『夕 -ゆう-』間もなく開幕! 宅間孝行・古屋敬多インタビュー
思い入れを持ってくれる人たちが沢山いる作品
宅間孝行が作・演出を手掛けるタクフェスの第12弾公演『夕 -ゆう-』が,11月1日よりサンシャイン劇場にて初日を開ける。(そののち大阪、福岡、名古屋、札幌公演あり)
本作は、宅間が主宰を務めた劇団・東京セレソンデラックスにて2003年に初演、その後、再演を重ねてきた名作で、タクフェスでは2014年の第2弾以来10年ぶりの上演となる。これまで宅間が演じ続けて来た「もっちゃん」こと相川元弥を演じるのはダンスボーカルユニットLeadの古屋敬多。宅間は元弥の父・相川登を演じる。
この作品について宅間孝行と古屋敬多に思いを聞いた「えんぶ10月号」のインタビューをご紹介する。
新たな元弥像を楽しんで生み出して欲しい
──今回10年ぶりに『夕 -ゆう-』を上演することになった経緯を教えてください。
宅間 以前やった作品で僕が演じた役を、次の世代の人に渡して僕が卒業する、ということがこのところいくつかあって、そういう意味では『夕 -ゆう-』は前回の上演から10年経ったので、非常に人気の高い作品でもありますし、ちょうど区切りもいいしこのタイミングでやろうか、ということになりました。
──これまで宅間さんが演じてこられた主人公の元弥を、今回古屋さんにバトンタッチするお気持ちを聞かせてください。
宅間 ああ、もうついに演じられなくなったんだな、寂しいな、という感じです(笑)。タクフェスとしても新しい世代のお客さんに楽しんでもらうんだったら、出演者も新しい世代の人の方がいいのかなとか、これまで観続けてきてくれているお客さんにとっても、ちょっと目先が変わって楽しいかな、と思ったりもします。あと、基本的にナチュラルベースの芝居をやろうと思っているので、あんまりいい年して元弥をやっても、役がナチュラルじゃないだろう、みたいな(笑)。だからもう、次々と新しい人たちに渡していこうかな、と思いました。
古屋 僕は過去公演の映像を見たのですが、宅間さんのもっちゃんのイメージが強すぎて、自分がやるというのがちょっとまだ想像ができないです(笑)。
宅間 僕のもっちゃんは気にしなくていいと思うよ。それぞれの役者さんが作る、新しい元弥像があっていいと思うから。オリジナル版の良さみたいなものはあると思うけど、でも新たに演じる人なりの何かがあるといいなと思いますから。
古屋 宅間さんがこれまでやって来られたもっちゃんとはまた違う、新しい要素みたいなものを感じさせた方がいいってことですか?
宅間 そうそう。基本的にお芝居の流れとかは一緒だから、何かが大きく変わるわけじゃないけど、でも演じる俳優さんが変われば印象は多少変わると思うから。2008年にこの作品をやったとき、永井大くんが憲太郎役で出演していたんですけど、それからずっと大は「もっちゃんをやりたい」って言っていたんです。だから今度『夕 -ゆう-』をやることを発表したとき、大が一番ビックリしてた(笑)。そういう思い入れを持ってくれる人たちもいるから、その人たちの分も思う存分楽しんでやったらいいんじゃないかな。
古屋 そうですね! ……永井さん、観に来られるんですかね?
宅間 来ると思うよ、きっと。
古屋 うわぁ、厳しい目で見られそうですね(笑)。
──そんな元弥役に挑むにあたり、今のお気持ちはいかがでしょうか。
古屋 やっぱり僕の中のもっちゃんは宅間さんなので、それを自分がやったときにどうなるのか……あと宅間さんのもっちゃんって、どこまでが台本通りで、どこまでがアドリブなのかわからない感じもあって、僕はそのあたりのバランスの取り方とかもまだわかってないので、どんな具合でやったらいいんでしょうね……でもワクワクします。
親子役でどんな関係性を作れるか
──古屋さんはグループでの活動と並行して舞台作品へのご出演も非常に多いですが、舞台のどんなところに魅力を感じていますか。
古屋 役に入り込むとか、何かになりきるというのが自分の気質的に合っているな、と思うので、ステージ上にいるときは本当に楽しいです。でも『夕 -ゆう-』は結構ナチュラルなお芝居なので、今回は演じるというより「あの中でどう生きるか」みたいなことをテーマにやれたらと思っています。
──お二人は今日が初対面とうかがいました。古屋さんは、宅間さんがどんな方かどなたかに聞いたりしましたか。
宅間 あいつ怖いよ、とかいっぱい言われた?
