詩森ろば作・演出、内田慈主演『Yes Means Yes』上演中!
詩森ろば作・演出、主演は内田慈のserial number12『Yes Means Yes』が1月10日に開幕、20日まで下北沢ザ・スズナリで上演中だ。その舞台写真が届いた。
スウェーデンで2018年に施行された「Yes Means Yes法」。これは「性的合意」のない性行為を禁じた世界初の法律である。しかし日本では、レイプなど悪質な性加害においてさえ、被害者側が泣き寝入りせざるえない現状がある。Yesと言えば奔放と言われ、Noと言うための教育も受けていない。
この作品は、そんな過酷な日本の女性の状況を解像度高く描きながら、ひとりの女性が、自分にとって望ましい性のあり方を模索する姿を通じ、「Yes Means Yes」の真の意味を問いかける。
この女性を舞台・映像で活躍中の内田慈が演じ、それ以外のすべての役を男性キャストが演じることで、女性の孤独を浮き彫りにすると同時に、仄かな可能性を提示する作品となっている。
《ものがたり》
楠見佳恵は結婚5年目。DINKSで子供はいない。
佳恵は大学生の頃に性によって傷ついた体験をもっており、それがその後の人生も深く阻害している。夫ともその点であまりうまくいっていない。
ある時期からできるかぎり避けていたがある夜、業を煮やした夫によって、不本意な性交渉を持つことになり、精神的に追い詰められる。
物語は、佳恵のここまでの人生を語るモノローグを縦軸として、男たちとの記憶のドラマ、現在の夫との生活、精神科でのカウンセリング、弁護士との面談、女友達にも理解してもらえない状況など追い詰められていく佳恵の心を丁寧に追う。
【コメント】
作・演出:詩森ろば
『Yes Means Yes』は、今、このタイミングでなければ存在しなかった作品です。
それは内田慈さんありきの企画だったからというのももちろん大きいです。内田さんのために作品を書きたいということを前提でスケジュールをお聞きしました。それが一昨年の夏で、どんな企画にしようと逡巡し、この作品の構想が浮かび、「性的同意」をテーマにした、演じるうえで気持ち的にも分量的にも大変な作品になるけれどもどうでしょう、と企画をお伝えしたところ、やります、という言葉とともに「それはもしかしてひとり芝居ですか?」と聞いてくれました。ひとり芝居でもやってもらえるんだ、と思い、限りなくひとり芝居に近いものになると思います、と答えました。そして、わたしは考え続け、ただのモノローグドラマではなくダイヤローグもしっかりと組み込んだ構想を考えつきました。そこからも紆余曲折あり、このストーリー、このスタイルの作品に辿り着いたのです。
4人の男性キャストはオーディションで選ばれました。
まるでこの作品のために待っていてくれていたかのような4人でした。
作品を書き上げて稽古に入る前も、稽古場でも、内田さんはじめとした5人で親密に作品作りをしました。テキストは何度も修正されながら、磨かれていき、演出はどんどんシンプルになっていきました。膨大なモノローグを抱える内田さんは稽古場でもずっと戯曲に集中していましたし、わたしたちも集中して、ただただ作品作りをしていました。ある意味ビジネスライク。なのにほんとうに親密で、あの12月の稽古場は、いつも、世界にわたしたちしかいないのではないかという特別な空間でした。一生忘れないと思います。
この作品にはとても厳しい性被害のシーンが出てきます。インティマシーコーディネーターの西山ももこさんに入っていただき、繊細にシーン作りをしたつもりですが、それでも俳優たちは心も身体もたくさん削ったと思います。通し稽古を一回したらもうその日はおしまい、なにもできない。通しが終わり舞台装置となったソファに呆然と座り虚空を見つめる俳優の姿を目撃したのも一度や二度ではありません。「大丈夫?」と声を掛けると、小さな声で、「稽古が楽しい」と小さな声で言ってもらったこともやはり一度や二度ではありませんでした。近くでこれまた疲れ果てて倒れている内田さんがハッと起き上がって「楽しいよね」と言ってくれたこと。それもたぶん一生忘れないでしょう。
今、この時、このメンバーでなければ、そしてスズナリというおそらく世界でも類を見ない緊密でありながら広がりのある空間を持つ小劇場でなければ、『Yes Means Yes』は存在しなかった。深い喪失の物語であると同時に、仄かな再生の物語であるこの作品が生れ落ちる瞬間に立ち会っていただけたら幸いです。
【公演情報】
serial number12『Yes Means Yes』
作・演出:詩森ろば
出演:内田慈/松本入真 諏訪珠理 大川泰雅 段隆作
●2025/1/10〜20◎下北沢ザ・スズナリ
〈料金〉指定席/前売・当日共一般5,000円 障害3,000円 U25/3,500円(税込・未就学児童及び小中学生は入場不可)
〈料金〉ベンチ自由席/一般4,700円 U25/3,000円(税込・未就学児童及び小中学生は入場不可)
※障害、U25は劇団のみ取り扱い(要証明証提示)、各回限定数での販売。
※トリガーアラート/性的、暴力的な描写があります。
〈チケット取扱〉CoRichチケット、チケットぴあ
〈お問い合わせ〉serial number 070-3602-4357 yes@serialnumber.jp
〈公式サイト〉https://serialnumber.jp/
【舞台写真 撮影:市川唯人】