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情報☆キック
株式会社えんぶ が隔月で発行している演劇専門誌「えんぶ」から飛び出した新鮮な情報をお届け。
公演情報、宝塚レビュー、人気作優のコラム・エッセイ、インタビューなど、楽しくコアな情報記事が満載!
ミュージカルなどの大きな公演から小劇場の旬の公演までジャンルにとらわれない内容で、随時更新中です。

(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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浪曲師・東家千春 インタビュー

たおやかに逞しく

【活動予定
●『本の長屋浪曲会Vol.10』
6/8◎高円寺本の長屋
詳細:https://miitus.jp/t/honnonagaya/schedule/100
予約:azumayachiharu@gmail.com

●『大爆発!お笑い研究会』
6/13◎梶原いろは亭
詳細:https://tiget.net/events/391530
会場観覧:https://tiget.net/events/391530
オンライン配信:https://kenkyuukai-0613.peatix.com/

●中野ウナカメ寄席Vol.2
6/14◎中野ウナ・カメラ・リーベラ
予約:azumayachiharu@gmail.com

●ガラスの仮面浪曲会
7/21◎アートスペース兜座
詳細:https://www.tiget.net/events/403638
予約:azumayachiharu@gmail.com

演劇からコントへ

――初めて芸事に興味を持ったのはいつ頃ですか?
 幼稚園の頃から舞台に立ちたい、主役をやりたい!という気持ちがありました。
――え!?
 母方の祖母が三味線を弾いたり、その兄が旅芸人だったので、隔世遺伝? 両親は全然そんなことないんですけど。小学校から演劇クラブに入って、それからずーっと中学、高校も演劇部。
――大学は早稲田ですよね?
 はい。演劇がやりたくて早稲田に行きました。
――大学、途中で辞めてますね。
 演劇やりすぎて…。
――劇研ではない?
 劇研は想像以上に厳しくて、無理だと思って。1年間、大学生らしい生活を謳歌して、2年生で早稲田の劇団ベリイギャルドに入りました。
――どんな作品だったんですか?
 松尾スズキさんの影響を受けた作風と、ナンセンスがミックスしたような。主宰も私も猫ニャーが好きだったので。
――中央線沿線の小さな劇場などでたくさんやられてますよね。当時はいかがでしたか?
 20代、30代半ばくらいまでを捧げたなと。劇団を何とか大きくしたくて、ひたすら頑張っていたんですけどなかなかうまく行かず。主宰が就職して劇団は終了…よくある話ですけど。
――そこからは?
 劇団員だった俳優の人と二人でコントユニット「桃と虎」を作って、笑いを追求した方向に行きました。
――桃と虎の映像をネットで見ました。楽しそうに歌っていましたね。
 そうですね。劇団の後は、桃と虎に捧げましたね。
――どうして解散したんですか?
 私は頑張っていくつもりだったんですけど、結成して3年くらい経った時に、突然、相方から「ピン芸人になりたい」と打ち明けられて…もう彼の意思が固かったんですよ。さみしかったんですけど、振られるような形で解散しました。
――困りましたね。
 で、時間ができたので、誘われるまま浪曲を観に行って、出会うという…。

桃と虎

浪曲との出会い

――初めて浪曲を観たとき、「これだ!」って思ったんですか?
 初めて観たのが玉川太福兄さんの会で、オリジナルの浪曲をやられていたんです。それがすごくおもしろくて、「こんな芸能あるんだ!」と。その方も昔、お芝居をやられていて世代も同じだし、同じ小劇場の匂いを感じて。
――(笑)。
 それから観に行くようになって、どんどん深みに…。浅草の寄席や日本浪曲協会の広間で毎週やっている会、これは2人の浪曲の後に宴会があるんですけど、そこに通っているうちに、「若いんだから、ちょっとやってみなよ」と誘われたりして。何となく浪曲師っていう道もあるのか…と思い始め…。
――ほう。
 演劇だと、自分の見た目とか年齢で、演じる役柄が変わっていくじゃないですか。
――はい。
 浪曲は90歳くらいのおばあさんが子どもをやったり、何歳になっても幅広い年齢の人をやっていけるということに気がついて、「あ、これかもしれない」と思い…気づいたら入門してました。
――そんな簡単に入門できるものなんですか?
 若手が、本当にいなかったので(笑)。私の師匠になる東家三楽がカルチャー講座をやっていて、そこに通っていた時に、師匠の専属の三味線で今年89歳の伊丹秀敏師匠、
――ああ、すごい方ですよね!
 カルチャーでも弾いて下さるんですよ。そこですごい褒めてくださって…スカウト的な?
――良い感じでアプローチできたんですね。それは人柄ですか?
 タイミングですね(笑)。

