おぶちゃ7周年記念『ポエム同好会』間もなく開幕! 大部恭平・石渡真修・吉田知央・柳下大 座談会

大部恭平の個人企画として始動した「おぶちゃ」が7周年を迎え、今年4作目の『ポエム同好会』を、10月9日から14日まで中目黒キンケロ・シアターで上演する。

「おぶちゃ」は、これまでストレートプレイを中⼼に、ポップでテンポの良い会話や⽇常に寄り添ったリアリティのあるテイストの作⾵で、『⼈⽣肯定』『⼈間讃歌』をコンセプトに上演してきた。今作のテーマは「ポエム」。どこかにいるかもしれない不器⽤な男たちのシュールさをポップにシビアに描き、「ポエム同好会」というニッチな趣味で繋がった⼈物たちを通して、⽇常の景⾊を少しでも変える作品を届ける。

とある⾼校に転校してきた関春⽣。数ある部活の中、わりとモテそうな関が⼊ることになったのは学校⼀地味で抜群にモテない『ポエム同好会』だった……。

転校生・関春⽣を演じる石渡真修、ポエム同好会の部長・権藤太志役の吉田知央、非常勤講師で会の顧問になる弓崎力也役の柳下大、そして脚本・演出を手掛ける大部恭平が、この作品について語り合う。

吉田知央・柳下大・大部恭平・石渡真修

7周年の締めくくりにふさわしい作品に 

──『ポエム同好会』は9年ぶりの上演ということですが、今回なぜこの作品を?

大部 今年は7周年ということで、今まで作った作品をもう一度、今できる状態で上演しようと思ってやってきたのですが、この作品は僕の初期に作ったものの中でも再演を望む声が高かったんです。話としては「ポエム同好会」の5人のメンバーと、それに関わる人たちが出てくるのですが、それを最近出会った人たちと一緒にやりたかった。そういう意味ではすごくメモリアルなキャスティングになったし、7周年の締めくくりにふさわしいと思っています。

──柳下さんは今回俳優として出演しますが、どんな経緯で参加することに?

柳下 僕がプロデューサーとしてスタートした『バンブーサマー2024』を作ったとき、協力してくれるような人を探して、いろんな知り合いに声をかけていたんです。その中で役者の友だちが紹介してくれたのが大部さんで、同い年で主宰と作・演出、役者もやっている人だと。それでちゃんとお話しする席を作っていろいろな話をしたのですが、そのとき大部さんが「大くんの場合は、まず出演したほうが早いんじゃないか」と。僕もプロデューサーをやりながら、やっぱり役者もやりたいなという気持ちもあったので、今回出演させてもらうことになりました。柳下大をもっと知ってもらう機会になれば、という大部さんの提案が有り難かったですね。それに『ポエム同好会』の台本もすごく面白かったので。

大部 僕は柳下大という人はもちろん俳優として知っていたし、作品も観ていました。それで初めて話をしたとき、昔から作る側にもなりたいという思いがあったことや、同い年であることがわかって、そんな大くんのクオッカーズ旗揚げという時期に、ずっと小劇場でやってきて舞台が好きな自分が出会えたことに、とても意味を感じたんです。

──そして、今回のダブル主演の石渡真修さんと吉田知央さん。このお二人の起用理由は?

大部 大好きだからです。

石渡・吉田 (笑)。 

大部 知央くんとは、去年の3月に『キミに贈るコント』という公演で共演していて。そのときに、知央くんがチョイスする芝居がすごく好みで、感覚の良さを感じたので、そのあと僕が監督したミニドラマに出てもらいました。そのときもポテンシャルの凄さを感じて、早く僕の芝居に出てもらいたいなと。ちょうどその前に、別の文脈で真修くんとも出会って、2月の『Joie!』という芝居に出てもらうことになり、その事前イベントにも出てもらったんですが、休憩時間に気がついたら1時間ぐらい話し込んでて。

石渡 話し込みましたね(笑)。

大部 止まらなかったんです。稽古中も一言の台詞について1時間ぐらい電話で話したりとか。でもそれが苦じゃないんです。そうやって本番を重ねていくなかで、絶対にまた一緒にやりたいなと思って。それも真修くんと知央くんのダブル主演ならとんでもないものになるんじゃないかなと。そうしたら実は真修くんと知央くんが仲良かったこともわかって。

石渡 5年ぐらい前に共演してからプライベートでも仲良くしていて、一緒にYou Tubeチャンネルもやってるんです。そういう二人が舞台でダブル主演できるというのは、僕らからしたら光栄ですし、またとないチャンスで、すごい嬉しかったですね。

吉田 僕もこの公演の話は嬉しかったです。大部さんの人間性にはミニドラマに出たときから惹きつけられていたし、大部さんの書くこういうコメディは面白いのを知っていたので、公演がすごく楽しみでした。

普通にポエムが好きになっている

──今はまだ今回の台本は完成していないそうですが、初演の台本とは大きく違うのですか? 