古屋 怖いらしいけど、大丈夫? とか言われましたけど(笑)、ビビる気持ちよりも、『夕 -ゆう-』をやりたい気持ちの方が大きかったので。宅間さんのことは映像で見ていたので、「わあ、映像に出てた人だ」みたいなミーハー心みたいなのもあって(笑)。本当はどんな性格の方なのかな、とかはすごく今から気になっています。
宅間 僕の性格は簡単です。真面目なんですよ。だからつい「サボらないで!」ってみんなに言っちゃうんですよね。それで怖い、と思われちゃったりして。
古屋 なるほど、そういうことですか。
宅間 お客さんは高い入場料を払って観に来てくれるわけで、やっぱりそのお客さんたちに対してちゃんとお見せするものを誠心誠意作るように頑張ろうよ、と思うから、サボってる人がいると「おいっ!」って言っちゃうんだよね。今回は初めましての人たちがいっぱいいるから、また怖いって思われちゃうのかな、と稽古場に行くのが怖くてしょうがないんですよ。
古屋 僕も皆さん初めましての人たちです。
宅間 古屋くんもそうなんだね。稽古はみんなで仲良くやれればいいなと思っています。といっても、仲良くなることが目的じゃなくて、一生懸命やった先に生まれる関係性として、仲良くなれたらいいなと。
──関係性の作り方という意味では、今回お二人は親子の役です。
宅間 そう、親子なんだよね! でもお父ちゃんはあんまりワーワー言う感じではないし、元弥ともあんまり芝居で絡んでないんですよね。まあ、今回どうするかはまだわからないですけどね。もうちょっと遊ぶかもしれませんが、やりながらそこは考えます。
古屋 ぜひ、遊んでいただきたいです!
──これまで元弥を演じて来た宅間さんが元弥の父親役ということで、親子の関係性にも何か新たなものが加わりそうで楽しみです。
宅間 そうですね。とにかく古屋くんには頑張って欲しいと思っています。せっかくもっちゃんをやるんだったら「古屋くんのもっちゃん、良かった!」と言ってもらいたいですからね。
古屋 元弥はお父さんに対して「なんかカッコいいな」みたいなふうに思っていて、どこか憧れて影響を受けているんじゃないかな、と勝手に想像しています。どうしても宅間さんのもっちゃんのイメージを抱えたところからのスタートになると思うので、逆にお父ちゃんとの間にそのあたりの意識が出せたらいいのかな、なんて思っています!
【プロフィール】
たくまたかゆき○タクフェス主宰。1997年、劇団「東京セレソン」を旗揚げ。01年「東京セレソンデラックス」に改名を機に主宰・作・演出・主演として活動。13年「タクフェス」を立ち上げる。役者・脚本家・演出家として活躍。劇団作品の映像化は、ドラマ『歌姫』『間違われちゃった男』『流れ星』、映画『くちづけ』『あいあい傘』など多数。現在配信中のYouTube連続ドラマ『THE BAD LOSERS』シーズン1&シーズン2、8月18日より放映中のABCドラマ『素晴らしき哉、先生!』では全話、脚本・監督を手掛けている。
ふるやけいた○福岡県出身。ダンスボーカルユニット「Lead」のメンバー。近年ではアーティスト活動と並行して、舞台・ミュージカル等でも幅広く活動している。主な出演作品はミュージカル『アラバスター』『RENT』『ラフヘスト〜残されたもの』など。
【公演情報】
タクフェス第12弾『夕 -ゆう-』
作・演出◇宅間孝行
出演◇矢島舞美 古屋敬多(Lead)/松本幸大 中村静香 久保田秀敏 三戸なつめ 浜谷健司 廣瀬智紀 大薮丘 吉田英成 住永侑太 吉川真世(劇団4ドル50セント) 市島琳香/藤田朋子/宅間孝行
●11/1~10◎東京 サンシャイン劇場
●11/14~17◎大阪 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
●11/23◎福岡 キャナルシティ劇場
●11/29~12/1◎名古屋 ウインクあいち大ホール
●12/12◎札幌 カナモトホール(札幌市民ホール)
〈お問い合わせ〉東京公演 サンライズインフォメーション0570-00-3337(平日12:00-15:00)
〈公式サイト〉https://takufes.jp/yuu2024/
【文◇久田絢子 撮影◇中村嘉昭】