
ポウジュの新作公演『Downstate』が、12月11日より下北沢・駅前劇場で上演される。
ポウジュは2024年に演出家の稲葉賀恵と翻訳家の一川華によって旗揚げしたユニットで、本年1月の『リタの教育』『オレアナ』2人芝居の同時上演で、稲葉賀恵が第33回読売演劇大賞の演出家賞の候補に上がっている。
第二弾となる本作は、トニー賞、ピューリッツァー賞などの受賞歴を持つアメリカの劇作家ブルース・ノリスによる未成年者への性犯罪加害者を巡る会話劇で、日本初演。
未成年者に対する性犯罪の刑期を終えた4人の男たちが暮らすグループホームを舞台に、「許されざる罪」に対する社会の向き合い方を問う問題作となっている。
その作品で、ホームに足を運び、男たちの生活を見守る保護観察官アイヴィーを演じる桑原裕子へのインタビューが届いた。

《桑原裕子インタビュー》
──約一ヶ月間、稽古をして感じたことは?
扱っている社会問題や描かれている内容そのものの恐さよりも、自分自身をぐらつかせる恐ろしさを感じています。作品で描かれている内容と実生活がかけ離れていても、自分の理性や倫理観と照らし合わせる瞬間がたくさんあって、自分は何を正しいと思っているんだろうと常に鏡を見ているような感覚になります。「笑って泣ける芝居だから来てください」というような芝居ではそもそもないのだけれど、笑える瞬間も泣ける瞬間もあり、そのくせどちらの感覚に陥っても後悔したり、こう感じるのはいけないんじゃないかと悩んでしまう。見てくださる方は悩ましく心が揺さぶられるのではと思います。
──翻訳劇を演じてみて手ごたえはいかがですか?
翻訳劇への出演はあまり経験がなかったので、すごく苦戦するのではないかと思っていました。だけど、一川華さんの翻訳が面白くて、フラットで、脚本を読んでこのせりふはどう言えばいいのだろうと悩んでいたことでも、口に出すとしっくりくるものが多いんです。それがとても面白い発見でした。声に出したときに初めて、このせりふって固くないんだ!とわかる瞬間があって、それを楽しんでいます。演出家の稲葉賀恵さんと翻訳家の一川華さんの二人と一緒に稽古をしているので、すごく心強いです。

──作品の注目ポイントは?
私が演じる保護観察官のアイヴィーは「共感力」というものの危険性をわきまえていないといけない中立の立場です。見ている方はきっと色々な方向から共感力が刺激されると思いますが、うかつに共感できなかったり、共感したあとに尻込みしたりする瞬間がある、なかなかほかでは感じることのできない作品です。見る人によってどう感じるかが違うと思うので、ある種、踏み込んだ話になるだろうけれど、ぜひお客さん同士で感想を話し合ってほしいし、私も見てくださった方とお喋りしたい気持ちです。普段なら目をそらしたくなることを突き付けられるぶん、考えたり話し合ったりできる機会になれば嬉しいです。
──お客さまにメッセージをお願いします。
食べやすくて飲み込みづらい、なんとも言えない味のする芝居だと思います。苦しい作品ですが、恐怖を押し付けるようなものでもないので構えずに見て頂ける作品でもあります。ぜひ、体験しに来てください。

【公演情報】
ポウジュVol.2『Downstate』
作:ブルース・ノリス
翻訳:一川華
演出:稲葉賀恵
出演:尾上寛之、豊田エリー、大鷹明良、植本純米、串田十二夜、大石将弘、桑原裕子、夏目愛海、岡野一平、中野風音、丸林孝太郎
●12/11〜21◎下北沢 駅前劇場
〈公式サイト〉https://www.pauju-play.com/next
【アフタートーク情報】
12月12日(金)18:30 柏木しょうこ(映像・英米文学翻訳家)
12月14日(日)18:30 岡本玲(俳優)
12月16日(火)18:30 斉藤章佳(精神保健福祉士/社会福祉士)
12月18日(木)18:30 大石継太、湯川ひな(俳優/ポウジュVol.1『リタの教育』『オレアナ』出演)
※いずれも稲葉賀恵、一川華が登壇します。
【鑑賞サポート情報】
12月14日(日)13:00
12月20日(土)13:00
バリアフリー字幕タブレット貸出、受付での手話通訳・筆談対応、台本貸出
※12月20日(土)13:00 終演後は感想シェア会を実施
(写真撮影:交泰)



