
つかこうへい十七回忌特別公演「熱海殺人事件」ラストメッセージが、2月14日、紀伊國屋ホールにて幕を開けた。初日を目前に控えた13日にその公開ゲネプロが行われた。
紀伊國屋ホールで「つかこうへい復活祭」として追悼公演を重ねてきてから16年。節目となる今回の上演は、“再演”という言葉では片づけられない緊張感をまとっている。
それは作品の力というより、今この時代にこの戯曲と向き合う覚悟が、舞台上の一挙手一投足ににじみ出ていたからだ。
【公開ゲネプロレポート】

本日、初日を迎えたのは、荒井敦史・村山彩希・百名ヒロキ・高橋龍輝によるチームライオン。
開演と同時に爆音で流れるチャイコフスキー「白鳥の湖」。おなじみの導入でありながら、客席の空気は一瞬で張り詰める。
黒電話の受話器を握り、舞台中央に立つ木村伝兵衛部長刑事。
荒井敦史が演じる伝兵衛は、声量や勢いだけで押し切るのではなく、舞台全体を支配する“重心”のような存在としてそこにいる。笑いも怒号も包み込みながら、逃げ場を与えない。その立ち姿だけで、この舞台のルールが提示される。

そこへ現れる熊田留吉刑事。
高橋龍輝の熊田は、荒々しさの中に鋭い集中力を宿し、伝兵衛に食らいつくことで場の熱量を一段階引き上げていく。セリフの応酬というより、呼吸のぶつかり合いが舞台を前に進めていく印象だ。

村山彩希演じる水野朋子婦人警官は、クールな佇まいの中に観客の視線をさらうリズムを持ち込む。軽やかさと強さ、そのどちらにも偏らず、舞台上の空気を自在に変化させる存在として機能している。

百名ヒロキの大山金太郎は、物語が進むにつれ、その輪郭を大きく変えていく。素朴さ、滑稽さ、そして痛み。伝兵衛の手によって“作られていく犯人”の過程が、過剰な演出ではなく身体の変化として積み重ねられていくのが印象的だ。

【今回の「熱海」が突きつけるもの】
『熱海殺人事件』が長く上演され続けてきた理由は、時代が変わってもなお、作品の問いが色あせないからだろう。
マスコミと大衆、加害と消費、正義と暴力。
差別や貧困、格差といった問題は、形を変えながら今も私たちの足元に存在している。
この作品は、それらを“きれいに整理”しない。むしろ、目を背けたくなる形で突きつけてくる。
人間はここまで残酷になれるのだと。そして同時に、そこから目を逸らさず生きるしかないのだと。
副題に掲げられた「ラストメッセージ」。
それは感傷的な別れの言葉ではなく、観る者一人ひとりに向けた静かで強い問いかけだ。
この時代を生きる私たちに手渡される、重く、そして開かれたメッセージとして舞台上に立ち上がっていた。




なお、本公演はダブルキャストでの上演となる。チームユニコーン(荒井敦史・大原優乃・横田大雅(CLASS SEVEN)・高橋龍輝)は、2月17日に初日を迎える。
13日の公開ゲネプロではライオンチームの上演が披露されたが、ユニコーンチームもまた、それぞれの解釈と熱量で本作に向き合い、初日に向けて準備を重ねている。
【チームユニコーン 稽古写真】








【公演情報】

つかこうへい十七回忌特別公演「熱海殺人事件」ラストメッセージ
作:つかこうへい
演出:中江功
出演:
チームライオン:荒井敦史 村山彩希 百名ヒロキ 高橋龍輝
チームユニコーン:荒井敦史 大原優乃 横田大雅(CLASS SEVEN) 高橋龍輝
●2/14〜3/2◎紀伊國屋ホール
〈問い合わせ〉Mitt 03-6265-3201(平日12:00〜17:00)
〈公式サイト〉http://rup.co.jp/stage/atami_2026.html
【撮影/チームライオン公開ゲネプロ:神ノ川智早 チームユニコーン舞台稽古写真:RUP】



