
舞台上に立つのは3人だけ。それもリモートでの会話で物語が展開するという、新感覚の濃密な心理サスペンス劇『TRIANGLE』が、2月20日〜23日に新宿村LIVEにて上演される。
本作は、コロナ禍で当たり前となった“コミュニケーションツール”を使って描かれる、事情を抱えた人物たちの物語だ。脚本・演出を務めるのは、自身も俳優として幅広く活躍する伊藤裕一。売れっ子作家・上川大也を内藤大希、新人ライター・山口弓を前島亜美、上川と共に暮らす謎多き少年・夕女(ゆめ)を陣 慶昭が演じる。今回は、2月20日(金)の初日を前に熱のこもった稽古場の様子をお届けするとともに、前島亜美に公演への意気込みを聞いた。

【稽古場レポート】
舞台の上には、2つの机とイス、そして1台の本棚。その周りには、プラスチックが散りばめられていて、動き回ると音がする。物語は、山口(前島)が上川(内藤)にリモートインタビューを行う形で進んでいく。上川、山口はそれぞれの机に座り、机上にパソコンがあるものとして、正面(客席)を向いて会話を進めていく。
物語は4日間の出来事を描いているため、1日目、2日目、3日目と1日ずつ場面を区切って稽古が行われた。

先述したように正面を向いて会話をしているため、上川役の内藤と山口役の前島は互いの表情や仕草を見ることがないまま、言葉を交わしていく。さらに、机を前に座っている姿勢からほとんど動かないため、体での表現も限定的だ。だからこそ、小さなニュアンスが大切になるのだろう。場面ごとに行われるノートの時間では、伊藤からセリフ一つひとつまで、丁寧な演出がつけられた。

印象的だったのは、「呼吸を止めないこと」という演出だ。「呼吸をすることで、何が起こっているのかを表現したい」「相手が話しているときは特に、ただ待つのではなく、意識して呼吸をする」と伊藤は話す。大きなアクションが少ない物語だからこそ、細やかな表現が大事になってくるのだ。ぜひ、呼吸1つにまで注目してご覧いただきたい。

内藤が演じる上川は、小説家という役柄もあるのか、大きな焦りや不安といった本心をあまり見せず、どこかゆったりと構えている。

一方で、前島が演じる山口は、朗らかで気遣いの人。仕事でインタビューをしているのだから当然かもしれないが、上川の一挙手一投足に意識を巡らせ、相手を尊重する姿勢を見せる。

そして、夕女を演じる陣は、純粋で幼さがしっかりと感じられる少年を体現した。その幼さゆえか、危なっかしさも感じられ、目が離せなくなる。
それぞれが何かを抱えているのだろうが、リモート会話中は不気味なほど穏やかな空気が流れている。しかし、少しだけ綻びが見えたとき、不穏が急に顔を出す。そこに隠されているものは何なのか。物語の後半に向けて秘密が明かされていく。

稽古場を訪れた日はまだまだ稽古中盤だった。ここからさらに芝居を深めていくことで、ステージで放つ空気もきっと変わってくることだろう。小さな感情の動きが積み重なることで生まれるなんとなくの違和感。期待して初日を待ちたい。
【前島亜美インタビュー】

──お稽古も中盤を迎えていますが、手応えはいかがですか?
日々、立体的になってきているのを感じます。毎日の稽古の中で新しい発見や新しい感情との出会いがあって、脚本の素晴らしさを改めて実感しながら、楽しく稽古をしています。
──改めて今、この作品の魅力をどんなところに感じていますか?
初めて読んだときの衝撃も大きかったですが、読み解いていくと伏線だらけで、1文字も無駄な言葉がなく、全てが作品に必要で、それを心身で感じていくのがとても楽しいです。内藤さん、陣さんもそれぞれの色や匂い、空気を持っている方なので、お二人とお芝居ができることも楽しんでいます。
──リモート取材をしているという特殊な設定のお芝居には難しさもあるのではないですか?
お互いにパソコンに向かい合っているという体で、2人とも(前島と内藤)正面を向いているので、相手の表情が見えない中でのお芝居は怖いですし、よりお互いを信じなくてはいけないと思います。先日、そうしたお芝居に慣れるためにリモート稽古を行ったんですよ。それぞれの自宅からリモートを繋いで、取材のシーンのお芝居をするという稽古だったのですが、そのときに初めて内藤さんがお芝居をされているときの表情を見ることができたので、すごく勉強になりました。
──前島さんが演じる山口という役柄については、どのように考えていますか?
上川さんの本に特別な思い入れがあるというところは、私も本好きとしてすごく共感しています。ただ、彼女の心の動きや彼女の持つ原動力を表現するのはとても難しいなとも思っています。劇中で描かれているのは4日間の出来事ですが、それまでの彼女の人生をそこに乗せて表現していかなくてはいけないですし、観ている方が共感できる、理解できる人物にしていきたいです。
──そうすると、演じる上で特に意識されているのは、共感できる人物であるというところなのでしょうか?
そうですね。山口の憎めないところは、優しさを捨てていないところだと思うんです。人生に絶望することはすごく簡単な場合もあります。でも、山口は希望や誰かに対しての愛を捨てていない。そうした姿が人の心を打つのではないかと思います。たとえ山口に共感できなかったとしても、暖かく見守ってもらえる人物像を作り上げていきたいです。私自身もできる限り、彼女に寄り添いたいという思いがあるんです。これまでの枠を超えて爆発することが必要になる役なので、寄り添いながら演じていけたらと思っています。

──上川役の内藤さんの印象を聞かせてください。
現場を明るくしくださり、みんなを繋いでくれる方です。先輩にこういう言い方をすると失礼かもしれませんが、愛嬌があって、人に愛される方。そうしたところが眩しいですし、心強い座長です。それから、音に対しての感覚が鋭いのだなと感じました。本番で流す音楽が流れると、その音の意図をすぐに汲み取っていらっしゃったのが印象的でした。
──陣さんはいかがですか?
陣さんも眩しいです。世間の影響から隔絶されて守られている、ピュアで純粋で透き通った方という印象があります。軽やかですが、役者としての強い想いも感じます。
──では、伊藤さんの演出についてはどのようにお感じですか?
伊藤さんとは俳優として3回ほど共演させていただいたのですが、現代に合わせて価値観をアップデートされていらっしゃる方なんだなと思います。演劇だけでなく、多くの芸術や作品にどんどん触れられていますし、役者の気持ちも分かってくださる。演出のアドバイスも理論立っていて体温があってとても伝わりやすいです。すごく信頼できる方だなと思います。
──最後に改めてお客さまにメッセージをお願いします。
三人芝居でお届けする演劇です。皆さまの心に何か言葉が残れば良いなと思ってみんなで頑張って稽古をしております。山口に共感できない方もいらっしゃるかと思いますが、こういう人生を生きるしかなかった人間たちがいることを見届けてもらえたら嬉しいです。

【公演情報】
舞台『TRIANGLE』
脚本・演出:伊藤裕一
出演:内藤大希 前島亜美 陣慶昭
●2/20〜23◎新宿村LIVE
〈料金〉10,000円(全席指定・税込)
〈チケット取扱い〉イープラス https://eplus.jp/triangle2026/(PC&スマートフォン)
〈公式サイト〉https://le-himawari.co.jp/galleries/view/00132/00754
【取材・文・撮影/嶋田真己】



