
つかこうへいに師事したメンバーによって結成された9PROJECTが戦後80年の節目の年に挑むのは、つかこうへいの作品の中でも最大の衝撃作ともいえる『広島に原爆を落とす日』。1979年に西武劇場で風間杜夫スペシャルとしてつかこうへい自らの手で初演され、その後も若き日の劇団☆新感線や稲垣吾郎、筧利夫の主演作など数多くの意欲作が生まれたのだが、つか自身の演出による再演はなく、正式に残された戯曲もない。
極端とも言える出来事から浮かび上がってくる衝撃の波動、そして膨大な台詞の数々。際どく重いテーマを描きながら観る者をピュアな世界に誘い込んで行く劇的マジック。
本公演は、つかこうへい存命中より様々なつか作品の脚色・演出を任され、小説、ドラマ、舞台化などを手掛けてきた渡辺和徳が、1984年に大きくストーリーを変更して発表された小説版をベースに脚本を書き起こし舞台化する新たな“つか作品”となる。
脚本・演出を手掛ける9PROJECT代表でもある渡辺和徳からのメッセージが到着した。

「広島に原爆を落とす日」は、自分にとっても縁の深い作品です。2010年の公演(演出:岡村俊一)では、稽古中につかさんが亡くなり、図らずも追悼公演となりました。2015年の公演(演出:錦織一清)でも脚本に関わり、節目節目で向き合う作品だな、と感じています。
今作では、小説から新たに脚本を書き起こすことにしました。犬子恨一郎という一人の将校を主人公に、日米開戦から終戦までを描く壮大なフィクションです。恨一郎は、二度と核兵器が使われることのない世界を願い、自分が最も愛する女性を犠牲にして原爆投下のボタンを押します。作中で繰り返し語られるのは、「原爆は人間の正しい意思のもとに投下されなくてはならない」というものです。「そんなものがあるはずがない」という登場人物の回答は当を得たものではありますが、それこそ、つかこうへいがずっと探し続けていたものだと僕には思えるのです。
二度と核が使われることのない“新しい世界”を夢見て、原爆投下のボタンを押した男と、それを受け止めた女。二人の強い意志の力が、今を生きる私たちへの問いかけになればと思っています。
(脚本・演出:渡辺和徳)

【あらすじ】
太平洋戦争開戦前夜——。アメリカに勝利するにはドイツの参戦が不可欠と判断した時の首相・重宗伊作は、一人の刺客の女を呼び寄せる。その女こそ、髪百合子。三百年続く刺客の一族・髪一族の末裔であり、犬子恨一郎が幼い頃に出会い、誰よりも愛した女であった。
やがて真珠湾攻撃を立案し、アメリカに大打撃を与えることに成功した恨一郎。しかし、アメリカはその裏で、たった一発で何十万もの人間を殺すことができるという新型爆弾・エンジェルの開発を続けていた…。

【公演情報】
9PROJECT
『広島に原爆を落とす日』
原作◇つかこうへい
脚本・演出◇渡辺和徳
出演◇高野愛 藤原儀輝 中村猿人 玉一祐樹美 芝原れいち KOH 初芝美緒 芝原啓成 塩澤優希
11/21〜24◎シアターX
https://www.9-project.net/vol23/




