革命ミュージカル『新・幕末純情伝』まもなく開幕! 百名ヒロキ・柳下大 インタビュー

柳下大 百名ヒロキ

つか作品とミュージカルに革命を起こす!

つかこうへいの名作『新・幕末純情伝』がミュージカルになって、8月8日〜20日、紀伊國屋ホールにて上演される。

本作は、新撰組の沖田総司が実は女だったという、つかこうへいならではのユニークな着想のもとに、『幕末純情伝』として1989年に初演。以来、舞台化のたびに話題を呼んできた。今回は革命ミュージカル『新・幕末純情伝』と銘打っての上演となる。

この物語の主人公で、混沌の幕末を駆け抜けた少女・沖田総司を、AKB48卒業後初めて舞台単独初主演する村山彩希が演じる。

その舞台で沖田総司と出会う2人の男、土佐の龍・坂本龍馬を演じる百名ヒロキと、新撰組の鬼の副長・土方歳三を演じる柳下大が語り合う。(えんぶ8月号より転載)

つか作品を時代に合わせて進化させていく
 
──柳下さんはつか作品には何度も出演していたので、『新・幕末純情伝』はよく知っていると思いますが。

柳下 つかさんの作品はこれで4本目なのですが、『新・幕末純情伝』とはなぜか縁がなかったんです。でも何度も観ていたし、どの役も魅力的で、それを同世代が演じているのを観るたびに、自分もいつか出演できたらと思っていました。

──百名さんはつか作品は初めてですね。

百名 今回オファーをいただいたときは正直びっくりしました。しかも坂本龍馬役ということですから僕でいいのかなと。ただ革命ミュージカルという形にして、つかさんの作品を時代に合わせて進化させていきたいというお話を聞いて、少しでもその力になれるならぜひやってみたいと思いました。

──今おっしゃったように、時代に合わせて進化させていくという話は、演出の岡村俊一さんの考えだそうですね。コンプライアンスが重要な今の時代だと、つか作品の台詞や演出が本来の意図とは違う受け止め方をされてしまう可能性がある。そうされないためのミュージカル化だと。初出演となる百名さんは台本を読んでの率直な感想はいかがですか?

百名 やはり今の時代に大丈夫かな?と(笑)。2、3年前だったらまだ大丈夫だったかもしれませんが、今はよりダメになってきていますから。そういう意味ではミュージカルにしたら、少し観やすくなるのかなと思いました。ただ作品の内容は、当時の下層階級による上の階級に対しての戦いでもあって、そういう格差の問題は今の時代にもシンクロするし、読んでいてエネルギーを感じました。

──柳下さんはつか作品の経験者として、その魅力をどう捉えていますか。

柳下 とにかく台詞が膨大な量なんですけど、他の作品より圧倒的に体に入ってくるんです。そしてそれを喋っているとすごく気持ちいい。相手から浴びるのも気持ちいいんです。ただ、本当に体に落とし込まないと喋れない本気の言葉で、だからこちらも生半可な気持ちで喋れないんです。

──百名さんは龍馬の台詞についてはいかがですか。

百名 今まで経験してきた台詞とは違うなという感覚はありますね。そしてずっと喋ってる(笑)。

柳下 まだ俺じゃんみたいな(笑)。

百名 そう!(笑)きっとテンポも大事でしょうし、一人で覚えるより、大さんが言うように、相手とぶつかり合う中で覚えていくほうがいいんじゃないかと思っています。


 龍馬と土方が「I LOVE YOU」をハモる!?

──この物語は、村山彩希さんが演じる沖田総司を愛する男たちの話でもありますが、おふたりが演じる坂本龍馬と土方歳三は、それぞれ立場も違うし愛し方も違いますね。

百名 ふたりともクセが強いですよね(笑)。

柳下 僕が今ちょっと考えているのは、土方は『熱海殺人事件』の大山金太郎に近いというか、百姓の出で身分的には低い人間で、沖田をただ手に入れたいとか、そばにいてほしいという気持ちしかない。そこはちょっと金太郎と通じる部分があるなと。それと、台詞では結構ひどいことを言うんですけど、その中にも愛情だとか沖田への思いが垣間見えればいいのかなと思っています。

百名 僕もまだ探っている段階で、なぜ好きになったんだろうとか、なんでこの言葉を言ったのだろうとか、まだ腑に落ちていないのですが、でもタイトルにもなっている「純情」というのが龍馬にはきっとあるのだろうなと。真っ直ぐというか。その純情さを大切にして稽古していくうちに見つかるんじゃないかと。そのためにも台詞を覚えなきゃ(笑)。

──おふたりはアイドルから俳優へという共通点がありますが、俳優であることの面白さとは?