三味線とギターでは全然違う

――実際、どんな修行なんですか?
 もう今だと、師匠の家に住み込みという人はいないですね。呼ばれたら行くくらい。
――そうなんですね。
 うちの師匠は家が遠いから来なくていいと(笑)。師匠の出番がある日に、協会に置いてある師匠の荷物を会場に運んで一日ついている感じです。
――稽古はつけてもらえるんですか?
 月に1回、浪曲協会の広間を借りて、2時間くらい。
――稽古は厳しいんですか?
 それも一門によるんですけど、うちの師匠は優しくて「大きな口を開けて、腹から声を出す」くらいしか言わないんです。
――素敵ですね。
 歌う部分を節、お芝居の部分を啖呵といって、「節は啖呵のように、啖呵は節のように」と言われてはいるんですけど、具体的にこうしろという指導はないので。自分でレコードや師匠のテープを聞いて真似して、何とかやっていくしかない。
――なるほど。
 浪曲は一人一節と言って、自分の節を作るのが最終目標なので、師匠のコピーでは一人前ではないんです。自分でオリジナルの節を作っていかなきゃいけない。私はまだできてないですけど。
――それはまたいいですね。
 伝統を伝えるというより、自分で芸を作っていく芸能ですね。
――バンドで歌ったりした経験が役に立ちますね?
 そうですね…やる前は、もっと簡単だと思ってたんですけど。節はやってみたらとんでもなく難しくて。まず三味線の音に声を乗せるのが、ギターやベースに声を乗せるのと全然違うというか。
――何が違うんですか?
 三味線の音って、ピタっとしてないので、音の取り方が難しいですね。
――伴奏というよりセッションしている感じがありますよね。
 三味線の音や調子は決まっているので、そこから外れないように。外れると聴いてるお客さんも気持ちが悪いんです。

東家さんと曲師・沢村理緒さん(写真右)

明るくて分かりやすいものを

――去年の11月にあった「年季明け披露興行」で、年季明けがすごくうれしそうでしたが、そんなに違うんですか?
 全然違いますね。前座の時代は、本当に辛かったですね(笑)。
――何がですか?
 それまで小劇場で10年以上、自由奔放にやってきたので前座の間4年半、それが一切できないのが本当に辛くて…。明けた途端に、「これからは思いついたことやっていいんだ」っていう開放感がすごかったですね。
――あの時、初めて千春さんの浪曲を生で観たんですが、とっても伸びやかな感じがして、こんな世界があるんだってびっくりしました。
 私も初めて浪曲を観たときびっくりしました。どうして知らなかったんだろうって。
――千春さんの浪曲は正統派なんですか?
 もしかすると、ちょっと異端かもしれないですね。泣かせるものをやられている方が多い中、私は基本的に明るくて分かりやすいものをやりたいと思っているので。
――この前、下北沢で拝見した新作は、すごく楽しかったです。
 うれしいです。
――近藤真彦主演映画『ハイティーン・ブギ』の浪曲化って。
 コント時代のネタの浪曲化を、ずっとやりたかったんです。
――バイクに乗る仕草とかすごくご自分を観察して作られて、精一杯できることをやってらっしゃる。
 それは本当に演劇時代のたまものだと思います。
――手応え、ありますよね?
 ありました。ネタ下ろしでしたけど。
――あれでずーっといけますよね?
 そうですか!?
――あのネタを作るのに、どれくらい時間がかかるんですか。
 ベースがあったので台本にするのは、そんなに難しくなかったですね。
――台本にしてからが大変?
 新作の場合、節を考える、作曲的なことをしないといけないので、それが大変でした。けど古典を覚えるよりは、自分で考えてやる方が時間もかからないし、全然楽しいですね。
――そうなんですか。でもよかったですね。一本できて。
 三味線の方にも、すごい助けていただいていると思います。効果音を入れてくれたり。一人じゃできないので。
――忠臣蔵の脇のキャラクターの地味なお話もとっても素敵でした。
 討ち入り後の行列を見て、それまで会っていた人物が赤穂浪士だと気づくという、定番なんですよね。古典も楽しんでいただいてよかったです。

