シライケイタ率いる劇団温泉ドラゴンとコ・スヒが代表を務める韓国の劇団58ROUTEによる、日韓共同製作作品『長生炭鉱──生きたかった』が、6月5日〜14日に座・高円寺1で上演される。
コ・スヒは、俳優として『焼肉ドラゴン』のコ・ヨンス役で受賞歴もあり日本でも広く知られていて、2023年に劇団58ROUTEを旗揚げした。またこの作品ではアーティスティック・ディレクターを務めている。
本作は、多くの朝鮮人労働者が坑内労働者として犠牲になった、1942年の長生炭鉱水没事故に焦点を当てた物語。韓国の劇作家キム・ミンジョンが物語を書き、日本のシライケイタが演出を手がけ、出演者には温泉ドラゴンや劇団58ROUTEの俳優たちを含め、日韓の俳優を参加。両国の言語で上演する。

1942年2月3日、山口県宇部市の長生炭鉱で水没事故が発生し、183名が犠牲となった。そのうち136名は朝鮮人鉱夫だった。坑道はコンクリートで封鎖され、犠牲者がいたという真実は80年以上語られることはなかった——──これは実際に起きた出来事である。
本作品はこの史実に着想を得た創作作品。2025年、ダイバーのアキラとク・ソヨンが遺骨捜索のために潜水する。物語は過去と現在を行き来し、過酷な労働を強いられ坑道に閉じ込められた鉱夫たちと、彼らの痕跡を追うダイバーたちの姿が交差する。
長きにわたり語られることのなかった痛ましい史実に、今、日本と韓国の合同チームが異なる言語と環境の中で向き合い、一つの作品としてともに作り上げる!
キム・ミンジョン(作)からのメッセージ

韓国と⽇本の演劇⼈が出会い、共に舞台を作るとしたら、どんな物語を書くべきかを考えるのに多くの時間を費やしました。そうして「⻑⽣炭鉱」の話に出会うことになりました。84年前、⽔が流れ込んだ暗い坑道に共に閉じ込められた韓国と⽇本の炭鉱夫たち、そして彼らの遺⾻を引き上げることに⼼を寄せた宇部市の市⺠団体の⼈々と韓国⼈遺族たちの思いを、少しでも作品に込めたいと思いました。⻑⽣炭鉱⽔没事故は、強制徴⽤で連れてこられた136名の朝鮮⼈労働者と⽇本⼈炭鉱夫47名が、⼀瞬にして海底炭鉱の崩壊により命を落とした事故です。事件は戦時中であるという理由で、⼆次被害を防ぐという理由で隠蔽されていました。1970年代に宇部市のある郷⼟史家の著書に記録されるまでは……。その後84年が経った現在、⺠間ダイバーによって発掘された遺⾻はわずか⼆体に過ぎません。炭鉱夫たちは⽔⾯の上へ引き上げられることを望み、現在の⼈々は⽔⾯の下にいる⼈々を引き上げたいと願っています。この作品には⽇本語と韓国語が共に存在します。⾔語の違いは壁を作りますが、互いを理解しようとする⼼が加わると、ある瞬間に壁は崩れます。ただ同じ⼈間であるという⾃覚だけが残るのです。だからこそ、この⾔語の違いという不便さを、どうか楽しんでいただけたら。
シライケイタ(演出/劇団温泉ドラゴン)からのメッセージ

この企画は、劇団58ROUTEの代表であるコ‧スヒと劇団温泉ドラゴンの、⻑年にわたる友情が結実した、いわば我々の演劇活動における⼀つの到達点だと思っています。知らない過去を知る、知らない⽂化を知る、痛みを分かち合う、悲しみを共有する、苦しみを乗り越える、そして明るい未来を共に⽬指す。決して簡単ではない道のりですが、我々にはそれができると信じて、10数年間お互いに励ましあい、いつか共同制作を実現させたいと約束してきました。いつか光が差す未来がやってくると信じ、またそのような未来を次の世代に⼿渡したい⼀⼼で、この作品を共同制作致します。キム‧ミンジョンさんの書いた⾔葉を⽇本⼈の私が演出し、⽇韓⼊り混じった俳優陣が両国の⾔葉で演じます。我々の稽古場には、⽂化と環境の違いを乗り越えようとする信念と、他者を理解しようとする誠意に満ち溢れています。⼭⼝県宇部市で活動する「⻑⽣炭鉱の⽔⾮常を歴史に刻む会」(*)の井上代表をはじめとする皆様からも多⼤なる後押しとエネルギーを受け取ってまいりました。
精⼀杯お届けいたします。どうか劇場で⽬撃してください。お待ちしています。
コ・スヒ(アーティスティック・ディレクター/劇団58ROUTE)からのメッセージ

私と温泉ドラゴンとの⻑年の信頼が、まるで奇跡のように共同制作という形へとつながりました。何を語るべきかを模索する中で、⻑⽣炭鉱を題材として選びました。忘れられたことと、忘れたことは違います。⻑⽣炭鉱は韓国では記憶される機会すらなく、⽇本では⻑い間沈黙されてきました。その⼆つの沈黙の間に、この作品があります。
韓国の作家が書き、⽇本の演出家が舞台に乗せ、両国の俳優が共に作り上げていくこの作業は、⽂字通り最初から最後まで共同で作り上げる企画です。お互いの違いを理解し受け⼊れていく過程そのものが、この作品の核⼼です。それぞれの場所から⾒つめ、時にはお互いの場所になってみること⸺それだけで共同制作の意味として⼗分であり、それこそが⻑い沈黙を破ることだと思っています。

公演情報

劇団温泉ドラゴン×劇団58ROUTE『長生炭鉱――生きたかった』
作◇キム・ミンジョン
演出◇シライケイタ
アーティスティック・ディレクター◇コ・スヒ
出演◇いわいのふ健 筑波竜一 五十嵐明 内田健介 京極洋太 清水直 ソ・ドンガプ キム・ジェウン イ・ジョンウォン パク・ホンスン ユ・シヒョン
6/5〜14◎座・高円寺1





