
ミュージカル『獅子 THE LION-BEAT』が、10月4日にTHEATER MILANO-Zaで開幕した。
アングラ演劇を牽引した奇才・寺山修司が、「天井棧敷」を旗揚げするよりも前の1965年にたった1回の公演のために書き下ろした幻の戯曲が、ミュージカル『獅子 THE LION-BEAT』となって、61年の時を経て甦った。
物語は、ごく普通の青年が、謎の男との契約でことばを失う代わりに、憧れていたボクサーとしての能力を手に入れるところから始まる。チャンピオンとしての名声を得る一方で、日常や大切な人との関係など、失うものも増えていき……。本作ではことばを失った青年が、ボクシングや新たに出会う人々を通して自らの道を模索し、栄光と葛藤の中で何を選び取るのかが描かれる。

本公演の演出を務めるのは、歌舞伎からオペラまで幅広いジャンルに挑み、鮮やかな発想で作品を生み出してきた杉原邦生。
ことばを失った主人公・貞夫には、第32回読売演劇大賞で新人賞にあたる杉村春子賞を受賞した新原泰佑を迎える。ダイナミックかつしなやかな身体表現を持ち味とする新原が、ボクシングや手話など多彩な表現を用いて、新境地に挑む。恋人・弓子には北香那。貞夫を執拗に追うスポーツ紙記者・五味には田中俊介。巨躯ながら弱いボクサー・大岡デブには勝矢。小人マネージャーには、さとうこうじ。元ボクシングチャンピオン・所骸二には岡田義徳。さらに、ボクシングジムのオーナー木頃には田口トモロヲ。謎に包まれ物語を誘導していく帽子の雨には橋本さとし。貞夫と弓子を取り囲み暗躍する癖ありの男たちにはこの上ない顔ぶれが集結。寺山修司のことばと新たなビートが交わる祝祭劇が、令和の新宿・歌舞伎町に誕生した。



《あらすじ》
米沢貞夫(新原泰佑)は、印鑑屋で働くごく普通の青年。趣味はテレビのボクシング観戦で、ボクシング選手になることを夢見ていたこともあった。テレビに熱中するあまり恋人の中町弓子(北香那)の存在を忘れてしまうことさえあり、弓子はボクシングを嫌っている。
ある日、不思議な力を持つ中年男・帽子の雨(橋本さとし)が貞夫のもとを訪れ、ある取引を提案する。貞夫の“ことば”と引き換えに特別な能力を与え、ボクシングチャンピオンに生まれ変わらせよう、と。貞夫は動揺しながらも、ボクシングチャンピオンになれるのなら、と契約は成立し、物言えぬボクサー嵐猛夫が誕生する。
木頃(田口トモロヲ)が経営するジムに所属した嵐猛夫は試合の度にKO勝ちを続けるヒーローとなり、環境が一変する。
そこでは強烈なKOパンチの犠牲になるボクサー、そのパンチに魅せられた者たちが集まってくるが“ことば”を失った猛夫は自分の心を手話でしか表すことができない。下町のキャバレーのダンサー鷹あけみが猛夫の前に現れ誘惑するが、会うことができなくなった恋人・弓子への思いはより募っていく。
そしてついにヒーロー・猛夫のタイトルマッチがやってくる。魔力でチャンピオンを仕立て上げようと機を伺う帽子の雨と観客たちの歓声の中、あけみが、ある告白をする。リングに立った猛夫は……。





