出会いを大切に表現の幅を広げていきたい! 有馬爽人インタビュー
多岐に渡る作品が百花繚乱のミュージカル界で、次世代のセンターを担っていくだろう輝ける新星を紹介する、えんぶ連載コーナー、「橘涼香のミュージカルニューエイジ」。
第8回のゲストは有馬爽人。2021年歌手としてのソロデビューと同時に初舞台を踏み、23年には若手ミュージカル俳優の登竜門的作品『春のめざめ』でW主演を果たして注目を集めた。
そんな有馬に9月22日に幕を開けるブロードウェイミュージカル『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』(以下、『イン・ザ・ハイツ』)への意気込みと、ミュージカルに感じる魅力を聞いた、本誌インタビューをご紹介する。
作品との距離を近く感じる
──まず作品をご覧になっていかがでしたか?
自分がこの世界を創り上げる一員として舞台に立てるのか、という嬉しさがまずありましたし、今回共演させていただくキャスト全員の方と「はじめまして」なので、皆さんのことを少しでも知ろうと色々な資料や映像を拝見したんです。そこで、前作とは違った今回のカンパニーでしかできない、新たな『イン・ザ・ハイツ』が出来上がるんじゃないかと、また違ったワクワクでいっぱいになりました。
──カンパニーの皆さん、全員と初共演というのもなかなかないことですよね。
だから最初は大丈夫かなと、少しおどおどしてしまったりもしたのですが、今回僕が演じさせていただくソニー役は、皆さんから見ると弟的存在なのもあって、皆さんがすごく優しく、気さくに接して下さったので、いまはもう既にふざけあっています(笑)。
──それはステキですね! そんな作品のお稽古に入られて、改めて作品の魅力をどう感じますか?
『イン・ザ・ハイツ』は、マンハッタンのワシントンハイツで暮らす人たち一人ひとりが持つ夢や希望をすごく大事に描いていて、グルーヴ感を含めてとてもフランクで自由なんです。ブロードウェイ作品ですが、作品との距離がとても近いと感じます。だからこそ、演じるソニーの意志や想いを大事に持っていきたいです。
──音楽のエネルギーがすごいので、物語の流れのなかでは少し悲しい場面もあるのに、拝見していてもすごく高揚します。
そうなんですよ。しかも全員のキャラクターがしっかり書き込まれていて、僕も初めて台本を読ませていただいた時にソニーだけではなく、一人ひとりに対して気持ちが入り込んでいきましたし、何度読んでも様々な発見があります。いったんソニーの視点を離れて、ウスナビやベニーの視点で読んでみると、彼らからはソニーがどう見えているのか?も考えることができて、これはお客様にも是非何度も観ていただきたい作品だと思いました。
──そのソニー役についてはどう感じていますか?
ソニーは作中一番若い設定で、従兄のウスナビの店を手伝っていますが、町の人たちがまるで家族のように可愛がってくれるからこそ、皆にずっと傍にいて欲しいという気持ちが強いんですよね。だからウスナビの行動に感情を揺さぶられたりもするんです。それでもやっぱりソニーは若いので、同年代のピートもいて本当に今を楽しんでいるし、作品全体のキーワードである「夢」に対して、一番熱い想いを持っているんじゃないかなと思うので、好奇心いっぱいに演じたいです。たくさんの方とコミュニケーションをとる役で、ウスナビ、ベニー、ニーナ、ヴァネッサ、ピート、それぞれに対して話し方も感情の表し方も全く違いますから今後さらに稽古を積み重ねて、どんなソニーが生まれるのかを、自分でも楽しみにしています。
ミュージカルって奥深い
──ソニー役への並々ならぬ想いが伝わりますが、有馬さんご自身のお話も伺わせてください。まずこの世界を目指されたきっかけは?
