舞台『未来少年コナン』間もなく開幕! 加藤清史郎インタビュー

心身ともにかなりタフな戦いになる作品

宮崎駿初監督アニメ「未来少年コナン」が舞台化され、舞台『未来少年コナン』として5月28日に、東京芸術劇場 プレイハウスにて開幕する(6月16日まで。その後、大阪公演あり)。演出・振付・美術を務めるインバル・ピントは、これまで日本において『100万回生きたねこ』や村上春樹原作の『ねじまき鳥クロニクル』などを手掛け、唯一無二の空間演出で観客を魅了してきた。

この舞台で超人的な運動神経をもつ素直で正義感の強い主人公・コナン役の加藤清史郎に、本作に挑む思いを聞いた「えんぶ6月号」のインタビューをご紹介する。

こんなに自分磨きができる作品はなかなかない

──アニメ「未来少年コナン」はご覧になりましたか。

これまで作品のタイトルは知っていましたが見たことはなかったんです。実際に見て、それまで抱いていたイメージがガラッと変わりました。こんな素敵な作品、もっと前に見ておくべきだったな、と思いました。

──見る前はどんな印象を持っていたのですか。

痛快な冒険活劇みたいな、コナンが誰かを倒して仲間にしていくようなストーリーなのかな、と思っていました。でも、コナンのやり方がとても少年とは思えないくらい達観しているというか、説教くさくないところがすごくよくて、「仲間になれ」とか「こうあるべきだ」とか主張を押し付けてくるわけではなくて、コナンの姿を見て周りが勝手に感化されて変わっていくのが、自分の中でとても好印象でした。

──インバル・ピント作品の印象を教えてください。

映像で拝見しましたが、使えるものを全部使う、という印象でした。身体的なことで言えば、体の使えるものを全部使いながら、指先よりもっと先の空気までコントロールしていることが伝わってきました。実は、森山未來さんが出演された『100万回生きたねこ』を観たときに、途中で観るのをやめたくなったんです、すごすぎて。森山さんが1秒たりとも人間としての姿がなくて、ずっと猫なんです。同じ演出家の舞台で同じ役者としてこのレベルに僕は達せるのか、という不安も募りました。でも、不安のままで終わらせちゃいけないから、今の自分にできることとして日々ワークショップに挑んでいます。ワークショップや稽古場では情けない姿ばかりを見せてしまうかもしれませんが、それを見せてでも吸収して強くなって、最終的に初日の舞台に立てるようにすることが大事だと思っています。これは自分にとって絶対にいい刺激にしなきゃいけない、いい経験だったなで終わらせちゃいけない、こんなに感性の要素が広くて自分磨きができる作品はなかなかないからこれはチャンスだぞ、と思っています。役者としてのいやらしい目線ですが(笑)。

ナンが素敵であればあるほど奮い立つ

──コナンの役をやるということに対して今はどのような思いを抱いていますか。

もちろん楽しみなのですが、プレッシャーや使命感も感じてしまっていて、今はそっちの方が大きいですね。コナンが素敵であればあるほど奮い立たせられる感じがしますが、果たして僕みたいな人間がコナンのような素敵な人間になれるのだろうか、とすら思ってしまっているのが、今の素直な気持ちです。

──共演者にはインバル作品の経験者や役者としての先輩方が多く、頼れるメンバーではないでしょうか。

そうですね、皆さんについていくだけじゃなくて僕が引っ張っていけるように、と言いたいところですが、皆さんを引っ張れるようになるのは、受けられる刺激を受けて、吸収するだけ吸収してからだな、と思います。本来なら僕は「頑張る」という言葉があまり好きじゃなくて、何でも「楽しい」に変換したい人なので、これまでは「楽しみです」とか「楽しみたいです」と言ってきましたが、今回に関してはそれだとそもそも追いつけない気がするので「頑張ります」とか「頑張らなきゃいけない」と答えている自分がいます。