【コメント】

杉原邦生 橋本さとし 新原泰佑 北香那 田口トモロヲ
杉原邦生・演出
いよいよお客さんの目に触れることになるんだなと思い興奮してワクワクしています。
僕は学生から演劇を始めて、寺山さんの作品に20代前半で出会いすごく衝撃を受けました。理屈じゃないエネルギー、言葉の美しさ、不条理な世界、そういうものに圧倒されて、いつか自分で演出してみたいと思っていました。ようやく演出できるという気持ちとともに、畏怖というか、僕が変に解釈しすぎたり、寺山さんの作品じゃないものに見えるものにしたらいけないなということも同時に考えながら作っていきました。空間、☆Taku Takahashiさんの音楽、照明、音響などのスタッフワーク含めて、今のお客さんが観て、当時寺山さんの作品をご覧になったお客さんが感じた興奮・驚き・衝撃を、この劇場で体感していただきたいという思いを込めて作りました。
観たことのないようなミュージカルになっていると思います。寺山さんの作品であり、ミュージカルであり、この新宿のど真ん中に立つ劇場で起こる祝祭感、お祭り感をただただ浴びて体感して楽しんで、興奮して帰っていただけたらなと思っています。劇場で体感することに価値のある作品だと思いますので、ぜひ劇場にお越しいただければなと思います。
新原泰佑
やっと皆様の前にこの作品を届けることができることを本当に嬉しく思っています。この作品は61年ぶりに上演されますが、新宿・歌舞伎町という町が、この作品のテーマの一つでもあるので、場所ごと楽しんでいただきたいなと思っています。稽古はずっと楽しかったです。皆さんがとてもすごくて、パワフルで個性的で、こう来るだろうなという想像から外れた、何歩も先を行った解釈のお芝居をされているのを見て、すごく刺激を受けながら、そして楽しみながらできました。それをそのまま舞台上にのせられたらいいなと思います。キャスト、スタッフの皆さんとともに一丸となって歩んできたこの作品を、お客様に早く観てほしいと思っています。身体表現、そして歌、言語が融合したこの作品。ここにしかないミュージカルが誕生したと思っています。なので、これを観ない手はないんじゃないかと!現代の人にも届くような、新たな傷跡が残るような作品だと僕は思っています。そんな作品に出会わせてくれた皆さんに感謝しながらも、一公演、一公演を大切に演じていきたいと思いますので、皆さんぜひ観に来てください。
北香那
こんなに素敵な皆さんと一緒に作ってきた舞台なので、ひたすらに楽しみたいなって思っています。私自身、ミュージカルはデビュー以来の16年ぶりになるので、もうエンジンをかけ直さなきゃという気持ちで稽古に挑みました。大変なことばかりだろうけど、全部楽しもうって思っていたのですが、本当に皆さんのおかげでずっと楽しかったです。そして、アンサンブルの皆さんのパワフルな踊りと生命力にいつも元気づけられて、奇跡の皆さんが集まったような感覚があります。この作品は、もしかしてわかりにくい、難しい話かなと思う方もいらっしゃるかもしれないんですけど、とてもわかりやすくて、そしてとってもポップです。そして不穏で、笑えて、泣けます!盛りだくさんだと思います。本当に楽しんでもらえると思いますので、一人でも多くの方が見に来てくださるようにと願っています。
田中俊介
稽古場ではわからなかったことが、劇場に入って可視化されて、ものすごいものが出来上がっていると感じているので、早くお客様にも観ていただきたい気持ちです。
新原さんとは二度目の共演になるのですが、彼には稽古場で驚かされました。今回は歌、ダンスだけでなくチャレンジをいくつもしていて、それを我々が思う上の上を見せてくれるので僕はかっこいいな、いいな、悔しいっていういろんな気持ちになりました。
観劇後ものすごく明るい気持ちになって劇場を後にできると思うんですが、その中にもすごくえぐってくるような闇の部分もあります。何回も観ているのに何度も鳥肌立って、エネルギーをもらえるんです。なので僕が感じているものをお客様にも感じてもらいたいですし、終わった後にどんな気持ちになるのか、その声を聞けるのも楽しみにしてます。
勝矢
開幕を前に、時は来た、あとはやるだけだ!という気持ちでいます。
僕はこの作品には、最近の演劇や映画では感じることができない匂いをつけなくてはいけないと思っていました。そして共演者の皆さんがその感覚を自然と察知してらして、自分自身どんな匂いを放ったらいいのかを演出の邦夫さんと相談しながら稽古をしていました。その匂いが新宿中に蔓延するぐらい出ていると思うので、楽しみにしていただければと思います。
