『SHOCK』をよく知っているんじゃないですかね。だって俺、表で、客席で『SHOCK』を観たことがないですから」と確かに!というコメントのあと「でも梅芸でやらせてもらうことが久々だと言うこともありますし、かつ2024年でラストと考えておりますので、この劇場独特の匂い、空気を感じていただきたいです。劇場によって作品って化けますし、通の方は色々な劇場で観ていらっしゃると思うので、それを感じられるでしょうから。梅芸だけの『SHOCK』を目に焼きつけて、身体で感じて、空気を吸って欲しいと思います」と、梅田芸術劇場公演ならではの見どころに話しは発展。中山からも堂本のフライングの帝国劇場との違いが挙げられ、それに応えて堂本が「梅芸の方が帝劇より天井が高いんです。そういった意味では旋回が梅芸の方が大きいかと思います」と語り、中山から「着地のキャッチングもね、通の方はご存じだと思いますが、今までは鉄壁のふぉ~ゆ~がいましたけど、今回は高田翔で」という新たな役割りについて触れられ、昨日はちょっとうまくいかなかったと話しながら堂本が「今はもう完璧で全然自分も心配していなくて、今日も安心して着地することができました。やっぱり配役が替わると背景、ストーリーの中のバックボーンも変わっていきますから。まぁ松崎祐介ってヤツは『お前、役のバックボーンって考えたことあるか?』と訊いたら『背骨ですか?』って」との、なんとも松崎らしい受け答えが返ってきたことを話しながら「その愛すべき松崎が今回はいないのでね(笑)そういうところも楽しんでください」と、やはり大阪公演の特色が語られた。

更に「座長としての心構えは?」と問われ「偉そうに言えることは何もないですね。『SHOCK』をやるにあたっては、本当に『SHOCK』を理解したスタッフの皆さんと、役者の皆さんと一緒にやらせていただいていて、皆さんを信頼して舞台に立つことができているんです。そういう意味では人を信頼することだと思います。それが一番自分のエネルギーになっていて」と謙虚に語りつつ劇中のあるシーンでキレるユウマの芝居を模して「それはやっぱりユウマのようにね『どうなってんだよ!』って言うこともありますし、時にはキレていることもあるかもしれない」とマイムを含めて話したのに対して、中山から「見たことはないですけど」と柔らかな否定が入るひと幕も。「本当に大事なのは皆さんに感謝して、信頼することが全てかなと思います」との、堂本の座長としての真摯な在り方が伝わってきた。

大阪公演の稽古にあたっては、演出席から通し稽古を見て「これは大丈夫だ」と確信を持って大阪にやってきたと語った堂本は最後に「2024年『SHOCK』を梅田芸術劇場でやらせていただくのは最後、という形になります。先ほど最終通し稽古をやった時に『自信を持ってお客様にお見せできる状態にあるな』という良い意味での自信を稽古で感じることができたので、いまは明日の初日を開けるのがとても楽しみな状態になっているので、是非お客様には客席で楽しんでいただきたいなと思っております」と挨拶。本番への期待を高めていた。

【公演情報】

『Endless SHOCK』大阪公演

作・構成・演出・主演:堂本光一

出演:中山優馬

林翔太 室龍太 高田翔 原嘉孝 松尾龍 尾崎龍星

綺咲愛里

島田歌穂 ほか

●7/26~8/18◎梅田芸術劇場メインホール

〈公式サイト〉https://www.umegei.com/schedule/1184/

【取材・文・撮影/橘涼香】

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