──ラナ役の影山優佳さん、ジムシー役の成河さんへの印象を教えてください。

影山さんは、出演者発表時に出されたコメントを見て、なんて真面目な方なんだろうと思いました。僕はああいうコメントのとき、くだけた表現をしがちなので(笑)。同い年ですし、本当にコナンとラナみたいな関係で最後まで一緒に進んでいけたらいいなと思います。成河さん演じるジムシーはコナンの相棒なので、たくさん引っ張っていただくことになるんだろうな、と思っています。今日のワークショップに成河さんが参加してくださって、これまで僕の弟がご一緒したことがあったり、成河さんご出演の舞台を拝見したときにご挨拶したりしていたのですが、役者の加藤清史郎としてお仕事でお会いするのは今日が初めてでした。いつかご一緒したいなと思っていたので嬉しいです。

経験の積み重ねでコナンになっていきたい

──今回の共演者の中では、椎名桔平さんと宮尾俊太郎さんは映像で共演経験がありますね。

椎名さんは尊敬する大先輩です。今回が3度目の共演ですが、前回の共演が8年前の『海の星』というドラマで、そのときに色々なお言葉をいただきました。あのときの加藤清史郎と今の加藤清史郎で何も変わってない、もしくは何かが衰退しているようではいけないので、そこは少し意識して緊張しますね。宮尾俊太郎さんは『ヤマトナデシコ七変化』というドラマでご一緒して「俊ちゃん」と呼んでいました。俊ちゃん、亀ちゃん(亀梨和也)、テゴちゃん(手越祐也)、内くん(内博貴)とみんなでガムテープをボールにしてキャッチボールしたりとか、僕が一生懸命「くもん」をやっているのにみんながちょっかい出してきたりとか、和気あいあいとした現場だったのですが、それももう14年前ですね。当時から憧れの存在だった宮尾さんとまたご一緒できることはすごく楽しみですし、身体表現の面でもたくさんアドバイスをいただければと思っています。

──本作は加藤さんにとって挑戦でもあるし、次のステップへ進むための大きな経験になりそうですね。

心身ともにかなりタフな戦いになると思いますが、くじけずにたくさん考えて考えて飛び込む、ということの繰り返しで日々を送っていきたいなと思っています。今やっているワークショップが1回約2時間ぐらいなのですが、1回やるだけでもう「今日2公演やった後だっけ?」というぐらいの疲労感で、今ここがお店だったら生ビール頼みたいですね(笑)。でもこうやって経験を積み重ねていって、ビシバシと皆様にご指導ご鞭撻いただきながらコナンになっていきたいと思います。

【プロフィール】かとうせいしろう○2001年生まれ、神奈川県出身。1歳から芸能活動を始め、09年NHK大河ドラマ『天地人』で主人公の幼少時代を演じる。11年映画『忍たま乱太郎』で主役・猪名寺乱太郎役。同年『レ・ミゼラブル』ガブローシュ役で初舞台。海外留学後、映像や舞台で活躍中。最近の出演作品は、舞台『BE MORE CHILL』『LUPIN〜カリオストロ伯爵夫人の秘密〜』、映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』、TV『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(NTV)など。23年7月にはNTV「news zero」の金曜パートナーを務めた。

【公演情報】
舞台『未来少年コナン』
原作:日本アニメーション制作「未来少年コナン」
(監督:宮崎駿 脚本:中野顕彰 胡桃哲 吉川惣司)
演出・振付・美術:インバル・ピント
演出:ダビッド・マンブッフ
脚本:伊藤靖朗
出演:加藤清史郎 影山優佳 成河 門脇麦
宮尾俊太郎 今井朋彦 椎名桔平 ほか
5/28〜6/16◎東京公演 東京芸術劇場 プレイハウス
HP:https://horipro-stage.jp/stage/fbconan2024/

【インタビュー◇久田絢子 撮影◇中村嘉昭 スタイリスト◇古舘謙介 ヘアメイク◇Ken Nagasaka 衣装協力◇ブルゾン/Barbour 
ジャケット・ネクタイ・パンツ/Kent Ave.シャツ/SENTINEL 靴/42ND ROYAL HIGHLAND Navy Collection 眼鏡/金子眼鏡 時計/BRISTON サスペンダー/スタイリスト私物】

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!