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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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大石継太×加納幸和(花組芝居)インタビュー

異なるフィールドで活躍してきた大石継太と加納幸和がunrato#14『夢去りて、オルフェ』に出演する。出会って40年以上だが、意外なことに今回が初共演。因縁の旧友という役柄、そして清水邦夫戯曲の言葉にどう向き合っていくのか、稽古場で話を聞いた。
大石継太・加納幸和

――おふたりは古くからお知り合いだったそうですね。まず、いつごろ、どのように出会ったか教えてください。
加納
 もうすでに記憶は遠いのですが、演出家・蜷川幸雄さんが率いるニナガワスタジオ(注1)がベニサン・ピット(注2)で公演していて、その舞台美術を母校の日本大学芸術学部の学生がつくっていたんです。後輩がニナガワスタジオに入ったりして、ちょいちょい一緒に飲んだりする中に大石くんがいたと思います。
大石 そうですね。あの頃の小劇場は、共演はしたことがなくても横のつながりがいっぱいありました。加納さんの花組芝居を観に行って、終演後に知り合いの俳優と飲みに行ったら、隣の席になったり。
加納 あの頃のベニサンは聖地でしたね。 ニナガワスタジオさんはそこに稽古場を持っていらっしゃって、僕もベニサンのプロデューサーに「使いなさい」と言っていただき自分の稽古場ができるまではずっと稽古をしていました。花組芝居の旗揚げ公演『ザ・隅田川』(1987年)もベニサン・ピットでした。
大石 ベニサンに行けば誰かが稽古していましたからね。
加納 あの場所には、大きな意義があったと思います。

――初共演が決まったときはどう思われましたか?
大石 僕はびっくりしました。初めてなのでちょっと緊張もありましたね。芝居を続けていると、こういうことがある。続けることは、いいことだなと思いました。
加納 本当に! 同世代で小劇場を続けてきて、この年齢になって初めてご一緒できるなんてほとんどないですからね。

――稽古をしてみて、いかがですか?
加納
 大石くんはすごく自由! でも、それがいいの。刺激を受けています。蜷川さんの現場ですごいことをやってこられたんだなと。 いわゆる発想力、瞬発力もちゃんとしてる。 百戦錬磨ですね。
大石 いやいや…。加納さんは言葉の力が、本当に素晴らしい。最初と最後に登場されるのですが、きちんと言葉が伝わってくるんです。
加納 こういう役回りは何回かやったことはあるのですが、すごい緊張感です。泉鏡花や三島由紀夫の戯曲をやってきたのがよかったですね。花組芝居の稽古の時も、その文節、単語一つひとつ、どういうイメージを持つか考えて、口跡もちゃんとやろうねと言っています。
大石 ラストでお芝居をあれほど締められるのは本当にすごい。加納さんの最後のせりふを聞いて、言葉っていうのは本当に大事だなって思います。

――大石さんは思想家の北一輝が生きていると信じる高校教師の桂木一機。加納さんは警察官の中原源三を演じます。それぞれの役についてお話ください。
大石 一機は、言葉をいっぱい知ってる人、言葉を操る人だなと思います。それがこの虚実入り乱れた物語につながっている。 あとはなぜかモテる。本人は自覚していないと思いますが、その発想や言葉の何かに女性はひかれるのかな? 僕とは正反対ですね。
加納 中原は、演出の大河内直子さんのイメージでは佐分利信(注3)だそうです。お聞きして「どうしよう、どうしよう!?」となりましたよ。さらに、作者の清水邦夫さんでもあってほしいと。一機は清水さんの理想の男性、自分がなりたかった魅力的な存在なのかなと思って、中原はその一機と対立しているポジションと考えています。

――清水邦夫さんの戯曲はいかがですか? 『夢去りて、オルフェ』は少しほかの作品とテイストが違うと感じます。
大石
 違いますね。楽しいし、清水作品の導入としては入りやすいと思います。でも、俳優はそこに引っ張られると大きな落とし穴がいっぱい待っている。エンターテインメント性もあって、だからこそ難しく大変。
加納 非常に詩的なものがあり、多分ナチュラルにやるだけじゃ無理。人間の生の感情を、俳優が書かれてる言葉に合わせてコントロールして表現していかないと、到底やれない戯曲だと感じています。
大石 そうですね、清水さんの戯曲は詩的な言葉がいっぱいあるのですが、その中に強いエネルギーを秘めている。言葉はこんなに美しいのに、その美しい中にはザラザラしたものが必ずある。役者がその両方と戦うのは、すごくエネルギーがいります。
加納 しゃべってみると、リズム感があって言いやすいんです。でも、微妙な単語の使い分けをしていて、例えば、一人称が“私”だったのが3行後は“僕”になって、“俺”もある。それぞれに意図が読めるのですが、そういう細やかさもすべて落としちゃいけないので、少し大変ですね。
大石 清水さんは声に出しながら書かれたそうなので、中原を自分と重ねながら、いろいろな一人称で書いたのかもしれないですね。
加納 その言葉に体がのらないといけない。スルっとではなく、どこかで力技も必要なのをすごく感じています。

