
二人で創り上げることで、必ずすごいものが生まれる!
階級社会を背景に、親と子、兄弟の絆、人間同士の運命を描き、高い普遍性を持ち続けるミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』が、東宝製作作品としては約16年ぶりに三月〜四月シアタークリエで上演される。
本人たちの全くあずかり知らないところで運命に翻弄される双子の兄弟と、その母親のたどるドラマは、英国初演から40年を経ても色褪せないばかりか、現代社会をも映し出すなか、双子の兄弟を演じる渡邉蒼と島太星がこの作品の唯一無二の魅力から、互いに感じる魅力までを語り合ってくれた。
物語の歯車を進めるミュージカルナンバー
──まずご自身の役柄を紹介していただけますか?
渡邉 僕の演じるミッキー(マイケル)と太星くん演じるエディ(エドワード)は、元々はジョンストン家に生まれた双子だったのですが、経済的に困窮している家庭で、双子を育てられず、エディは裕福なライオンズ家に引き取られて別々に育つんです。子供時代のミッキーは日本にもよくいるような明るくてやんちゃな子で、子供故の危険さみたいなものを持ち合わせているものの、誰かを傷つけることは何より嫌っている、とても愛らしいキャラクターです。
島 僕の演じるエディはずっと子供が欲しかったライオンズさんに育てられて、愛情も経済的にも豊かななかで何不自由なく育ったため、誰かに怒られた経験もないんです。負の感情を持つことがないまま成長していて、実は双子の兄弟だとは全く知らずにミッキーと出会って友達になるんですが、やっぱりミッキーは苦労している分、早く大人の心を持ち始めるんです。
渡邉 二人が出会った七歳の時と、十四歳で再会する時に同じメロディーを歌うんですが、1幕では「めっちゃいい親友が出来た、俺の親友かっこよくてすごいんだよ」と、とても純粋なのに、2幕では「なんで俺はあいつみたいになれないんだろう、なんでこんなに違うんだろう」という悩みが生まれていて。そこから十八歳になって階級社会の格差を更に感じていき、様々な問題に発展していくので、その変化がすごく重要になってくると思いますが、難しいですよね?
島 作品としても1幕はほぼ七歳で、そこからポンと十四歳に飛んで、ぐんと大人になっているミッキーとの差を感じたエディも葛藤していくのですが、心根はあまり変わっていないエディをどう構築するのか、葛藤している段階です。
──同じメロディーで、歌詞が全く変わっているという楽曲についてはどうですか?
渡邉 ミュージカルナンバーって、物語のなかでキャラクターの心情変化や、感情の昂りを歌うものが多いと思うんですが、この作品では物語の歯車を進めるための手段、みたいなに感じます。特に東山義久さんが演じていらっしゃるナレーターの存在が『ブラッド・ブラザーズ』の大きな特徴で、本来僕たちの世界にはいない人間なのですが……
島 すごくこちらに干渉してくるよね。それで物語が動いていく。
渡邉 そう、僕らがまるで操り人形かのようで。ナレーターはそれこそ同じメロディーを何度も歌うし、しかも歌詞も変わらないのに、僕らが置かれている状況によって、聞こえ方がみるみる変わってきますから。
島 繰り返すことで見えるものまで変わっていくのが深いなぁと思うので、自分でも七歳の時と十四歳の時とで、同じメロディーに別の解釈や要素を足していけたらと、稽古を重ねています。
僕たちのコンビは僕たちの作品
──七歳の子供時代から演じる作品ということで、お二人それぞれの子供時代を振り返っていただけますか?
渡邉 僕は自信に満ち溢れてました。
島 本当? 素敵だね!
渡邉 今より尖っていたというか、歌やダンスやお芝居、好きなことばっかりやっていて「僕が一番だ!」と思っていたんです。でもそういう気持ちってある程度成長したところで折れるんです。自信満々だったからこそ、そうじゃないとわかった時のバキッという音が、いまでも心に残っています。
島 すごいなぁ。僕は幼稚園に行っても1時間以内には脱走して家に帰ってきてたんだって。それくらいお母さんと離れられない子供だったから、全然違うね。蒼くんやっぱり天才なんだよ。
渡邉 え? どうしてですか?
島 蒼くんのお芝居を観ていて、この人天才だなと思ってたの。演技って確かに正解はないんだろうけど、蒼くんのお芝居はどれだけの数の表現を思いつくんだろう、というほど毎回変わっていくんだけど、そのどれもに引き込まれる、僕が想像もできないところに行くから尊敬しかない。
渡邉 それは太星くんがすごく優しくて、全部包み込んでくれるから自然に色々なことができているんだと思います。今回Wキャストだけど組み合わせが固定だから、この間はじめて二人で二幕の本読みをしたとき、太星くんが読んでくれることで、人間の可愛らしさや面白味みたいなものを宿してくれたんですよね。だから僕もそれをたくさんもらえたら嬉しいなと思っています。あとは製作発表会見で演出の日澤雄介さんが「それぞれの組み合わせで二つの別の作品を創っている」と言ってくださったことにすごく安心して。
島 僕もそれはとっても嬉しかった! やっぱり小林亮太くんと山田健登くんのペアのこともすごく知りたいし、大変だけどシャッフルだったらまた知れたこともあるのかなと思っていたけど、僕たちのコンビは僕たちの作品なんだって考えられたから。『ブラッド・ブラザーズ』は長く上演されている名作で、僕自身この作品に出会えて良かったと心から思えているし、蒼くんと一緒に創り上げることですごいものが生まれると確信しているから、是非何度でも観に来ていただきたいです。
渡邉 やっぱり近年に生まれたミュージカルとはひと味違う魅力のある作品だし、話の流れはとてもシンプルですが、おとぎ話のように意地悪なおじいさんや、悪い魔女が出てくるわけではない。人間として理にかなった欲望や願いが母親たちから息子に受け継がれて、厳しい社会情勢のなかで望まない結果になっていくことがすごくリアルで、いまの時代にもいくらでも起こり得ること。でも2幕の半ばまではすごく楽しい話だし、だからこそ終幕に向かって忘れられない台詞もたくさんあるんです。お客様の反応も全部受け止めるつもりで舞台に立たせてもらいます! 是非劇場にお越しください。
(このインタビューは「えんぶ4月号」より転載)
インタビュー◇橘涼香 撮影◇中村嘉昭 ヘアメイク◇大西花保(B☆side) スタイリスト◇小林聡一郎(渡邉)、ヘアメイク◇YAHAGI RITSUKO スタイリスト◇小林洋治郎
プロフィール
しまたいせい〇北海道出身。2016年「NORD」のメンバーとしてデビュー。ニューヨーク・アポロシアター「アマチュアナイト」での歌唱が高く評価され、音楽番組にも多数出演。近年はミュージカル俳優としても期待を集め躍進を続けている。主な出演舞台作品に『聲の形』『ルーザーヴィル』『ロミオとジュリエット』『GIRLFRIEND』『フランケンシュタイン』『四月は君の嘘』などがある。
わたなべあお〇東京都出身。小学生時代から子役として活躍し、現在は映像作品から、舞台・ミュージカルなどに活躍の場を広げているほか、2023年本格的に音楽制作を開始。作詞作曲・編曲までマルチにこなすシンガーソングライターとしても活動中。主な出演舞台作品に『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』『ダーウィン・ヤング 悪の起源』舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』『デスノート THE MUSICAL』などがある。






