劇団キンダースペースが、『新・復活2024』(原作◇レフ・トルストイ 翻訳・脚色◇島村抱月)を上演!

1985年の旗揚げ以来、「役者である前に演劇人であれ」という目標を掲げ、演劇を楽しむ人々の裾野を拡げるべく精力的な活動を続ける劇団キンダースペース。ギリシャ悲劇から芥川龍之介まで和洋ジャンルを問わず様々な作品を上演、観る者を虜にし愛され続けている。

そんな彼らが、今年2月、トルストイの原作を島村抱月が翻訳・脚色した『復活』を、『新・復活2024』として上演する。旗揚以来、活動を牽引してきた劇団主宰で上演台本・演出を手がける原田一樹より、上演に向けたメッセージが届いた。

この作品は10年前に「新 ・ 復活」として上演したものです。その際にも日本で「復活」を最初に取り上げ、新劇女優誕生となった『芸術座』による上演過程と、抱月=須磨子のエピソードを挟みました。
が、我ながら不本意な〈解説〉に終始した想いを抱いていました。

その後の反応や、スタッフ、キャストの声に後押しされ新演出を決断した訳ですが、新たに資料にあたってみたところ、この間に島村抱月と松井須磨子に関する俗説を覆す新事実が発掘されていて、以前とは違った人物像が浮かび上がりました。同時に『芸術座』の出発点、抱月の「二元の道」(娯楽と芸術)の原点も、この「復活」の上演過程にあることに思い至り、それを今回、どう舞台に上げたかは観ていただく他はないのですが、トルストイの描いたある公爵の素朴に過ぎるような贖罪の意思と、それを受けとめきれない酌婦に身を落とした女の心情が、私学を代表する知識人抱月と、女優=妾であった時代に勘当され離縁されながら女優を貫いた須磨子とあまりにも符合することに驚きました。

もちろん今回の「復活」は、大正三年当時の抱月の翻案による「復活」とは、かなり趣を異にしています。挟んだ二人を巡るエピソードも、時系列において正確ではありません。それもこれも西洋化と近代化の区別のつかなかった時代に、新しい日本人が男女ともに上げた呻きと叫びを、より鮮明にするためです。

トルストイ最晩年の「復活」は又、ロシア正教からの破門を決定づけた作品でもあります。ここにも又、ロシア革命をその暴力においては非難したトルストイの過剰な「素朴」の叫びがある、と感じていただければ幸いです。

原田一樹

【原田一樹プロフィール】

劇団キンダースペース代表。劇作・舞台美術・演出。1985年劇団キンダースペース創立。都内劇場及び、埼玉県川口市のアトリエを中心に舞台作品を発表。90~91年ACCグランティN.Y.滞在。
代表作:劇団キンダースペース「報われし者のために」「ポー、大鴉の夜」「銘々のテーブル」「モノドラマシリーズ」。劇団俳優座「九番目のラオ・ジウ」「ラストインラブソディー」「血の繋がり」。劇団文化座「天国までのマイル」「獅子」「田端文土村シリーズ」。劇団昴「クルーシブル」「ラインの監視」「評決」。劇団東演「長江」「月光の夏」。名取事務所「犬の心臓」。SPAC「しんしゃく源氏物語」「ドン・キホーテ」。地域創造ネットワーク事業「サド侯爵夫人」。さいたま芸術劇場「神の庭園」。市民劇団設立指導・演出=三重県嬉野市、佐世保市、足立区シアター1010、埼玉県富士見市、船橋市「アンデルセン・プロジェクト」、石川県七尾市民劇団N(能登演劇堂)

【あらすじ】
 トルストイ作「復活」は19世紀末帝政ロシアが舞台。ネフリュードフはある殺人事件の裁判に陪審員として出廷、目にした被告はかつての使用人カチューシャだった。十年前、カチューシャの知性と容姿に触れたネフリュードフは恋におち、強引に関係を持ち、金を渡し、去った。カチューシャは私生児を生み、困窮から娼婦に。酒に溺れ、仲間の陰謀で殺人の罪を着せられる。その法廷での再会であった。深く後悔するネフリュードフは追放されるカチューシャを追い、自らもシベリアへ。
 一方、大正三年、日本では島村抱月の翻案による「復活」が「日本初の歌う女優」と言われた松井須磨子によって演じられた。
 キンダースペースの「新・復活2024」は、俗説を覆す新事実が発掘され続ける抱月と須磨子の人物像も初演より更に掘り下げ、西洋化と近代化の区別のつかなかった時代に、新しい日本人が男女ともに上げた呻きと叫びを、より鮮明に描きます。

【公演情報】

劇団キンダースペース 第45回本公演【新・復活2024】
原作◇レフ・トルストイ 
翻訳・脚色◇島村抱月 
上演台本・演出◇原田一樹

出演◇
瀬田ひろ美・古木杏子・深町麻子・森下高志・榊原奈緒子・関戸滉生・坂本奈都実・岡田千咲・西本亜美・山崎稚葉・丹羽彩夏・松井結起子
伊藤勉(劇団文化座)・狩野謙(希楽星)・川野誠一(劇団大樹)・森島裕亮(スターダス・21Neu)・山本明寛(スターダス・21Neu)・洲本大輔(劇団昴)

日程◇ 
2024年2月28日(水)~3月3日(日)
※上演後アフタートークあり
3月1日(金)14時……和田啓氏(作曲家)・原田一樹
3月2日(土)13時……内田健介氏(ロシア演劇研究)・原田一樹

劇場◇
東京・両国シアターX(カイ)/TEL03-5624-1181

公式サイト◇
http://www.kinder-space.com/index/45.shinfukkatsu.html

「参加すれば芝居が2倍楽しめる」◇開催します◇
▪️「原作を読む会」2月 10日(土) 14 :00~
▪️「もうすぐ初日!ビフォアトーク」」 2月 10日(土) 15 :30~
会場:劇団キンダースペースアトリエ

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