――お客さまに劇場から持って帰ってもらいたいものは何ですか?
加納
 清水さんは廃墟となった遊園地をみて一気にこの物語を思いついたそうです。すごいですよね。劇場を出たときに、新しいビルが建っているなとか、人が集まっているなとか、何かを目にしたときに想像力が豊かになっていたらいいですね。向こう側にはこんな人がいて、こんな人生があるのかもしれないと想像を膨らませて見られるようになると、すごく面白いことがあると思います。
大石 今回は約 40年ぶりの上演ですが、清水さんの作品をもっと観てみようと思ってもらえたら、偉そうですけど、嬉しいです。清水さんには、わけの分かんない作品も難しい作品も、いろいろなものがたくさんあります。 清水さんは蜷川さんとも盟友だったので、そういう劇世界を知ってもらえたらと思います

――最後に、お客さまにメッセージをお願いします。大石さんは主演ですね?
大石
 主演なんて、やったことないですよ。初めてです。蜷川さんのカンパニーは全員同じですから。
加納 新しい私を見に来てください。この年齢になって、新しい演技をしていますし、このような役をやったのも初めてです。そして、大石継太という俳優の来し方が観られると思います。
大石 エンタメ性もあり 難しくもないので、肩肘張らずいらしてください。とても素敵なお芝居になっていますので、ぜひ観ていただきたいです。

(注1)ニナガワスタジオ:演出家、蜷川幸雄によって若い世代の俳優、スタッフを集めて演劇集団「GEKI-SYA NINAGAWA STUDIO」として創設された。「ザ・ヤング・ニナガワ・カンパニー(1991年)」「ザ・ニナガワ・カンパニー(1992年)」「ニナガワ・カンパニー・ダッシュ(1996年)」など時代に合わせて改称。2004年、「ニナガワ・スタジオ」へ改称。

(注2)ベニサン・ピット:東京都江東区にあった小劇場と稽古場。染色会社の紅三が工場跡地を改装して1983年に貸し稽古場「ベニサン・スタジオ」、1985年に小劇場「ベニサン・ピット」がオープン。89年にはアンジェイ・ワイダ演出、坂東玉三郎主演の『ナスターシャ』を上演し話題になった。93年からはT.P.T.が演出家のデヴィッド・ルヴォーを招き公演を行う。T.P.T.のほか、蜷川幸雄氏のNINAGAWA STUDIO、永井愛氏の二兎社などが創作の拠点を置いた。老朽化のため2009年に閉館。

(注3)佐分利信:さぶりしん。1909年北海道生まれ。昭和の二枚目俳優で映画監督。主な出演作に『兄とその妹』『暖流』『戸田家の兄妹』『彼岸花』『華麗なる一族』『化石』など。1982年没。

写真:交泰

公演情報

unrato#14『夢去りて、オルフェ』

作:清水邦夫
演出:大河内直子
音楽:三枝伸太郎
出演:大石継太、朝海ひかる、舞羽美海、久保田秀敏、佐奈宏紀、平体まひろ(文学座)、田野聖子、加納幸和(花組芝居)、小栁喬(演劇集団円)、中村茉夢、田仲ゆら、綾部遥斗、田﨑斗翔、泉愛菜

《会場》東京芸術劇場シアターウエスト

《日程》
8月
21日(金)18:30 ◇
22日(土)14:00
23日(日)14:00
24日(月)14:00/18:30 ★
26日(水)14:00/18:30 ★
27日(木)14:00
28日(金)14:00
29日(土)14:00/18:30 ★
30日(日)14:00
《料金》
一般 8,800円
◇初日割 7,700円
★夜割 7,700円
シニア割(65歳以上)7,700円
学生 5,500円