【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第158回「アクションとダンス」

 7月7日から始まった劇団☆新感線「バサラオ」福岡公演も間もなく千秋楽。ですか? もう終わりましたか? まだですか? ええと、無事に進んでいればそろそろ終わるはずです。とはいえ、この後東京・大阪と続きますので、まだまだ気を緩めることはできません。気をつけて行きましょう。

 さて、そんな「バサラオ」ですが、南北朝っぽい時代をモチーフとした戦乱の世を舞台としておりますので、そりゃもう殺陣が多いのです。しかも一対一だけじゃなくて、軍勢同士が闘う戦争シーンも多いのです。
 とはいえ、ただただ闘っているだけの話ではありません。ミュージカルなんじゃないかと思うほどに歌い、ショーなんじゃないと思うくらいに踊ります。
 つまり、殺陣も歌もダンスもたっぷりあります。それじゃ、いつもの新感線じゃないかとお思いでしょうが、確かにそうなのですが、これがまたいつもより殺陣と歌とダンスが多いのですよ。増量です。特盛りです。いっぱいいっぱいです。
 新感線では通常、アクションが8人、ダンサーが男女取り混ぜて8人をアンサンブルとして参加して頂いております。しかし、今回はアクションは8人ですが、ダンサーが13人もいるのです。それほどまでにダンスや群衆、乱闘シーンが多いというワケなのです。

 殺陣とダンスシーンが多く、しかも乱闘や群舞シーンも多いとなれば、アクションマンが殺陣をダンサーがダンスをするだけでは足りません。アクションマンがダンスを踊り、ダンサーがアクションをする必要があります。まあ、それもいつもの新感線ではあるのですが、今回はとにかく特盛りですので、そういった混在シーンが多いというワケなのです。

 さて、ここで問題となるのがアクションとダンスの関係です。アクションマンもダンサーも、どちらも身体を使う職業です。身体を鍛え上げ、各部の筋肉を駆使し、身体表現をするのが得意な人々です。となれば、アクションマンがダンスをするのも、ダンサーが殺陣をするのも、最初こそ戸惑いや不慣れがありこそすれ、すぐに上手くなると思うじゃないですか。素人考えでそう思ってしまうじゃないですか。
 ところがそう簡単にはいかないというのが今回のお話です。

 いや、もちろん流石に身体を使う職業だけあって、それなりにはできているのです。ただ、やっぱりどこか違う。どうやらアクションとダンスでは身体の使い方が根本的に違うため、動きの癖が出てしまうようなのです。
 例えば首の動き。ターンしながら前に出る様な動きの時、アクションでは標的を確認するために身体が回転するよりも先に首が回ります。しかし、ダンスでは首を残して回転し身体が先に回ります。
 また、アクションでは重心をあまり上下させず、少し腰を落としたまま水平に移動しますが、ダンスでは重心を上下させながらダイナミックに動く場合が多いのです。
 他にも色々あるのですが、ことほど左様にアクションとダンスでは基本的な動きが違うので、どうしてもそれぞれの癖が出てしまうようなのです。もちろん、アクションもダンスもどちらも同様に巧い人もいますが、一般的には普段の身体の使い方の癖が出てしまいがちだというコトなのです。

 そりゃそうだよねえ。どちらも身体表現のプロだとは言っても基本が違うのだから動きも違ってくるのは当然です。しかし、どちらも違う基本を克服して対応して頂いているのはさすがです。身体の基礎があるからこそできる技なのです。
 もちろん我々俳優部、劇団員たちも修練しながら殺陣やダンスをさせて頂いておりますが、やはり身体表現が得意なアクションマンやダンサーにはまだまだ及びません。これからも修行しながら頑張っていきたいと思います。

 そんな乱闘や群舞が満載の「バサラオ」。この後、華やかな博多座の空気を纏ったまま東京と大阪に参りますので、どうぞお楽しみに!

博多座さんは今年で25周年。見やすくて演じやすくて気配りの行き届いた素晴らしい劇場なのです。

プロフィール

粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

【出演予定】
劇団☆新感線「バサラオ」
7/7(日)〜8/2(金)博多座、その後大阪東京公演あり
http://www.vi-shinkansen.co.jp/basarao/

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