大部 ちょっと変えるねと言いましたが、すごく変えてます(笑)。  

石渡 僕は初演の台本も好きなんですが、軸は変わらないけれど、いろいろガラッと変わってて。でもすでに初演のときより好きなので(笑)、ここから結末に向かってどうなっていくか楽しみです。

吉田 早く完成したものを読みたいという気持ちもあるんですが、1日おきに更新されていく物語が、少年ジャンプのように楽しみで。

全員 (笑)。

吉田 この次どうなるんですか?という、それも込みで楽しく稽古できています。

──柳下さんの演じる力也も、初演とは違う感じですか?

大部 同じシーンに出てくる絵美という役がだいぶ違っているので、弓也も後半がかなり違ってます。

柳下 僕としてはやりやすいですね。カッコよく出てそれがあとで崩れていくという流れは、最初に思い切り気張れるので。

大部 いろいろ書き直しているのは、これは僕の2作品目で、今読むとやっぱりまだまだだなと思う部分があって、今回すごく魅力的なキャストが出てくれるのに、その良さを役が制御してしまうともったいないと。逆に役に食われるぐらいのものにしようと思って、全部の役を書き直すことにしたんです。真修くんと知央くんの関と権藤の関係も、2人の仲の良さに媚びないようにしたかったし、大くんの力也も年長者がいい顔をすることの滑稽さみたいなものを出したかった。全体的に「ポエム同好会」という世界の狭さみたいなものを出したかったんです。

──その「ポエム同好会」を物語の入り口にしたのがすごく面白いですね。とくに劇中で彼らが詠む「ポエム」、つまり詩が、いわゆるスタンダードな詩というより、ラップ的な言葉の羅列で、それをメンバーがセッションで詠んでいくというのがとても今だなと。

大部 言っていただいたように、僕自身が日本語ラップが大好きですし、アカペラのハモネプみたいなのも好きなんです。そういう意味で僕の好きが詰まった結果、すごいシュールな世界になったかなと思っているんです。

──そういう詩の世界なら出演する皆さんも、身近な感覚で捉えられそうですね。

石渡 台詞も詩も言いやすいです。それに初演で出てきた言葉も変わっていて、「フィーリングカップル」が、「恋愛リアリティーショー」になってたり、今のテイストのワードとか入ってて、時代を感じる言葉が散りばめられています。

吉田 僕ももし自分が観る側だったら、「なんだ?このポエムが好きな集団は?」ぐらいに思いながら観てるかもしれないですけど、さっき取材の撮影中に、大部さんと一緒に指を鳴らしてポエムを詠みはじめたら、良い詩ができて、みんなで情景が浮かんだって盛り上がって(笑)。普通にポエムが好きになってるから、このままいけるわと(笑)。

全員 (笑)。 

吉田 ラップは僕はとくに好きとかはないんですけど、歌だとけっこう歌詞に重きを置いてて、言葉の羅列とか好きなんです。だから周りにバカにされつつ(笑)、本当に一生懸命にポエムを追求したいですね。

──柳下さんはプロデューサーとしていろんな台本を読んでいると思いますが、大部さんの台本はいかがですか?

柳下 おぶちゃの作品は資料映像を3、4本見せてもらって、どれも面白かったし、この作品も初演の台本でも十分に面白かったのに、この9年間でさらに腕を上げていて、今回の台本は吉田くんの「ジャンプを読む面白さ」じゃないけど、飛躍的に面白くなっていると思います。

──基本的に短い会話でキレがありますね。

大部 会話を書くのはもともと好きで、とくに今年になってから自分でもちょっと研ぎ澄まされた感はあって。真修くんが出た『Joie!』でも、この一文字がいるかいらないかみたいなことも話し合ったんです。そういう話をみんなが聞いてくれるから、僕も役者さんに鍛えられるし、おかげでステップアップできているのを感じます。だからそれをこの『ポエム同好会』という作品で全部ぶつけたいなと思っているんです。それに僕は群像劇が好きなんです。僕の初舞台でルーツなので。でもただ漠然と沢山の人が出ているという芝居にはしたくないと思っているし、かといってどの台詞も意味がありすぎると、観ている方が疲れるので、そこはちゃんと考えて、観たあと「なんだかわからないけど残っちゃうな」ぐらいの感覚で受け取ってもらえる作品になるといいなと思っているんです。

芸術といういつまで続くかわからないものを信じて

──最後に伺いたいのですが、皆さんがこの作品世界から受け取るものは?

石渡 僕の関という役は、一番客観的にこの物語を見ていて、「ポエム同好会」の中で変わっていく自分を感じているし、ポエムについての考え方も変わっていくんです。関は終りのほうで権藤のために詩を詠むんですが、そこが僕はとても好きで。なんでこんなバカバカしい物語なのにうるっとくるのか、不思議だなと思いましたし、これをちゃんと表現できたら勝ちだなと。

──関は「ポエム同好会」には嫌々参加していただけに、大きな変化ですね。

石渡 同好会のメンバーが何かに向かって真っ直ぐに、愛と誇りを持って打ち込んでいる姿がめちゃくちゃキラキラしてて、それに惹かれて関も変わっていくんです。

吉田 僕もこの作品で学生時代のことを思い出したんですけど、校内カーストではないけれど人からバカにされても、真修くんが言ったように自分がしたいことを貫く「ポエム同好会」のメンバーって信念があるし、カッコいいなと思うんです。その姿を通して、社会にぶつけられるものもあるんじゃないかと思うので、そんな気持ちを乗せながら演じたいですね。

