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またオイディプスとして生きられる日を心待ちに! 三浦涼介インタビュー

古代ギリシャの詩人ソポクレスが、約2500年前に書いた壮大なギリシャ悲劇『オイディプス王』。その主人公を、神性とも呼べる輝きと人間としての深い痛みや哀しみとともに演じきった三浦涼介。彼のオイディプスが再びパルテノン多摩の神殿に姿を現す。

父を殺し母を娶るという過酷な運命を生きる主人公の不条理をその身に背負い、観客に衝撃と感動を与えた初演を振り返りながら、この作品の再演とオイディプスへの思いを語ってくれた「えんぶ」2月号のインタビューを公開。

この作品を演じたことに誇らしい思いがある

──今回の再演の話を聞いていかがでした?

僕は自分が出演した作品が再演されることがあまりなくて、しかもこんなに早く再演されるとは思ってもいなかったので、とても嬉しかったです。今すでに台本を手にして沢山の台詞と格闘しているところですが、初演のときのようなネガティブな感じではなく取り組んでいます。初演時はやはり、膨大な台詞量や難しい内容の作品の主役というプレッシャーがありましたが、今回はこの作品を演じたことに誇らしい思いがありますし、またオイディプスとして生きられる日を心待ちにしています。

──演じた立場として、この作品がなぜ上演され続けるのだと思いますか?
 
これまでの上演については僕はよく知らないのですが、石丸さち子さんが演出されたこの『オイディプス王』は、悲劇の中にも「生きる」という選択をしています。そこに僕は一筋の希望というようなものを感じましたし、そういうところが人の心を打つのかなと。今回もそこは大事にしていきたいと思っています。

──石丸さんを演出家としてとても信頼されているそうですね。
 
とても愛情のある方で、もちろん厳しいところもありますが、「私を信じてついてきてくれれば大丈夫」といつもおっしゃってくださいます。石丸さんのおかげで僕はお芝居がすごく好きになったので。一番最初にお芝居と出会えたのは蜷川幸雄さんのおかげなのですが、石丸さんはその蜷川さんのそばにいらっしゃった方ということでも大きな信頼があります。

──この作品で三浦さんは大きな評価を受けましたが、俳優として個人としてのご自身にもたらされたものがあるとしたら?
 
この作品に限らず言えることなのですが、僕はこの世界に入っていなければ何者にもなれていなかったと思っています。自分に自信を持てなくていつもひとりぼっちな感覚があったんです。それがこの世界に入ったことで、演出の方、スタッフの方たち、共演者の方々、観客の方々のおかげで何者かになれる瞬間がある。お芝居の世界で、自分ではない人物になり、その役の人生を知り、その人の歴史を歩むことが自分を何者かにならせてくれるし、自信を持たせてくれる。それはこの俳優という仕事がもたらしてくれるもので、それが僕を何者かにしてくれていると思っています。

オイディプスをやれたことで、あまり恐いものがなくなった

──オイディプスという人については、どう捉えていますか?

稽古期間中に石丸さんと話し合うなかで理解していった部分が多いのですが、彼が生きてきた人生で起きたことや、知らずに引き起こしてしまった悲劇、そこから彼が自らに科したことなどが、演じているなかで走馬燈のように次々に浮かんでくるんです。そんなふうにその瞬間、瞬間、オイディプスの心境になっていたという感じなので、客観的に彼について考えることはなかなか難しいです。

──オイディプスは最後は自ら目を潰しますが、それはどのような思いからでしょう?

見ることができないことや、見たいけど見てはいけないことがある。それは自分の罪についてであり、自分の子どもたちを残していくことであり、それはオイディプスが誰とも共有できないことだと思うんです。だったら目を潰してしまうしかない。ただ、見なくても感じることはできるんですよね。それは救いであり、1つの希望であるのかなと。

──その場面では、おそらく周囲があまり見えない状態で演じていたのかなと。

稽古中からほとんど目を閉じていたのですが、途中で自分がどこにいるのか分からなくなるんです。石丸さんから、移動もあるので薄目で見えるようにしておきなさいと言われていたのですが、つい完全に目を閉じてしまって。気がつくとまったく違うところにいました。どこかで見えないことのリアリティを感じていたかったのだと思います。そうするなかで分かったことは、すごく小さな音とか、蚊が飛んでいる音とか、SEのキーンというような音がよく聞こえたり、今みんなが集中してこっちを見ているなとか、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされていく感じで、そこで生まれるものや得たものが沢山ありました。そして、その見えなくなった瞬間の感覚は毎日同じではなくて、それもすごい経験でした。

──そんな大変な役に再びチャレンジしようという気持ちは、どこからくるのでしょうか。 

不思議なもので、あんな思いは二度と出来ないと思っていたし、するつもりもなかったんです。肉体的にも精神的にもボロボロでしたから。でも本当にカンパニーの皆さんが支えてくださって、そのおかげでなんとか舞台に立てていたのだと思います。だからこそ初日に、僕はみんなを絶対に後悔させたくないと思いましたし、「三浦のオイディプスでよかった」と思ってもらわないとダメだという思いがありました。ですから本当に周りの皆さんのおかげで舞台に立てていたのだと思います。そのぶん沢山ご迷惑もおかけしたので、もし再演ということがあっても、オイディプスは僕ではないと思っていました。それだけに今回もオイディプスをというお話をいただいたときは即決でした。すぐやりたいと思いましたし、今度はどこまでできるだろうと、すでにその時点で想像したりしていました(笑)。

──この再演だけでなく、例えばライフワークとしてもできそうですね。

ただ、今はオイディプスができたことで、また違うギリシャ劇をやってみたいなという気持ちが生まれています。オイディプスをやれたことで、あまり恐いものがなくなったと言いますか(笑)。

──また新しいギリシャ劇も期待しています。まずは今回の再演を楽しみにしていらっしゃる方たちへメッセージをぜひ。

前回、劇場で観ていただけなかった方やNHK-BSの番組でご覧になった方に、ぜひこのパルテノン多摩という劇場で観ていただきたいなと思っています。とくに舞台セットのダイナミックさ、素敵な衣裳や繊細な照明などによって、物語の世界がそのままそこにあることに感動していただけると思います。駅から劇場までのアプローチも神殿への階段のようですし、この素敵な劇場へぜひ足を運んでいただければと思っています。

■PROFILE■
みうらりょうすけ○東京都出身。2002年に俳優デビュー。以降、ドラマ、映画、舞台、ライヴなど幅広く活躍中。最近の主な舞台作品は、リーディングミュージアム『東京方舟博覧記』、DisGOONie Presents 朗読劇『chill moratorium』、『リーディングシアター GOTT 神』、音楽朗読劇『手紙』、『ブラックジャックによろしく』、地球ゴージャス『儚き光のラプソディ』、『SaGa THE STAGE~再生の絆~』、『桜姫東文章』、『呪術廻戦』など。

【公演情報】
『オイディプス王』
作:ソポクレス
翻訳:河合祥一郎
演出:石丸さち子
出演:三浦涼介 大空ゆうひ 岡本圭人 浅野雅博 外山誠二 大石継太 今井朋彦 ほか
●2/21〜〜24◎東京公演 パルテノン多摩 大ホール
●3/1◎大阪公演 SkyシアターMBS 
〈お問い合わせ・ご予約〉パルテノン多摩 042-376-8181(10:00~19:00 休館日を除く)
〈公式サイト〉https://www.parthenon.or.jp/event/202502oedipus

【インタビュー/宮田華子 撮影/中田智章 ヘアメイク/春山聡子  スタイリング/ゴウダアツコ】

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http://www.enbu.shop/

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