魔法をかけてくれる舞台だと思います。それはどういう魔法かわかんないですが、とっても素敵な世界に踏み入れるのはここに来なきゃわからないので是非劇場にお越しください。
・さとうこうじさん
猥雑な新宿歌舞伎町のど真ん中の劇場で昭和の物語を上演できるのが楽しみです。
漫画の「明日のジョー」や「巨人の星」、「タイガーマスク」を読み直してみたりして、昭和の熱さが滲み出したい気持ちで稽古に行っていました。どんどん滲み出てきているんではないかと思うので、その暑苦しさが出れば嬉しいなと思っております。
僕は今まで寺山さんの作品に5作ぐらい関わらせてもらったことがあるんですが、今回の作品は今までにない、全く新しい寺山作品になっていると思います。
寺山ファンの方も、寺山さんのことを全く知らない人も楽しめる舞台になっていますので、どうぞ劇場まで足を運んでください。
岡田義徳
開幕しますが、終わるまで完成のかたちが見えないのが楽しみだと思っています。日々変わっていく舞台でして、どの日を観ても楽しいと思います。
僕は元チャンピオンの役なので、皆さんより1週間ぐらい早くボクシングの稽古が始まったのですが、そのボクシングの稽古がとにかくきつかったです(笑)。
僕自身はアングラ作品を経験しているので、アングラが持つパワーや人間臭さみたいなものが、芝居の中で前面に出ていけばいいなという思いで、ずっと稽古していました。
寺山作品としてはすごく入りやすい、観劇しやすい作品になってると思います。ポップだし、ジェットコースターに乗っているような感覚で、体感しなきゃわからないワクワクさせてくれる作品になっていますので、楽しもうと思って来ていただけたら嬉しいなと思います。
田口トモロヲ
僕は人生初のミュージカルで、多分人生最後のミュージカルです!
本当にミュージカル俳優の方とアンサンブルの方たちが素晴らしすぎて、技術力やスキルを稽古場という特等席で見せていただいて、すごく刺激になりました。
僕自身は寺山修司さんの一番前衛的部分とノイズの部分を担当です(笑)。
過去に唐十郎さんの作品はやらせていただいて、寺山さんの作品に参加できる機会があればと思っていたので、今回話をいただいて「よし!」と思ったんですが、内容がミュージカルだったということが全くの誤算でした(笑)。
『獅子』は、僕が知っている寺山修司さんの作品とは違い、読んだ時に驚きましたし、1日しか上演してないレアな作品があったこと自体が、新たなカルチャーの発見だと思います。
寺山さんは70年代サブカルチャーの象徴で、こういったものが今現在、しかもカオス的な歌舞伎町の劇場で上演されるということは、偶然と必然が出会った結果なんじゃないかなと思っていて、皆さんもそれを目撃していただけると嬉しいです。
橋本さとし
稽古の8割が振り付けの稽古だったのですが、皆さんのダンスのシーンはものすごく見ごたえのあるもので、上質なミュージカルになっていると思います。演技の稽古は2割ぐらいだったのですが(笑)、僕らも楽しみながら、どんどんこれからも芝居を成長させていきたいと思っています。
僕自身、演劇をやり続けていて、寺山修二さんはまだ通ったことがなかったんですが、やっと寺山さんのアングラに出会えたなと。劇団☆新感線出身で真反対の世界にずっといたので憧れていて、ここで巡り合えたことが本当に喜ばしいです。
とてもエネルギッシュな作品で、稽古場で見ていると胸が熱くなり、同時にその熱さとパワーに泣けてくるんです。
日本初のオリジナルミュージカルを創るのは、すごく冒険であり大変難しいことだと思います。さらに邦生さんのシンプルな演出の中にも複雑な転換があったりと、それらをキャストとスタッフがセットを動かしています。物語じゃないところにも民衆のエネルギーが感じられる作りになっています。お客様には僕たちが表だけでなく見えないところでも頑張ってるんだということ、感じてもらいたいと思います(笑)。

杉原邦生 橋本さとし 新原泰佑 北香那 田口トモロヲ
【公演情報】
Bunkamura Production 2026 ミュージカル 『獅子 THE LION-BEAT』
作:寺山修司
演出:杉原邦生
音楽:☆Taku Takahashi[m-flo]
潤色:桑原裕子
振付:北尾亘
出演:新原泰佑 北香那 田中俊介 勝矢 さとうこうじ 岡田義徳 田口トモロヲ 橋本さとし ほか
●10/4〜20◎東京公演 THEATER MILANO-Za
●11/7・8◎大阪公演 SkyシアターMBS
〈公式サイト〉https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shishithelionbeat.html
【撮影:細野晋司】