百名 毎回どの現場に行っても、自分はなんでこんなに出来ないんだという、そこから始まるんです。少しは成長したと思っても次の現場で鼻を折られて、向いてないなと思いながら、でも続けているのは、やっぱり言葉で言えない魅力があるんでしょうね。そして、そういう自分が勝手にやっていることなのに、楽しんでくれる人がいる。それもあって続けています。

──俳優の道を選んだ決め手は何かあったのですか?

百名 10代の頃、とにかく台詞を言いたかったんです。台詞を沢山言いたいという気持ちでした。やっぱり好きだったんでしょうね。

柳下 よくわかります。僕も演じていることが何ものにも代え難い快楽なんだと思っています。それと、対誰かと喋る台詞が好きなんです。こちらが掛けた台詞で相手の何かが変わったり、それを受けた自分の感情の変化とか、台詞を使って相手とするそのやりとりがたまらなく刺激的だし快楽なんです。それは舞台でしか味わえないもので、一度役者をやめた時期があるからこそわかる面白さなんです。だから、またつかさんの作品に出られるのはたまらなく嬉しいです。

──ミュージカルにも出演しているおふたりですが、今回は革命ミュージカルということで、どう取り組みますか?

百名 岡村さんがおっしゃるにはミュージカルというより、カラオケ的なイメージだそうです。自分が歌いたいから歌う!じゃないですけど、けっこう我欲で歌えるのかなと。龍馬が歌う歌で「これが俺の正体だ!」みたいになったら面白いかなと(笑)。

柳下 自分たちのセレクトでいいみたいなことも、岡村さん言ってましたからね(笑)。そういえば沖田の歌も、歴代の演じた人が自分で選んでいたんですよね。

──ちなみにおふたりが歌いたい曲は?

柳下 自分の十八番で土方らしい曲といったら尾崎の「I LOVE YOU」しかないでしょ(笑)。

百名 それ、龍馬も歌いたいのに(笑)。

柳下 一緒に歌う?

百名 ハモりますか(笑)。

──歌での闘いも観られそうですね。最後に改めてこの作品への抱負をいただけますか。

百名 いろんな先輩方が経験しているつかさんの作品の話を、大さんから沢山聞けて更に楽しみになりました。やる気も十分ですので、既存のミュージカルを壊す革命ミュージカルを、ぜひどんなものか観にきてほしいです。

柳下 どうなるかわからない革命ミュージカルですが(笑)、つか芝居の常連の方々も出演するので心強いし、逆に初めて出演する方たちは新鮮な風を吹き込んでくれると思います。楽しみにしていてください。

【プロフィール】
ひゃくなひろき○沖縄県出身。2017年ミュージカル『ボクが死んだ日はハレ』で俳優としてデビュー。18年『GANTZ:L ACT&ACTION STAGE』で初主演を果たす。舞台を中心に活動しながら、三線では最高賞を受賞し、教師免許の資格を取得するなど、沖縄の伝統文化の継承にも力を入れている。近年の主な出演舞台は、『憂国のモリアーティ』大英帝国の醜聞 Reprise、『ROCK MUSICAL BLEACH』、『カラフル』、『RENT』、舞台『恋、燃ゆる。』、『マタ・ハリ』、『The PROM』など。

やなぎしたとも○神奈川県出身。2006年に開催されたワタナベエンターテインメント主催「第3回D-BOYS オーディション」にてグランプリを受賞し、俳優活動をスタート。舞台『真田十勇士』、ミュージカル『手紙』、二兎社『ザ・空気 ver.2』、劇団☆新感線『メタルマクベス』などの舞台や、映像で活躍。00年に一時休業後、24年俳優活動を再開。つかこうへい作品は、『熱海殺人事件 NEXT』、『熱海殺人事件 Battle Royal』、Triple Impact『いつも心に太陽を』に出演。

【公演情報】
革命ミュージカル『新・幕末純情伝』
作:つかこうへい 
演出:岡村俊一
振付:多和田任益(梅棒)
出演:村山彩希 百名ヒロキ 柳下大 細貝圭 青木瞭 嘉島陸 佐久本宝/久保田創 小川智之 杉山圭一 河本祐貴 小柳喬 大石敦士 伊藤陽光/平塚翔⾺ ⼩川優
●8/8〜24◎紀伊國屋ホール 
〈チケット取扱〉Mitt 03-6265-3201(平日12:00〜17:00)
〈公式サイト〉http://www.rup.co.jp/stage/bakumatsu_2025.html

【インタビュー/宮田華子 撮影/中田智章 ヘアメイク/久米千秋】

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