
横山拓也の作・演出、南果歩、平田満らの出演による舞台『ハハキのアミュレット』が、可児市文化創造センターalaで、9月29日に開幕。その舞台写真と開幕コメントが届いた。(可児公演は10月5日に終了。東京公演は10月9日~15日、吉祥寺シアターにて上演。)
可児市文化創造センターalaでは、<ala Collectionシリーズ>と銘打って、複数の公共ホールと連携しながら、毎年質の高い演劇作品をアーティスト・イン・レジデンスで創作し、可児、東京、そして全国へと作品を発信。シリーズ16回目を数える今回は、社会問題に鋭く切り込む観察眼に加え、ユーモアとエンタテイメントを盛り込んだ緻密な会話劇に定評のある横山拓也を作・演出に迎え、同族経営の後継者問題で揺れ動く家族の葛藤を炙り出す新作「ハハキのアミュレット」の創作に挑戦した。
タイトルの<ハハキ>とは、「掃く」の名詞形で、ホウキの語源となる。主演は凛とした強さと華やかさを併せ持つ南果歩、その兄役を熟練の演技で存在感を増す実力派の平田満が演じている。
日本企業の90%以上が同族経営といわれ、核家族化や経済の低迷による企業の弱体化が進む今、後継者問題はもはや避けられない社会課題といえる。棕櫚箒(しゅろほうき)作りを営む家族に焦点を当て、ユーモアを盛り込みながら、家族であることの生き辛さ、時と共に変化するライフスタイルと広がりゆく世代間ギャップ、それでも変わらない家族愛と生きていくことの尊さをドラマチックに描く作品となっている。
【あらすじ】
かつて棕櫚箒(しゅろほうき)の名産地として栄えた南近畿のある町。 しかし今は過疎化の波に飲まれ、町も工房も風前の灯火。幼馴染や仕事仲間と一緒に、倉西商店で棕櫚箒の歴史を守ってきた野花奏(南果歩)。時代に取り残されながらも、伝統を懸命に紡ぐ日々を送っていた。そこへ、町を捨てた兄・雄一(平田満)が突然現れる。過去と現在が交錯し、家族と町に見えないさざ波が立ち始める。消えゆく手仕事の温もりと家族の未来を棕櫚と共に編みなおす“小さな祈りの物語”。

【コメント】
横山拓也(作・演出)
可児市文化創造センターalaでの滞在製作は、東京にいると忘れてしまうような、ゆったりとした時間の流れがあって、ずっと作品のことを考えて、濃密な稽古を重ねることができました。主演の南果歩さん、平田満さんという先輩の存在が心強く、お二人をはじめ、過去、iakuに出演してくれている俳優や、若いメンバーも、みんな作品にまっすぐに向き合ってくれて、誰からともなく、稽古が活性化するアイデアや意見が飛び交うような、本当に良い稽古場になりました。いつまでも稽古していたかったくらいです。南さんと平田さんが演じる長年離れていた兄妹を中心とした家族劇。関西弁で捲し立てる丁々発止の会話劇を楽しんでいただけたらと思います。また、「棕櫚箒」という作品のモチーフとしては珍しいアイテムにも注目です。
南果歩
舞台はアナログの世界で、毎日同じお芝居であっても、今日観たお芝居は劇場に居合わせた方々だけが体感出来るもので、明日のお芝居とはまた違うんです。それは打ち上げ花火のようで、私たちは今日の花火は今日だけ、明日はまた別の花火を打ち上げます。この年代になって今回の横山さんの戯曲に出会えたことがとても幸せです。この舞台が花火の残像のようにみなさまの心に残ることを祈念しております。
平田満
可児市で初日を迎えたこの公演は、みんなのチームワークもよく、とても楽しんでいます。
関西の過疎地のお話ですが、どこでも、どなたにも心に当たるところのある、人を信じたくなるお芝居です。ぜひご覧ください!

【公演情報】
ala Collectionシリーズ vol.16 『ハハキのアミュレット』
作・演出:横山拓也
出演:南果歩/福本伸一 緒方晋 橋爪未萠里 田中亨 東宮綾音/平田満
●9/29〜10/5◎可児市文化創造センターala・小劇場(終了)
●10/9〜15◎東京・吉祥寺シアター
〈公式サイト〉https://kpac.or.jp/event/ala-collection16-hahaki250929/
【舞台撮影:神ノ川智早】