僕はサッカーに6年間打ち込んでいて、サッカーで生きていけるようになりたい、と思っていたんです。でも母と一緒にEXILEさんのLIVEを拝見した時に、僕もこのステージに立ちたい!という気持ちが湧き上がってきて。元々洋楽が大好きでマイケル・ジャクソンさんに憧れたりもしていたことが重なって、どうしてもこの業界に入りたい、と親に話しました。親はもちろん周りから猛反対されたんですけど、それでも自分のやりたい気持ちは変わらなくて。やるからには絶対に夢を叶えるからと、親を説得した時に親から「サッカーの夢を叶えて欲しかったけれど、どうしてもその世界に行きたいなら、今度こそ夢を叶えてね」と言われたんです。その言葉は今でもずっと刺さっていて、どんなにくじけそうになっても、それだけは絶対に忘れずに夢を叶えて、恩返しをしようと思っています。この業界に入ってからも最初は歌をやっていたのですが、ご縁があって生演奏の舞台演劇を初めて経験させていただいた時に、すごく視野が広がったんです。だからどんなことにもチャレンジしていこう、という気持ちでミュージカルにも挑ませていただいています。経験を積むほど自分のなかに引き出しが出来ていって、表現の幅も広がるので、一つひとつの出会いを大切に進んでいきたいです。
──そのなかで、今回が二作品目のミュージカルへの挑戦ですが、ミュージカルの魅力をいまの時点でどう感じていますか?
観客として楽しんで拝見していた時よりも、ミュージカルってすごく繊細に作られているんですね。音楽のカウントと立ち位置の関係とか、とても細かい演出があって。でもそれがあるからこそ作品として素晴らしいものが出来上がるし、何よりも音楽によって、ストーリーや情景、役柄の感情がハッキリ見えてくるんです。歌は感情が大事ですが、それだけでは完成されなくて、キーやピッチを安定させてまっすぐ歌う方がむしろ感情が乗って伝わりやすくなったりもするんだ、ということを今回学んでいるので、奥深いなと。特に初めてラップという表現にも出会えて、すごく面白い、いいなと思っているのでそこもどんどん突き詰めて、夢は大きくいつか世界に出ていけるようになりたいと思っています。
──素晴らしいですね! では有馬さんのこれからの歩みに期待しながら、まずはこの『イン・ザ・ハイツ』を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。
さっきもお話ししましたが、様々なキャラクターが生きている作品で、誰の視点で観るかによって見え方がまるで変わってくる楽しさがあります。ですから何度観ていただいても楽しめますので、是非音楽のグルーヴを感じながら何度でも劇場にいらして下さい! お待ちしています。
【プロフィール】
ありまさやと〇愛知県出身。2019年からSNSを活用しアーティスト活動を開始。21年にはソロアーティストとしてデジタルリリースを果たし歌手デビュー。俳優としても同年、舞台『ギヴン』(主演、佐藤真冬役)でデビュー。その後22年、舞台『薔薇王の葬列』(W主演、リチャード役)や23年ミュージカル『春のめざめ』(W主演、メルヒオール役)などに出演。2025年5月には舞台『ギヴン 海へ』(佐藤真冬役)に出演予定。
【公演情報】
ブロードウェイミュージカル
『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』
原案・作詞・作曲◇リン=マニュエル・ミランダ
脚本◇キアラ・アレグリア・ウデス
演出・振付◇TETSUHARU
翻訳・訳詞◇吉川徹
歌詞◇KREVA
音楽監督◇岩崎廉
出演◇Micro[Def Tech]/平間壮一(Wキャスト)
松下優也 sara 豊原江理佳 有馬爽人 エリアンナ ダンドイ舞莉花
MARU KAITA 戸井勝海 彩吹真央 田中利花 ほか
●9/22~10/6◎天王洲 銀河劇場 京都・名古屋・神奈川公演あり
〈お問い合わせ〉公演事務局 information2@pia.co.jp
〈公式サイト〉https://intheheights.jp/
【文/橘涼香 撮影/山﨑伸康 ヘアメイク/望月光(ONTASTE) スタイリスト/金田健志】