『ガラスの仮面』の浪曲化を

――次の目標みたいなものは何かありますか?
 小劇場で出会った脚本家や作・演出の人たちに、浪曲の台本を書いていただいてやるっていうのが目標、夢ですね。
――でもあの調子だったら、ご自分で書けば大丈夫じゃないですか。
 自作の…。
――目から鱗でした。話は5分で大丈夫! あとは歌があるからって(笑)。
 浪曲って節があるからストーリーが、なかなか進まないんですよ。あと『ガラスの仮面』の浪曲化もいつかしたい、夢ですね。連続物をやりたいんです。
――素晴らしいですね!
 演劇少女だったので。
――うまく行くといいですね。古典はこのままやっていけば大丈夫なんですか?
 そんなことないです。死ぬまで修行です。
――どんな修行を?
 まず節の鍛錬です。もっとできるようになりたい、自分の節も作りたいですし、声もまだできあがっていないので。古典もレパートリーを増やそうと思って、ひと月に一つ覚えるようにしています。
――それはまた俳優さんとは違う、芸人ならではですかね?
 浪曲ならではかもしれないです。澤孝子さんという師匠がいらっしゃって、もう亡くなられてしまったんですけど。ちょっとの所作ですべてが分かる、無駄がそぎ落とされてるんです。芸歴を重ねて手に入れられたものだろうなと。
――じゃあまだまだ…。
 新しいことをどんどん。
――よかったですね、演劇辞めて。みんなに浪曲師になれって勧めようかと思って。
 私も女優さんで浪曲に向いてる人って、けっこういると思うんですよね。
――演劇では、なかなか千春さんみたいな心境になるのは難しいと思うんですよね。
 なりたいと思えば、まだまだ大丈夫です。日本浪曲協会は60歳まで入れるので。
――まずはカルチャー講座からいかがでしょうか。

【プロフィール】
あずまやちはる○12月3日生まれ、東京都墨田区(曳舟・小村井)出身。初舞台は幼稚園のお遊戯会『親指姫』の親指姫役。小学生時代は盆踊りで櫓の上で踊る筋金入りの舞台上好き。2018年に五代目東家三楽に入門、2023年に年季明け。以来、自ら会を主催するなど、東京を中心に日本各地で興行している。
(一社)日本浪曲協会 - 東家 千春 –
https://rokyoku.or.jp/profile/azumayachiharu/

活動予定◇
●6月8日(日)本の長屋浪曲会Vol.10
【曲師】沢村理緒
【場所】高円寺本の長屋
【時間】開場17:45 開演18:00
【料金】1500円
【予約】azumayachiharu@gmail.com
【詳細】https://miitus.jp/t/honnonagaya/schedule/100

●6月13日(金)大爆発!お笑い研究会
【出演】(漫談)街裏ぴんく×(落語)瀧川鯉白×(浪曲)東家千春(曲師 沢村理緒)
    開口一番:玉川き太
【曲師】沢村理緒
【場所】梶原いろは亭
【時間】開場18:30 開演19:00
【料金】会場観覧2500円 オンライン配信2000円
【予約】会場観覧 https://tiget.net/events/391530
    オンライン配信 https://kenkyuukai-0613.peatix.com/
【詳細】https://tiget.net/events/391530

●6月14日(土)中野ウナカメ寄席Vol.2
【出演】開口一番:立川談声(落語)
    food &drink お抹茶カフェ
【曲師】沢村理緒
【場所】中野ウナ・カメラ・リーベラ
【時間】①14時30分開場 15時開演
    ②17時30分開場 18時開演
※①②の演目は異なります
【料金】1500円+1order
【予約】azumayachiharu@gmail.com

●7月21日(月)ガラスの仮面浪曲会
【出演】前読み:玉川き太(曲師 玉川さと)
【曲師】沢村理緒
【場所】アートスペース兜座
【時間】12時30分開場 13時開演
【料金】予約2000円 当日2500円
【予約】azumayachiharu@gmail.com
【詳細】https://www.tiget.net/events/403638

【インタビュー◇坂口真人 構成・文◇矢﨑亜希子】

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