大部 今聞いてて、真修くんと知央くんの考えが似てるようで違うというところが、奇しくも僕が書いた関と権藤になぜこんなに重なるのかと。だからこそさっき言ったように、二人の関係性とかキャラクターに媚びずに、僕自身が関と権藤に改めてちゃんと向き合おうと思っています。二人のシーンとか書いていると泣きそうになるんですが、でも安易に感動にしたくないし、めちゃ笑いながら泣いてるというのが理想で、そういうものがこのポエムという未知の入り口を通して、みんなに刺さったらいいなと思うんです。

柳下 そういう意味では、初演は「ポエム同好会」全体についての話だったのが、今回は関と権藤の繋がりというか衝突というか、そこがフィーチャーされていて、それがこの作品の伝えたいことをより深く、より濃くしていて、それが今回の台本の素晴らしさに繋がっているのかなと。

──石渡さんが言ったように、バカバカしいのにうるっとくるのは、まさに青春とか若さの持つみっともなさとか、美しさでもあるのかなと。

大部 でも、今の僕らも彼らと重なっているんですよね。芸術といういつまで続くかわからないものを信じてしまっている人生を歩んでいるので、彼らを笑いながらも刺さってしまうところがある。でも、そんなふうにテーマや意味を追いかけるより、まずはこの作品の世界を楽しんでほしいし、僕らの「ポエム」を楽しんでもらえたらいいなと思っています。

石渡真修・柳下大・吉田知央・大部恭平

■プロフィール
いしわたりましゅう○神奈川県出身。ミュージカル『テニスの王子様』で注目され、舞台『錆色のアーマ』や『SK∞ エスケーエイト The Stage』など数々の話題作に出演し、活躍中。最近の主な出演作品【舞台】朗読劇『瞬くLIFE』、音楽朗読劇『手紙』、朗読劇『命がけの証言』、『ヒカルの碁』、『淡海乃海-天下静謐の雫となりて-』、『Life is Numbers』、音楽朗読劇『銀河鉄道の夜を、また』、『輪廻転生∞楽園ダイバー』、『Joie!』、【映画】 劇場版SOARA、【テレビ】「猫のひたいほどワイド」。


よしだちひろ○神奈川県出身。高校生の時に原宿でスカウトされ、「HR(雑誌)」のモデルとしてデビュー。2020年8月、舞台で共演している堀田竜成との音楽ユニット「march」結成。最近の主な出演作品【舞台】『ALIVESTAGE Episode9~オトアツメ~』、『テムとゴミの声』第二章~また会えたらなら~、『コトの葉』、『うみねこ荘のヌシ』、『ティアムーン帝国物語~断頭台【ギロチン】姫on The Stage~』、『消された声』、【映画】劇場版SOARA『I well-君が未来を歩くとき-』、【テレビ】「花のち晴れ」「先に生まれただけの僕」。


やなぎしたとも○神奈川県出身。2006 年に開催されたワタナベエンターテインメント主催「第3回D-BOYS オーディション」にてグランプリを受賞し、俳優活動をスタート。『タンブリング』『花ざかりの君たちへ〜イケメン☆パラダイス2011』をはじめ様々なドラマ、映画、舞台へ出演。D☆DATEとして音楽活動も経験。20 年に所属事務所を退社し、芸能界を引退。24年、舞台プロデュース事業「クオッカーズ」を立ち上げ、タレントではなくプロデューサーとして再始動、『バンブーサマー2024』を上演した。
 
おおぶきょうへい○神奈川県出身。おぶちゃ主宰。おぶちゃの全公演の脚本・演出を担当。作風としてリズム感のある台詞回し、人間味、温かみのある雰囲気・空間づくりの演出には定評がある。近年の主な脚本・演出作品は、【舞台】『キミに贈る朗読会 ~ほむら先生はたぶんモテない~』(演出)、【テレビ】U-NEXT配信ドラマ『見上げた空に、あなたを想う』(脚本・監督)など。俳優としても活動している。 

 
【公演情報】
おぶちゃ7周年記念公演
『ポエム同好会』
脚本・演出:大部恭平
主題歌:IKE & rice water Groove Production
音楽:IKE
出演:石渡真修 吉田知央 望月雅友 真野拓実 岡部直弥/未菜 宮﨑想乃 宮越愛恵 工藤菫 彩島圭叶 鈴理 紅羽りお/柳下大 髙畑岬 小谷嘉一
●10/9~14◎中目黒キンケロ・シアター
〈料金〉SS席9,900円[先行特典あり] S席7,700円[先行特典あり] A席5,500円 U-18席2,200円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※当日券700円増し
※先行特典:希望キャストの⾮売品ブロマイド L版 
※U-18は要身分証提示
〈公式サイト〉https://ofcha.biz/poem2024


【構成・文/榊原和子 撮影/田中亜紀】
  

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